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【28】休息と再行軍開始

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 時定の申し付け通りに休息には十分配慮し多めに取ることを心掛けてきた。
 時定曰く未知の相手と戦うということは心身共に大きく疲弊してしまうからだとか。
 俺もその意見には賛成だった。

 現に兵士たちは疲れきっていた。
 それは恐らく旧世界の戦国時代よりもずっと。
 それもそうだと思う。
 今まで知らない世界で助け合って生きてきた仲間を斬らねばならない現実。
 そのストレスとは計り知れない。

 ある一定の経験と苦痛を味わってきた武将でも言葉を発せなくなるほどの心的ストレスがあったに違いない。

 最近まで一緒に飯を食っていた友。
 最近まで一緒に笑いあった友。
 最近まで一緒に戦った友。
 結婚を祝った友。
 出産を祝った友。

 その友が生気を抜かれた表情で刀を振りかざしてくる。
 それを殺す。
 キツくて当然だと思う。

 人とは心が疲れたときに最優先で行うべき行為は休息だ。
 だが、ここは戦場。疲れたからといって塞ぎ込んでしまっては自分のみが危うくなる。
 だから俺のような傾き者が役に立つんだ。

 強制的に士気を上げる。皆を巻き込み笑い叫び、バカなことをいっぱいする。
 女を抱きたければ抱けばいい。
 男を抱きたければ抱けばいい。
 俺のケツは貸さんが……


 明日くらいには時定の軍も到着するだろうし、行軍の話と作戦の組み立ては明日行うとしよう。


 翌日

「兄上!遅くなりました。追加補充で兵士2000と熊五郎殿にも来ていただきました」

「熊五郎?」

「あ、はい!彼です」

「あーそれ望月な」

「はい!熊五郎です」

「いや、望月だから」

「はい!熊五郎です!」

「う、うん。どうしてそうなったのか分からんけど……もういいや。というか望月も反論したらどうなのよ」

「ん?仕方ないやんか。本当の名前なんやし」

「本名かい!最初から言っとけよ!紛らわしい!」

「聞かれんかったきね」
(聞かれなかったからね)


「見た感じ……当初の予定より兵の疲労がありますね。よかったです。これを持ってきておいて」

「なんだそれ?」

「見た目で言えば、単なる団子ではありますが、回復魔法を練り込んでありますので心身ともの疲労回復に最適です。まぁ兄上には腹を満たすだけの物にはなってしまいますが」

「ありがたい!早速全兵に配ってやってくれ」

 時定の持ってきた回復団子は驚異的な効果を発揮した。
 通販でいう、ご実感ではなくハッキリと明確に効果を発揮したのだ。

 グッジョブ時定!

「これで行軍を開始できますね。回復団子はガンガン使いますので、今回は一気に攻めますよ!熊五郎殿もよろしくお願いします!」

「任されよ!」

「よし士気は整った!お前ら一気に攻め上がるぞぉぉぉ!!!」

「おぉぉぉ!!!」

 更に時定が続く。

「いつでもお前たちを救ってやる!安心して前だけを向き戦い続けろ!」

「おぉぉぉ!!!」

 更に望月こと熊五郎も続く。

「きさんたちが死ぬことはない!俺が全て食いちぎっちゃる!後ろは任せろ!」
(お前たちが死ぬことはない!俺が全て食いちぎってやる!)

 よし!これなら!いける!!


 爆上がりの士気!!これから猛撃開始!!
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