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フライパンを熱している間にバナナの皮を剥いて切る。バターを溶かしたフライパンに、卵液にひたしておいた食パンを放り込むと甘い香りがリビングを満たしていく。ソテーしたバナナを添えて、出来立てのフレンチトーストの上にバニラアイスを乗せた。
「フレンチトーストって本当に家で作れるんだ!?」
目の前に運ばれて来たフレンチトーストを見た瀬芽谷の瞳が、驚きで大きく開かれる。何を作っても驚いてくれる瀬芽谷に請島は思わず「可愛い」と言いかけたが、照れて表情を消されてはたまらないので口に出すのは思い止まった。
「瀬芽谷ってマジで料理に興味無いんだな。鍋並みに簡単だから、こんなのでいいならいつでも作ってやるよ」
数日前、瀬芽谷の食の好みを知る為に好きな食べ物を聞いてみたら、洋菓子などの甘い物が好きだと答えが返ってきた。請島は夕食のメニューを聞いたつもりだったのだが、単に好みを聞かれたのだと思ったらしい。
あいにくと請島には洋菓子を作った経験など無かったので、簡単に作れるフレンチトーストの見た目をせめてもと少しだけ凝って作る事にした。
向かいのソファに腰を下ろし、瀬芽谷がトーストを口に運ぶ気配をさりげなく伺う。たまに自分が食べる為に作るフレンチトーストは、砂糖を使わず間にチーズやハムを挟んだ軽食に近い物だったので、瀬芽谷の好みの甘さになっているか不安だった。
「美味しい」
独り言の様に感想を呟くと、瀬芽谷はすぐにまた一口頬張った。請島は安心した様にフォークを持ち上げた。
嫌いな食べ物がほとんど無いらしい瀬芽谷は、何を作って出しても驚きと尊敬の言葉を素直に口にしてくれるが、好きなメニューや特に好みの味をしている物は一口が大きい。
その事に気付いてからの請島は、瀬芽谷が食事中に見せる仕草の違いを眺める事を楽しみとしている。
フォークでアイスをつつきながら、目の前の瀬芽谷をチラリと見遣る。子どもの様にきらきらと瞳を輝かせながら食べている事を、本人は気付いているのだろうか。
口の端についたアイスをぺろりと舐めとりながら、次の一口を運ぶべくフォークを動かす瀬芽谷を、請島は口元を緩ませながら眺めた。
請島が瀬芽谷の部屋を訪れる頻度は変わらないが、ベッドに転がって瀬芽谷の背中を眺めているよりもキッチンに立っている日が増えた。それと同じように瀬芽谷もまた、”しない日”でも眼鏡を外して過ごす日が増えていた。
「なー、瀬芽谷って、あの女のどこが好き? おっぱい?」
「あの女……ってリズムちゃん? 顔も性格も。全部かなぁ……」
突然の質問に瀬芽谷は暫くペンを止め、考えてから答えた。
請島は時々一緒にアニメを観るが、内容をきちんと見ているわけではなかったので、当然リズムがどんな性格なのかは分からなかった。
(ああいう系のアニメってみんな同じ顔に見えるんだよな。髪の毛の色が違うくらいしか分からねぇ)
「あっ……! 青い髪のキャラが好きなのか?」
「髪? うーん……綺麗だと思うけど……」
ベッドの上の請島に背を向けてペンを動かしながら答える瀬芽谷の視線は、液タブに向けられたままだ。
「じゃあ俺が髪の毛を青に染めたら、少しは俺の事も好きになってくれたりするか?」
その言葉に瀬芽谷は驚いた様に背後の請島を振り返った。
驚きや困惑、嫌悪が混ざった様な不思議な表情をしていると請島は思った。僅かに眉が寄っているので、嫌悪なのかも知れない。
「……何それ。僕の好みに外見を変えてくれるの?」
「瀬芽谷より背も高いし、おっぱいも無いし、ちんこも外せないままだけど。瀬芽谷が俺と付き合う気になるなら考える」
まっすぐ見つめてくる請島の視線から逃れる様に、瀬芽谷は再び背を向けた。
「…………請島君にはもう沢山いるじゃないか、彼女」
ポツリと吐かれたその声には、呆れが混ざっている気がした。
「瀬芽谷ん所に来てからは誰ともヤってねーし、とっくに自然消滅してるだろ」
彼女というのは自然と消え去ってしまうものでは無い、と瀬芽谷は思ったが請島にとってはそうなのだろう。
