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悪友である一宮の部屋で放課後を過ごしていた請島は、漫画本が詰め込まれたカラーボックスの前にしゃがみ込んだ。
先程まで読んでいた単行本の続きを探すが、見つからない。乱雑に詰め込まれている本を数冊抜き出しては、本棚の奥まで覗き込む。その最中、本の表紙に描かれた黒いショートカットのヒロインらしき少女が視界に入った。
ふと思い出した様に、請島は背後の一宮を振り返った。
「そういや、瀬芽谷ってすっげー美人なんだぜ。一宮、知ってたか?」
ベットに寝転んでいた一宮は、携帯ゲーム機の画面から顔を上げると首を傾げた。
「誰? うちの学校?」
「そう。同じクラスの瀬芽谷」
「んん……? セメヤ……?」
普段から関わる事のない生徒の事など、覚えていないのだろう。一宮は記憶の中から瀬芽谷という名の生徒を探し出せずにいるようだ。
「そんな名前の女子いたっけ? タケル、まさかまだ彼女を増やす気じゃないだろうな。いくら二股やセフレが公認でも、そろそろ刺されるぞ」
請島には現在、彼女が二人と、身体だけの関係をメインとした女友達が数人いる。
178センチの身長に、制服の上からでも分かる鍛えられた肉体。やや目つきは鋭いが男らしく整った顔は、本人もそれを自覚している程だった。
中学時代から女癖が悪く、自他ともに認めるほど有名なものとなっていた。それでも請島は同年代の女子達を惹きつけるには十分な魅力と自信を保持しているらしく、どれだけ悪評が流れようとも請島の周りから女達が去る事はなく、悪癖が直る様子はない。
そんな請島が男の容姿を褒めているなどとは思いもしなかった一宮は、瀬芽谷という生徒を当然の様に女子だと勘違いし、呆れた様に苦笑を浮かべている。
目当ての本を見つけられず、その場から腰を上げた請島は、一宮の方を振り返ると頭をゆるく左右に振った。頭の動きに合わせ、根元の黒くなり始めた黄色い髪がパサパサと揺れる。
「女じゃなくて男。俺の隣に座ってる眼鏡の陰キャいるだろ、あいつ。……ってか一宮、これの15巻が無いんだけど。どこ?」
請島が本を一冊掲げて訊ねると、一宮は携帯ゲーム機をシーツの上に投げ出しながら身を起こした。
「それなら姉貴が持っていったかも。多分一ヶ月は戻って来ないぞ。姉貴、漫画読むの遅いから」
「一ヶ月!? 姉ちゃんの部屋行って取って来てくれよ。続き、気になる」
「姉貴の部屋に無断で入ると殺される。諦めろ」
一宮はベッドの上に脱ぎ捨ててあった上着から煙草の箱を取り出すと、一本咥えたままキョロキョロと室内に視線を彷徨わせた。持ち歩いているはずのライターが見当たらない様子だ。
「一宮」
請島は一宮の名を呼ぶと、制服のポケットからジッポライターを取り出して投げてやった。
「おっ。わりーな!」
一宮はキャッチしたライターの着火操作部を何度か押した後、本体を振ってから着火した。どうやらガスの残量が少なく、着火しづらいらしい。
後でオイルの補充をしなければと思いつつ、請島は本棚の前を離れると部屋の隅に積み上げられた雑誌を適当に引き抜いて、ベッドの隣に置かれた二人掛けのソファへ腰を下ろした。体を横向け両足を座面に乗せると、肘掛けに背を預けて雑誌を開いた。
「それで? タケル」
「え?」
名を呼ばれ顔を上げた請島を見ながら、一宮は紫煙を吐き出すと話の続きを促した。
「セメヤって奴の話。お前の隣に座ってる奴の顔なんて、全然覚えてないから分かんねーんだけど。そいつがどうかしたのか?」
「ああ。女みたいな顔してるっていうか……。この前、授業中に目が合ったんだけど綺麗すぎてビックリしてさ。あれからたまに見ちゃうんだよな」
「タケル、お前……! まさか、とうとう男にまで手を出すのか!?」
雑誌に視線を落としたまま喋っていた請島の言葉を遮って、一宮が声を荒げた。驚いた請島が視線を再び一宮へと向けると、胸の前で両腕を交差させて身を守るような体勢をとっている相手と目が合った。
「ばっ……馬鹿! 違うって! そういうんじゃなくて、モテそうな顔してんのにいつも一人でいるなって思っただけだ!」
相手がふざけているだけなのは分かってはいたが、請島は思わずソファから身を起こして否定した。それを見た一宮は「何で焦ってんだよ」と笑っている。
「あーあ。タケルが女に飽きてくれれば、俺んとこに回ってくる女が増えるのになー」
残念だと笑いながら、再びベットに寝転んだ一宮はゲーム機を引き寄せた。
「なんだよ、それ。そんな事になったら、一宮のとこに回る男までいなくなっちまうぞ」
「ギャハハ! どれだけモテる気だよ!」
二人は顔を見合わせ笑い合い、請島は再びソファに沈み込んで手にしていた雑誌へと視線を落とす。
やがて雑誌を捲る乾いた音と、ゲーム機のボタンを弾く硬い音だけが室内を満たした。
そのままこの話題は終わりを迎える――――はずだった。
「……なあー、タケル。1万円、欲しくないか?」
ゲーム機のボタンを指先で叩きながら一宮が言った。
「あ? 欲しいに決まってんだろ」
請島も雑誌のページを指先で摘みながら答える。
「タケルがセメヤを落としてヤれたら1万円……ってのはどうよ?」
「……は?」
請島はぽかんとした表情で口を開いたまま一宮を見つめた。
そんな請島の様子を見た一宮は、ベッドから降りると財布から1万円札を取り出した。それを請島の目前で、ヒラヒラと揺らして見せる。
「いやぁ、今ちょっと考えたんだけどよ。請島が男にハマれば、マジでこっちに回ってくる女増える気がしてきたんだよ。この1万円は、その為の必要経費ってやつだ」
「お前が女にモテないのは俺のせいじゃねーぞ」
「うるせー。いいからとにかく一度試してみろよ。セメヤとかいう奴が女みたいな顔してんなら、案外イケるんじゃねぇの?」
「何言ってんだ。無理に決まってるだろ。いくら顔が好みでも、男だぞ。ヤれるわけねーって」
「そうか? 女と後ろでするのと大差ないだろ、多分」
「えぇ~………………。さすがに女ともそっちではした事ねーし……」
請島は一宮と話しながら、あの瞬間を思い出していた。
瀬芽谷と目が合った時、請島は呼吸すら忘れてその美しさに見入った。
それにも関わらず、相手は眉ひとつ動かさなかった。驚いて動けなかったわけでもなく、請島を恐れて目を逸らしたわけでもない。まるで初めから視界には、請島という人間など存在していないかの様な素振りだった。
(……あの無表情な顏が、女みたいに喘いで俺を見上げる……?)
