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最終話
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東矢が腹をおさえながら、はてなマークを浮かべているような表情でこちらとやって来た者を交互に見つめた。
やって来た彼女は子供の時以来会う、舞鶴千早。
父の姉である。
「那奈……久しぶり。それに東矢くんは生で会うのは初めてね」
髪型はスーパーロング。
髪色と瞳の色は綺麗な黒色で、身長は百六十五センチメートルくらい。
スタイルはよく、確かもう四十代になっている筈だが、姿はあまり変わっているようには見えず、とてつもない美貌の持ち主。
身に纏っているパーカー、長ズボン、靴はどれも黒色。
両手には水色の液体が入った、透明な瓶を持っていた。
そして、彼女が言葉を紡ぐ。
「色々と話す事はあるけどとりあえず復讐は完了したみたいね。はい、これ。すぐに体の傷が回復するわ」
二人に瓶を渡す、千早。
そこで東矢は何かに気づいたようだ。
「……! もしかしてあなたがマイノさん!?」
すると千早はこくんと頷いた。
「ええ!?」
驚く那奈。
それもその筈。
今まで助けてくれた人物がずっと会えていなかった伯母だったのだから。
「東矢くんは勘がいいわね。それよりも早く飲んで。出血多量で死んじゃうわよ」
「あ……」
言われると、身体中に痛みがはしっている事に気づく。
戦いの際は花巻を殺したくて、これ程の痛みに気づかなかったが、どうやら一気に耐えていたものがぷつんと切れたらしい。
二人は銀製の蓋を開け、一気に液体を飲み干した。
「すごい……」
「ああ……」
次の瞬間、体からぽろっと食い込んでいた弾丸が抜け落ち、傷が回復し、通常の体に戻った。
「千早伯母さん、どこでこんなのを……」
「それはね……ほら、途中からマイノとしてのあたしの声、聞こえなくなっていたでしょう?」
そう言われてみるとそう。
確かに聞こえなくなっていた。
「その間に、知り合いに頼んで瓶をもらってここまで来たの。もちろん、他の人間に気づかれていないようにね。周りの声聞こえないでしょ。あれ、あたしが妨害してるから」
……なんだか、ありがたすぎて、冷や汗をかいてしまう。
って、それよりも聞きたいことがある。
「……お父さんとお母さんが殺された理由知ってるの?」
「……もちろん。でも、ごめんね。あたしには花巻真を倒す力が無くて、その上彼に脅されていたの。『二人が殺された理由と地下送りに那奈も一緒にされた理由を言えば殺す』って。それに『地下に行っても殺す』、と」
……愛想をつかして地下へと会いに来なかった訳じゃなかった。
己はなんて勘違いを……。
「那奈、落ち込まないで」
「うん……」
そこで東矢が口を開いた。
「もしかして、俺の両親を殺された理由も……?」
「……ええ。まず、那奈の両親の事から話すわ。まず、“ロード”は知っているわよね」
ロード。
それは地下超大規模計画の事。
今の時代の日本人で知らないわけがない。
「……知ってる。花巻真が発案したっていう……」
「そう。でも、その計画には大きな闇があった。それを那奈の両親は聞いて、一旦は地下送りということで、見逃されていたけど、花巻は方針を変えて、殺されたの」
「大きな闇……」
那奈がうつむく。
そのまま千早は続ける。
「『AIは公正に判断した』、と花巻は言っている。でも違った。労働力が今後高くなる事はないであろうとAIが判断した者を地下送りにし、地上は労働力の高い者で発展させよう、それが彼の真の狙いだったの。そして、それは今、現実になっている」
…………なんということだ。
それはもはやとんでもない差別であり、人権を無視しているといっても過言ではない。
「ロード計画内で働いていた那奈の両親はもちろん反対した。でも、花巻の方針を変えることはできず、あたしも無力だった。花巻は周りからは結婚指輪にしか見えないけどロード計画の闇を他の人間に話すか、無理矢理外そうとすると爆発する指輪を、二人に付けさせた」
「そんな……」
花巻真。
さっき死んだとはいえ許せない男。
もう一度殺したいくらい。
「それが那奈の両親に起きた事。……話すのは辛いけど……次は東矢くんの両親が殺された理由ね」
「……はい」
まっすぐな視線で千早を見つめる東矢。
そこには覚悟が決まっている事が見てとれた。
「……東矢くんの両親もロード計画内で働いていたの。そこで花巻と那奈の両親が口論になっている所を聞いてしまったの。そして、ロードの闇についても。花巻は最初は殺すつもりは無かったみたいだけど、二ヶ月前に方針を変えた。……ごめんなさい。あたしがそれを知ったのはつい先日の事。もっと早く知っていれば……」
「いえ……千早さんは悪くありませんよ……」
悲しそうな表情を浮かべる東矢。
今、彼に様々な感情が頭の中で混じりあっていることは確かだった。
「……本当にごめんなさい……東矢くん。それで……東矢くんが監禁されていた理由なんだけど……それは東矢くんを外に出さないためと単なる花巻のイカれた嫌がらせよ」
花巻真はなんてグズ野郎なんだ。
東矢は両手を握りしめ、怒りを抱いている。
しかし、その思いを千早にぶつけないのは彼の優しさだろう。
だが、聞きたいことがまだある。
「どうして、千早伯母さんはマイノとして動いていたの……?」
そう。
那奈には自分が千早だという事を話してもよかったのではないか?
それは気になるところ。
「まあ……教えて変な感情を抱いてほしくなかったの。それにあたしはマイノとして逃避行生活を送っていた。もしもの時に那奈を巻き込みたくなかったからだわ……開花水奪えたけど、適応しなかったし、ホント、みっともない伯母よね」
「そんなことない! 千早伯母さんのお陰で復讐は果たせたんだよ!」
千早にこれ以上気づいてほしくないから強い口調で言った。
「那奈、ありがとう……もう聞きたいことはないかしら?」
二人はこくんと頷いた。
「じゃあ早く次の段階に移らないとね」
次の段階とは?
しかし、問いを伝える前に千早は話し始めた。
「ロードについて今世間に明かしても、地下の住人が暴徒化するのは目に見えている。でも、ほっとくわけにはいかない。幸い、あたしはマイノとしてロードの闇と花巻真の罪を上手く伝えるべく準備を進めている。逃避行の生活になるけど手伝ってくれるかしら」
答えはすぐに決まった。
遠矢も同じようだ。
「「もちろん!」」
二人は大きな声で答えた。
あの後、すぐに三人はビルから立ち去り、那奈はハイカ、東矢はキズネと名乗り始め、秘密裏に行動を開始する。
そして、上手くロードの闇を伝えることに成功し、日本は変革の時を迎えた。
具体的に言うと、地下の暮らしが地上と同じくらい豊かになり、地下の人間が幸せに暮らすことが出来るようになった。
花巻真については死後、ロードの闇を暴くまでは自殺と世間では知られ、ロードの闇を暴くと同時に殺害だと発表し、三人は表に出て自ら罪を償った。
そして、刑務所から罪を償い出てきた三人は、共に生涯を最後まで過ごす事になる。
復讐の末に待っていたのは罪を償うことだった。
やって来た彼女は子供の時以来会う、舞鶴千早。
父の姉である。
「那奈……久しぶり。それに東矢くんは生で会うのは初めてね」
髪型はスーパーロング。
髪色と瞳の色は綺麗な黒色で、身長は百六十五センチメートルくらい。
スタイルはよく、確かもう四十代になっている筈だが、姿はあまり変わっているようには見えず、とてつもない美貌の持ち主。
身に纏っているパーカー、長ズボン、靴はどれも黒色。
両手には水色の液体が入った、透明な瓶を持っていた。
そして、彼女が言葉を紡ぐ。
「色々と話す事はあるけどとりあえず復讐は完了したみたいね。はい、これ。すぐに体の傷が回復するわ」
二人に瓶を渡す、千早。
そこで東矢は何かに気づいたようだ。
「……! もしかしてあなたがマイノさん!?」
すると千早はこくんと頷いた。
「ええ!?」
驚く那奈。
それもその筈。
今まで助けてくれた人物がずっと会えていなかった伯母だったのだから。
「東矢くんは勘がいいわね。それよりも早く飲んで。出血多量で死んじゃうわよ」
「あ……」
言われると、身体中に痛みがはしっている事に気づく。
戦いの際は花巻を殺したくて、これ程の痛みに気づかなかったが、どうやら一気に耐えていたものがぷつんと切れたらしい。
二人は銀製の蓋を開け、一気に液体を飲み干した。
「すごい……」
「ああ……」
次の瞬間、体からぽろっと食い込んでいた弾丸が抜け落ち、傷が回復し、通常の体に戻った。
「千早伯母さん、どこでこんなのを……」
「それはね……ほら、途中からマイノとしてのあたしの声、聞こえなくなっていたでしょう?」
そう言われてみるとそう。
確かに聞こえなくなっていた。
「その間に、知り合いに頼んで瓶をもらってここまで来たの。もちろん、他の人間に気づかれていないようにね。周りの声聞こえないでしょ。あれ、あたしが妨害してるから」
……なんだか、ありがたすぎて、冷や汗をかいてしまう。
って、それよりも聞きたいことがある。
「……お父さんとお母さんが殺された理由知ってるの?」
「……もちろん。でも、ごめんね。あたしには花巻真を倒す力が無くて、その上彼に脅されていたの。『二人が殺された理由と地下送りに那奈も一緒にされた理由を言えば殺す』って。それに『地下に行っても殺す』、と」
……愛想をつかして地下へと会いに来なかった訳じゃなかった。
己はなんて勘違いを……。
「那奈、落ち込まないで」
「うん……」
そこで東矢が口を開いた。
「もしかして、俺の両親を殺された理由も……?」
「……ええ。まず、那奈の両親の事から話すわ。まず、“ロード”は知っているわよね」
ロード。
それは地下超大規模計画の事。
今の時代の日本人で知らないわけがない。
「……知ってる。花巻真が発案したっていう……」
「そう。でも、その計画には大きな闇があった。それを那奈の両親は聞いて、一旦は地下送りということで、見逃されていたけど、花巻は方針を変えて、殺されたの」
「大きな闇……」
那奈がうつむく。
そのまま千早は続ける。
「『AIは公正に判断した』、と花巻は言っている。でも違った。労働力が今後高くなる事はないであろうとAIが判断した者を地下送りにし、地上は労働力の高い者で発展させよう、それが彼の真の狙いだったの。そして、それは今、現実になっている」
…………なんということだ。
それはもはやとんでもない差別であり、人権を無視しているといっても過言ではない。
「ロード計画内で働いていた那奈の両親はもちろん反対した。でも、花巻の方針を変えることはできず、あたしも無力だった。花巻は周りからは結婚指輪にしか見えないけどロード計画の闇を他の人間に話すか、無理矢理外そうとすると爆発する指輪を、二人に付けさせた」
「そんな……」
花巻真。
さっき死んだとはいえ許せない男。
もう一度殺したいくらい。
「それが那奈の両親に起きた事。……話すのは辛いけど……次は東矢くんの両親が殺された理由ね」
「……はい」
まっすぐな視線で千早を見つめる東矢。
そこには覚悟が決まっている事が見てとれた。
「……東矢くんの両親もロード計画内で働いていたの。そこで花巻と那奈の両親が口論になっている所を聞いてしまったの。そして、ロードの闇についても。花巻は最初は殺すつもりは無かったみたいだけど、二ヶ月前に方針を変えた。……ごめんなさい。あたしがそれを知ったのはつい先日の事。もっと早く知っていれば……」
「いえ……千早さんは悪くありませんよ……」
悲しそうな表情を浮かべる東矢。
今、彼に様々な感情が頭の中で混じりあっていることは確かだった。
「……本当にごめんなさい……東矢くん。それで……東矢くんが監禁されていた理由なんだけど……それは東矢くんを外に出さないためと単なる花巻のイカれた嫌がらせよ」
花巻真はなんてグズ野郎なんだ。
東矢は両手を握りしめ、怒りを抱いている。
しかし、その思いを千早にぶつけないのは彼の優しさだろう。
だが、聞きたいことがまだある。
「どうして、千早伯母さんはマイノとして動いていたの……?」
そう。
那奈には自分が千早だという事を話してもよかったのではないか?
それは気になるところ。
「まあ……教えて変な感情を抱いてほしくなかったの。それにあたしはマイノとして逃避行生活を送っていた。もしもの時に那奈を巻き込みたくなかったからだわ……開花水奪えたけど、適応しなかったし、ホント、みっともない伯母よね」
「そんなことない! 千早伯母さんのお陰で復讐は果たせたんだよ!」
千早にこれ以上気づいてほしくないから強い口調で言った。
「那奈、ありがとう……もう聞きたいことはないかしら?」
二人はこくんと頷いた。
「じゃあ早く次の段階に移らないとね」
次の段階とは?
しかし、問いを伝える前に千早は話し始めた。
「ロードについて今世間に明かしても、地下の住人が暴徒化するのは目に見えている。でも、ほっとくわけにはいかない。幸い、あたしはマイノとしてロードの闇と花巻真の罪を上手く伝えるべく準備を進めている。逃避行の生活になるけど手伝ってくれるかしら」
答えはすぐに決まった。
遠矢も同じようだ。
「「もちろん!」」
二人は大きな声で答えた。
あの後、すぐに三人はビルから立ち去り、那奈はハイカ、東矢はキズネと名乗り始め、秘密裏に行動を開始する。
そして、上手くロードの闇を伝えることに成功し、日本は変革の時を迎えた。
具体的に言うと、地下の暮らしが地上と同じくらい豊かになり、地下の人間が幸せに暮らすことが出来るようになった。
花巻真については死後、ロードの闇を暴くまでは自殺と世間では知られ、ロードの闇を暴くと同時に殺害だと発表し、三人は表に出て自ら罪を償った。
そして、刑務所から罪を償い出てきた三人は、共に生涯を最後まで過ごす事になる。
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