8 / 40
8.主人の片思い
しおりを挟む
出立の日、厩の糞運びから大出世したゼルは張り切っていたが、幾分青ざめても見えた。
クリスは大きな革袋を背負っていた。
「なんだ、それは?」
ルークの問いにクリスはにやにやして答えなかった。よく磨かれた鞍を馬に乗せ、磨き上げた革ベルトと兜、折りたたまれたマントをルークの前に差し出した。
「もしかしたら戦うかもしれないだろう?」
クリスは、主人であるルークの鎧兜を磨き、さらに皮ベルトまで艶出し油でこすり上げた。
さらに、今回はいらないだろうと言ったマントまで持ってきた。
表地が紺色で裏地は赤だった。王国の国章である黒豹のシルエットに鋭い山脈が描かれている。
「かっこいいよ」
クリスに言われると、ルークは頬を赤らめた。
ゼルはなんとも微妙な顔になった。
ゼルは、主人のルークがクリスに片思いしていることにすぐに気づいた。
ルークがクリスに手を出すなと言っていたのは恋愛対象としての意味だったのかとゼルは納得した。
行軍が始まると、糧食部隊がゆっくりと動きだした。
やがて戦が始まると、捕虜になった者たちが後方のテントに連れて来られるようになった。
クリスとゼルは炊き出しや配膳も手伝った。
それから数日後、大変な騒ぎが起きた。
糧食は無事だったが、捕らえたウーナ国の捕虜たちが脱走したのだ。
まさか敵国の間者が入ったのではないかと洗い出しが始まったが、怪しいものはいなかった。
しかしいなくなった者はいた。
それはクリスで、ゼルとルークは顔を見合わせ、真っ青になったのだ。
捕虜を逃がすという失態をおかしたのがクリスの可能性、あるいは入り込んだ何者かがクリスを脅してそれをさせたのか、どちらにしても危険な話だった。
ルークは探しに行こうとしたが、当然ゼルは止め、お守りのゲインはそれをロイダールに報告した。
その夜、ルークは野営地からこっそり離れようとした。
ゼルはすぐに気づき、ゲインを呼ぶべきか迷った。クリスを探しに行きたいのだとわかったのだ。止めればルークに恨まれ、首にされるかもしれない。
「ルーク様、だめです。戻りましょう」
声を落とし、訴えながらゼルはルークの後ろを追いかけた。
「だめだ。クリスを探す。彼には病気の母親がいる。絶対に生きて帰らなければならない身だ。何かあったなら助けてやらなければ」
「たかが部下の命、ルーク様の命の方が大切です」
「クリスの命は軽くない!」
鋭い声がしんとした闇に響いた。はっとして顔を上げた時、二人の前には大人の騎士の姿があった。
「勝手なことは困る」
暗がりに篝火の灯りがちらりと過り、その顔が一瞬浮かび上がった。
ゲインの冷やかな目が二人をしっかりととらえていた。
まるで、脱走した子犬を小屋に戻すようにゲインはルークの体を持ち上げようとした。さすがに抱き上げられるわけにはいかず、ルークは自分のテントに飛んで逃げた。
ゼルもほっとしたように後を追った。
それでもルークは脱走を試みた。
しかしテントから顔を出すと、今度は見張りが三人に増えていたのだ。
ルークはテントに戻り、ゼルに告げた。
「朝になったら探してくれ。お前なら探しに行けるだろう」
「わかりました……」
ゼルは答えたが、初めての戦場、初めての行軍、初めての事件で一体どう探していいのかさっぱりわからなかった。
翌朝、まだ朝霧のかかる薄暗い中、ウーナ国側から一人の少年が姿を現した。
見張りの目をかいくぐり、ルークのテントに近づくと、器用に裏に回りテントの下から潜り込んだ。
テント内ではまんじりとも出来ないルークが座り込み、ゼルは眠そうにこくりこくりと船を漕いでいた。
ルークは背後に奇妙な気配を感じ振り向いた。
そこに深くフードを被った少年が立っていた。
「クリス!」
小さく叫んだルークの声にゼルが驚いて目を覚ました。
フードを跳ねのけ、現れたのは赤毛のクリスで、生き生きとした灰色の目が燃えていた。
クリスは指を一本立て、静かにするように示すと、淡々と話し始めた。
「ルーク、奇襲をかけよう」
ゼルは驚きすぎて声が出そうになり、急いで自分の口を両手で押えた。
ルークはなんとも表現しがたい顔でクリスを見つめている。
「ここ数日、俺は捕虜たちの前でちょっとした芝居を続けたんだ。
筋肉強化の効果を持つ魔法のキノコを戦士達の食事に入れなければと捕虜たちの前で話した。本当は従者の俺は食べてはいけない高価なキノコだけど、ここなら誰もみていないだろうといって、こっそりそれを食べてみせ、突然怪力になったと見せかけた。