黙ったままペンを動かし、請島の言葉を待った。
「あっ、瀬芽谷ってもしかしてそういうの気になるのか! なら、今から全員に別れるってメッセージする」
請島はスマホを取り出すと、アプリ画面にメッセージを打ち込み始めた。
振り向いた瀬芽谷の表情が曇っている事にも気付かずに。
「………全員? ほんとに一人だけじゃなかったんだ」
「んー? …………えーと、多分……彼女なら今は三人? ……いや、減らしたから二人だっけ……? あれ、美樹ってセフレだっけ彼女だったっけ……」
スマホ画面を見たままで答える請島の姿を暫く眺めていたが、瀬芽谷は呆れた様に小さく息を吐くと液タブに向き直った。
それから請島が帰るまでの間、瀬芽谷の背後では通知音が鳴り響いていた。
◆
授業中、瀬芽谷は隣の空席を見た。2限目になっても、請島は登校していない。
昨日は夕食時よりも少し早めに瀬芽谷の家を出て行ったのだが、帰ると言い出す前にスマホ画面を面倒くさそうな顔で眺めていたので、誰かと会っているのかも知れない。見ず知らずの女性に対して、嫉妬を感じている自分に瀬芽谷はひっそりと苦笑した。
しかし昼前になって漸く登校して来た請島の姿に、ことごとく自分の予想を飛び超えていく男だなと感心する事になる。
「請島ぁ……何考えてんだ、お前は……」
授業が行われている最中の教室に堂々と入って来た請島に、数学教師はわざとらしく大きな溜め息をつくと、目の前を通り過ぎようとする請島の後頭部をペチッと軽く叩いた。
「いてっ! 起きたらこうなってたんですよ。病気かもしれないんで優しくしてください」
「うるさい。放課後、生徒指導室だからな!」
「はーい、行けたら行きます」
「行けなくても行くんだよ!」
教師に怒鳴られながら教室を横切る請島の髪は、真っ青に染まっている。
ほとんどの生徒が黒髪の教室内は、黒い学ランと紺色のセーラー服という暗い色で埋め尽くされている。そんな中で請島のそのカラフルな髪色は、あまりにも目立ち過ぎていた。
教室中の視線が請島に集まる中、瀬芽谷はひとり頭を抱えている。
「タケル、イメチェン? 派手すぎて笑える」
自分の席へと向かう請島を一宮が茶化すと、請島は振り返らずに中指を立てて見せた。
「俺が可愛くなったからって僻むんじゃねーよ」
「かわいくねーよ!」
一宮と請島のやりとりに教室の中に小さな笑いが起こったが、請島が隣の席を見ると、瀬芽谷はまるで苦虫でも噛み潰した様な表情を浮かべている。請島は瀬芽谷に満面の笑みを見せた。
瀬芽谷がゆるみそうになる口元を、口内で歯を食いしばり耐えているなどとは思い至らなかった。
4限目の授業が終わるなり、一人の女生徒が教室に飛び込んできた。
「あっ! タケ君いた! ねえ、昨日のメッセージなんなの!?」
「うわ……。やべぇ、結子だ……」
請島の方へと大股歩きで歩いていく女生徒の顔は、遠目からでも分かる程に怒りで染まっていた。
請島からのメッセージを受信したという事は、彼女かセフレの内の一人なのだろう。顔を逸らして気配を消そうとしているようだが、無駄な足掻きでしかない。
「ねぇっ、ちゃんと説明して!」
「いやぁ……説明っつーか、送った内容そのままだし……」
結子と呼ばれた生徒に襟首を掴み上げられた請島は、そのまま大人しく席を立つと彼女と一緒にその場を離れようとしたが、結子はその場で怒りをぶちまけ始めた。
「あんなので納得できる訳ないでしょ! あたし別れないからねっ!」
「結子。外で話そうぜ。な?」
「逃げる気!? 誤魔化さないでよ!」
突然始まった痴話喧嘩に、教室中の生徒の視線が請島と結子へと集まっていく。
そんな中、瀬芽谷はそっとその場を立ち去った。
授業開始のチャイムが鳴る直前まで、瀬芽谷は学食で過ごした。
教室へと戻ると請島の左頬には小さなミミズ腫れが出来ていた。結子に平手打ちでもされた際に、爪で引っ掻かれてしまったのだろう。
6限目が始まる直前、請島はスクールバッグを持って教室を出て行ってしまった。早退したらしい。
