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新たな迷宮の攻略
13. ここでは珍しい種族
読みに来てくださってありがとうございます!
いつも楽しみにしてくださる方々は前回から間があいて申し訳ありませんm(_ _m)
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僕と狸のおじさんは湖の周辺を散策し、珍しい草や実を集めた。
結構たくさん集まったから、二人でまた船着き場のあたりに戻る。
その船着き場が、この迷宮の入り口へ向かうための目印みたいなものらしかった。
別の場所から入ろうとしても、『湖の迷宮』の沈んでいる場所へ辿りつけない。
また、迷宮で何かあった場合に戻ってくるのもここという話だから、僕とおじさんは万一のために、船着き場の見える辺りで散策をしていた。
「狭い範囲なのに、こんなにすぐ集まるなんて。あの村の人達、ここでこういうの採らないのかな?」
「これ目当てでここに来る商人やら冒険者がいるってんで、採らねえようにしてるみたいだな」
「あ、なるほど」
難度の高い『湖の迷宮』に入らずとも、ここに売り物にできるものがあるということで、人が完全に絶たれることがないようにしているのか。
実際、これらは結構いい値段で売れるものばかりらしい。
僕が食べたくなるような実や草は、残念ながらこの近くには見当たらなかったけど。
そんな風に狸のおじさんとお喋りしていると、数名の獣人の気配が、僕らのほうに近付いてくるのを感じた。
このにおい、冒険者っぽい気がする。
あんまり強くなさそうな感じだ。
もしかして、迷宮周辺の採集に来たのかな?
ここらへんは僕とおじさんで採り尽くしちゃったから、別の場所へ行けばあるよと教えてあげるために、僕はそのグループが来るのを待ったんだけれど。
……違った。
この連中、もしかして。
「やっぱ兎だ」
「なんで兎なんかがここにいるんだ? 弱っちいんだから巣に戻っとけよ」
「弱っちいからお留守番でもしてんじゃねえか?」
「なんだ、やっぱ役立たずなんじゃん」
あー、ぐさぐさと言ってくれるなぁ?
お留守番は事実だけどさ?
「きみらに弱っちいなんて言われる筋合いはないけど?」
「そうだぜ。レンを知らねえってこたぁ、おめーら最近こっちに来た低ランクの奴らだろ。レンはおめーらよか強ぇぞ?」
狸のおじさん、ありがとう!
こういうのって、僕が自分で言うよりも、別の誰かに言ってもらったほうが説得力あるんだよね。
見るからに低ランクの装備しかない彼らは、ぐっと怯んだみたいだった。
だけど。
「兎の噂なら聞いてるけどよ。そんなん、高ランクのリーダーにひっついて、一緒にランク上げてもらっただけだろ」
「狼族の番って聞いたぜ。どうせ番に甘やかされて、上に行けただけじゃねーの」
毎日これでもかと甘やかされているのはその通りだけど、ウォルはそういうズルなんてしないんだよ!
だいたいマナクリスタルで実力が判定されるんだから、身の丈に合わないランクに上がれるわけないだろうが。
そんなこともわからないってことは、こいつらランクが最底辺なんじゃないか?
「はぁん? おめーらマジでなんも知らねえのな。レンは番ができる前からとっくにSランクだったぞ。これ以上どうやって上げてもらえってんだ」
おじさん、ナイスです。
だけどここまで言われても、彼らは疑いの態度を崩さなかった。
「Sランクなんて、嘘っぱちじゃねー?」
「どうせなんかズルでもしたんだろ」
……うーん、話にならないな。
ここに至って、狸のおじさんは僕に「どうする?」という困った目を向けてきた。無理もない。
この低ランクのグループは、見たところみんなロルフやイヴォニーよりも何歳か下の、十代半ばぐらいの少年だった。
つまり、いきがりたいお年頃の男の子達が、集団でいい気になっているという典型。
彼らにとって、大人の忠告を素直に聞く良い子なんて、ただの裏切者だろう。
それに僕は、彼らの種族も気になった。
全員が狐族だったのだ。
肉食寄りの雑食獣人だけれど、ネーベルハイム市では兎族と同じぐらい姿を見かけない。
狐族は、この世界の元になっているゲームにおいて、嫌われやすい種族だった。
この種族を選択するプレイヤーの評判が悪かったわけじゃなく、プレイヤーが操作していないNPCに嫌われ者が多かったんだ。
それはゲーム内でこの種族に与えられた、『人を騙すのが得意』という特徴が原因になっている。
能力も騙すことに特化したものが多く、商売上手で商人ギルドに登録する者が多い。
さらに狐族の商人は、血気盛んな冒険者を内心で「おつむの足りないバカ」と見下し、カモ扱いする者がほとんどだった。
そう。だいたいは商人ギルドに登録するんだよね。
冒険者になる狐族は、皆無じゃないけれど珍しい。
兎族が戦闘兎になるほうが珍しいんだけども、それは置いといて。
仮に冒険者になったとしても採集や生産職を選ぶか、別の種族の者とパーティーを組んで、サポート担当になるのが大半だ。
全員が狐族のパーティーなんて、戦闘面ではバランスが悪いなんてものじゃない。
ネーベルハイムには今までいなかったタイプだから、パワー型の獣人が多いパーティーと組めばよさそうなものだけど……この子らの性格的に、かなり難しそうだ。
それに、狐獣人が同族だけでパーティーを作り、僻地のネーベルハイム市まで来たとなると……元いた場所でトラブルを起こし、そこに居られなくなって移って来たというにおいがプンプンする。
狐族が集団で、弱そうな相手をなぶるっていう話もあんまり聞かないし――って、僕が兎だから平気で絡んできたのか?
「いいから、そこどけよ」
「俺らはおまえらと違って仕事に来てんだ」
「……僕らも仕事で来てるんだけど?」
それに邪魔なんてしていないだろう。
船着き場までの直線上に僕らがいるだけで、脇を通ればいいだけ……いやちょっと待って。
「まさかきみら、『湖の迷宮』へ潜りにきたの?」
「だったらなんだよ」
「水中で行動するための魔道具が必須だということは知ってる?」
「はぁ? 知らないわけがねーだろ」
「盗んだの? それとも騙し取った?」
彼らの間にピリ、と緊張が走った。
やっぱり。そういう手段で手に入れたんだな。
彼らの装備は見るからに低ランクなのに、高価な魔道具を人数分用意できるわけがない。
「言いがかりつけんじゃねーよ、兎ごときが。いいからそこをどけって――」
「縛鎖」
「うわっ!?」
「ぎゃっ!?」
拘束系の上位魔法をまとめて全員にかけた。
魔力でできた鎖が絡みつき、頑丈さも持続時間も普段の拘束よりも上。
残念ながらこれ、建物並みに巨体のボスには使えないんだけど。
魔力の消費量が相手の体格に比例するものだから、一回かけただけで残り魔力がやばいことになる。
「うっ、くそっ!? なんだこれ!?」
「解けねえっ!? なんでだ!?」
この連中にかける分には全然困らない。
狐族は戦闘面においてサポートタイプだから、固有能力の中に拘束系のものもある。
普段の拘束魔法だと、その固有能力で解かれる可能性があったから、上位魔法を使わせてもらった。
「レン、この魔法なんだ? おっさん初めて見るぞ」
「これはね、上位の拘束魔法なんだけど、一度かかったら魔法や種族特有の能力の使用も完全に封じ込められる優れモノなんだよ」
「おおっ、スゲー!」
さらに、自分より弱いものは抵抗できず百パーセントかかる。
ネーベルハイムでこれに抵抗できそうなのは、それこそ僕の番ぐらいだよ。
「てめえっ、冒険者相手にこんなことしていいと思ってんのか! 冒険者ギルドが黙ってねーぞ!」
「俺らが騙した証拠なんざねーだろ!」
盗んだんじゃなく、騙し取ったみたいだね。
それが僻地に逃げてきた理由かな。
「なんのことかなぁ? 僕は先輩として、実力不足の後輩達の無駄死にを防いであげているだけだよ」
「はぁっ!?」
「それにしても、弱そうな相手をいたぶるのって楽しいんだね。知らなかった。癖になりそうだよ」
にっこり笑いかけてあげると、少年達は怯んだ。
狸のおじさん? これ、お灸を据えるために脅しているだけだから、本気に取らないで。
ドン引きしないでってば。
「兎ごときの貧弱な魔法、さっさと解けたらいいね!」
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