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終わりの始まり
終わりの始まり ⑦
しおりを挟む誰かが叫び走ってきた。そしてカナリヤを庇った。
「…!マリヤ!」
我に返ったアイは剣をアイのお腹から離す。マリヤのお腹からは血がポタポタと垂れていた。
「どうしてマリヤがここに…お前嘘ついたな」
カナリヤをにらむ。するとマリヤがアイに抱きついた。
「もうやめようよ。これ以上アイに罪を負わせたくない。ごめんね。私のせいだよね。私のせいでアイは変わり果てちゃったんだよね」
「ち、違う。これは私が勝手にしたこと。マリヤには関係ない」
「関係あるよ。アイが人を殺めていることを知っているのに私は止めようとしなかった。あの時私が止めていれば…」
「ごめん。ごめんね」」
「これからは私たちずっと一緒だよ」
涙を流し震えた声で必死にア言う。アイはマリヤに抱かれながら泣いた。
ハーネストが国から騎士などを呼びこの建物は開放された。この建物の地下に人々は閉じ込められていた。そして何十体の人の死体が見つかった。アイが使っていた部屋からはアイが作ったとされる薬が数多くありその中には人間を使って作られたものもあった。
あまりにも残酷な光景に国の騎士たちも唖然としていた。アイとサンザリカは捕まり、裁判を受けることになるであろう。二人とも言う通りに騎士たちについていった。マリヤは血が出ていたものの、軽傷で済んだ。
アイはマリヤと一緒に国へ戻ることのなった。
「ちょっと待って」
二人がのる馬車をカナリヤが止めた。
「アイ。あんたにはもう人間の持っている感情を無くしたかと思っていたけど、あなたにはまだ親友を思う気持ちがある。あなたはまだ遅くはない。だから、今まで殺めてきた人たちへしっかりと償いなさい。あなたは一生罵倒されて人々から反感を買うでしょう。あなたの犯した罪は重い、償っても償いきれないでしょうね。だけど、そんなあなたでも見捨てなかった親友をこれからも一生大切にしなさい。そしていつか、二人で笑い合える日がくること願ってるわ」
アイはわぁと泣いた。マリヤもポロポロと涙を流しながらアイの背中を揺すった。
「すみません。お願いします」
カナリヤの合図とともに馬車は走り出した。
「まさかあのカナリヤがあんなことを言うなんてな。あんなにアイを恨んでいたのに」
「…私も道を外れていたらアイみたいになっていたかもしれない。アイや私だけではない、生きている以上自分の欲求不満には耐え切れない。だからといって、しょうがなかったで済まされるわけではない。しっかりと罪は償ってもらう」
「…変わったな…カナリヤ」
シャリングは優しくカナリヤを見つめた。
自分でもわからない。なんであんなことをアイに言ったのか。ルリスを殺した奴が目の前にいるなら、前の自分なら怒りですぐに殺していた。なぜだろう。アイが絶望に浸っている時に殺しておけばよかった。
しかし、あの時剣を取り出そうとしたのに躊躇った。
あそこでアイを殺していたら私もサンザリカと同じになる。あそこにはマリヤが元々いた。目の前で親友を殺される気持ちは私が誰よりも分かっている。辛いを超えて言葉に出せないほどだった。
これ以上自分と同じ悲しみをする人を出さないようにするのが目的だった。が、あそこでアイを殺していたら、自ら悲しむ人を出すところだった。
だからアイを殺さなかった。
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