1 / 24
プロローグ
しおりを挟む
「いいえ、僕がやりました」
寒い冬の夜、海岸でそう告げた。手と足の感覚は寒さによってマヒしていて唇もぶるぶると震えている。その震えは寒さだけではなかった。目の前にはきれいな姿で横たわっている神谷愛《かみや あい》がいる。
神谷は僕を見ずに夜空を見上げながら笑っていた。どうして笑っているのか、聞きたくても聞けない。
「西鷹《にしたか》、私、約束守るよ」
そう彼女は言った。けれど僕が望んでいたのはこんなのじゃない。目からこぼれる涙をぬぐいながら下を向く。
神谷と出会ったのは小学三年生の夏。神谷は親の仕事の都合で転校してきた。初めて見たときにかわいい女の子だなと思った。自分から話しかけに行き、そこから神谷とは仲良くなった。そして神谷が誕生日の時に僕はクマのぬいぐるみをあげた。満面の笑みでその人形を受け取ってくれた。
僕はその笑顔が大好きで、神谷をいつも喜ばせたい、そう思っていた。そして神谷は僕の誕生日にも何か渡す、そう言ってくれた。が、その願いはかなわなかった。神谷が転校することになる。
転校する日、神谷は僕に言った。
「お互い幸せになろうね、約束よ」
彼女の口から言ったんだ。確かに今の僕は前よりも幸せになった。重い荷物をやっと肩から降ろせたんだ。けれど僕は君のせいでまた幸せになれなくなった。目の前に立つ男に向かって、震える唇を必死に動かして言った。
「僕がやりました。神谷にこれ以上手を汚させないために」
目の前に立つ男は茫然としていた。騒ぎ立てる様子もない。僕の真っ白な息が男の人の顔を隠していく。そして意識がもうろうとし足に力がはいらずそのまま倒れこんだ。
どうして、こうなってしまったんだろうか。
寒い冬の夜、海岸でそう告げた。手と足の感覚は寒さによってマヒしていて唇もぶるぶると震えている。その震えは寒さだけではなかった。目の前にはきれいな姿で横たわっている神谷愛《かみや あい》がいる。
神谷は僕を見ずに夜空を見上げながら笑っていた。どうして笑っているのか、聞きたくても聞けない。
「西鷹《にしたか》、私、約束守るよ」
そう彼女は言った。けれど僕が望んでいたのはこんなのじゃない。目からこぼれる涙をぬぐいながら下を向く。
神谷と出会ったのは小学三年生の夏。神谷は親の仕事の都合で転校してきた。初めて見たときにかわいい女の子だなと思った。自分から話しかけに行き、そこから神谷とは仲良くなった。そして神谷が誕生日の時に僕はクマのぬいぐるみをあげた。満面の笑みでその人形を受け取ってくれた。
僕はその笑顔が大好きで、神谷をいつも喜ばせたい、そう思っていた。そして神谷は僕の誕生日にも何か渡す、そう言ってくれた。が、その願いはかなわなかった。神谷が転校することになる。
転校する日、神谷は僕に言った。
「お互い幸せになろうね、約束よ」
彼女の口から言ったんだ。確かに今の僕は前よりも幸せになった。重い荷物をやっと肩から降ろせたんだ。けれど僕は君のせいでまた幸せになれなくなった。目の前に立つ男に向かって、震える唇を必死に動かして言った。
「僕がやりました。神谷にこれ以上手を汚させないために」
目の前に立つ男は茫然としていた。騒ぎ立てる様子もない。僕の真っ白な息が男の人の顔を隠していく。そして意識がもうろうとし足に力がはいらずそのまま倒れこんだ。
どうして、こうなってしまったんだろうか。
0
あなたにおすすめの小説
エミリーと精霊
朝山みどり
恋愛
誰もが精霊と契約する国。エミリーの八歳の誕生日にやって来たのは、おもちゃのようなトカゲだった。
名門侯爵家の娘としてありえない恥。家族はエミリーをそう扱った。だからエミリーは居場所を得るために頑張った。役に立とうとした。
私の作るおにぎりが、騎士団の士気を異常に上げています(犯人は副団長)
星乃和花
恋愛
おにぎりを配っただけで、騎士団の士気が異常値になりました。
団長は警戒、監察部は呪術検査、国まで動きかけるのに――副団長だけが平然と断言。
副団長「彼女のご飯は軍事物資です」
私「えっ重い」
胃袋で落ちた策略家副団長の“最適化溺愛”に巻き込まれ、気づけば専属補給係(=婚約)寸前!?
ほのぼの爆笑&甘々の騎士団ラブコメです。
(月水金21:00更新ー本編16話+後日談6話)
いつか優しく終わらせてあげるために。
イチイ アキラ
恋愛
初夜の最中。王子は死んだ。
犯人は誰なのか。
妃となった妹を虐げていた姉か。それとも……。
12話くらいからが本編です。そこに至るまでもじっくりお楽しみください。
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
騎士の妻でいてほしい
Rj
恋愛
騎士の父を持ち自身も騎士になったイーサンは、幼馴染みで騎士の娘のリンダと結婚し幸せだったが妻の献身にあぐらをかき離婚の危機をむかえた。かろうじてやり直しのチャンスを得たイーサンだが、リンダが環境をかえ今後のことを考えるために王都で働くことになった。リンダに捨てられると恐怖にかられたイーサンはリンダを追い王都へむかう。イーサンはリンダと本当の意味でやり直すことができるのか。
*所々に下品な表現があります。
『騎士の妻ではいられない』の続編ですが前作を未読でも問題なくお読み頂けます。
【完結】恋の終焉~愛しさあまって憎さ1000倍~
つくも茄子
恋愛
五大侯爵家、ミネルヴァ・リゼ・ウォーカー侯爵令嬢は第二王子の婚約者候補。それと同時に、義兄とも婚約者候補の仲という複雑な環境に身を置いていた。
それも第二王子が恋に狂い「伯爵令嬢(恋人)を妻(正妃)に迎えたい」と言い出したせいで。
第二王子が恋を諦めるのが早いか。それとも臣籍降下するのが早いか。とにかく、選ばれた王子の婚約者候補の令嬢達にすれば迷惑極まりないものだった。
ミネルヴァは初恋の相手である義兄と結婚する事を夢見ていたというに、突然の王家からの横やりに怒り心頭。それでも臣下としてグッと堪えた。
そんな中での義兄の裏切り。
愛する女性がいる?
その相手と結婚したい?
何を仰っているのでしょうか?
混乱するミネルヴァを置き去りに義兄はどんどん話を続ける。
「お義兄様、あなたは婿入りのための養子縁組ですよ」と言いたいのをグッと堪えたミネルヴァであった。義兄を許す?許さない?答えは一つ。
悪役令嬢は高らかに笑う。
アズやっこ
恋愛
エドワード第一王子の婚約者に選ばれたのは公爵令嬢の私、シャーロット。
エドワード王子を慕う公爵令嬢からは靴を隠されたり色々地味な嫌がらせをされ、エドワード王子からは男爵令嬢に、なぜ嫌がらせをした!と言われる。
たまたま決まっただけで望んで婚約者になったわけでもないのに。
男爵令嬢に教えてもらった。
この世界は乙女ゲームの世界みたい。
なら、私が乙女ゲームの世界を作ってあげるわ。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ ゆるい設定です。(話し方など)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる