愛があってもやっぱり難しい

丸井竹

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28.贈物

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一日たっぷり働いた三組の夫婦はそれぞれの寝室に戻ったが、その部屋には厨房からの呼び出し用のベルが付いていた。
用がある者が厨房でその紐の先を引けば、彼らは飛び起き厨房に駆け付けなければならない。

お客様に夜食が欲しいと言われたらすぐに作り、浴室用のお湯を求められたら真夜中であっても火をおこす。
お客を泊めるとなれば、そうした雑務があるのは当然のことだった。
働くことになれた平民たちは睡眠時間が削られることに不満を持つことなく、そうしたものだと覚悟して眠りについた。

アロナとカインも従業員用の部屋に戻ったが、そこにドルバインが訪ねてきた。

「お前達には俺の部屋で寝てもらいたい」

それは、客人たちを招いている間は絶対に羽目を外さないドルバインには、珍しいことだった。
アロナを抱くことはあるが、それは周囲の状況を見て、最大限遠慮をした上で、大丈夫そうであれば参加する程度のことであり、冬の会が終わるまでは、主催者である立場を重視し、常に何かあれば対応できるように体をあけておくのだ。

存分に交わりを楽しむのは客が帰った後であり、三人だけでその時間を満喫する。
カインが最も楽しみにしている瞬間であり、ドルバインも顔には出さないが、その時を待ちわびている。

良いのだろうかと、アロナとカインは顔を見合わせる。
ドルバインは背中を向け廊下を進みだした。

カインが枕元のランプを持ち上げ、アロナの手を引っ張り、部屋を出る。
ドルバインを先頭に、三人は通路を抜け、来賓用の建物を出た。

雪に埋まった静かな中庭の真ん中を、屋根の付いた渡り廊下が伸びている。
白い息を吐きながら、三人は通路を抜けてドルバインの私邸になっている二階建ての屋敷に入った。

来賓用の建物に比べたら数段地味で簡素な造りだったが、どうせ一人暮らしなのだからと、ドルバインは貴族の邸宅とは思えないような規模の屋敷をあえて建てたのだ。

屋敷の部屋も少し狭く造られていたが、二階の寝室だけは広かった。
窓から見える庭の雪が月明りを反射し、ほのかに白く光っている。
寝室に入ると、ドルバインは暖炉に火を入れ始めた。
後ろからついてきたアロナとカインが、急いで薪を運び、ドルバインの仕事を代わる。

ドルバインは寝台に向かうと、テーブルから二つの箱を取り上げた。
暖炉に火が入り、温かな赤い光が部屋に溢れる。

赤く照らし出される互いの顔を見合わせ、カインとアロナは微笑んだ。

「カイン、アロナ」

ドルバインに呼ばれ、二人が寝台に近づく。
二人の前に、ドルバインが二つの箱を差し出した。

それぞれに一つずつ手渡す。
アロナの箱は手のひらサイズで小さく、カインのものはもう少し大きかった。

二人は揃って箱の蓋を開けた。

「あっ」

「これは……」

同時に声を出し、期待に顔を輝かせ、箱の中をじっと見つめる。
アロナの箱の方には、見たこともないような美しい宝石をちりばめたピアスが入っていた。

「勝手に穴を開けただろう?」

アロナは顔を赤くして頷いた。
ドルバインとカインを助けるため、アロナは卑猥な装飾品で乳首を飾って裁判会場に入り、全裸になってそれを貴族たちに見せつけたのだ。
アロナは、箱を傍らの机に置き、服を脱いだ。

「もう穴はふさがっているかもしれません」

あれから、もう一年近く経つ。
白く美しい乳房に手を添え、ドルバインはピアスを一つ取りだした。
細く尖った銀色のピンの両脇に丸い金具がついている。

乳首を挟むその丸い留め具の両脇から、細い金属の鎖が伸びており、乳首の下で一つの鎖になり、そこから指一本分ぐらいの長さの蔓薔薇が垂れ下がっていた。
それは手の込んだ美しい細工品で、花と蔓部分は赤と緑の宝石で作られている。

どこかに鈴が入っているらしく、揺れると澄んだ音が鳴る。
右の金具を外し、ドルバインはアロナの乳首に針の切っ先を向けた。

「怖いか?」

カインがアロナの手を強く握る。

「大丈夫です」

穴はふさがっていたが、その痕跡はあった。
ドルバインがそこにピアスの針を強く押し込んだ。
覚悟を持ったその力は、あっという間に乳首を貫き、赤い血が白い肌を伝う。
反対側の丸い金具の先端で、貫通した針に蓋をすると、ドルバインは机に置かれた瓶を取り上げた。
一緒に置かれていた清潔な布に、その瓶の液体をしみ込ませ、アロナの傷ついた乳首を拭く。

つんと鼻をつくようなお酒の香りが漂った。

「消毒だ」

ドルバインが説明し、もう一つピアスを取り上げ、同じように左の胸にも取り付けた。

「アロナ、きれいだ」

カインが喜びに震える声で囁いた。
輝く赤い蔓薔薇に彩られた自分の乳房を見て、アロナもはにかむように微笑んだ。

「カイン、つけてやる」

アロナの方が終わると、ドルバインはカインの持っている箱の中から小さな筒を取り出した。
どう見てもそれは、男根に嵌める道具であり、簡易的な貞操帯だった。

「全部を押さえ込む形のものもあったが、それでは不便すぎるだろうと思い、こちらを選んだ。太さを変えられるものだ。ズボンを下ろしてみろ」

頬を赤く染め、カインはズボンと下着を下ろした。
少しだけ大きくなってしまっているそれを、ドルバインは器用にコアスライムの殻で作られたその筒に通し、根元の裏側についているねじで止める。

さらに箱から赤い宝石を嵌めこんだ小さな鍵を取り出した。
ねじの横についている小さな鍵穴に差し込み、微調整をする。

「し、締め付けてくる……」

半透明のその筒は、金属のような固さはなく、薄い膜のようにカインの物を包み込む。
先端部分は丸くなっており、中央に穴が空いていた。

ドルバインが鍵を右に回していくと、カチカチと音が鳴り、筒がさらに締め付ける。

「あっ……」

カインの表情を見て、ドルバインが反対に鍵を回す。
丁度良さそうなところでドルバインが鍵を外した。

赤い宝石飾りがついた鍵の上部には、金の鎖が付けられている。

「さてこの鍵はどこに置くかな……」

わざとらしく声に出しながら、ドルバインはそれを自分の首にかけた。
妻を好きに抱ける男が夫の性器を拘束しているのだと思うと、カインは興奮し、股間を押さえ快感と苦痛の混ざりあった声をあげた。

「痛いのに……気持ちが良いです……ドルバイン様……ありがとうございます」

すっかり発情した犬のようになったカインは、体を曲げて股間を押さえている。
剥き出しの袋の部分は、心持ちずっしりと重くなってきているように膨らみ、カインはその先から出せない辛さを気持ちよく堪能し、もじもじと腰を動かす。

その先端から既に透明の汁が涙のように溢れている。

「カイン、気持ちが良いの?」

指先でアロナはその先端部分にそっと触れた。

「あっ……良いよ……すごく。でも、刺激を受けると痛くて……」

苦痛と喜びに喘ぐカインを心配そうに見ているアロナの腕を、ドルバインが掴んで引き寄せた。

「今夜はここで寝て、明日からはまたいつも通りだ。会が終わったら鍵を外してやる」

「い、いいえ!その……全部終わって家に帰ってからでも良いです!」

「そんなに出したくないのか?」

「気が狂うほど出したい時が、一番気持ちが良いので……」

カインの言葉にドルバインは苦笑し、アロナはなんとも言えない顔になった。
心配だが、カインが幸せであればそれはうれしいし、でも痛いなら助けてあげたい。
どういう心境でそれを受けとめたらいいのか、いまだにその答はわからない。

ドルバインはやはりカインの一番の理解者だった。
カインは、妻の乳房を飾るその宝石で出来た蔓薔薇にも魅了されていた。
夫以外の男からの贈り物で、体を変化させられているところも最高に良かった。

華やかな飾りは錘となり、控えめに顔を覗かせていた突起を強調させ、その形は少し崩れ下に伸びている。

「本当にきれいだ。アロナ、君の体がドルバイン様の手によって変えられてしまうことに、こんなに興奮するなんて考えたこともなかったけど、すごく良いよ。たまらなく素敵だ」

