社畜の彗星は銀髪の妖精と3つの難題(クエスト)に挑む

木蔦空

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第2章── Memory of the World──

第15話 覚醒

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「そう言えばさ、一応キコルの身の安全は確保したんだから難題クエスト攻略クリアしてるはずだよね?」

「確かに……」

あの事件から一夜。キコルと共に宿に戻り、これからどうするか話し合っていた所、ナツメから話を持ちかけられた。素早くステボを起動すると、第2の試練ミッションが達成され、1つ目の難題クエスト攻略クリアされたと通知している。色々バタバタとしていて、音に気付かなかったらしい。

「2つ目の難題クエストはどういうものなの?」

「『この世界のロードを倒し、Captive World囚われの世界を解放しろ』だってさ! いやぁやっぱりこう来なくっちゃな」

「ほほう、いかにもテバットが好きそうな感じだね」

謎の王道的展開に僕は気分が上がる。まさか、いつか夢見たファンタジー漫画と同じ世界観で、自分が冒険出来るなんて思ってもいなかった。

「テバット、私お爺ちゃんと離れてテバット達に着いて行きたいんだけど……」

突然裾を引っ張り、もじもじしながらキコルは話し掛けてくる。

「ああ、それは構わないけど、爺さんにはもう話したのか?左脚無くしてるから、勝手に出ていく訳にもいかないだろ」

「うん、お爺ちゃんにはもう言ったよ! 『お前はこんな所で老いぼれと怯えて暮らすよりも、テバットと共に心身を鍛えて来た方が良い』って送り出してくれたの。宿に新たな人を雇って悠々自適ゆうゆうじてきに暮らすんだって」

「そうだったんだな。ちょうどマキとルキの元にキコルを連れて行くつもりだったから良かったよ」

「2人に会えるの? わ、私久しぶりに会うから緊張しちゃうな……」

ほおを手を当て顔を赤らめるキコルに微笑み、マキとルキの所に向かう。

「そういや、さっき2人はあの店主と戦っている時の僕の雰囲気が違うみたいなこと言ってたよな? 正直自覚無かったんだけど……。」

「やっぱりナツメちゃんも同じ事思ってたんだ。て言うか、自覚無かったの?」

「うん……あまりはっきり覚えてないんだよな……。唯一覚えてるのは敵の動きが遅く感じた事くらい」

「……それってもしかして……」

キコルはボソッと呟いた。

「キコル、何か知ってるのか?」

「分からない……分からないけど、耳にした事がある気がするの……」

「分からなくても良いから教えてくれ!」

「……内なる感情が爆発する際に自我が暴れ出す。通称は覚醒エヴォーク。」

覚醒エヴォーク……?」

「うん。私もあまり覚えていないんだけど、だいぶ昔にそういうのを研究してた様な気がするの」

「……ナツメ、これって……」

「……多分キコルは記憶を取り戻しつつあるよ」

「テバットどうかした?」

「あ、いやいや何でもない。話を続けてくれ」

「よく分からないけど続けるね。確かそれを書き留めた書物がどこかにあるはずなんだけど……もう分からなくなっちゃった……」

「うーん、やっぱり厳しいか……」

「力になれなくてごめん……」

「そんな事ないよ、不調の原因が分かっただけでも大収穫さ」

……そう。自分の身に起きてるこの現象が覚醒エヴォークなら、もしかしたらマキとルキは知っているかもしれないと踏んだのだ。

「マキとルキなら何か知ってるかもしれないし、そうと決まれば早く行こう」

「うん!」

「道案内は任せて~」

「頼むぜ、ナツメ」

あの時は走ったからすぐ着いたものの、今日はキコルもいて、急ぐ必要は無いためゆっくり向かうと、2人の家に着いたのは昼過ぎになった。

「思ったより掛かったな……」

「しょうがないよ……流石さすがに走る訳にもいかないし」

「テバットごめんね、私が走るのが苦手って理由で……」

結構泣き虫なキコルはすぐ目をうるませる。

「泣くな泣くな……別にキコルを責めてる訳じゃないんだから……」

「貴方、人の家の前で女の子泣かせないでくれる?」

ふと声がして振り返ると、ルキが腕を組みながらそこに居た。

「そんなんじゃないですよ……」

「あらそうなの?」

「ルキだー!」

「キコル! 久しぶりね!」

2人の幼女ようじょ(?)が抱擁ほうようする光景に鼻を伸ばしていると、ナツメが冷めた目付きで見てくる。

「テバット……」

「誤解だよ! 僕はただこの和やかな光景を目に焼き付けたいだけで……」

「おや、楽しそうですね」

声の方を振り返るとすぐ後ろにマキがいた。それも凄く笑顔で。

「キミの答え次第じゃ能力アビリティが暴発するかもしれませんので、お気を付け下さい」

「は、はは……冗談キツいっすよォ……」

いつも優しい人程実は恐ろしいと言うのは、この世界でも同じなのかもしれない。僕は冷や汗をダラダラ流しながら思った。
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