胸の小さな女性と化した瀬芽谷が、自分の下で媚態を晒す様を請島は想像した。
自分の腕の中で赤く染まっていく白い肌。汗で額に貼りつく乱れた黒い髪。濡れた唇の隙間から覗く白い歯と赤い舌。気の強そうな眼差しが自分を捉え、ズレた眼鏡の下で徐々に潤み涙を流す。
「エッロ!! あの青白い肌が赤くなってくとことか、絶対エロい! 俺、あいつとなら余裕でヤれそうな気がしてきた!」
頭の中の瀬芽谷の姿に、請島は思わず叫んでいた。
あっさりと意見を翻した請島を見て、一宮は思わず吹き出す。
「さすがヤリチン。なんでもアリかよ。あー、調子乗ってる請島が陰キャ眼鏡にフラれるとこ早く見てぇな~!」
「はぁ!? 本当はそれが目的かよ! あんな陰キャ、この俺がちょっと優しくしてやったら簡単に落ちるに決まってんだろ。すぐ証拠の動画、送ってやるから待ってろよ」
「男同士の動画なんていらねーっての」
ケラケラと楽し気に笑っている一宮に、請島は自信に満ちた笑顔を見せた。
◆
日曜の午後。インターホンの室内モニターに映し出された映像を見て、瀬芽谷龍二は眉を顰めた。
先日、授業中に一度だけ目を合わせてしまった隣席の生徒が、モニター画面の中で落ち着きなく視線を彷徨わせている。
居留守を使ってしまいたいと瀬芽谷は思った。
だが、親しくもない生徒の住所を調べて自宅にまで押し掛けて来た理由が分からないままになってしまうのは、きっと気味が悪いだろう。
瀬芽谷は渋々といった様子で通話ボタンを押した。
『……はい』
「えっと、瀬芽谷……瀬芽谷龍二君と同じクラスの請島です。龍二君に用があって来たんですけど。龍二君、居ますか?」
『…………僕が龍二だけど。何の用ですか?』
モニター画面の中の請島は僅かに緊張していた様子だったが、玄関子機から聞こえる声が瀬芽谷本人だと分かり安心したのか、表情を崩して見せた。
「なんだ本人か。親かと思った! あのさぁ、瀬芽谷。実は頼みがあって、ちょっと助けて欲しいんだ」
『嫌です』
僅かに眉を下げた半笑いの笑顔をカメラに向けている請島に、瀬芽谷は迷う事なく即座に一言だけ返した。
「……は? 無慈悲かよ。話だけでも聞けって」
予想外な返事に請島の表情は一瞬で不機嫌なものへと変わり、モニターの向こう側で自分を見ているであろう瀬芽谷を睨み上げた。弱そうな人間は一睨みしてやれば、黙って自分に従うものなのだと請島は思い込んでいた。
『嫌です。帰って下さい』
瀬芽谷によってブツリと音を立てて通話が切られた。
「えっ。マ、マジか……」
玄関子機の呼び出しボタンを何度も押すが、反応が無い。
「瀬芽谷~っ。少しだけでいいんだって。すぐ済むから、ちょっとだけ中に入れてくれ! なぁ~、頼むよ瀬芽谷ぁ~っ!」
請島はドンドンと音を立てて強くドアを叩いた。ドアを叩きながら媚びる様な声を出していた請島だったが、一向に返ってこない反応に徐々にその声色は苛立ちを孕んだものへと変わっていく。
「……オイッ! 開けろつってんだろ! 開けろオラァ!!」
マンションの5階フロアに響き渡る声量で叫びながら、請島はドアを蹴り始めた。
背中に大きく刺繍が入った黒のスカジャン。ダメージ加工がされたデニムパンツに、履きつぶされた赤のスニーカー。黒いボディバッグを前掛けにして身に着けている金髪のガラの悪い少年が、休日の昼間から暴れる様はさぞや目立ち、同じマンションの住人達は何事かと様子を窺っている事だろう。
瀬芽谷は慌てて玄関へと向かった。
「や、やめてよっ! 近所迷惑だろ……っ!」
微かにドアが開き、隙間から瀬芽谷が顔を出した。
ドアチェーンが掛けられていないのを目視した請島は、すかさずドアの隙間に靴の先と腕を捻じ込む。そのまま中へと体を割り込ませ、ドアをこじ開けた。
「お邪魔しまーす!」
「えっ! ちょ、ちょっと請島君、勝手に入らないで!」
請島はスニーカーを脱ぎ棄てると、瀬芽谷の体を押し退けてズカズカと室内に上がり込む。
「請島君ってば!」
瀬芽谷が慌てて後を追うが、遠慮なく奥へと進む請島の足は止まらない。
「もしかして家族全員、留守か? 都合いいな。なあ、瀬芽谷の部屋ってどこ? ここ?」
「あっ! 待――……っ!」
「ヒッ……! なんだこの部屋……」
無人のリビングを突っ切り、目についたドアを勢いよく開いた請島の足が止まった。請島の喉奥から、短い悲鳴が飛び出る。
ドアの向こう側は、六畳の洋室だった。
シングルベッドとデスクトップパソコンが置かれた机。本棚とワイヤーラック。そしてクローゼットの扉と、ベランダに出る為の掃き出し窓が見える。
ここが瀬芽谷の部屋なのは間違いないだろう。
しかし請島が瀬芽谷の外見から勝手に想像していたような、親が家具を揃えていそうな子ども部屋や、勉強に徹していそうな本だらけの息苦しい部屋といった雰囲気は一切無い。
肌の露出が多い少女の描かれたポスターが、四方の壁だけでなく天井にまでびっしりと貼られている。本棚や机にはカラフルな髪色をした少女達のフィギュアが、所狭しと飾られている。
「うわぁ…………。真面目系の陰キャだと思ってたけど、まさかのオタクか。なんか……すげーな……」
請島もコンビニで売られているような少年向けの漫画雑誌を毎週買って読んでいるし、たまにだがアニメだって見る。友人の一宮の部屋には漫画が多いし、プライズのフィギュアやぬいぐるみが幾つか転がってはいたが、ここまで絵に描いたようなオタク部屋では無い。こういった類の人間は請島の周りにはいなかった。
「ねえ、何、いきなり。話ならリビングで聞くから部屋から出てよ、請島君」
「…………」
請島が物珍しさに入り口で突っ立ったまま部屋中を眺めていると、後ろから瀬芽谷に腕を掴まれた。
「ねぇってば!」
「え? あ、ああ…………」
振り返ると、上下スウェット姿という完全な休日引き籠り満喫スタイルの瀬芽谷がいた。
眼鏡をかけておらず、前髪は片側に寄せてヘアクリップでまとめられている。瀬芽谷の黒い瞳をレンズ越しではなく、直接見る事が出来た。
(うわっ。こいつの顔……やっぱり、すっげー好み……!)
