22 / 23
第2章── Memory of the World──
第21話 軋轢
しおりを挟む
チェックアウトを済ませ外に出ると、さっきまでの雨が嘘の様に晴れ、空には虹が架かっている。雨の所為で湿気が立ち込め、まるで夕立ちの後みたいだ。
「うわ……あっちぃな……てか、キコルこんな暑いのによくフードなんて被れるな……」
「私の容姿は目立っちゃうからね……。この世界の人は殆ど茶色い髪の毛だから」
「言われてみればそうだな。お年寄りを除けばみんな茶色い……」
「そう言えば、さっき別の場所から来たって言ってたけど、ニホンとかイセカイって言うのはその世界の名称なの?」
「まぁ……間違ってないけど、厳密に言えば違うな……。ニホンは僕が過ごしてた地の名称だけど、イセカイって言うのは僕のいた世界から見たこの世界の呼び方みたいな感じだ。異なる世界って書いて異世界」
「あっ! なるほどね! ナツメちゃんもそこから来たの?」
うっかりしていた。僕はナツメの事はほぼ知らない状態だったのだ。
「あ~……いや~……僕もあいつのことよく分かってないんだよね……僕の使役妖精ってことしか……」
「……だって話す必要ないでしょ」
今まで黙っていたナツメが急に喋り出した。だがその声色は氷のように冷たい。
「ナツメどうしたんだよ」
「逆に聞くけど、私の事を知って何になるの?」
「テバット、ナツメちゃんどうかしたの……?」
「分からん……だが様子がおかしい……」
「…………」
「本当にどうしたんだ……?」
「……何でもないよ。それよりも早くサヴェって人の所に向かった方が良いんじゃないの?」
「それはそうだけどさ……!」
「テバット……?」
「……いや、大丈夫だキコル。それよりも早く目的の場所に行こう」
そうは言ったものの、さっきのナツメの発言で空気は重苦しく、ズィシアン街に入るまでの数時間、誰も一言も話さなかった。
「私もナツメちゃんと話せたらなぁ……」
一番最初に口を開いたのはキコルだった。僕がキコルにナツメの言葉を伝えるのはいいが、それだと手間がかかってしまう。手っ取り早くキコルとナツメの意思疎通が出来ればいいのだが……
「キコルが妖精を見れるようにならないと難しいな……。そう言えば……ヤイカさんの妖精も見れなかったのか?」
「……うん。声は聞けたんだけどね。ヤイカが殺されると同時に聞こえなくなっちゃった」
「……そうなのか」
再び沈黙が訪れる。ナツメはあれから一言も発さず、ずっと後ろを飛んで付いて来ているばかりだ。
「……ナツメ、怒ってるのか?」
「……別に」
「何か気に障る事があったなら謝るよ……」
「…………」
「……テバットって本当に鈍感だよね。人に興味無いもんね」
「そんな言い方無いだろ。全部察しろってか?」
「そこまでとは言ってないけど。……まぁ私もずっとこんなんじゃ目的達成なんか出来ないし、いつも通りの可愛いナツメちゃんに戻ろうかな」
「……自由過ぎだろ……」
「それが私の取り柄だからね。あ、緑のエンブレム……」
「テバット! サヴェの家あったよ!」
ナツメの声が聞こえないキコルには悪気は無いのだろうが、あまりにも完璧なタイミングで被り僕は思わず吹き出した。
「……どうしたの?」
「いやいや、何でもないよ。とりあえず早く話を聞きに行こうぜ」
ズィシアンを彷徨って数時間、緑が生い茂る森のすぐ近くに家はあった。緑色の屋根に木の板を適当に貼り付けたような粗雑な家だ。とりあえずドアらしきものをノックするが反応が無い。
「おいおい……こんな時に限って出掛けてるのかよ……」
「出直すしかないね……。テバットの日頃の行いが悪い所為じゃない?」
「キコルに同じく」
「そりゃないだろ……」
落胆しながら引き返そうとした時、ドアがガチャっと開く音がした。
「お、お前達は誰じゃ……? ワシを殺しに来たんか……?」
振り返ると、鼻を覆う程伸びた緑色の髪の毛の持ち主……恐らくサヴェだと思われる人物がそこに居た。声は10歳頃の様だが、言動はまるで老人だ。僕達の事を能力者殺しと勘違いしているのか、身体の大部分をドアで隠していてプルプルと震えている。
「あ、あの、僕達は貴方と話がしたくて会いに来たんです」
「う、嘘をつけ……! そう言ってワシを信じ込ませて殺すつもりじゃろうが……!!」
この様子だと、過去に殺害されそうになった事があるのだろう。
「サヴェったらまた私の事忘れたの?」
だが、キコルが声を掛けた瞬間震えが止まりドアから姿を現した。
「おお! キコルだったか! ……という事はそこの黒いのは味方か……?」
「はい。実は僕も貴方と同じ能力者なんです……と言っても、信じて貰えないかも知れませんが……」
「ほう……お前が……という事はそこのちっこいのは使役妖精か」
「あっ、えっ、私の事見えてる……!?」
頬を赤らめてナツメはたじろいでいる。
「ほっほっほ……」
「あの……サヴェさん……」
「なんじゃ?」
「教えて欲しい事があるんです」
「……どうした」
「この世界の支配者の事ですよ。貴方ならお詳しいかと思いましてね」
「うわ……あっちぃな……てか、キコルこんな暑いのによくフードなんて被れるな……」
「私の容姿は目立っちゃうからね……。この世界の人は殆ど茶色い髪の毛だから」
「言われてみればそうだな。お年寄りを除けばみんな茶色い……」
「そう言えば、さっき別の場所から来たって言ってたけど、ニホンとかイセカイって言うのはその世界の名称なの?」
「まぁ……間違ってないけど、厳密に言えば違うな……。ニホンは僕が過ごしてた地の名称だけど、イセカイって言うのは僕のいた世界から見たこの世界の呼び方みたいな感じだ。異なる世界って書いて異世界」
「あっ! なるほどね! ナツメちゃんもそこから来たの?」
うっかりしていた。僕はナツメの事はほぼ知らない状態だったのだ。
「あ~……いや~……僕もあいつのことよく分かってないんだよね……僕の使役妖精ってことしか……」
「……だって話す必要ないでしょ」
今まで黙っていたナツメが急に喋り出した。だがその声色は氷のように冷たい。
「ナツメどうしたんだよ」
「逆に聞くけど、私の事を知って何になるの?」
「テバット、ナツメちゃんどうかしたの……?」
「分からん……だが様子がおかしい……」
「…………」
「本当にどうしたんだ……?」
「……何でもないよ。それよりも早くサヴェって人の所に向かった方が良いんじゃないの?」
「それはそうだけどさ……!」
「テバット……?」
「……いや、大丈夫だキコル。それよりも早く目的の場所に行こう」
そうは言ったものの、さっきのナツメの発言で空気は重苦しく、ズィシアン街に入るまでの数時間、誰も一言も話さなかった。
「私もナツメちゃんと話せたらなぁ……」