暫くは女性達の対応で忙しそうなので、家には来ないかも知れないなと瀬芽谷は思った。
「瀬芽谷。おかえりー」
帰宅した瀬芽谷は玄関の前に座り込んでいる制服姿の請島を見るなり、無意識に小さく息を吐いていた。不安が杞憂に終わった安堵の息だった。
「…………彼女達の相手はもういいの?」
腫れが引いてうっすらとかすり傷だけが残った請島の左頬にチラリと視線をやった後、瀬芽谷が玄関のドアを開けながら尋ねると、背後からは呑気な声が返って来た。
「ああ、大丈夫だいじょうぶ。騒いでるの結子くらいだし」
「本当にみんなに別れるって送ってたんだね……って、ちょっと請島君」
「外で待ってんの寒かったんだよ。早く暖房! リモコンー……あ、あった!」
請島は瀬芽谷を押し退けてリビングに入ると、エアコンをつけてソファに腰を下ろした。
「瀬芽谷、コーヒー淹れて。凍えそう」
「……ハァ。僕、先に着替えてくる」
「えーっ!」
「インスタントコーヒーくらい自分で作ればいいでしょ」
「瀬芽谷が作ってくれたやつが飲みたいんだって」
わざとらしく両手を擦り合わせながらソファで身を縮こまらせている請島を一瞥した瀬芽谷は、自室へと消えてしまった。
請島はキッチンに入ると電機ケトルに水を入れてセットした。マグカップを2つ準備してソファへ戻り待っていると、部屋着に着替え終わった瀬芽谷が自室から出て来たタイミングで、ケトルが湯の沸き終わった音を出した。
ソファ越しに何かを期待する視線を向けられた瀬芽谷は、キッチンへと向かうと二人分のコーヒーを作った。
湯気の立つマグカップを瀬芽谷から受け取った請島は、熱いコーヒーをひとくち飲んでから、わざとらしい程に体を弛緩させた。
一時間ほど外で瀬芽谷の帰りを待っていた体は思いのほか冷え切っており、マグカップを包み込んでいる両手の平は急速に温められてジンジンと痛んだ。請島は二口目を飲み込み、カップを手の中で動かしながら深く息をついた。
「は~……。瀬芽谷の作るコーヒー、マジ美味い」
「そう。じゃあ、僕は部屋にいるから飲んだら帰ってね」
インスタントコーヒーなど誰が作ったところで味は同じだろうし、きっと誰が作ったコーヒーにも請島は同じ言葉を吐いて来たのだろう。しかし自分が淹れたコーヒーを飲む請島の気の抜け切った顔を眺めていると、お世辞だと分かっていても満足してしまう。
瀬芽谷は緩む頬を隠す為、自分のマグカップを手に自室へと向かおうとした。
「なー、部屋あったまってきたし、しようぜ」
「何を?」
「えっちな事」
にんまりと目を細めた請島に、瀬芽谷は眉を寄せて目を細め返した。
「今日はする日じゃない」
「明日まで待てない。明日の分、今して欲しい」
きっと明日になると、次回分を要求するのだろう。一度許してしまうとズルズルと甘やかしてしまいそうなので、こういう頼みは強く拒否する事にしていた。
「ダメ。原稿のペン入れが予定より遅れてるからスケジュール崩したくない」
「えー……。じゃあDVD持ってきて」
すんなりと引き下がった請島を意外に思いながら、瀬芽谷は何のDVDかと首を傾げた。
自室には様々なアニメのDVDやブルーレイも置いてあったが、漫画を読む為に本棚やクローゼットの中を漁っていた請島がそれらに興味を示している姿を見た記憶など無い。
「何のDVD?」
「マジックリズム」
「ミラクル☆リズム」
間髪入れず瀬芽谷が訂正する。
「そうそう、それそれ」
「……請島君いつも、つまらなさそうにしてたじゃないか。本当に観るの……?」
一体なにを企んでいるのかといった目を向けられた請島は苦笑した。
「観るって! 瀬芽谷の好みを勉強しようと思ったんだよ」
「好み?」
「好きな女の好み」
「どうして?」
「瀬芽谷とつきあいたいから」
ソファでカップを片手に、請島はキョトンとした表情で瀬芽谷を見ていた。
「あっ! てかさ……この髪、どう? 瀬芽谷的に好感度上がった? 俺、自分ではあんまり青は似合ってない気がするんだけど……」
青くなった毛先を指先で摘みながら、請島は瀬芽谷の反応を窺っている。
