彼女は事件を欲す

NK作家団

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第1件 紀州北方高校 殺人事件

第2話 助手にならないか?

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 11月23日
 茜は事務所のデスクで寝ていたが。夜が明けはじめた時、電話が鳴り響き、彼女は電話に出た、
 「はい。田原探偵事務所です。 あぁ! 松田先生! こんな朝からどうしたんですか?」
 電話の相手は、智也の担任の松田先生だった。
 「こんな朝からすみません。 永谷君の家に電話したら、家の子ではない!と言われまして、もしかしたらと思ったんですけど…」
 「そちらの学校から事務所に帰る際に、偶然顔から血を流した彼に会いましたので、そのまま…」
 「そうですか」
 「学校側は、彼の家庭暴力について知っていたんですか?」
 「噂はありましたが。彼自身が否定していましたので、学校としては動けずに…」
 「そうでしたか…。それでなんの用ですか?」
 「あぁ、そうでした。 他の生徒達には今回の件は、通知させていただきました。 そして、今日は学校は普通にあるが、体育館裏には絶対に近寄らない。という条件ですが」
 「臨時休校にはできないのですか?」
 「それが、警察としてはいじめを疑っているらしく。 生徒達の家を回るよりそっちの方が良いだろうと」
 「なるほど」
 「そこで、田原さんには学校からの依頼で捜査をしてほしいのです。 報酬は払います」
 「報酬はいりません。 その代わり…、彼を今回の件が終わっても別の教室で授業を受けさせてもらいたいのです」
 「それぐらいは良いですが、彼の意思は?」
 「まだ聞いていません。 しかし、彼の今までの状況を考えると、いつ精神がおかしくなっても…」
 「・・分かりました。 それでは、そちらの意思を尊重しましょう。 しかし、彼が望んだ場合は…」
 「今までどおり、接してあげてください」
 「分かりました。 それでは、また後で」
 茜は電話を切ると、智也を起こしに行き2人は朝食の食パンを食べていた時、
 「そういえば、昨日の件で気になることがあって…」
 智也がボソッと言うと茜は身を乗り出して、
 「気になること?」
 「あまり関係ないとは思うんですけど…なぜバスケ部顧問の松田先生があんな時間にあそこに居たのかっていう疑問があって…」
 「ほぅ…。詳しく聞かせてくれるか?」
 「壬生川さんが倒れていたのは体育館の横ですから、松田先生が居てもおかしくはないのですが。松田先生は顧問用のジャージではなくスーツだった…しかも、あの時間は普段なら坂田先生が見回るはずなんですが、昨日のあの後、職員室に行ったら坂田先生は優雅にコーヒーを飲んでまして…」
 「なるほど…」
 茜さんは、そう呟くとティーカップに入れたコーヒーを口に注いだ。



 そして、智也は学校に捜査に向かうのと一緒に学校まで送ってもらい、教室には向かわず応接室に行くと、岩永刑事が居た。
 「智也君、すまなかった。 君への容疑は晴れた」
 と言うと、茜さんは、
 「だったら。あのスマホからは!」
 「残念ながら指紋を検知されなかった。 しかし、学校内にある防犯カメラを確認したところ。 君の言うとおり、君は授業が終わってから一歩も教室を出てはいなかった」
 「防犯カメラ…、防犯カメラに犯人が写ってるんじゃ?」
 と僕が聞くと、
 「いや。 犯人らしき人物は写ってなかった。恐らく、反対側から体育館裏へ行ったのだろう」
 「反対側?」
 と茜さんが聞くと、僕が説明をした。
 「この学校は、正門側から校舎、体育館、学食及びプールと並んでいるんですよ。 だから、学食側から体育館の裏側に行けば…」
 「防犯カメラには写らないか…」
 そして、岩永刑事が、
 「待たせてばかりになるだろうが、君は少しここで待っといてくれ。 隣の応接室で他の生徒や先生方の、事情聴取をさせてもらう」
 「私も同席していいですか?」
 と茜さんが聞くと、岩永刑事は不満そうな顔をしたが、
 「学校側から依頼をさせてもらいました。 確実に、犯人を逮捕させてもらうために」
 と松田先生が言うと、茜さんは加えるように、 
 「あくまでも、岩永刑事へのアドバイザーとし同席させてもらいます」
 「良いだろう。 松田先生、まずは3年E組のクラスの子からお願いします」
  「分かりました」

 そして、事情聴取がはじまり、午前中だけで3年生は全員終わり、茜と智也は二人会議室で、来るときにコンビニで買ったおにぎりを食べていると、
 「なにか気になる情報はありましたか?」
 と智也が聞くと、
 「事情聴取事態では、金属音が聞こえただけだった」
 「事情聴取事態では?」
 「うん。 私がトイレに行っていたため、1人の女子生徒だけ事情聴取を聞いていなくて、私が戻るときにその女子生徒とすれ違って…、その時に…」

 時は少し遡る、
 「あなたも警察なんですか?」
 と1人の女子生徒が茜に聞いた。
 「うんうん。私は、私立探偵だよ」
 「探偵って、本当に居るんだ…。 あの、警察の人には言ってないですが、あることが気になりまして…」
 「あること?」
 「はい。 私は、陸上部なんですが。 放課後、学食の方からバスケ部顧問の松田先生が走ってきたんです」
 「松田先生が?」
 「はい。 なにかなぁ?と思ったんですけど、松田先生に聞いたら。学食の自販機に飲み物を買いに言っていただけと言われて…」
 「そう…。 ありがとう。 授業頑張ってね」
 「はい」
 そして、時は戻る。
 「なるほど、松田先生が…」
 「智也君はどう思う?」
 「僕には、さっぱりなんですけど。 凶器って見つかったんですか?」
 「っ! 忘れてた…。 岩永刑事に聞いてくるよ」
 と茜は応接室に行くと、岩永刑事が学食の弁当を食べていた。
 「うん? なんだね、駆け込んできて」
 「岩永刑事、凶器は見つかったんですか?」
 「うん?今、部下が改造工事中の体育館を探している」
 「はっ!」
 「どうしたんだ? なにか分かったのか?」
 「いえ。まだ確証は…、凶器が見つかったら教えてください。すぐに!」
 「あぁ。 分かった」


 そして、昼から事情聴取の1人目だった。 2年のとある女子から驚きのことを話した。
 「殺されたのが、壬生川先輩って本当なんですか?」
 と女子生徒が聞くと、岩永刑事はハンカチを机の上に置くと。
 「本当だ。彼女は昨日の放課後、体育館裏で発見された」
 「そうなんですか…、壬生川先輩…。かわいそうに…」
 と悲しんでいる女子生徒に茜は、
 「辛いだろうがいくつか質問に答えてくれるかい?」
 「なんですか?」
 「君は壬生川さんとは、どういう関係なの?」
 「壬生川先輩は、私の中学の頃からの先輩というより、友達でした。 そして、夏休み中に。「私に彼氏が出来た!」ととても喜んでました」
 「なるほど、彼女が最近変わったことや、なにか面倒ごとに巻き込まれてるとかは聞いた?」
 「・・実は、ストーカーみたいなのに付けられてると少し前に言っていました」
 「それはいつ頃!?」
 「体育祭後だから…1ヶ月近く前かな?」
 「なるほど…。 ありがとう」
 茜はその女子生徒の事情聴取をそのまま聞くことなく、会議室に行くと智也に、
 「最近、壬生川さんとは一緒に帰ってたりしてた?」
 「はい。 1ヶ月近く前からは毎日にように一緒に登下校をして、僕が彼女の家の近くまで迎えにいったり、送ることも何度か…」
 「そう…。 ありがとう」
 「犯人が分かったんですか!?」
 「まだ確実な証拠がない、しかし…。」
 茜はその後のことを言わず、応接室に行くと岩永刑事に、
 「生徒への事情聴取はやめて、先生方にしませんか? それも、3年の先生に」
 「なぜだ? 先生方への質問は、明日の土曜日に…」
 「犯人が分かりそうなんです」
 「なんだと! それは誰なんだ?」
 「それは…、です」
 「えっ! いや、しかし可能性は一番高いか…。 よし、先生方に事情聴取をしよう」
 「お願いします」
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