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番外・後日談
Xmasコラボ企画☆『巻き戻り令息』と不思議な本 (5)
読みに来てくださってありがとうございます!
本日2話目です。
※「巻き戻り令息の脱・悪役計画」の主人公達が登場いたします。
そちらを未読の方はご注意くださいませ!
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それにしてもアレッシオ殿、完全無欠すぎやしないだろうか?
彼の手は機械かと思うぐらい、人参とジャガイモの皮があっという間に剥けていた。
「このピーラーは便利ですね。皮剥きがこれほど速くできるとは」
使い方をちょっと教えただけなのにこの執事、作業スピードが『てきぱき』どころじゃない。
俺のほうがこのキッチンに慣れ、料理のレパートリーが多いからギリギリ互角に張り合えているのだ。
タマネギは気を付けないと目がしみるよ、なんて忠告するまでもなく知ってたし。
しかし料理中に雑念は禁物。
競争よりも安全を優先し、何より美味しく作ることを心掛けねば。
メニューに関しては揚げ物系を避けた。俺の世界と、聞いたところオルフェオ殿の世界も、油を大量に使った料理が一般的ではない。
急に油っこいのを大量に食べさせてリシェルがお腹を壊してはいけないので、コロッケや唐揚げなどはやめておく。
メニューはグリーンサラダ、ホワイトシチュー、ローストチキン、アボカドのディップ、バゲット。デザートはクリスマスケーキだ。
サラダのドレッシングは酢、しょうゆ、砂糖、塩胡椒、オリーブオイルを少量混ぜて作る。
アボカドのディップは潰したアボカドにレモン汁少々、茹で卵、玉ねぎのみじん切り、塩胡椒を入れて混ぜる。玉ねぎで食感に変化が出て美味い。
大きめの鍋に油を引いて野菜と鶏モモ肉を炒め、一旦火を止めて水を足してから煮込み、アクが浮いてきたらおたまで丁寧にすくい取る。
俺はこの時点でもう塩を少し入れ、具材にほんのり味が付くようにしておくんだ。
別のコンロにはフライパンを置き、弱火でバターを溶かして、薄力粉と牛乳を徐々に加えながらヘラで練ってホワイトソースを作成。量ができたら最後に鍋に移し、塩や胡椒を入れて味を調える。
このホワイトソース作りがけっこう地味で面倒な作業だ。市販のルウはないしね。
ローストチキンは一番時間がかかるので、早めに取り掛かった。肉の下処理が既にされていたのはありがたいが、下味をつけて何時間も置くことはできないから時短でやる。
しょうゆ、砂糖、みりん、はちみつ、おろしにんにくを使ってソースを作り、チキンにフォークで穴をプスプス開けたら、深皿の中でソースを揉み込む。
調理用の袋があれば肉もソースも一緒に入れて揉み込めるんだが、あいにく素手でやるしかない。石鹸とタオルはあったから、手洗いはしっかりしておく。
現実世界じゃないし、実は衛生面の心配はしなくていいんだろうなと思いつつ、チキンの入った深皿に蓋をして冷蔵庫にイン。
一時間ぐらい置いとけばそこそこ味が染み込むだろ。それまでにほかの料理を用意しつつ、ほどよいところでオーブンをあたため……
「すごい。ランハート、料理人みたいだ」
いきなり近くでリシェルの声が聞こえてビビった。
リシェルとオルフェオ殿がカウンターの向こうにいて、身を乗り出すようにこちらを観察している。
きらきら輝く尊敬のまなざしを正面から浴び、前世に比べたら手際が悪くなってるなと感じていた俺としては、心地いいやら照れるやら。
「飾りつけは終わった?」
「うん! すごく楽しかった。オルフェオ殿がたくさん教えてくれてね」
「リシェル殿はなかなか吞み込みがいいし、センスもいい。私も楽しかったぞ」
ここからでも、モミの木のてっぺんに星が見える。
緑の葉には白い綿の雪がかかり、靴下やサンタクロース、トナカイ、リボンや雪の結晶の形をしたオーナメントで、可愛らしくも豪華でお洒落なツリーに仕上がっているのがわかった。
小さな電球はまだ光っていない。本番は夜だもんな。
「それはそうとアレッシオ。おまえ、そのエプロンはどうした?」
「これですか? 『カフェエプロン』と言うそうですが、ランハート殿から渡されました」
なんか品の良いカフェで男性スタッフが着ていそうな、スタイリッシュな黒エプロンが四人分あったから使ってますが。
「何故それを私に言わない!」
「お気に召しましたか?」
「とてもいい……」
いかにも高貴な美青年が、とても残念なセリフを吐いて悶えている。
こらアレッシオ殿、オルフェオ殿が可愛いからとあれもこれもつまみ食いをさせんじゃねぇ。ホワイトソースがなくなっちまったらシチューがポトフになるだろ、味見は一回だけで我慢させんか。
やれやれと苦笑して正面に視線を戻し、俺は硬直しそうになった。
リシェルが俺の手元をジ~……と見ている。
俺、今、何の作業をしてたっけ。
「ランハート。それはデザート用?」
「あ、うん。これはね」
ケーキの間に挟むための果物を切っているんですよ。
苺とか、シロップ漬けの桃がありましたのでね。フルーツケーキによいなと。
ごめんねリシェル、だからまだこれは食べちゃダメなんだ……!
俺はオルフェオ殿とリシェルのつまみ食い防止のため、彼らに任務を与えた。
その名も、クリスマスケーキ作り。
……これはこれで一抹の不安がなくもない。
「だけどきっと、デコレーションが完成するまでに用意した果物が半分になっているとか、そんなことはないと信じているよリシェル」
「も、もちろんだよランハート!」
真剣な表情で約束してくれたからには、彼はきっとそれを守ってくれると信じたい。
それでもミッテちゃんという見張り係をこっそり任命したのは許してくれ、リシェル。
俺達のやり取りに不安を覚えたのか、アレッシオ殿がケーキ係に合流してくれた。
正直助かる。だってあの二人に任命したはいいものの、「ホイップクリーム作れるんか!?」という疑問が頭をもたげてしまったのだ。
材料はあってもハンドミキサーがないんですよ奥さん?
案の定だった。
俺の指示のもと、リシェルは大きなボウルに氷水を準備し、オルフェオ殿は中くらいのボウルに生クリームと砂糖、少量のレモン汁を投入。
氷水でボウルを冷やしつつ泡立て器でシャカシャカやるぐらいならできるかな? と思いきや、その手つきの危うさはボウルと中身がいつ吹っ飛んでいくかわからない恐怖をもたらした。
彼は悲劇が起こる前にアレッシオ殿にバトンタッチ。
こういう時、オルフェオ殿は「できるもん」と言い張らない。その潔さと判断力はさすがである。
そしてホイップクリームは、赤面するオルフェオ殿の前でアレッシオ殿が鮮やかに完成させた。
「子猫よ、私をなぐさめてくれ」
「よしよし。つうかオマエ不器用でもないのに、なんでコレができにゃいの?」
「私もわからん……」
カウンターに突っ伏すオルフェオ殿の頭を、子猫氏が不思議そうにてふてふ叩いてやっていた。
アレッシオ殿が苦笑しながら俺を見る。
だよね。料理って不思議なもんだよ。それとこれとは別っていう領域でさ。
あっ、このスポンジケーキ、真ん中が切れてないやつだ。
クリームの層を作るため、だいたい中間ぐらいの位置を水平に切ると、リシェルに生クリームを塗ってもらった。
彼も不器用ではないはずなのに、ケーキ用ナイフで塗る手つきが怪しいよ。
それでもなんとか塗り終えて、スライスした苺や桃などを並べ、スポンジケーキの上の部分を被せる。
さらにその上にもクリームを塗り、スライスしていない苺を並べ……
しぼり器がないけど、これはこれでいける。いびつなクリームが逆にいい感じだ。
「できたよランハート!」
「お上手です、リシェル様」
「あ、ランハート殿。ブルーベリーを見つけたのだが載せていいか?」
「いいよ。一応洗って、水気を取ったらこのへんに並べてもらえるかな?」
なかなか豪華なホールケーキである。
皿にのせて、冷蔵庫の食材を取り出したスペースに仕舞った。
外がすっかり暗くなる頃、一番時間のかかったローストチキンが完成。
冷蔵庫に置いておよそ一時間、オーブンで焼き上げるのに三十分以上はかかったかな。
その間、リシェルとオルフェオ殿はモミの木だけでなく、部屋中のあちこちに飾りつけをしていた。
皿とカトラリーはアレッシオ殿が見つけ、テーブルに綺麗にセットしてくれている。
リシェルがわくわくした顔で、イルミネーションのスイッチを入れた。
さて、パーティーの始まりだ!
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