瀬芽谷はドアの前で立ち止まったまま、少し考えた。
「…………前にしてた少し暗めの茶色の方が似合ってた」
「暗めの茶色……? 夏休み前ん時のかな。じゃあ、今の色が抜けたらブラウン系にしよっかな」
本当に自分の言う通りに外見を変えようというのだろうかと、瀬芽谷はいささか訝しんだ。
「……ねえ、請島くんって……何で僕にこだわるの?」
「え?」
「僕とは話した事も無かったし、趣味だってきっと合わないから一緒にいても楽しくないでしょ?」
「楽しいからここに居るんだし、今は話してるだろ?」
首を傾げる請島の表情から嘘は感じられず、瀬芽谷は動揺した。
確かに、請島が家に来てからは、それなりに会話はしている。しかし、請島から投げかけられる会話に、自分は面白味のある返答をした覚えは無い。
「だって、えっと……モデルをしてもらってる時以外は、僕の後ろで漫画読んでるだけじゃないか。そういうの、楽しいの?」
「おう。一緒に居てラクだし、漫画描いてる瀬芽谷の後頭部なら2時間くらい眺めてられるから、全然余裕」
「…………」
瀬芽谷は笑顔でそう言う請島から視線を逸らすと、暫く視線を足元に向けていた。
しかし意を決した様にソファの請島を見据えると、恐る恐るといった様子で声を出した。
「…………もし僕が、もう請島君をモデルにしたくないって言ったらどうする?」
「え……。ん…………。うーん……。瀬芽谷がもうしたくないなら、まぁ、うーん……。我慢す……うーん……。これから俺、一生思い出しオナニーしか出来ないって事か……。それはさすがにキツイ……かも」
請島は困った様に笑っている。
「でも……いつかは終わりが来るよ。高校卒業したら僕、このマンション出ていくかもだし。請島君だって遠くに引っ越すかもしれない。いつまでもこんな関係、続かないよ……」
瀬芽谷の言う通りだった。
「うん。だから、……俺はマジで瀬芽谷と付き合いたいんだけど……一生」
瀬芽谷は大きな瞳を更に大きく見開いて、請島を凝視している。
「僕……だって、こんなだよ。最初に請島君が言ってた様に、気持ち悪いオタクだよ? 僕なんかのどこを好きになれたの」
「顔!!!!!!」
請島は即答した。
瀬芽谷が何か思うよりも早く、立て続けに言葉を並べていく。
「あと、テクが凄い。瀬芽谷にされるの気持ち良すぎる。んで何気に優しいとこ。実は強いとこもカッコイイ! 俺が作った飯を全部食ってくれるとこも好き。笑うと可愛いし。怒ると目を細めるとこも好き。あとは……エロい漫画を真剣に描いてるのも意味わかんなくて好き。部屋中のポスターは今もキモイけど、背伸びして天井に貼ってる姿を想像すると可愛すぎる。学校できっちり学ランのボタン留めてるのに、帰るとすぐにニートみたいな部屋着に着替えるのもいい。そういや私服も好きだな。それに……」
請島は思いつく限りの言葉を吐き続けた。
「一緒に居るだけでいいなーって思えた。多分マジで瀬芽谷の事好きになってんだけど、人をこんなに好きになったのって初めてだからどう言っていいのか分かんねーし、どうやったら瀬芽谷が俺の事好きになってくれんのかも分かんねー。だから……せめてリズムの代わりになりたいって思ったんだけど……」
後頭部をガシガシと掻きながら、大きく息を吐くと瀬芽谷の顔を見つめた。
「俺の事、好きになって貰える様に頑張るから。俺と付き合って欲しい」
「………………」
その場で俯き、黙り込んでしまった瀬芽谷に、請島は自らの発言をすぐさま後悔し始めていた。
(うわー! しまった! なんで俺、好きになって欲しいとか言ったんだ。今まで通りモデルだけしてりゃ、最悪、卒業まではこの部屋に来れるのに……っ)
今からでも冗談でしたとふざけてみようかと思った。
しかし笑顔を作ろうとすると口の端が震えた。上手く口角が上げられない。
後悔に泣き出したい思いが勝ってしまって、笑えと命令を出す脳に逆らいピクピクと顔面中が痙攣するのを感じた。
請島は顔を隠そうと慌てて下を向いたが、重力で涙が溢れそうだった。
「す、少し……、考えさせてくれるかな……」
「……………………………………えっ!?」
突然聞こえた予想外の答えに、驚いて顔を上げると目の前の瀬芽谷の顔は真っ赤に染まっていた。
「フレンチトーストって本当に家で作れるんだ!?」
目の前に運ばれて来たフレンチトーストを見た瀬芽谷の瞳が、驚きで大きく開かれる。何を作っても驚いてくれる瀬芽谷に請島は思わず「可愛い」と言いかけたが、照れて表情を消されてはたまらないので口に出すのは思い止まった。
「瀬芽谷ってマジで料理に興味無いんだな。鍋並みに簡単だから、こんなのでいいならいつでも作ってやるよ」
数日前、瀬芽谷の食の好みを知る為に好きな食べ物を聞いてみたら、洋菓子などの甘い物が好きだと答えが返ってきた。請島は夕食のメニューを聞いたつもりだったのだが、単に好みを聞かれたのだと思ったらしい。
あいにくと請島には洋菓子を作った経験など無かったので、簡単に作れるフレンチトーストの見た目をせめてもと少しだけ凝って作る事にした。
向かいのソファに腰を下ろし、瀬芽谷がトーストを口に運ぶ気配をさりげなく伺う。たまに自分が食べる為に作るフレンチトーストは、砂糖を使わず間にチーズやハムを挟んだ軽食に近い物だったので、瀬芽谷の好みの甘さになっているか不安だった。
「美味しい」
独り言の様に感想を呟くと、瀬芽谷はすぐにまた一口頬張った。請島は安心した様にフォークを持ち上げた。
嫌いな食べ物がほとんど無いらしい瀬芽谷は、何を作って出しても驚きと尊敬の言葉を素直に口にしてくれるが、好きなメニューや特に好みの味をしている物は一口が大きい。
その事に気付いてからの請島は、瀬芽谷が食事中に見せる仕草の違いを眺める事を楽しみとしている。
フォークでアイスをつつきながら、目の前の瀬芽谷をチラリと見遣る。子どもの様にきらきらと瞳を輝かせながら食べている事を、本人は気付いているのだろうか。
口の端についたアイスをぺろりと舐めとりながら、次の一口を運ぶべくフォークを動かす瀬芽谷を、請島は口元を緩ませながら眺めた。
請島が瀬芽谷の部屋を訪れる頻度は変わらないが、ベッドに転がって瀬芽谷の背中を眺めているよりもキッチンに立っている日が増えた。それと同じように瀬芽谷もまた、”しない日”でも眼鏡を外して過ごす日が増えていた。
「なー、瀬芽谷って、あの女のどこが好き? おっぱい?」
「あの女……ってリズムちゃん? 顔も性格も。全部かなぁ……」
突然の質問に瀬芽谷は暫くペンを止め、考えてから答えた。
請島は時々一緒にアニメを観るが、内容をきちんと見ているわけではなかったので、当然リズムがどんな性格なのかは分からなかった。
(ああいう系のアニメってみんな同じ顔に見えるんだよな。髪の毛の色が違うくらいしか分からねぇ)
「あっ……! 青い髪のキャラが好きなのか?」
「髪? うーん……綺麗だと思うけど……」
ベッドの上の請島に背を向けてペンを動かしながら答える瀬芽谷の視線は、液タブに向けられたままだ。
「じゃあ俺が髪の毛を青に染めたら、少しは俺の事も好きになってくれたりするか?」
その言葉に瀬芽谷は驚いた様に背後の請島を振り返った。
驚きや困惑、嫌悪が混ざった様な不思議な表情をしていると請島は思った。僅かに眉が寄っているので、嫌悪なのかも知れない。
「……何それ。僕の好みに外見を変えてくれるの?」
「瀬芽谷より背も高いし、おっぱいも無いし、ちんこも外せないままだけど。瀬芽谷が俺と付き合う気になるなら考える」
まっすぐ見つめてくる請島の視線から逃れる様に、瀬芽谷は再び背を向けた。
「…………請島君にはもう沢山いるじゃないか、彼女」
ポツリと吐かれたその声には、呆れが混ざっている気がした。
「瀬芽谷ん所に来てからは誰ともヤってねーし、とっくに自然消滅してるだろ」
彼女というのは自然と消え去ってしまうものでは無い、と瀬芽谷は思ったが請島にとってはそうなのだろう。
黙ったままペンを動かし、請島の言葉を待った。
「あっ、瀬芽谷ってもしかしてそういうの気になるのか! なら、今から全員に別れるってメッセージする」
請島はスマホを取り出すと、アプリ画面にメッセージを打ち込み始めた。
振り向いた瀬芽谷の表情が曇っている事にも気付かずに。
「………全員? ほんとに一人だけじゃなかったんだ」
「んー? …………えーと、多分……彼女なら今は三人? ……いや、減らしたから二人だっけ……? あれ、美樹ってセフレだっけ彼女だったっけ……」
スマホ画面を見たままで答える請島の姿を暫く眺めていたが、瀬芽谷は呆れた様に小さく息を吐くと液タブに向き直った。
それから請島が帰るまでの間、瀬芽谷の背後では通知音が鳴り響いていた。
◆
授業中、瀬芽谷は隣の空席を見た。2限目になっても、請島は登校していない。
昨日は夕食時よりも少し早めに瀬芽谷の家を出て行ったのだが、帰ると言い出す前にスマホ画面を面倒くさそうな顔で眺めていたので、誰かと会っているのかも知れない。見ず知らずの女性に対して、嫉妬を感じている自分に瀬芽谷はひっそりと苦笑した。
しかし昼前になって漸く登校して来た請島の姿に、ことごとく自分の予想を飛び超えていく男だなと感心する事になる。
「請島ぁ……何考えてんだ、お前は……」
授業が行われている最中の教室に堂々と入って来た請島に、数学教師はわざとらしく大きな溜め息をつくと、目の前を通り過ぎようとする請島の後頭部をペチッと軽く叩いた。
「いてっ! 起きたらこうなってたんですよ。病気かもしれないんで優しくしてください」
「うるさい。放課後、生徒指導室だからな!」
「はーい、行けたら行きます」
「行けなくても行くんだよ!」
教師に怒鳴られながら教室を横切る請島の髪は、真っ青に染まっている。
ほとんどの生徒が黒髪の教室内は、黒い学ランと紺色のセーラー服という暗い色で埋め尽くされている。そんな中で請島のそのカラフルな髪色は、あまりにも目立ち過ぎていた。
教室中の視線が請島に集まる中、瀬芽谷はひとり頭を抱えている。
「タケル、イメチェン? 派手すぎて笑える」
自分の席へと向かう請島を一宮が茶化すと、請島は振り返らずに中指を立てて見せた。
「俺が可愛くなったからって僻むんじゃねーよ」
「かわいくねーよ!」
一宮と請島のやりとりに教室の中に小さな笑いが起こったが、請島が隣の席を見ると、瀬芽谷はまるで苦虫でも噛み潰した様な表情を浮かべている。請島は瀬芽谷に満面の笑みを見せた。
瀬芽谷がゆるみそうになる口元を、口内で歯を食いしばり耐えているなどとは思い至らなかった。
4限目の授業が終わるなり、一人の女生徒が教室に飛び込んできた。
「あっ! タケ君いた! ねえ、昨日のメッセージなんなの!?」
「うわ……。やべぇ、結子だ……」
請島の方へと大股歩きで歩いていく女生徒の顔は、遠目からでも分かる程に怒りで染まっていた。
請島からのメッセージを受信したという事は、彼女かセフレの内の一人なのだろう。顔を逸らして気配を消そうとしているようだが、無駄な足掻きでしかない。
「ねぇっ、ちゃんと説明して!」
「いやぁ……説明っつーか、送った内容そのままだし……」
結子と呼ばれた生徒に襟首を掴み上げられた請島は、そのまま大人しく席を立つと彼女と一緒にその場を離れようとしたが、結子はその場で怒りをぶちまけ始めた。
「あんなので納得できる訳ないでしょ! あたし別れないからねっ!」
「結子。外で話そうぜ。な?」
「逃げる気!? 誤魔化さないでよ!」
突然始まった痴話喧嘩に、教室中の生徒の視線が請島と結子へと集まっていく。
そんな中、瀬芽谷はそっとその場を立ち去った。
授業開始のチャイムが鳴る直前まで、瀬芽谷は学食で過ごした。
教室へと戻ると請島の左頬には小さなミミズ腫れが出来ていた。結子に平手打ちでもされた際に、爪で引っ掻かれてしまったのだろう。
6限目が始まる直前、請島はスクールバッグを持って教室を出て行ってしまった。早退したらしい。
暫くは女性達の対応で忙しそうなので、家には来ないかも知れないなと瀬芽谷は思った。
「瀬芽谷。おかえりー」
帰宅した瀬芽谷は玄関の前に座り込んでいる制服姿の請島を見るなり、無意識に小さく息を吐いていた。不安が杞憂に終わった安堵の息だった。
「…………彼女達の相手はもういいの?」
腫れが引いてうっすらとかすり傷だけが残った請島の左頬にチラリと視線をやった後、瀬芽谷が玄関のドアを開けながら尋ねると、背後からは呑気な声が返って来た。
「ああ、大丈夫だいじょうぶ。騒いでるの結子くらいだし」
「本当にみんなに別れるって送ってたんだね……って、ちょっと請島君」
「外で待ってんの寒かったんだよ。早く暖房! リモコンー……あ、あった!」
請島は瀬芽谷を押し退けてリビングに入ると、エアコンをつけてソファに腰を下ろした。
「瀬芽谷、コーヒー淹れて。凍えそう」
「……ハァ。僕、先に着替えてくる」
「えーっ!」
「インスタントコーヒーくらい自分で作ればいいでしょ」
「瀬芽谷が作ってくれたやつが飲みたいんだって」
わざとらしく両手を擦り合わせながらソファで身を縮こまらせている請島を一瞥した瀬芽谷は、自室へと消えてしまった。
請島はキッチンに入ると電機ケトルに水を入れてセットした。マグカップを2つ準備してソファへ戻り待っていると、部屋着に着替え終わった瀬芽谷が自室から出て来たタイミングで、ケトルが湯の沸き終わった音を出した。
ソファ越しに何かを期待する視線を向けられた瀬芽谷は、キッチンへと向かうと二人分のコーヒーを作った。
湯気の立つマグカップを瀬芽谷から受け取った請島は、熱いコーヒーをひとくち飲んでから、わざとらしい程に体を弛緩させた。
一時間ほど外で瀬芽谷の帰りを待っていた体は思いのほか冷え切っており、マグカップを包み込んでいる両手の平は急速に温められてジンジンと痛んだ。請島は二口目を飲み込み、カップを手の中で動かしながら深く息をついた。
「は~……。瀬芽谷の作るコーヒー、マジ美味い」
「そう。じゃあ、僕は部屋にいるから飲んだら帰ってね」
インスタントコーヒーなど誰が作ったところで味は同じだろうし、きっと誰が作ったコーヒーにも請島は同じ言葉を吐いて来たのだろう。しかし自分が淹れたコーヒーを飲む請島の気の抜け切った顔を眺めていると、お世辞だと分かっていても満足してしまう。
瀬芽谷は緩む頬を隠す為、自分のマグカップを手に自室へと向かおうとした。
「なー、部屋あったまってきたし、しようぜ」
「何を?」
「えっちな事」
にんまりと目を細めた請島に、瀬芽谷は眉を寄せて目を細め返した。
「今日はする日じゃない」
「明日まで待てない。明日の分、今して欲しい」
きっと明日になると、次回分を要求するのだろう。一度許してしまうとズルズルと甘やかしてしまいそうなので、こういう頼みは強く拒否する事にしていた。
「ダメ。原稿のペン入れが予定より遅れてるからスケジュール崩したくない」
「えー……。じゃあDVD持ってきて」
すんなりと引き下がった請島を意外に思いながら、瀬芽谷は何のDVDかと首を傾げた。
自室には様々なアニメのDVDやブルーレイも置いてあったが、漫画を読む為に本棚やクローゼットの中を漁っていた請島がそれらに興味を示している姿を見た記憶など無い。
「何のDVD?」
「マジックリズム」
「ミラクル☆リズム」
間髪入れず瀬芽谷が訂正する。
「そうそう、それそれ」
「……請島君いつも、つまらなさそうにしてたじゃないか。本当に観るの……?」
一体なにを企んでいるのかといった目を向けられた請島は苦笑した。
「観るって! 瀬芽谷の好みを勉強しようと思ったんだよ」
「好み?」
「好きな女の好み」
「どうして?」
「瀬芽谷とつきあいたいから」
ソファでカップを片手に、請島はキョトンとした表情で瀬芽谷を見ていた。
「あっ! てかさ……この髪、どう? 瀬芽谷的に好感度上がった? 俺、自分ではあんまり青は似合ってない気がするんだけど……」
青くなった毛先を指先で摘みながら、請島は瀬芽谷の反応を窺っている。
瀬芽谷はドアの前で立ち止まったまま、少し考えた。
「…………前にしてた少し暗めの茶色の方が似合ってた」
「暗めの茶色……? 夏休み前ん時のかな。じゃあ、今の色が抜けたらブラウン系にしよっかな」