10センチほど下にある瀬芽谷の瞳は明らかに怒りの色に染まり、請島を睨み上げていた。
請島はそんな相手の怒りを気にするでもなく、体を瀬芽谷の正面へと向けると、その両肩をがっしりと掴んで顔を覗き込んだ。
「瀬芽谷っ!」
「な、何…………」
突然の事に驚いた瀬芽谷は、元から大きな目を更に大きく見開いて肩を強張らせた。
「……瀬芽谷、俺と付き合ってくれ!」
「え……っ?」
瀬芽谷の長いまつ毛が、パチパチと繰り返される瞬きにあわせて大きく上下に揺れる。
「…………」
「ど、どこに……?」
「いや、そういうの要らねーから。俺の彼女……じゃねーな、彼氏になってくれって意味だよ。分かるだろ普通」
請島は真剣な表情で瀬芽谷を見つめ続けていたが、僅かに肩の力を抜いた瀬芽谷は眉を寄せて請島の顔を見上げている。
「……請島君、ゲイだったの?」
「は!? んな訳ねーだろ!」
請島は反射的に苛立った口調で否定を口にしていた。請島が自覚している性的指向は異性だけだったからだ。
しかし、すぐに自分が今ここに来ている目的を思い出し、慌てて取り繕う。
「……あっ。いや、違うけど。その……瀬芽谷ならイケそうっていうか。瀬芽谷の顔、綺麗だなって思ったというか……」
男の顔に対して女性と同様の美しさを感じたのは瀬芽谷が初めてだった。
請島のその言葉に嘘はない。だが相手はそう思わなかったのか、それとも単に不快だったのか、瀬芽谷の眉間に刻まれた皺の深さが増した。
「どうせ何かの罰ゲームとか遊びで告白しに来たとかでしょ?」
「えっ! なんで分か……、あ! い……いや、そういうんじゃなくて! この前、授業中に目が合っただろ? あの時に……えーと……一目惚れ……。そうっ! 一目惚れしたんだよ!」
何人もの女性と関係をもってはすぐに別れる。何股もかけてはセフレを作る。底無しの女好きだという噂を、請島本人が肯定している姿を瀬芽谷は見た事がある。
しかし、請島が男にまで手を出しているという噂は一度も聞いた事が無い。
そんな請島の言葉をそのまま鵜呑みにするはずもなく、言葉に詰まり始めた請島から顔を逸らした瀬芽谷は小さく溜め息を吐いた。
「いきなり来て何かと思ったら、くだらない。請島君、そんなに暇なの? 僕、忙しいんだ。もう帰ってくれる?」
改めて迷惑そうに請島を睨み上げた瀬芽谷の表情に、請島はまるで上目遣いをしている様だと呑気な事を考えた。
(可愛い……。チューしたい…………)
パァンッと乾いた音がその場に響く。
「痛ったぁ!!」
思ったままに瀬芽谷へと顔を近付けた請島の動きは、二人の唇が触れ合う直前で瀬芽谷の平手によって止められた。
電気が走ったようにピリピリと痛む頬の肉に、じわりと熱が生まれる。請島の腕が瀬芽谷の肩から離れ、痛みの広がる自らの頬へと移動した。
一瞬の躊躇もなく力いっぱいに請島の頬を引っ叩いた瀬芽谷の顔からは、表情がなくなってしまっていた。冷ややかな瞳が請島の顔を映し出しているだけだ。
「瀬芽谷……。俺、男相手とか初めてだからどう言えばいいのか分かんねーけど……今も瀬芽谷の事、めちゃくちゃ可愛いと思った。マジで瀬芽谷の顔、好き」
恐らく本気で怒っているであろう瀬芽谷に、請島は頬を押さえたまま緩い笑みを浮かべた。請島はそのまま瀬芽谷から身を離すと、部屋の中へと足を踏み入れる。
「あ、ちょっと……っ! 入らないでってば!」
引き留めようと伸ばされた瀬芽谷の腕をすり抜けた請島は、ベッドに腰を下ろすと部屋を再度ぐるりと見渡した。
部屋中に貼られたどのポスターにも、青い髪の少女がいる。ベッドの端に寄せられた抱き枕カバーにも、同じ少女のイラストがプリントされていた。
(見た事ないアニメっぽいけど、主人公か? この青髪の女だけフィギュアも多いし)
青い髪の少女から視線を外した請島は、向かいで立ち尽くしている瀬芽谷を見上げた。
「瀬芽谷って彼女いないだろ」
瀬芽谷と目が合ったのは、授業中のほんの数秒の出来事だった。お互いに話題として声を掛ける様な関係でもなければ、自分を無視したなどと喧嘩を売る様な存在でもない。
目が合った事など、数分後には忘れているはずだった。
しかし請島はその瞬間を忘れられず、何度も隣席に視線を送った。気付けば瀬芽谷を探し、目で追っていた。一宮との賭けを名分に、請島は瀬芽谷という男を観察した。
瀬芽谷龍二は、常に独りだった――――。
同じクラス内に行動を共にする生徒はおらず、他のクラスにも友人がいる様子は無い。
朝は一人で登校し、自分の席に静かに着席する。休憩時間は小説らしき本を読み耽り、昼は学食で独り昼食を取る。部活には所属していないらしく、放課後は帰りのホームルームが終わればすぐに教室を出ていく。
同級生達から避けられたりイジメの標的にされているという訳ではなさそうで、請島には瀬芽谷が自ら他の生徒達と関わるのを極力避けている様に見えた。
少なくとも同じ学校内には、恋人どころか友人すら存在しないという確証が請島にはあった。
自分の問いかけに答えない瀬芽谷を気にするでもなく、請島は言葉を続けた。
「なぁ、瀬芽谷。試しに一度、俺と付き合ってみようぜ。何事もやってみないと分からないんだし。もし合わないなら、すぐ別れれば良いだけだし……、な?」
自分を見上げながら薄っすらとした笑みを浮かべる請島に、瀬芽谷はどう答えるべきなのか考えあぐねている様だ。
請島は不良というレッテルを貼られてはいるが、校内で無暗矢鱈に生徒達を威嚇しているわけではない。普段から笑顔でいる事が多く、元々の人懐っこさもあり話しかけやすい雰囲気を絶やさない。マイナスイメージであるはずの女癖の悪さも、請島と関係を持てた女達の自尊心を満たし周囲への優越感を感じさせるのか、女の方から擦り寄ってくる事が大半だった。
要するに、自ら動かずともモテる。
そんな請島が、今まで微塵も興味が無かった同性を口説く為の手段など、考えたところで思いつく筈も無かった。
結果、思い至ったのが、当たって砕ける前に強引に落としてしまおうという強行手段であった。
「――――という訳で」
「うわっ!」
最初から相手の答えがどうであれ、そうする気だった請島は瀬芽谷の腕を思い切り自分へと引き寄せた。
◆
体勢を崩した瀬芽谷の体が自分の腕の中へとぶつかるようにして転がり込んでくる。その勢いのまま、請島は瀬芽谷をベッドへと縫い付ける様にして体を入れ替えた。
