学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林

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橋爪 裕翔

第二話

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「西蓮寺様、まずは先日の非礼を心からお詫びします」

そう言って裕翔は机に額が当たってしまうほど見事に頭を下げた

「え、えぇ?橋爪君はどうして急に謝ってきたの?」
「それは先日起きた月城代議士のスキャンダルに関わっている事です」
「月城代議士の、スキャンダル……?」

それって誠のお父さんが関係を疑われていた案件だよね?

「はい。僕の家は近畿地方を中心に事業を広げる法人団を運営しています。それで安田自動車の安田家から一億を超える寄付をされていたんです」
「へぇ、一億の寄付ね」

安田家程の家が一億しか出さないなんて、随分ケチだなぁ

「西蓮寺様の家は寄付などに頼らずに事業を行っているそうですが、僕の家は寄付などによって成り立っているんです。だからどうしても安田家の指示に逆らえなかったんです」
「安田家の指示?」
「はい、寄付を来年からしないと脅されて、西蓮寺家当主と西条家当主が会うことを阻止するように言われたんです。それで僕は仕方なく西蓮寺様に接近したんです」
「安田家は自分のした事が露見したくなくて、誠のお父さんと僕の父さんの接近を止めさせたかったんだね」

裕翔は深く頷く

「事情は分かったよ。けど、疑問なのは何故アレだけだったの?」

恭介は脅されいた裕翔が何故、『西蓮寺家如きが調子に乗るな』としか言わなかったのかが不思議だったのだ

「それは……」

裕翔は少し考えると口を開いて喋りだした

「本当に西蓮寺家当主と西条家当主が会うのを阻止してしまったら安田家はさらに力を得てしまうと思ったからです。安田家の目がどこにあるか分からなかったから耳元で言えば脅してる風に見えると思って……。そしたら西蓮寺様も驚いた顔をしくれたから、上手く脅したように見せれたんです」
「なるほど、橋爪君は脅されてあんな事をしていたんだね。僕はてっきり病院経営の事でウチが恨まれたのかと思ったよ」
「そんな訳ありません!寧ろ父は西蓮寺理事長のことを尊敬してますよ!」
「ふふっ、そんな風に言って貰えたら父さんも喜ぶよ」

恭介はそう言って席を立つ

「じゃ、誤解も解けたし僕はこれで行くね」
「……本当にすみませんでした」

裕翔も席から立ち、深く頭を下げる

「あ、頭上げてよ!大丈夫だよ!」
「……ありがとございます」

裕翔は泣いていた
それは、安田家という大きな脅威からようやく免れたという安堵の涙だった

その後二人は別れ、それぞれの帰路についた



──────────────

一億が安いって……
恭介の金銭感覚やばいっすね
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