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新婚兎と狼の日常
8. ひねくれ兎の弱点*
しおりを挟む服をすべて脱がされて、ベッドの上に横たえられた。
僕にだけ甘く感じる香りに包まれ、弱火で身体があぶられているみたいだ。
胸に、お腹に、ふとももの内側に、素肌のあちこちを吸われ淡い紅色が散らされる。
ウォルは身をよじる僕の背中を片腕で支えながら、もう片方の手をお尻に回してきた。
大きな手は僕の尻尾の付け根を刺激したあと、その下の隙間に指をもぐり込ませてくる。
「あっ、あう……あっ……」
後孔に指が侵入し、一本、二本と増やされ、丹念に入り口をほぐされた。
行為を始める時はいつも性急なのに、彼は僕に手荒なことや苦痛を与えることはしない。
だけど、優しい手つきに僕のほうがどんどんじれったくなってきた。
彼の広い背へ手を回してしがみつくと、目の前の喉から小さな唸り声が聞こえ、僕の状態が相手に伝わったのがわかる。
指が引き抜かれ、その衝撃で喘ぎながらのけぞった。
晒した僕の喉を、ウォルの舌がベロリと舐め、やわらかくなった孔に猛ったものを埋め込んでくる。
ずぶずぶと入り込まれるその感触は、何度経験しても全然慣れない。しかも僕のそこは、とっくの昔に僕の意思なんて聞かなくなっていた。
彼のとても大きなものを、嬉しそうに迎え入れようと動くのがわかる。恥ずかしいからやめてと言いたいのに、勝手に腰が浮き上がって、より奥へと導いてしまう。
「んっ、あぁあ!? ……ウォル、それっ……やめっ! やだっ……!」
「ん? でも、いいだろう……?」
「だっ、だってっ……ひあっ! あっ、やぁっ!」
最奥まで埋めたあと、彼は僕の浮いた腰に手を回し、再び尻尾の付け根をやわやわと刺激し始めた。
おまけに、中で彼のものがふくらんでコブを作り、弱いところをぐいぐいと刺激してくる。
「ひんっ! ……ぁ、あぁあ……!」
とどめのようにふわりと、求愛の匂いが強まった。
これがもう本当にダメだ。
言葉を飾ることも誤魔化すこともできず、ストレートに感情を伝えてくる。
好きだ、と。
……ウォル……僕も。僕も好き……!
ウォルは機嫌がよさそうに喉を鳴らし、僕の首や肩を鼻面でくすぐって、深く息を吸い込んだ。
僕は彼の背中に縋りついているから、顔は見えないけれど、自分のこの気持ちも伝わっているのがわかる。
くらくらするほど強い快感と甘い香りに満たされ、もう何も考えられない。
何度も中を突かれ、たまらず精を吐き出したあと、ふつりと意識が途切れた。
不意に瞼を開けたら、カーテンの隙間から部屋の中に光が差し込んでいた。
少しの間ぼんやりしていると、徐々に頭が回り始める。
……ええと……そうか。僕はさっきまで眠っていて、今起きたばかりなのか。
自分を背中から抱き込んでいるこのぬくもりは、ウォルの身体だ。彼は僕よりも早起きだけれど、時々僕のほうが先に目覚めることがある。
窓のカーテンからこぼれ落ちる光の淡さから、もう少しゆっくりできそうな時間だと判断して、また瞼を閉じた。
だけど熟睡できたからか、あまり眠くはならない。その代わりに、昨夜の出来事が次々と頭の中によみがえってくる。
――も~っ!
僕の身体、兎族になってから、なんか弱点増えてない!?
人間だった頃に誰かと付き合った経験はないから、そりゃあ比較はできないけども!
戦闘兎になって以前より格段に強くなったはずなのに、耳とか尻尾とか匂いとか、却って弱い部分が増えている気がするぞ!?
「ウォルのせいだ……」
つい恨みごとを呟いたら、僕の耳がぴょこりと立って、ウォルの頬をペシリと叩いてしまった。
「ん……」
あ、起こしちゃったかな? 一瞬慌てたけれど、違った。
彼は今もすやすやと、規則正しい寝息を立てている。眠っているフリでもなさそうだ。
僕の声に反応したんじゃなく、寝言だった。
何か夢を見ているのだろう。
「ん~……」
「…………」
でも、何か、変な夢を見ている?
彼はあまり寝言を口にしないのに、さっきから断続的に声が出ている。
僕はスンスンと注意深く彼のにおいを嗅いだ。
……嫌な夢ではないみたい?
もし悪夢だと、寝汗のにおいが変わる。感じている疲れや苦痛が、においの中に滲み出るんだ。
でも、こういう時はどうしよう。
起こさないで寝かせてあげたほうが親切?
変なものを見ているかもしれない時は、起こしてあげたほうがいい?
僕が迷っていると、不意に彼の呼吸が変わった。
「……ん? レン?」
ウォルのほうが先に起きてくれたな。目覚めるなり僕の後頭部に額をスリスリこすりつけ、すううと深呼吸をする彼の様子に苦笑が浮かぶ。
「おはよう、ウォル。無駄かもしれないけど、あんまり僕を吸わないでくれる?」
「無駄だな」
即答か!
寝起きの良い彼はもうほぼ覚醒しているようで、声はとてもしっかりしていた。
そしていつものごとく、僕の耳を甘噛みし始める。
兎族の耳は繊細だから、ウォル以外の誰かには絶対にこんな真似はさせない。いくら最強レベルまで上げた戦闘兎であろうと、耳は急所のひとつなので、本当なら触られるのも嫌だ。
だけどウォルには結構初期から、平気で触らせてたっけな……。
この狼族は決して僕を傷付けないだろうって、警戒心なんてどこかへ捨てていたし。
今やこんな風に、耳や尻尾といった急所をはむはむされるのが悪くない……むしろ好きだと感じるんだから、潔癖で根暗で人見知りだった僕が随分変わったものだ。
「そうだ。ウォル、さっき寝言みたいな声を出していたんだけど、何か夢でも見てた? 悪夢じゃないみたいだから、起こすかどうか迷ってさ」
「ん? ――そういえば、見ていたような気がする。あまり覚えていないな」
目覚めた途端に内容を忘れてしまったみたいだ。
声も匂いも嫌な気分ではなさそうだし、こういう時は無理に起こさなくていいか。
「おまえはもう少し寝ていてもいいぞ?」
「……うん」
僕もすっかり目が覚めたらから眠気は差さないんだけど、こうしている時間をさっさと手放すのが惜しくて、二度寝するフリをすることにした。
でもウォルがクスリと笑ったから、多分そんなのはバレているんだろう。
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