宝石の重みで垂れる乳首を見おろし、アロナは誰とでも寝る淫乱な女に見られてしまいそうで少し嫌だった。
それなのに、ドルバインに贈られたその装飾品は、女性なら誰もが憧れるような美しい宝石で出来ていて、完全にアロナの心を魅了していた。

これが首飾りや指輪、あるいは髪飾りなど、もっと普通の装飾品であれば純粋に喜べたが、乳首となると見せびらかすわけにもいかない。

指先で美しくカットされた宝石を持ち上げ、その輝きにアロナはうっとりとした。

「気に入ったか?」

ドルバインの問いかけに、アロナは渋々頷いた。
まじない屋で買った偽物のビーズとは全く違う。
本物の宝石だと、本物を見たことのないアロナでもわかるほど美しい作品だった。

ずっしりとした重さも、宝石と同等の価値ある存在にしてもらったようでアロナの心は浮き立った。
あまり大切に扱ってもらえない農民には、相応しくない品だ。
姫君にでもなったような気分になる。

その表情を確かめ、ドルバインはアロナを抱き上げ寝台に横たえた。

うっとりとアロナがドルバインを見上げる。
カインは喉を鳴らし、さっそく床に四つん這いになり、顔の高さを寝台の上に合わせた。

その股間には重そうな袋が垂れ下がり、締め付けられた男の物はさっそくぽたぽた泣き出していた。

ドルバインは血を流した乳首を指で優しく撫でた。
それから痛みの残る乳首にはもう触れず、気遣うように乳房をもみあげた。

髭で覆われた口が迫ってくると、アロナは唇を少しだけ開いて待った。
ドルバインの舌が歯の間から出てくると、アロナも小さな舌を迎えるように唇から覗かせた。
舌先を絡めながら二人の唇は重なり、ドルバインが齧りつくようにアロナの唇を覆い尽くした。

愛情のこもった優しい愛撫に、アロナは心から安心して身をゆだねている。
そんな妻の姿をカインはうっとりと見つめている。

身をよじるたびに、乳首に付けられた宝石飾りが澄んだ音を立て、白い乳房の上できらきらと輝いた。
触れられていないのに、ピアスのせいでアロナの乳首は常に固く尖って見える。
赤く飛び出したその突起は、やはり淫らで最高に、美しいとカインは思った。

その夜の行為は、傷のあるアロナを労わり、ドルバインにしては甘く、優しいものとなった。
相変らずの強面で、感情は一切覗かせなかったが、アロナは全身でドルバインの愛情を感じていたし、それを見ていたカインも、最高に幸せな心地になった。

アロナが達したことを確かめ、ドルバインはさらに深く腰を押し付け、自身も欲望を吐き出した。
その子種が夫のものより深く、さらに長く残るように、ドルバインは強くアロナを抱きしめ、肉棒を何度も奥まで擦り付けた。

数秒じっとしていたドルバインは、慎重に肉棒を抜き取り、アロナを腕に抱いたまま横にずれた。
カインが寝台に登り、アロナの股間に顔を埋める。
犬のようにぺちゃぺちゃと舐めて、後始末を始めると、アロナはまた蕩けるような声をあげた。

カインに触れようと伸ばしたアロナの手を、ドルバインはそっと掴んで引き離した。

アロナはちょっぴりがっかりしたが、カインは喜んだ。
お預けをされることも、カインには気持ちが良いのだ。

満足してカインが毛布にくるまり床で横になると、アロナもドルバインの腕に抱かれたまま、カインの方を向いた。

「カイン、大丈夫なの?」

股間の貞操帯のせいで、カインは少し痛そうに顔を歪めている。
カインは子犬のように目を輝かせた。

「気持ちが良いよ。気が狂いそうにね。君がドルバイン様に抱かれている姿を夢の中でも見たいよ。アロナも、良い夢を見て。また明日から大変だ」

二人は満足そうに目を閉じ、すぐに心地よさそうな寝息を立て始めた。
それを見届け、ドルバインはそっとアロナの頭に唇を押し付けた。

髭で隠れた口元に、かすかな微笑みをたたえる。
決して口には出せない迸るような感情や愛を完璧に隠し、ドルバインは静かに瞼を落とした。



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