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『元』聖女、行きたくないけど方向転換
222. 次の国への期待
しおりを挟むアロイスの隊商四十五名、それにコルネイユ隊の十名が加わり、メラニーさんという魔法使いも加わった。
これはひとつの隊商として、かなり大きい規模に入る。
でも『この世界一』というわけではないらしい。アロイスの養父グレゴリーは六十人以上らしいし、遊牧民のように村まるごと商売をしながら移動する隊商もあるそうだ。
――世界って広いのですわね~。
少なくとも世界有数ではあるから、アロイス達の移動は前以上に目立っている。
メルシエ公国を出る際、何故か私は幌のないタイプの馬車に乗るように言われて、ジゼルとメラニーさんと一緒に乗った。
アロイスは先頭の馬車、ヒューゴの隣の御者席にいるらしい。
「皆様どうぞ、またこの国においでくださいましね」
「歓迎いたしますぞ」
「え、ええ。是非……」
門の前で、とても品のよさそうな高齢のご夫婦に笑顔で声をかけられた。
特に挨拶をした記憶はないんだけれど……お付きの人達に守られ、にこやかに声をかけてくださったこのご夫婦、まさか……?
「あのお二人はメルシエ公夫妻ですわね。セレ様が滞在してくださるだけで、長にとってはありがたいことですもの」
門をくぐる馬車の上で揺られながら、「考え過ぎね、うん」と思った矢先に、メラニーさんが断言してしまった。
私が滞在するだけでありがたいとは、どういうことでしょうか。ジゼル、嬉しそうに胸を張るんじゃありません。
――アロイス様がわたくしに幌なしの馬車を勧めたのは、もしやこのためだったのかしら。
二度と来るなと追い立てられるより、また来てねと言ってもらえるほうがいいに決まっている……そう自分を納得させることにした。
「ところでセレ様、次の国のことはアロイス様から聞いてらっしゃいます?」
「まだ特に伺ってはおりませんの。だいたいいつも移動のタイミングか、現地に着いてから教えてくださるのですけれど」
本当ならロラン王国から遠ざかる方向に進むはずだったのに、私が進路変更をお願いしたものだから、彼らの予定がだいぶ変わってしまったのだ。
進路によって事前の準備も変わってくるから、アロイスはヒューゴや仲間達との打ち合わせに忙しそうで、あまり深く訊いていない。
「なんだ、そうだったんですか? ならあたし達に訊いてくださいよ、てっきり頭領に聞いてると思ってました。――あのですねセレ様、今回の国の売りは、温泉です!」
「お……温泉?」
素敵な言葉に胸が高鳴る。
メラニーさんもジゼルの言葉に、どことなくうきうきした顔で頷いた。
「この国、畑にできる平地が少ないんですのよ。民の食糧だけでギリギリの収穫量ですから、備蓄はできないし国の特産品も何もないというのが、昔からここの王の悩みだったのです。そこで昔、ある魔法使いにそれを相談したところ、良質の地下水が豊富にあるので、それを沸かして温泉にしたらいいのではないかと提案されたそうですわ」
つまり最初からお湯が沸き出すわけではない。
けれどそれ以外に良い方法がないので、国を挙げて浴場施設を充実させたところ、保養地として大成功を収めることになったそうだ。
「実際にここの泉質、とても良いんですのよ。場所によっては飲用や洗濯に適していない水もあるので、そこは注意が必要なのですけれど、お肌には良いんですの。つるつるのすべすべのしっとりになりますのよ」
「つるつるのすべすべのしっとり……!」
「あたし達が泊まる予定の宿も温泉付きなんですよ! 頭領が言ってましたけど、メラニーさんも同室になりますから、一緒に入りましょうね!」
「あら、わたくしも泊まっていいの? 嬉しいわ」
メラニーさんも一緒に温泉……!?
俄然楽しみになってきた。
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