一番最初に口を開いたのはキコルだった。僕がキコルにナツメの言葉を伝えるのはいいが、それだと手間がかかってしまう。手っ取り早くキコルとナツメの意思疎通が出来ればいいのだが……
「キコルが妖精を見れるようにならないと難しいな……。そう言えば……ヤイカさんの妖精も見れなかったのか?」
「……うん。声は聞けたんだけどね。ヤイカが殺されると同時に聞こえなくなっちゃった」
「……そうなのか」
再び沈黙が訪れる。ナツメはあれから一言も発さず、ずっと後ろを飛んで付いて来ているばかりだ。
「……ナツメ、怒ってるのか?」
「……別に」
「何か気に障る事があったなら謝るよ……」
「…………」
「……テバットって本当に鈍感だよね。人に興味無いもんね」
「そんな言い方無いだろ。全部察しろってか?」
「そこまでとは言ってないけど。……まぁ私もずっとこんなんじゃ目的達成なんか出来ないし、いつも通りの可愛いナツメちゃんに戻ろうかな」
「……自由過ぎだろ……」
「それが私の取り柄だからね。あ、緑のエンブレム……」
「テバット! サヴェの家あったよ!」
ナツメの声が聞こえないキコルには悪気は無いのだろうが、あまりにも完璧なタイミングで被り僕は思わず吹き出した。
「……どうしたの?」
「いやいや、何でもないよ。とりあえず早く話を聞きに行こうぜ」
ズィシアンを彷徨って数時間、緑が生い茂る森のすぐ近くに家はあった。緑色の屋根に木の板を適当に貼り付けたような粗雑な家だ。とりあえずドアらしきものをノックするが反応が無い。
「おいおい……こんな時に限って出掛けてるのかよ……」
「出直すしかないね……。テバットの日頃の行いが悪い所為じゃない?」
「キコルに同じく」
「そりゃないだろ……」
落胆しながら引き返そうとした時、ドアがガチャっと開く音がした。
「お、お前達は誰じゃ……? ワシを殺しに来たんか……?」
振り返ると、鼻を覆う程伸びた緑色の髪の毛の持ち主……恐らくサヴェだと思われる人物がそこに居た。声は10歳頃の様だが、言動はまるで老人だ。僕達の事を能力者殺しと勘違いしているのか、身体の大部分をドアで隠していてプルプルと震えている。
「あ、あの、僕達は貴方と話がしたくて会いに来たんです」
「う、嘘をつけ……! そう言ってワシを信じ込ませて殺すつもりじゃろうが……!!」
この様子だと、過去に殺害されそうになった事があるのだろう。
「サヴェったらまた私の事忘れたの?」
だが、キコルが声を掛けた瞬間震えが止まりドアから姿を現した。
「おお! キコルだったか! ……という事はそこの黒いのは味方か……?」
「はい。実は僕も貴方と同じ能力者なんです……と言っても、信じて貰えないかも知れませんが……」
「ほう……お前が……という事はそこのちっこいのは使役妖精か」
「あっ、えっ、私の事見えてる……!?」
頬を赤らめてナツメはたじろいでいる。
「ほっほっほ……」
「あの……サヴェさん……」
「なんじゃ?」
「教えて欲しい事があるんです」
「……どうした」
「この世界の支配者の事ですよ。貴方ならお詳しいかと思いましてね」
0
あなたにおすすめの小説
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました
まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。
その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。
理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。
……笑えない。
人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。
だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!?
気づけば――
記憶喪失の魔王の娘
迫害された獣人一家
古代魔法を使うエルフの美少女
天然ドジな女神
理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ
などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕!
ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに……
魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。
「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」
これは、追放された“地味なおっさん”が、
異種族たちとスローライフしながら、
世界を救ってしまう(予定)のお話である。
クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました
髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」
気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。
しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。
「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。
だが……一人きりになったとき、俺は気づく。
唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。
出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。
雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。
これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。
裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか――
運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。
毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります!
期間限定で10時と17時と21時も投稿予定
※表紙のイラストはAIによるイメージです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる