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聞き慣れた目覚ましの音に目を覚まし、また朝が来てしまったと落胆しながら重たい身体を起こす。
高校は田舎を出て都会に行きたいと無理を言って東京で一人暮らしを始めたのはいいものの、想像以上の疲労に早くも音を上げてしまいそうだ。
「まだ2ヶ月か……。」
ついため息を漏らしてしまいそうになるが、ぱちんと自分の頬を叩いて喝を入れた。
少し寝ぼけながら髪をセットし、制服は着崩して鏡を見る。つい最近まで田舎にいたせいで、お洒落には疎く、浮いているのではないかといつも不安になってしまう。
誰もいない家に向かって「行ってきます」と言い家を出て少し歩き慣れてきた道を進む。どこを見ても高いビルがあって、ここがこれまで住んでいた場所と同じ国なのかと思うと少し虚しくなる。
10分ほど歩いて満員電車に乗り込んだ。この時間はいつも押しつぶされそうなほど人が多くて、香水の匂いや加齢臭が自分の鼻腔に抜けてくるのが不快で仕方がない。こういうときにふと地元が恋しくなってしまうのだ。
20分ほど耐え抜き、やっと次は自分の降りる駅だと安堵したのもつかの間でいきなり電車は止まってしまった。
「落下物により緊急停止致します。暫くお待ちください。」
この言葉は俺を絶望に落とすのには十分すぎる言葉だった。これは遅刻確定かな、と考えながらポケットに入っているスマホを取り出そうとした。しかし、どのポケットを確認しても、カバンの中身を確かめても見つからないのだ。
こんな日に限って忘れるなんて今日は厄日か何かなのか、なんてことを思いながら少し周りを見渡してみた。その中に、同じクラスの女子、雛影莉珠那がいた。
背こそ低いものの凛とした雰囲気を纏う彼女は学年一、と言っていいほどの人気ぶりなのだ。
出席番号が前後だということもあり、何度か話したことがあるが、それだけで惚れてしまいそうな程に彼女は美しかった。
吸い込まれそうなほどの透き通った瞳を縁どる長いまつ毛と、陶器のような肌に柔らかな赤みのある頬。さらに鈴を転がしたような可愛らしい声。心做しかいい匂いまでした気がする。
また喋れないかな、なんてことを考えていたらまた電車は動きだし、あっという間に駅に着いた。既に遅刻しているし今更急ぐ必要は無いか、と思いながらゆっくり歩こうとしていると後ろから名前を呼ばれた。
この声は、と期待して後ろを振り向くと思っ通りそこには雛影さんがいた。
「やっぱり福永くんだ。良かったら一緒に行かない?」
その誘いを断れるはずなく、隣に並んで学校まで歩いた。歩く度に揺れる長い黒髪は日の光を浴びて輝いていてなんとも言えない綺麗さだった。
高校は田舎を出て都会に行きたいと無理を言って東京で一人暮らしを始めたのはいいものの、想像以上の疲労に早くも音を上げてしまいそうだ。
「まだ2ヶ月か……。」
ついため息を漏らしてしまいそうになるが、ぱちんと自分の頬を叩いて喝を入れた。
少し寝ぼけながら髪をセットし、制服は着崩して鏡を見る。つい最近まで田舎にいたせいで、お洒落には疎く、浮いているのではないかといつも不安になってしまう。
誰もいない家に向かって「行ってきます」と言い家を出て少し歩き慣れてきた道を進む。どこを見ても高いビルがあって、ここがこれまで住んでいた場所と同じ国なのかと思うと少し虚しくなる。
10分ほど歩いて満員電車に乗り込んだ。この時間はいつも押しつぶされそうなほど人が多くて、香水の匂いや加齢臭が自分の鼻腔に抜けてくるのが不快で仕方がない。こういうときにふと地元が恋しくなってしまうのだ。
20分ほど耐え抜き、やっと次は自分の降りる駅だと安堵したのもつかの間でいきなり電車は止まってしまった。
「落下物により緊急停止致します。暫くお待ちください。」
この言葉は俺を絶望に落とすのには十分すぎる言葉だった。これは遅刻確定かな、と考えながらポケットに入っているスマホを取り出そうとした。しかし、どのポケットを確認しても、カバンの中身を確かめても見つからないのだ。
こんな日に限って忘れるなんて今日は厄日か何かなのか、なんてことを思いながら少し周りを見渡してみた。その中に、同じクラスの女子、雛影莉珠那がいた。
背こそ低いものの凛とした雰囲気を纏う彼女は学年一、と言っていいほどの人気ぶりなのだ。
出席番号が前後だということもあり、何度か話したことがあるが、それだけで惚れてしまいそうな程に彼女は美しかった。
吸い込まれそうなほどの透き通った瞳を縁どる長いまつ毛と、陶器のような肌に柔らかな赤みのある頬。さらに鈴を転がしたような可愛らしい声。心做しかいい匂いまでした気がする。
また喋れないかな、なんてことを考えていたらまた電車は動きだし、あっという間に駅に着いた。既に遅刻しているし今更急ぐ必要は無いか、と思いながらゆっくり歩こうとしていると後ろから名前を呼ばれた。
この声は、と期待して後ろを振り向くと思っ通りそこには雛影さんがいた。
「やっぱり福永くんだ。良かったら一緒に行かない?」
その誘いを断れるはずなく、隣に並んで学校まで歩いた。歩く度に揺れる長い黒髪は日の光を浴びて輝いていてなんとも言えない綺麗さだった。
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