本当に自分の言う通りに外見を変えようというのだろうかと、瀬芽谷はいささか訝しんだ。
「……ねえ、請島くんって……何で僕にこだわるの?」
「え?」
「僕とは話した事も無かったし、趣味だってきっと合わないから一緒にいても楽しくないでしょ?」
「楽しいからここに居るんだし、今は話してるだろ?」
首を傾げる請島の表情から嘘は感じられず、瀬芽谷は動揺した。
確かに、請島が家に来てからは、それなりに会話はしている。しかし、請島から投げかけられる会話に、自分は面白味のある返答をした覚えは無い。
「だって、えっと……モデルをしてもらってる時以外は、僕の後ろで漫画読んでるだけじゃないか。そういうの、楽しいの?」
「おう。一緒に居てラクだし、漫画描いてる瀬芽谷の後頭部なら2時間くらい眺めてられるから、全然余裕」
「…………」
瀬芽谷は笑顔でそう言う請島から視線を逸らすと、暫く視線を足元に向けていた。
しかし意を決した様にソファの請島を見据えると、恐る恐るといった様子で声を出した。
「…………もし僕が、もう請島君をモデルにしたくないって言ったらどうする?」
「え……。ん…………。うーん……。瀬芽谷がもうしたくないなら、まぁ、うーん……。我慢す……うーん……。これから俺、一生思い出しオナニーしか出来ないって事か……。それはさすがにキツイ……かも」
請島は困った様に笑っている。
「でも……いつかは終わりが来るよ。高校卒業したら僕、このマンション出ていくかもだし。請島君だって遠くに引っ越すかもしれない。いつまでもこんな関係、続かないよ……」
瀬芽谷の言う通りだった。
「うん。だから、……俺はマジで瀬芽谷と付き合いたいんだけど……一生」
瀬芽谷は大きな瞳を更に大きく見開いて、請島を凝視している。
「僕……だって、こんなだよ。最初に請島君が言ってた様に、気持ち悪いオタクだよ? 僕なんかのどこを好きになれたの」
「顔!!!!!!」
請島は即答した。
瀬芽谷が何か思うよりも早く、立て続けに言葉を並べていく。
「あと、テクが凄い。瀬芽谷にされるの気持ち良すぎる。んで何気に優しいとこ。実は強いとこもカッコイイ! 俺が作った飯を全部食ってくれるとこも好き。笑うと可愛いし。怒ると目を細めるとこも好き。あとは……エロい漫画を真剣に描いてるのも意味わかんなくて好き。部屋中のポスターは今もキモイけど、背伸びして天井に貼ってる姿を想像すると可愛すぎる。学校できっちり学ランのボタン留めてるのに、帰るとすぐにニートみたいな部屋着に着替えるのもいい。そういや私服も好きだな。それに……」
請島は思いつく限りの言葉を吐き続けた。
「一緒に居るだけでいいなーって思えた。多分マジで瀬芽谷の事好きになってんだけど、人をこんなに好きになったのって初めてだからどう言っていいのか分かんねーし、どうやったら瀬芽谷が俺の事好きになってくれんのかも分かんねー。だから……せめてリズムの代わりになりたいって思ったんだけど……」
後頭部をガシガシと掻きながら、大きく息を吐くと瀬芽谷の顔を見つめた。
「俺の事、好きになって貰える様に頑張るから。俺と付き合って欲しい」
「………………」
その場で俯き、黙り込んでしまった瀬芽谷に、請島は自らの発言をすぐさま後悔し始めていた。
(うわー! しまった! なんで俺、好きになって欲しいとか言ったんだ。今まで通りモデルだけしてりゃ、最悪、卒業まではこの部屋に来れるのに……っ)
今からでも冗談でしたとふざけてみようかと思った。
しかし笑顔を作ろうとすると口の端が震えた。上手く口角が上げられない。
後悔に泣き出したい思いが勝ってしまって、笑えと命令を出す脳に逆らいピクピクと顔面中が痙攣するのを感じた。
請島は顔を隠そうと慌てて下を向いたが、重力で涙が溢れそうだった。
「す、少し……、考えさせてくれるかな……」
「……………………………………えっ!?」
突然聞こえた予想外の答えに、驚いて顔を上げると目の前の瀬芽谷の顔は真っ赤に染まっていた。
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