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恨霊
しおりを挟む信じていた親友に好きな女性を奪われた僕は絶望のあまり自室で首を吊った。
死んでも消えない怨みと未練が僕をこの世に留め、住んでいた部屋は事故物件となり、誰も借りることがなくなっていた。
久しぶりに開いたドアからあの頃より少しだけ年を取った親友が入ってきた。涙を流し謝罪しながら持参した花束を置く。
馬鹿かお前は。
このまま知らん顔してれば僕の恨みはここに留まるしかなかったものを、お前はわざわざ僕を連れ出しに来た――
奴との間にできた幼い娘を抱く彼女はあの頃と全然変わっていなかった。
さてどんな手段で恨みを晴らしていこうか。
少女が僕に手を伸ばす。僕を見上げ「にーたん、にーたん」と無邪気に笑う。あの頃の彼女の笑顔によく似ていた。
霊にも涙が出るのだろうか。実際は何も出なかったけれど何かが溶けて流れていくのを感じる。
これからずっとこの子を見守っていこうと僕は決めた。
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