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第4話
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髪は赤色でウルフカット。
瞳の色は鮮烈な赤。
華奢な体型で裸足。
とてもかわいい顔立ちをしており、女の子と見違える人が絶対にいる。
首には地下の人間という事を表すためのリングが付けられていた。
それが少年の容姿だった。
「すみません!! どうかここでやり過ごさせてください!!」
少年は必死で近くに警察が居ることを忘れているのか、大声で家に入りながら言った。
この少年にはどうも悪い雰囲気が無い。
とはいえ、家にずかずか入り込んで来るし、囚人服を着ていた事から。
「ちょっと……止まって!」
「あ、はい!」
警察を呼ぶ事に決めた。
だが、呼ぼうとしたその瞬間。
「!! 危ない!!」
「見つけたぞ!! 撃て!!」
三人の警察官が家の前にやって来て、少年が叫び、ピストルで少年を撃ち抜こうと三人が三発ずつ発砲した。
しかし、少年にほとんど避けられ、流れ弾の一発が那奈に向かう。
(は……?)
思わず固まってしまう那奈。
ピストルの弾がどんどんと近づいてくる。
あと少しで当たる。
その時。
「だから!! 危ないですって!!」
少年が那奈を軽々とお姫様だっこし、一瞬でテーブルの下に二人で潜り込み、銃弾は当たらずに済んだ。
(助けて……くれた?)
何がなんだか、状況が分からない。
囚人服の少年が助けてくれて、地下警察が那奈をお構い無しに発砲した。
普通、逆じゃないか?
だが、そんな事より。
「次が来ます!」
「撃て!!」
少年が那奈をお姫様だっこした状態のままテーブルから抜け出す。
そして、今度は三人の警察が一発ずつ発砲。
「窓、開けてください!」
「ま、窓?」
「早く!!」
「コ……コール!」
そして、那奈の『コール』で警察と反対側の家の窓が開き、少年はそのまま窓から那奈と家から脱出する。
「チッ! 構わん! 再度、撃て!!」
次は警察達が窓から脱出した少年の背中に向けて一発ずつ発砲。
少年はかがみ、避けきれる……筈だった。
「うっ……!!」
二発はなんとか避けるのが間に合ったが、一発は少年の右脇腹をかすめていった。
「だ……大丈夫……?」
まだ、少年に恐れは抱いているものの、那奈は心配した。
「大丈夫……と言いたいところですけど……まずそうです。一人で……走れます……か?」
「それは……できる……けど」
少年の右脇腹から血が止まらない。
しかし、逃げなければ。
「お前ら!! 走れ!! 行くぞ!!」
どうやら警察も脱出し、追いかけてくるようだ。
しかもなぜか、那奈も狙っている。
那奈は一人で地面に降り、少年と共に走り始めた。
「コール! クラフトウォール!」
那奈はキーを地面に投げつけ、『クラフトウォール』と叫んだ。
クラフトウォールは投げつけた場所に高さ五メートルで普通の民家で例えるなら、その三倍はある長さの壁を作り出すもの。
しかも分厚く、防弾ガラスの約五倍の耐久性を持っている。
使用者が緊急事態と感じた場合のみ、制限が解除され、使用可能になるものだ。
これで少しは時間稼ぎができる筈だ。
しかも家の裏側は『地下にも森林が必要』との声が上がり、森林のエリアになっている。
そこならまける筈。
二人は走り、森に入っていった。
「……君、何で囚人服を着ているの?」
並走して走りながらずっと気になっていた事を少年に訊ねる。
「……俺は花巻真に親を殺されて、そのまま地下の刑務所に幽閉されたんです」
「…………え?」
花巻真?
あの政府の重鎮が?
信じられない……だが、少年の言っていることは嘘のように感じられなかった。
『その事は本当よ』
──突然、那奈のポケットに入ったスマホからノイズ混じりで男性か女性か何歳ぐらいかは分からないが、声が聞こえた。
「だ、誰!?」
直ぐに那奈はスマホを持ち画面を見つめた。
しかし、スマホは電源が付いていないままだった。
どういう技術かは分からないが卓越している事は確かだ。
だが、どこかで聞いた事のある口調。
誰だろうか?
まあ、そんな事は置いておいて。
『あたしの名はマイノと呼んで。あなた達をサポートするわ』
怪しい。
しかし、頼れる人間はこの状況ではいない。
なので頼るしかないよう。
「誰かは知りませんけど……よろしくお願いします」
少年はスマホに顔を向けて言った。
『偉い子……流石は名家、鍵乃家の一人息子ね』
「鍵乃家!?」
驚く、那奈。
それもその筈。
鍵乃家と言えば、地上の巨大なグローバル会社『鍵乃グループ』を支えてきた名家。
その一人息子がいるとは聞いていたが、まさか……会う機会があるなんて想像につかなかった。
「なんで、それを知って……? いやそれよりも確かにそうです。俺は鍵乃(かぎの)東矢(とうや)で間違いありません」
本当のようだ。
しかし、そこで疑問が浮かぶ。
「鍵乃家って地上にある筈でしょ!? なんで、君は地下に……?」
そう、それだ。
普通は犯罪を犯したものは、地上なら地上警察が。
地下なら地下警察が対処し、監禁される場所も地上なら地上、地下なら地下だ。
「……花巻真に両親を目の前で殺され、その次の瞬間眠らされて、地下の刑務所に……なぜだかは分かりません」
どうやら、謎らしい。
瞳の色は鮮烈な赤。
華奢な体型で裸足。
とてもかわいい顔立ちをしており、女の子と見違える人が絶対にいる。
首には地下の人間という事を表すためのリングが付けられていた。
それが少年の容姿だった。
「すみません!! どうかここでやり過ごさせてください!!」
少年は必死で近くに警察が居ることを忘れているのか、大声で家に入りながら言った。
この少年にはどうも悪い雰囲気が無い。
とはいえ、家にずかずか入り込んで来るし、囚人服を着ていた事から。
「ちょっと……止まって!」
「あ、はい!」
警察を呼ぶ事に決めた。
だが、呼ぼうとしたその瞬間。
「!! 危ない!!」
「見つけたぞ!! 撃て!!」
三人の警察官が家の前にやって来て、少年が叫び、ピストルで少年を撃ち抜こうと三人が三発ずつ発砲した。
しかし、少年にほとんど避けられ、流れ弾の一発が那奈に向かう。
(は……?)
思わず固まってしまう那奈。
ピストルの弾がどんどんと近づいてくる。
あと少しで当たる。
その時。
「だから!! 危ないですって!!」
少年が那奈を軽々とお姫様だっこし、一瞬でテーブルの下に二人で潜り込み、銃弾は当たらずに済んだ。
(助けて……くれた?)
何がなんだか、状況が分からない。
囚人服の少年が助けてくれて、地下警察が那奈をお構い無しに発砲した。
普通、逆じゃないか?
だが、そんな事より。
「次が来ます!」
「撃て!!」
少年が那奈をお姫様だっこした状態のままテーブルから抜け出す。
そして、今度は三人の警察が一発ずつ発砲。
「窓、開けてください!」
「ま、窓?」
「早く!!」
「コ……コール!」
そして、那奈の『コール』で警察と反対側の家の窓が開き、少年はそのまま窓から那奈と家から脱出する。
「チッ! 構わん! 再度、撃て!!」
次は警察達が窓から脱出した少年の背中に向けて一発ずつ発砲。
少年はかがみ、避けきれる……筈だった。
「うっ……!!」
二発はなんとか避けるのが間に合ったが、一発は少年の右脇腹をかすめていった。
「だ……大丈夫……?」
まだ、少年に恐れは抱いているものの、那奈は心配した。
「大丈夫……と言いたいところですけど……まずそうです。一人で……走れます……か?」
「それは……できる……けど」
少年の右脇腹から血が止まらない。
しかし、逃げなければ。
「お前ら!! 走れ!! 行くぞ!!」
どうやら警察も脱出し、追いかけてくるようだ。
しかもなぜか、那奈も狙っている。
那奈は一人で地面に降り、少年と共に走り始めた。
「コール! クラフトウォール!」
那奈はキーを地面に投げつけ、『クラフトウォール』と叫んだ。
クラフトウォールは投げつけた場所に高さ五メートルで普通の民家で例えるなら、その三倍はある長さの壁を作り出すもの。
しかも分厚く、防弾ガラスの約五倍の耐久性を持っている。
使用者が緊急事態と感じた場合のみ、制限が解除され、使用可能になるものだ。
これで少しは時間稼ぎができる筈だ。
しかも家の裏側は『地下にも森林が必要』との声が上がり、森林のエリアになっている。
そこならまける筈。
二人は走り、森に入っていった。
「……君、何で囚人服を着ているの?」
並走して走りながらずっと気になっていた事を少年に訊ねる。
「……俺は花巻真に親を殺されて、そのまま地下の刑務所に幽閉されたんです」
「…………え?」
花巻真?
あの政府の重鎮が?
信じられない……だが、少年の言っていることは嘘のように感じられなかった。
『その事は本当よ』
──突然、那奈のポケットに入ったスマホからノイズ混じりで男性か女性か何歳ぐらいかは分からないが、声が聞こえた。
「だ、誰!?」
直ぐに那奈はスマホを持ち画面を見つめた。
しかし、スマホは電源が付いていないままだった。
どういう技術かは分からないが卓越している事は確かだ。
だが、どこかで聞いた事のある口調。
誰だろうか?
まあ、そんな事は置いておいて。
『あたしの名はマイノと呼んで。あなた達をサポートするわ』
怪しい。
しかし、頼れる人間はこの状況ではいない。
なので頼るしかないよう。
「誰かは知りませんけど……よろしくお願いします」
少年はスマホに顔を向けて言った。
『偉い子……流石は名家、鍵乃家の一人息子ね』
「鍵乃家!?」
驚く、那奈。
それもその筈。
鍵乃家と言えば、地上の巨大なグローバル会社『鍵乃グループ』を支えてきた名家。
その一人息子がいるとは聞いていたが、まさか……会う機会があるなんて想像につかなかった。
「なんで、それを知って……? いやそれよりも確かにそうです。俺は鍵乃(かぎの)東矢(とうや)で間違いありません」
本当のようだ。
しかし、そこで疑問が浮かぶ。
「鍵乃家って地上にある筈でしょ!? なんで、君は地下に……?」
そう、それだ。
普通は犯罪を犯したものは、地上なら地上警察が。
地下なら地下警察が対処し、監禁される場所も地上なら地上、地下なら地下だ。
「……花巻真に両親を目の前で殺され、その次の瞬間眠らされて、地下の刑務所に……なぜだかは分かりません」
どうやら、謎らしい。
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