「とりあえずヤってみようぜ! 俺、男とはヤった事ないけど多分絶対上手いはずだから安心していいぜ!」
瀬芽谷に覆いかぶさった請島は、身に着けていたボディバッグからコンビニの購入シールが貼られたコンドームの箱を取り出して見せた。
その自信に満ちた笑顔を見た瀬芽谷は、酷い頭痛に襲われたかの様に顔を歪めた。
おそらくこの時の瀬芽谷の脳は実際に、目の前にいる馬鹿に対する危険信号を痛みとして伝達していた事だろう。
「ちょ、ちょっと待って!」
火事場の馬鹿力とでも言うべきか。請島自身、意外に感じる程にあっさりと体を押し退けられてしまった。
ベッドから下りる瀬芽谷を捕えようと伸ばされた請島の腕を、するりと避けた瀬芽谷はベッドの向かい側の机に背をつけた。
「あのね、真面目に断るよ。僕、請島君とは付き合えない!」
「なんで? 男同士だから? 最近は男同士とか逆に普通だろ、多分」
「そ、そうじゃなくて……」
ベッドから下りて迫ってくる気配は無いが、瀬芽谷は自分を真っ直ぐ見上げている請島から視線を外せない。
どうすれば目の前の、尊大な態度で居座る男を帰す事が出来るのかを、瀬芽谷は考えた。
瀬芽谷は暫し部屋の中に視線を彷徨わせた後、自分の背後にあったそれを手にすると、躊躇いがちに言葉を続けた。
「……ぼ、僕には……、もう、嫁がいるから。そういうのって……、う、浮気になっちゃうから……」
瀬芽谷の発した単語に、請島は思わず目を丸くした。
「は? 何……? 既婚者?」
瀬芽谷の小さな喉仏がゴクリと大きく動く。瀬芽谷は一体のフィギュアを請島の方へと掲げて見せた。
「そう! この子が僕の嫁の、ミラクル☆リズムちゃんです!」
足首まである長さの真っ青なツインテール。不自然な程に大きな乳房。極端に細い腰。フリルでアレンジされたスカートタイプの軍服は、何故か胸と股間部分の布は無く、下着が見えているセンシティブなデザインの服を着ている。
抱き枕にプリントされている青髪の少女だった。
少女のフィギュアを持つ瀬芽谷からは、微塵もふざけている気配は感じられない。
真顔の瀬芽谷が目の前に立っている。
(うわぁ……マジでこういうオタクいるのか。気持ち悪……ッ!!!!)
請島は本気で引いていた。
服の下で一気に鳥肌が立つのを感じる。
「あー……えっと、瀬芽谷。それ、人形っていうか……漫画のキャラ……だよな? 嫁って言っても、その女、存在しないじゃねーか」
瀬芽谷が手にしているフィギュアを請島は指さした。フィギュアへと向けた人差し指が、微かに震えている。
「ここに居るだろ」
「……いや、えっと……。だから、その女は漫画だろ? アイドルとかコスプレイヤーみたいな、芸能人ですらないんだろ?」
「僕とリズムちゃんの間には次元とか存在しないから。それにアニメ化はしてるけどコミカライズはされてないから漫画じゃないよ。原作はラノベ。間違えないでくれるかな?」
(あれ? これって話噛みあってるのか? 言ってる意味が分からない。らのべって何だよ。キモいオタク話を早口でされたってのはなんとなく分かるけど……、なんか分からねーけど怖ぇ――ッ!)
請島はまるで凍えそうな寒さに耐えているかの様に、無意識に体を抱え込む様にして両腕を擦っていた。
「な……なぁ瀬芽谷、よく考えろ。そのセックス出来ない人形と、セックスしてやれる俺なら……、どう考えても俺の方がいいだろ?」
真顔だった瀬芽谷の目元が僅かに細められ、請島に向けられていた視線に冷ややかさが加わった。器用に片方の眉だけを上げている。
「請島君とリズムちゃんは、まず比べるものじゃないよね?」
「え?」
「可愛くて癒される、優しくて尊いリズムちゃんと、……えーと……」
瀬芽谷の視線が空中を彷徨いかけたが、すぐに戻された視線は請島を見下す様な目付きへと変わった。
「……無の請島君」
「無《む》!?」
「僕のリズムちゃんと比べてもらえるだなんて考えは、烏滸《おこ》がましいんじゃないかな?」
「はぁ!? 俺だって稀に年上の女からは可愛いって言われるぞ! 俺とのセックスはたぶん癒しってやつだし、割と優しい方だし! えっと…………トウトイって何だ!」
「尊いは請島君から最も真逆の……」
「ああっ、もういい! よく分かんねー言葉を喋るんじゃねぇ! とにかく俺と付き合えって! 男なんだから尻に1回や2回くらい、ちんこ挿れられても構わないだろ! そんですぐ別れりゃいいんだよ!」
「あっ!」
ベッドから立ち上がるなり素早く瀬芽谷の手からフィギュアを奪い取った請島は、尻ポケットに煙草と一緒に入れていたジッポライターを取り出し、点火した。
「こいつがどうなってもいいのかキモオタ! 嫁を燃やされたくなかったら脱げ!」
「うわぁああああ!!」
ライターの火をフィギュアの顔部分に近付けて見せると、瀬芽谷は青い顔で叫んだ。
(焦ってる顔も全然不細工にならねぇって、少しムカつくな……)
請島は呑気にそんな事を思った。
「それ、プレミア付いて……じゃなくてリズムちゃん! やめろ! やめてください! 何でもするから、その子には手を出さないで!」
「なら脱げ。こっちはとりあえず1回セックス出来りゃいいんだよ! 親が帰って来る前にさっさと済ませるぞ」
「なんなんだよ、それ! 最初から付き合う気なんて無いじゃないか!」
「うるせーな! ヤッてから付き合えばいいだろ! 早く脱げって!」
「うぅ……なんで僕がこんな目に……」
視線をフィギュアに向けたまま小さく呻いた瀬芽谷は、脅されるままスウェットの裾に手を掛けた。
「……あっ」
小さな声と共に、瀬芽谷の視線がフィギュアからライターへと移動した。
「あ?」
つられて請島も手元に視線を落とすと、ライターの炎が徐々に小さくなり、消えるのが見えた。
「は……? え? あれ? なんで消えた?」
再点火しようと着火操作部を何度も押すが、カチカチと音がするだけで火が着く気配はない。
(そういえば、あれからオイルの補充しないまま使ってたんだった)
ライターに気を取られていた請島の耳に、トンッと、フローリングの床を何かが跳ねる小さな音が聞こえた。
「――――――――……え?」
音がした方を向いたはずなのに請島の顔は真上の天井を向いていた。
受け身も取れないまま床に倒れ、背中に鈍い痛みを感じる。
請島の耳に届いた小さな物音は、瀬芽谷がこちらに向かって踏み込む際に床を蹴った音だった。
先程まで読んでいた単行本の続きを探すが、見つからない。乱雑に詰め込まれている本を数冊抜き出しては、本棚の奥まで覗き込む。その最中、本の表紙に描かれた黒いショートカットのヒロインらしき少女が視界に入った。
ふと思い出した様に、請島は背後の一宮を振り返った。
「そういや、瀬芽谷ってすっげー美人なんだぜ。一宮、知ってたか?」
ベットに寝転んでいた一宮は、携帯ゲーム機の画面から顔を上げると首を傾げた。
「誰? うちの学校?」
「そう。同じクラスの瀬芽谷」
「んん……? セメヤ……?」
普段から関わる事のない生徒の事など、覚えていないのだろう。一宮は記憶の中から瀬芽谷という名の生徒を探し出せずにいるようだ。
「そんな名前の女子いたっけ? タケル、まさかまだ彼女を増やす気じゃないだろうな。いくら二股やセフレが公認でも、そろそろ刺されるぞ」
請島には現在、彼女が二人と、身体だけの関係をメインとした女友達が数人いる。
178センチの身長に、制服の上からでも分かる鍛えられた肉体。やや目つきは鋭いが男らしく整った顔は、本人もそれを自覚している程だった。
中学時代から女癖が悪く、自他ともに認めるほど有名なものとなっていた。それでも請島は同年代の女子達を惹きつけるには十分な魅力と自信を保持しているらしく、どれだけ悪評が流れようとも請島の周りから女達が去る事はなく、悪癖が直る様子はない。
そんな請島が男の容姿を褒めているなどとは思いもしなかった一宮は、瀬芽谷という生徒を当然の様に女子だと勘違いし、呆れた様に苦笑を浮かべている。
目当ての本を見つけられず、その場から腰を上げた請島は、一宮の方を振り返ると頭をゆるく左右に振った。頭の動きに合わせ、根元の黒くなり始めた黄色い髪がパサパサと揺れる。
「女じゃなくて男。俺の隣に座ってる眼鏡の陰キャいるだろ、あいつ。……ってか一宮、これの15巻が無いんだけど。どこ?」
請島が本を一冊掲げて訊ねると、一宮は携帯ゲーム機をシーツの上に投げ出しながら身を起こした。
「それなら姉貴が持っていったかも。多分一ヶ月は戻って来ないぞ。姉貴、漫画読むの遅いから」
「一ヶ月!? 姉ちゃんの部屋行って取って来てくれよ。続き、気になる」
「姉貴の部屋に無断で入ると殺される。諦めろ」
一宮はベッドの上に脱ぎ捨ててあった上着から煙草の箱を取り出すと、一本咥えたままキョロキョロと室内に視線を彷徨わせた。持ち歩いているはずのライターが見当たらない様子だ。
「一宮」
請島は一宮の名を呼ぶと、制服のポケットからジッポライターを取り出して投げてやった。
「おっ。わりーな!」
一宮はキャッチしたライターの着火操作部を何度か押した後、本体を振ってから着火した。どうやらガスの残量が少なく、着火しづらいらしい。
後でオイルの補充をしなければと思いつつ、請島は本棚の前を離れると部屋の隅に積み上げられた雑誌を適当に引き抜いて、ベッドの隣に置かれた二人掛けのソファへ腰を下ろした。体を横向け両足を座面に乗せると、肘掛けに背を預けて雑誌を開いた。
「それで? タケル」
「え?」
名を呼ばれ顔を上げた請島を見ながら、一宮は紫煙を吐き出すと話の続きを促した。
「セメヤって奴の話。お前の隣に座ってる奴の顔なんて、全然覚えてないから分かんねーんだけど。そいつがどうかしたのか?」
「ああ。女みたいな顔してるっていうか……。この前、授業中に目が合ったんだけど綺麗すぎてビックリしてさ。あれからたまに見ちゃうんだよな」
「タケル、お前……! まさか、とうとう男にまで手を出すのか!?」
雑誌に視線を落としたまま喋っていた請島の言葉を遮って、一宮が声を荒げた。驚いた請島が視線を再び一宮へと向けると、胸の前で両腕を交差させて身を守るような体勢をとっている相手と目が合った。
「ばっ……馬鹿! 違うって! そういうんじゃなくて、モテそうな顔してんのにいつも一人でいるなって思っただけだ!」
相手がふざけているだけなのは分かってはいたが、請島は思わずソファから身を起こして否定した。それを見た一宮は「何で焦ってんだよ」と笑っている。
「あーあ。タケルが女に飽きてくれれば、俺んとこに回ってくる女が増えるのになー」
残念だと笑いながら、再びベットに寝転んだ一宮はゲーム機を引き寄せた。
「なんだよ、それ。そんな事になったら、一宮のとこに回る男までいなくなっちまうぞ」
「ギャハハ! どれだけモテる気だよ!」
二人は顔を見合わせ笑い合い、請島は再びソファに沈み込んで手にしていた雑誌へと視線を落とす。
やがて雑誌を捲る乾いた音と、ゲーム機のボタンを弾く硬い音だけが室内を満たした。
そのままこの話題は終わりを迎える――――はずだった。
「……なあー、タケル。1万円、欲しくないか?」
ゲーム機のボタンを指先で叩きながら一宮が言った。
「あ? 欲しいに決まってんだろ」
請島も雑誌のページを指先で摘みながら答える。
「タケルがセメヤを落としてヤれたら1万円……ってのはどうよ?」
「……は?」
請島はぽかんとした表情で口を開いたまま一宮を見つめた。
そんな請島の様子を見た一宮は、ベッドから降りると財布から1万円札を取り出した。それを請島の目前で、ヒラヒラと揺らして見せる。
「いやぁ、今ちょっと考えたんだけどよ。請島が男にハマれば、マジでこっちに回ってくる女増える気がしてきたんだよ。この1万円は、その為の必要経費ってやつだ」
「お前が女にモテないのは俺のせいじゃねーぞ」
「うるせー。いいからとにかく一度試してみろよ。セメヤとかいう奴が女みたいな顔してんなら、案外イケるんじゃねぇの?」
「何言ってんだ。無理に決まってるだろ。いくら顔が好みでも、男だぞ。ヤれるわけねーって」
「そうか? 女と後ろでするのと大差ないだろ、多分」
「えぇ~………………。さすがに女ともそっちではした事ねーし……」
請島は一宮と話しながら、あの瞬間を思い出していた。
瀬芽谷と目が合った時、請島は呼吸すら忘れてその美しさに見入った。
それにも関わらず、相手は眉ひとつ動かさなかった。驚いて動けなかったわけでもなく、請島を恐れて目を逸らしたわけでもない。まるで初めから視界には、請島という人間など存在していないかの様な素振りだった。
(……あの無表情な顏が、女みたいに喘いで俺を見上げる……?)
胸の小さな女性と化した瀬芽谷が、自分の下で媚態を晒す様を請島は想像した。
自分の腕の中で赤く染まっていく白い肌。汗で額に貼りつく乱れた黒い髪。濡れた唇の隙間から覗く白い歯と赤い舌。気の強そうな眼差しが自分を捉え、ズレた眼鏡の下で徐々に潤み涙を流す。
「エッロ!! あの青白い肌が赤くなってくとことか、絶対エロい! 俺、あいつとなら余裕でヤれそうな気がしてきた!」
頭の中の瀬芽谷の姿に、請島は思わず叫んでいた。
あっさりと意見を翻した請島を見て、一宮は思わず吹き出す。
「さすがヤリチン。なんでもアリかよ。あー、調子乗ってる請島が陰キャ眼鏡にフラれるとこ早く見てぇな~!」
「はぁ!? 本当はそれが目的かよ! あんな陰キャ、この俺がちょっと優しくしてやったら簡単に落ちるに決まってんだろ。すぐ証拠の動画、送ってやるから待ってろよ」
「男同士の動画なんていらねーっての」
ケラケラと楽し気に笑っている一宮に、請島は自信に満ちた笑顔を見せた。
◆
日曜の午後。インターホンの室内モニターに映し出された映像を見て、瀬芽谷龍二は眉を顰めた。
先日、授業中に一度だけ目を合わせてしまった隣席の生徒が、モニター画面の中で落ち着きなく視線を彷徨わせている。
居留守を使ってしまいたいと瀬芽谷は思った。
だが、親しくもない生徒の住所を調べて自宅にまで押し掛けて来た理由が分からないままになってしまうのは、きっと気味が悪いだろう。
瀬芽谷は渋々といった様子で通話ボタンを押した。
『……はい』
「えっと、瀬芽谷……瀬芽谷龍二君と同じクラスの請島です。龍二君に用があって来たんですけど。龍二君、居ますか?」
『…………僕が龍二だけど。何の用ですか?』
モニター画面の中の請島は僅かに緊張していた様子だったが、玄関子機から聞こえる声が瀬芽谷本人だと分かり安心したのか、表情を崩して見せた。
「なんだ本人か。親かと思った! あのさぁ、瀬芽谷。実は頼みがあって、ちょっと助けて欲しいんだ」
『嫌です』
僅かに眉を下げた半笑いの笑顔をカメラに向けている請島に、瀬芽谷は迷う事なく即座に一言だけ返した。
「……は? 無慈悲かよ。話だけでも聞けって」
予想外な返事に請島の表情は一瞬で不機嫌なものへと変わり、モニターの向こう側で自分を見ているであろう瀬芽谷を睨み上げた。弱そうな人間は一睨みしてやれば、黙って自分に従うものなのだと請島は思い込んでいた。
『嫌です。帰って下さい』
瀬芽谷によってブツリと音を立てて通話が切られた。
「えっ。マ、マジか……」
玄関子機の呼び出しボタンを何度も押すが、反応が無い。
「瀬芽谷~っ。少しだけでいいんだって。すぐ済むから、ちょっとだけ中に入れてくれ! なぁ~、頼むよ瀬芽谷ぁ~っ!」
請島はドンドンと音を立てて強くドアを叩いた。ドアを叩きながら媚びる様な声を出していた請島だったが、一向に返ってこない反応に徐々にその声色は苛立ちを孕んだものへと変わっていく。
「……オイッ! 開けろつってんだろ! 開けろオラァ!!」
マンションの5階フロアに響き渡る声量で叫びながら、請島はドアを蹴り始めた。
背中に大きく刺繍が入った黒のスカジャン。ダメージ加工がされたデニムパンツに、履きつぶされた赤のスニーカー。黒いボディバッグを前掛けにして身に着けている金髪のガラの悪い少年が、休日の昼間から暴れる様はさぞや目立ち、同じマンションの住人達は何事かと様子を窺っている事だろう。
瀬芽谷は慌てて玄関へと向かった。
「や、やめてよっ! 近所迷惑だろ……っ!」
微かにドアが開き、隙間から瀬芽谷が顔を出した。
ドアチェーンが掛けられていないのを目視した請島は、すかさずドアの隙間に靴の先と腕を捻じ込む。そのまま中へと体を割り込ませ、ドアをこじ開けた。
「お邪魔しまーす!」
「えっ! ちょ、ちょっと請島君、勝手に入らないで!」
請島はスニーカーを脱ぎ棄てると、瀬芽谷の体を押し退けてズカズカと室内に上がり込む。
「請島君ってば!」
瀬芽谷が慌てて後を追うが、遠慮なく奥へと進む請島の足は止まらない。
「もしかして家族全員、留守か? 都合いいな。なあ、瀬芽谷の部屋ってどこ? ここ?」
「あっ! 待――……っ!」
「ヒッ……! なんだこの部屋……」
無人のリビングを突っ切り、目についたドアを勢いよく開いた請島の足が止まった。請島の喉奥から、短い悲鳴が飛び出る。
ドアの向こう側は、六畳の洋室だった。
シングルベッドとデスクトップパソコンが置かれた机。本棚とワイヤーラック。そしてクローゼットの扉と、ベランダに出る為の掃き出し窓が見える。
ここが瀬芽谷の部屋なのは間違いないだろう。
しかし請島が瀬芽谷の外見から勝手に想像していたような、親が家具を揃えていそうな子ども部屋や、勉強に徹していそうな本だらけの息苦しい部屋といった雰囲気は一切無い。
肌の露出が多い少女の描かれたポスターが、四方の壁だけでなく天井にまでびっしりと貼られている。本棚や机にはカラフルな髪色をした少女達のフィギュアが、所狭しと飾られている。
「うわぁ…………。真面目系の陰キャだと思ってたけど、まさかのオタクか。なんか……すげーな……」
請島もコンビニで売られているような少年向けの漫画雑誌を毎週買って読んでいるし、たまにだがアニメだって見る。友人の一宮の部屋には漫画が多いし、プライズのフィギュアやぬいぐるみが幾つか転がってはいたが、ここまで絵に描いたようなオタク部屋では無い。こういった類の人間は請島の周りにはいなかった。
「ねえ、何、いきなり。話ならリビングで聞くから部屋から出てよ、請島君」
「…………」
請島が物珍しさに入り口で突っ立ったまま部屋中を眺めていると、後ろから瀬芽谷に腕を掴まれた。
「ねぇってば!」
「え? あ、ああ…………」
振り返ると、上下スウェット姿という完全な休日引き籠り満喫スタイルの瀬芽谷がいた。
眼鏡をかけておらず、前髪は片側に寄せてヘアクリップでまとめられている。瀬芽谷の黒い瞳をレンズ越しではなく、直接見る事が出来た。
(うわっ。こいつの顔……やっぱり、すっげー好み……!)
10センチほど下にある瀬芽谷の瞳は明らかに怒りの色に染まり、請島を睨み上げていた。
請島はそんな相手の怒りを気にするでもなく、体を瀬芽谷の正面へと向けると、その両肩をがっしりと掴んで顔を覗き込んだ。
「瀬芽谷っ!」
「な、何…………」
突然の事に驚いた瀬芽谷は、元から大きな目を更に大きく見開いて肩を強張らせた。
「……瀬芽谷、俺と付き合ってくれ!」
「え……っ?」
瀬芽谷の長いまつ毛が、パチパチと繰り返される瞬きにあわせて大きく上下に揺れる。
「…………」
「ど、どこに……?」
「いや、そういうの要らねーから。俺の彼女……じゃねーな、彼氏になってくれって意味だよ。分かるだろ普通」
請島は真剣な表情で瀬芽谷を見つめ続けていたが、僅かに肩の力を抜いた瀬芽谷は眉を寄せて請島の顔を見上げている。
「……請島君、ゲイだったの?」
「は!? んな訳ねーだろ!」
請島は反射的に苛立った口調で否定を口にしていた。請島が自覚している性的指向は異性だけだったからだ。
しかし、すぐに自分が今ここに来ている目的を思い出し、慌てて取り繕う。
「……あっ。いや、違うけど。その……瀬芽谷ならイケそうっていうか。瀬芽谷の顔、綺麗だなって思ったというか……」
男の顔に対して女性と同様の美しさを感じたのは瀬芽谷が初めてだった。
請島のその言葉に嘘はない。だが相手はそう思わなかったのか、それとも単に不快だったのか、瀬芽谷の眉間に刻まれた皺の深さが増した。
「どうせ何かの罰ゲームとか遊びで告白しに来たとかでしょ?」
「えっ! なんで分か……、あ! い……いや、そういうんじゃなくて! この前、授業中に目が合っただろ? あの時に……えーと……一目惚れ……。そうっ! 一目惚れしたんだよ!」
何人もの女性と関係をもってはすぐに別れる。何股もかけてはセフレを作る。底無しの女好きだという噂を、請島本人が肯定している姿を瀬芽谷は見た事がある。
しかし、請島が男にまで手を出しているという噂は一度も聞いた事が無い。
そんな請島の言葉をそのまま鵜呑みにするはずもなく、言葉に詰まり始めた請島から顔を逸らした瀬芽谷は小さく溜め息を吐いた。
「いきなり来て何かと思ったら、くだらない。請島君、そんなに暇なの? 僕、忙しいんだ。もう帰ってくれる?」
改めて迷惑そうに請島を睨み上げた瀬芽谷の表情に、請島はまるで上目遣いをしている様だと呑気な事を考えた。
(可愛い……。チューしたい…………)
パァンッと乾いた音がその場に響く。
「痛ったぁ!!」
思ったままに瀬芽谷へと顔を近付けた請島の動きは、二人の唇が触れ合う直前で瀬芽谷の平手によって止められた。
電気が走ったようにピリピリと痛む頬の肉に、じわりと熱が生まれる。請島の腕が瀬芽谷の肩から離れ、痛みの広がる自らの頬へと移動した。
一瞬の躊躇もなく力いっぱいに請島の頬を引っ叩いた瀬芽谷の顔からは、表情がなくなってしまっていた。冷ややかな瞳が請島の顔を映し出しているだけだ。
「瀬芽谷……。俺、男相手とか初めてだからどう言えばいいのか分かんねーけど……今も瀬芽谷の事、めちゃくちゃ可愛いと思った。マジで瀬芽谷の顔、好き」
恐らく本気で怒っているであろう瀬芽谷に、請島は頬を押さえたまま緩い笑みを浮かべた。請島はそのまま瀬芽谷から身を離すと、部屋の中へと足を踏み入れる。
「あ、ちょっと……っ! 入らないでってば!」
引き留めようと伸ばされた瀬芽谷の腕をすり抜けた請島は、ベッドに腰を下ろすと部屋を再度ぐるりと見渡した。
部屋中に貼られたどのポスターにも、青い髪の少女がいる。ベッドの端に寄せられた抱き枕カバーにも、同じ少女のイラストがプリントされていた。
(見た事ないアニメっぽいけど、主人公か? この青髪の女だけフィギュアも多いし)
青い髪の少女から視線を外した請島は、向かいで立ち尽くしている瀬芽谷を見上げた。
「瀬芽谷って彼女いないだろ」
瀬芽谷と目が合ったのは、授業中のほんの数秒の出来事だった。お互いに話題として声を掛ける様な関係でもなければ、自分を無視したなどと喧嘩を売る様な存在でもない。
目が合った事など、数分後には忘れているはずだった。
しかし請島はその瞬間を忘れられず、何度も隣席に視線を送った。気付けば瀬芽谷を探し、目で追っていた。一宮との賭けを名分に、請島は瀬芽谷という男を観察した。
瀬芽谷龍二は、常に独りだった――――。
同じクラス内に行動を共にする生徒はおらず、他のクラスにも友人がいる様子は無い。
朝は一人で登校し、自分の席に静かに着席する。休憩時間は小説らしき本を読み耽り、昼は学食で独り昼食を取る。部活には所属していないらしく、放課後は帰りのホームルームが終わればすぐに教室を出ていく。
同級生達から避けられたりイジメの標的にされているという訳ではなさそうで、請島には瀬芽谷が自ら他の生徒達と関わるのを極力避けている様に見えた。
少なくとも同じ学校内には、恋人どころか友人すら存在しないという確証が請島にはあった。
自分の問いかけに答えない瀬芽谷を気にするでもなく、請島は言葉を続けた。
「なぁ、瀬芽谷。試しに一度、俺と付き合ってみようぜ。何事もやってみないと分からないんだし。もし合わないなら、すぐ別れれば良いだけだし……、な?」
自分を見上げながら薄っすらとした笑みを浮かべる請島に、瀬芽谷はどう答えるべきなのか考えあぐねている様だ。
請島は不良というレッテルを貼られてはいるが、校内で無暗矢鱈に生徒達を威嚇しているわけではない。普段から笑顔でいる事が多く、元々の人懐っこさもあり話しかけやすい雰囲気を絶やさない。マイナスイメージであるはずの女癖の悪さも、請島と関係を持てた女達の自尊心を満たし周囲への優越感を感じさせるのか、女の方から擦り寄ってくる事が大半だった。
要するに、自ら動かずともモテる。
そんな請島が、今まで微塵も興味が無かった同性を口説く為の手段など、考えたところで思いつく筈も無かった。
結果、思い至ったのが、当たって砕ける前に強引に落としてしまおうという強行手段であった。
「――――という訳で」
「うわっ!」
最初から相手の答えがどうであれ、そうする気だった請島は瀬芽谷の腕を思い切り自分へと引き寄せた。
◆
体勢を崩した瀬芽谷の体が自分の腕の中へとぶつかるようにして転がり込んでくる。その勢いのまま、請島は瀬芽谷をベッドへと縫い付ける様にして体を入れ替えた。
「とりあえずヤってみようぜ! 俺、男とはヤった事ないけど多分絶対上手いはずだから安心していいぜ!」
瀬芽谷に覆いかぶさった請島は、身に着けていたボディバッグからコンビニの購入シールが貼られたコンドームの箱を取り出して見せた。
その自信に満ちた笑顔を見た瀬芽谷は、酷い頭痛に襲われたかの様に顔を歪めた。
おそらくこの時の瀬芽谷の脳は実際に、目の前にいる馬鹿に対する危険信号を痛みとして伝達していた事だろう。
「ちょ、ちょっと待って!」
火事場の馬鹿力とでも言うべきか。請島自身、意外に感じる程にあっさりと体を押し退けられてしまった。
ベッドから下りる瀬芽谷を捕えようと伸ばされた請島の腕を、するりと避けた瀬芽谷はベッドの向かい側の机に背をつけた。
「あのね、真面目に断るよ。僕、請島君とは付き合えない!」
「なんで? 男同士だから? 最近は男同士とか逆に普通だろ、多分」
「そ、そうじゃなくて……」
ベッドから下りて迫ってくる気配は無いが、瀬芽谷は自分を真っ直ぐ見上げている請島から視線を外せない。
どうすれば目の前の、尊大な態度で居座る男を帰す事が出来るのかを、瀬芽谷は考えた。
瀬芽谷は暫し部屋の中に視線を彷徨わせた後、自分の背後にあったそれを手にすると、躊躇いがちに言葉を続けた。
「……ぼ、僕には……、もう、嫁がいるから。そういうのって……、う、浮気になっちゃうから……」
瀬芽谷の発した単語に、請島は思わず目を丸くした。
「は? 何……? 既婚者?」
瀬芽谷の小さな喉仏がゴクリと大きく動く。瀬芽谷は一体のフィギュアを請島の方へと掲げて見せた。
「そう! この子が僕の嫁の、ミラクル☆リズムちゃんです!」
足首まである長さの真っ青なツインテール。不自然な程に大きな乳房。極端に細い腰。フリルでアレンジされたスカートタイプの軍服は、何故か胸と股間部分の布は無く、下着が見えているセンシティブなデザインの服を着ている。
抱き枕にプリントされている青髪の少女だった。
少女のフィギュアを持つ瀬芽谷からは、微塵もふざけている気配は感じられない。
真顔の瀬芽谷が目の前に立っている。
(うわぁ……マジでこういうオタクいるのか。気持ち悪……ッ!!!!)
請島は本気で引いていた。
服の下で一気に鳥肌が立つのを感じる。
「あー……えっと、瀬芽谷。それ、人形っていうか……漫画のキャラ……だよな? 嫁って言っても、その女、存在しないじゃねーか」
瀬芽谷が手にしているフィギュアを請島は指さした。フィギュアへと向けた人差し指が、微かに震えている。
「ここに居るだろ」
「……いや、えっと……。だから、その女は漫画だろ? アイドルとかコスプレイヤーみたいな、芸能人ですらないんだろ?」
「僕とリズムちゃんの間には次元とか存在しないから。それにアニメ化はしてるけどコミカライズはされてないから漫画じゃないよ。原作はラノベ。間違えないでくれるかな?」
(あれ? これって話噛みあってるのか? 言ってる意味が分からない。らのべって何だよ。キモいオタク話を早口でされたってのはなんとなく分かるけど……、なんか分からねーけど怖ぇ――ッ!)
請島はまるで凍えそうな寒さに耐えているかの様に、無意識に体を抱え込む様にして両腕を擦っていた。
「な……なぁ瀬芽谷、よく考えろ。そのセックス出来ない人形と、セックスしてやれる俺なら……、どう考えても俺の方がいいだろ?」
真顔だった瀬芽谷の目元が僅かに細められ、請島に向けられていた視線に冷ややかさが加わった。器用に片方の眉だけを上げている。
「請島君とリズムちゃんは、まず比べるものじゃないよね?」
「え?」
「可愛くて癒される、優しくて尊いリズムちゃんと、……えーと……」
瀬芽谷の視線が空中を彷徨いかけたが、すぐに戻された視線は請島を見下す様な目付きへと変わった。
「……無の請島君」
「無《む》!?」
「僕のリズムちゃんと比べてもらえるだなんて考えは、烏滸《おこ》がましいんじゃないかな?」
「はぁ!? 俺だって稀に年上の女からは可愛いって言われるぞ! 俺とのセックスはたぶん癒しってやつだし、割と優しい方だし! えっと…………トウトイって何だ!」
「尊いは請島君から最も真逆の……」
「ああっ、もういい! よく分かんねー言葉を喋るんじゃねぇ! とにかく俺と付き合えって! 男なんだから尻に1回や2回くらい、ちんこ挿れられても構わないだろ! そんですぐ別れりゃいいんだよ!」
「あっ!」
ベッドから立ち上がるなり素早く瀬芽谷の手からフィギュアを奪い取った請島は、尻ポケットに煙草と一緒に入れていたジッポライターを取り出し、点火した。
「こいつがどうなってもいいのかキモオタ! 嫁を燃やされたくなかったら脱げ!」
「うわぁああああ!!」
ライターの火をフィギュアの顔部分に近付けて見せると、瀬芽谷は青い顔で叫んだ。
(焦ってる顔も全然不細工にならねぇって、少しムカつくな……)
請島は呑気にそんな事を思った。
「それ、プレミア付いて……じゃなくてリズムちゃん! やめろ! やめてください! 何でもするから、その子には手を出さないで!」
「なら脱げ。こっちはとりあえず1回セックス出来りゃいいんだよ! 親が帰って来る前にさっさと済ませるぞ」
「なんなんだよ、それ! 最初から付き合う気なんて無いじゃないか!」
「うるせーな! ヤッてから付き合えばいいだろ! 早く脱げって!」
「うぅ……なんで僕がこんな目に……」
視線をフィギュアに向けたまま小さく呻いた瀬芽谷は、脅されるままスウェットの裾に手を掛けた。
「……あっ」
小さな声と共に、瀬芽谷の視線がフィギュアからライターへと移動した。
「あ?」
つられて請島も手元に視線を落とすと、ライターの炎が徐々に小さくなり、消えるのが見えた。
「は……? え? あれ? なんで消えた?」
再点火しようと着火操作部を何度も押すが、カチカチと音がするだけで火が着く気配はない。
(そういえば、あれからオイルの補充しないまま使ってたんだった)
ライターに気を取られていた請島の耳に、トンッと、フローリングの床を何かが跳ねる小さな音が聞こえた。
「――――――――……え?」
音がした方を向いたはずなのに請島の顔は真上の天井を向いていた。
受け身も取れないまま床に倒れ、背中に鈍い痛みを感じる。
請島の耳に届いた小さな物音は、瀬芽谷がこちらに向かって踏み込む際に床を蹴った音だった。
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