柔らかい石灰岩を握って割って見せたんだ。似た色の固い石を周辺にまいておいた。
捕虜たちのテントの裏でそれをこっそり何度か繰り返し、キノコの効果がきいているぞといって戦場に出ているふりをした。
そして夕刻になるとまたそこへ行き、戦果をあげているからまた使ってしまおうと食べたわけだ。で、そのキノコをうっかりそこに置いたまま、捕虜たちを逃がした」
黙って聞いていた二人はそれこそ恐怖に顔を強張らせた。軍の規律を破れば処刑されるかもしれない。
しかし話にはまだ続きがあった。
「大量に用意した痺れキノコや幻惑キノコを彼らは持ち帰った。それでちゃんと食べてくれるかどうか確認したくて逃げた捕虜のふりをして一緒に敵陣に入った。ついでに俺が料理して食べさせた。
夜明けと共に彼らは動けなくなる。それと、ウーナ国の敵陣裏に続く抜け道を見つけた。
今から行こう。敵の武将の首を上げるなら今だ」
クリスはルークの紺のマントをとりあげ、懐に抱いた。
「これを着たらきっとさまになる」
ルークはテントを飛び出し、見張りをしている騎士ゲインにクリスの話を伝えた。半信半疑のゲインだったが、クリスは懐に入れてきたキノコを一つ見せた。
「俺は手柄が欲しい。主人が大事なら見張っていたらいい。でも俺はいく。全員動けなくしたのは俺だ。後方部隊と糧食部隊は完全に動けない。ウーナ国の武将の天幕のすぐ近くだ」
一個中隊がクリスの案内についていった。そしてロイダール隊長の元へ騎士が二人走った。
朝靄の中、クリスは迷いなく進み、ルークはその後ろに続いた。ゼルは足を震わせながら必死についていった。
その後ろを屈強な味方の戦士達が続く。
森や斜面を抜け、崖下の窪みを通り過ぎ巨大な岩の間をすり抜けると、そこはウーナ国側の陣営が敷かれたロアンの丘で、既にそこでは大混乱が起きていた。
食事を食べた兵士たちが起きてこなかったのだ。幻惑キノコのせいで錯乱し、味方に攻撃し始めたものもあり、何が起きたのかと伝令が飛び交っていた。
さらに指揮官たちも無事ではなかった。
クリスはせっせと倒れた兵士たちの天幕を回り、敵兵の甲冑を手に入れてあそこへ行こうと指さした。
それは最奥にある大きな天幕で大将の首があるに違いなかった。
迷いなく、息のある敵兵たちをあっさり殺していくクリスにゼルは驚き、震える手で後に続こうとした。
しかしそれより早く、ついてきた一個中隊の戦士達がその作業に入っていた。
敵兵たちが混乱し騒ぎ立てる中、クリスはルークの手をひっぱった。
「ウーナ国側の今回の戦の責任者はどうもゴーデ伯というらしい。噂できいたが、とにかく用心深い男だとか。俺の予想では……」
クリスとルークは丘の裏側に回り込み、茂みの中から顔を出した。
ゼルも後ろにいた。
丘の下は国境をまたぐ広大な森の端にかかっており、その中に黒い天幕が張られていた。夜であれば全く見えなかっただろう。
今も日陰にあって目立たない印象だ。
「三十人といったところだな。ほら、今出て行った。主の周りには十人……」
「無謀だ。クリス」
ルークの言葉にクリスはにやりとした。
後方で鬨の声があがった。ロイダールが軍を動かし、正面から戦闘を開始したのだ。半数の兵士がキノコの毒でおかしくなっている今こそ好機だった。
「逃げ出したやつが大将だ。狙うは首一つ」
味方の戦士達が迫ってくるのを見ると、三人は飛び出し、馬を奪うと走り出した。
「大変です!敵襲です!ゴーデ様逃げて下さい!」
叫んだのはクリスだった。敵の大将ををおびき出そうとしたのだ。
三人とも敵の甲冑姿だ。
「ルーク!逃がすな!」
クリスが叫んだ。ルークは歯を食いしばり、必死に前を睨んだ。
大混乱の中、速やかに行われた大将の首取りはあっさりと成功した。
大将もまたキノコにあたり動けなかったのだ。
守っていた兵士達も弱っていたため、三人がかりであればなんとかなった。
今回のウーナ国への報復戦はロア王国側の圧勝だった。
当然その手柄はクリスの主、ルークのものだった。
クリスは大きな革袋を背負っていた。
「なんだ、それは?」
ルークの問いにクリスはにやにやして答えなかった。よく磨かれた鞍を馬に乗せ、磨き上げた革ベルトと兜、折りたたまれたマントをルークの前に差し出した。
「もしかしたら戦うかもしれないだろう?」
クリスは、主人であるルークの鎧兜を磨き、さらに皮ベルトまで艶出し油でこすり上げた。
さらに、今回はいらないだろうと言ったマントまで持ってきた。
表地が紺色で裏地は赤だった。王国の国章である黒豹のシルエットに鋭い山脈が描かれている。
「かっこいいよ」
クリスに言われると、ルークは頬を赤らめた。
ゼルはなんとも微妙な顔になった。
ゼルは、主人のルークがクリスに片思いしていることにすぐに気づいた。
ルークがクリスに手を出すなと言っていたのは恋愛対象としての意味だったのかとゼルは納得した。
行軍が始まると、糧食部隊がゆっくりと動きだした。
やがて戦が始まると、捕虜になった者たちが後方のテントに連れて来られるようになった。
クリスとゼルは炊き出しや配膳も手伝った。
それから数日後、大変な騒ぎが起きた。
糧食は無事だったが、捕らえたウーナ国の捕虜たちが脱走したのだ。
まさか敵国の間者が入ったのではないかと洗い出しが始まったが、怪しいものはいなかった。
しかしいなくなった者はいた。
それはクリスで、ゼルとルークは顔を見合わせ、真っ青になったのだ。
捕虜を逃がすという失態をおかしたのがクリスの可能性、あるいは入り込んだ何者かがクリスを脅してそれをさせたのか、どちらにしても危険な話だった。
ルークは探しに行こうとしたが、当然ゼルは止め、お守りのゲインはそれをロイダールに報告した。
その夜、ルークは野営地からこっそり離れようとした。
ゼルはすぐに気づき、ゲインを呼ぶべきか迷った。クリスを探しに行きたいのだとわかったのだ。止めればルークに恨まれ、首にされるかもしれない。
「ルーク様、だめです。戻りましょう」
声を落とし、訴えながらゼルはルークの後ろを追いかけた。
「だめだ。クリスを探す。彼には病気の母親がいる。絶対に生きて帰らなければならない身だ。何かあったなら助けてやらなければ」
「たかが部下の命、ルーク様の命の方が大切です」
「クリスの命は軽くない!」
鋭い声がしんとした闇に響いた。はっとして顔を上げた時、二人の前には大人の騎士の姿があった。
「勝手なことは困る」
暗がりに篝火の灯りがちらりと過り、その顔が一瞬浮かび上がった。
ゲインの冷やかな目が二人をしっかりととらえていた。
まるで、脱走した子犬を小屋に戻すようにゲインはルークの体を持ち上げようとした。さすがに抱き上げられるわけにはいかず、ルークは自分のテントに飛んで逃げた。
ゼルもほっとしたように後を追った。
それでもルークは脱走を試みた。
しかしテントから顔を出すと、今度は見張りが三人に増えていたのだ。
ルークはテントに戻り、ゼルに告げた。
「朝になったら探してくれ。お前なら探しに行けるだろう」
「わかりました……」
ゼルは答えたが、初めての戦場、初めての行軍、初めての事件で一体どう探していいのかさっぱりわからなかった。
翌朝、まだ朝霧のかかる薄暗い中、ウーナ国側から一人の少年が姿を現した。
見張りの目をかいくぐり、ルークのテントに近づくと、器用に裏に回りテントの下から潜り込んだ。
テント内ではまんじりとも出来ないルークが座り込み、ゼルは眠そうにこくりこくりと船を漕いでいた。
ルークは背後に奇妙な気配を感じ振り向いた。
そこに深くフードを被った少年が立っていた。
「クリス!」
小さく叫んだルークの声にゼルが驚いて目を覚ました。
フードを跳ねのけ、現れたのは赤毛のクリスで、生き生きとした灰色の目が燃えていた。
クリスは指を一本立て、静かにするように示すと、淡々と話し始めた。
「ルーク、奇襲をかけよう」
ゼルは驚きすぎて声が出そうになり、急いで自分の口を両手で押えた。
ルークはなんとも表現しがたい顔でクリスを見つめている。
「ここ数日、俺は捕虜たちの前でちょっとした芝居を続けたんだ。
筋肉強化の効果を持つ魔法のキノコを戦士達の食事に入れなければと捕虜たちの前で話した。本当は従者の俺は食べてはいけない高価なキノコだけど、ここなら誰もみていないだろうといって、こっそりそれを食べてみせ、突然怪力になったと見せかけた。
柔らかい石灰岩を握って割って見せたんだ。似た色の固い石を周辺にまいておいた。
捕虜たちのテントの裏でそれをこっそり何度か繰り返し、キノコの効果がきいているぞといって戦場に出ているふりをした。
そして夕刻になるとまたそこへ行き、戦果をあげているからまた使ってしまおうと食べたわけだ。で、そのキノコをうっかりそこに置いたまま、捕虜たちを逃がした」
黙って聞いていた二人はそれこそ恐怖に顔を強張らせた。軍の規律を破れば処刑されるかもしれない。
しかし話にはまだ続きがあった。
「大量に用意した痺れキノコや幻惑キノコを彼らは持ち帰った。それでちゃんと食べてくれるかどうか確認したくて逃げた捕虜のふりをして一緒に敵陣に入った。ついでに俺が料理して食べさせた。
夜明けと共に彼らは動けなくなる。それと、ウーナ国の敵陣裏に続く抜け道を見つけた。
今から行こう。敵の武将の首を上げるなら今だ」
クリスはルークの紺のマントをとりあげ、懐に抱いた。
「これを着たらきっとさまになる」
ルークはテントを飛び出し、見張りをしている騎士ゲインにクリスの話を伝えた。半信半疑のゲインだったが、クリスは懐に入れてきたキノコを一つ見せた。
「俺は手柄が欲しい。主人が大事なら見張っていたらいい。でも俺はいく。全員動けなくしたのは俺だ。後方部隊と糧食部隊は完全に動けない。ウーナ国の武将の天幕のすぐ近くだ」
一個中隊がクリスの案内についていった。そしてロイダール隊長の元へ騎士が二人走った。
朝靄の中、クリスは迷いなく進み、ルークはその後ろに続いた。ゼルは足を震わせながら必死についていった。
その後ろを屈強な味方の戦士達が続く。
森や斜面を抜け、崖下の窪みを通り過ぎ巨大な岩の間をすり抜けると、そこはウーナ国側の陣営が敷かれたロアンの丘で、既にそこでは大混乱が起きていた。
食事を食べた兵士たちが起きてこなかったのだ。幻惑キノコのせいで錯乱し、味方に攻撃し始めたものもあり、何が起きたのかと伝令が飛び交っていた。
さらに指揮官たちも無事ではなかった。
クリスはせっせと倒れた兵士たちの天幕を回り、敵兵の甲冑を手に入れてあそこへ行こうと指さした。
それは最奥にある大きな天幕で大将の首があるに違いなかった。
迷いなく、息のある敵兵たちをあっさり殺していくクリスにゼルは驚き、震える手で後に続こうとした。
しかしそれより早く、ついてきた一個中隊の戦士達がその作業に入っていた。
敵兵たちが混乱し騒ぎ立てる中、クリスはルークの手をひっぱった。
「ウーナ国側の今回の戦の責任者はどうもゴーデ伯というらしい。噂できいたが、とにかく用心深い男だとか。俺の予想では……」
クリスとルークは丘の裏側に回り込み、茂みの中から顔を出した。
ゼルも後ろにいた。
丘の下は国境をまたぐ広大な森の端にかかっており、その中に黒い天幕が張られていた。夜であれば全く見えなかっただろう。
今も日陰にあって目立たない印象だ。
「三十人といったところだな。ほら、今出て行った。主の周りには十人……」
「無謀だ。クリス」
ルークの言葉にクリスはにやりとした。
後方で鬨の声があがった。ロイダールが軍を動かし、正面から戦闘を開始したのだ。半数の兵士がキノコの毒でおかしくなっている今こそ好機だった。
「逃げ出したやつが大将だ。狙うは首一つ」
味方の戦士達が迫ってくるのを見ると、三人は飛び出し、馬を奪うと走り出した。
「大変です!敵襲です!ゴーデ様逃げて下さい!」
叫んだのはクリスだった。敵の大将ををおびき出そうとしたのだ。
三人とも敵の甲冑姿だ。
「ルーク!逃がすな!」
クリスが叫んだ。ルークは歯を食いしばり、必死に前を睨んだ。
大混乱の中、速やかに行われた大将の首取りはあっさりと成功した。
大将もまたキノコにあたり動けなかったのだ。
守っていた兵士達も弱っていたため、三人がかりであればなんとかなった。
今回のウーナ国への報復戦はロア王国側の圧勝だった。
当然その手柄はクリスの主、ルークのものだった。
0
あなたにおすすめの小説
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
最強魔術師の歪んだ初恋
る
恋愛
伯爵家の養子であるアリスは親戚のおじさまが大好きだ。
けれどアリスに妹が産まれ、アリスは虐げれるようになる。そのまま成長したアリスは、男爵家のおじさんの元に嫁ぐことになるが、初夜で破瓜の血が流れず……?
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。
そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。
お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。
挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに…
意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。
よろしくお願いしますm(__)m
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる