人見知り伯爵の運命の番

紅林

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婚約編

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グラス視点


俺はグラス、弱小種族の羊族の王だ
俺は虎族や熊族といった強大種族の争いに巻き込まれないようにして羊族を率いていた。そんな毎日を過ごしていたある日、獣王が死んだという報せが獣王国中に鳴り響いた。獣王が死んだということは新たな獣王を各種族の王から選定するということだ。

俺は弱小種族の王だ。最初から勝てるなんて思ってもみなかった。だが、戦いを挑んでくるどの種族の動きも全て俺には予想出来た。何故だか分からないが相手の動きがゆっくりに見えるのだ。戦いが始まった瞬間、時間が止まったかのようにスローモーションで時が進んだ。
俺はこの能力を使って各種族の王を打ち倒し獣王の座に着いた。羊族の皆は喜んでくれたし俺は獣王になれてよかったと思っている。そんな時、俺はある問題に直面していた。それは、隣国バストロイドとの関係についてだ。

隣国、バストロイド王国は長年サーヴェッチ獣王国と争ってきたこの世界の二大大国だ。我が国は獣人の住む国だがバストロイド王国は人族という種族が住んでいて比較的温厚な性格をしていると聞く。そして身分制度があり貴族院と衆議院がある立憲君主制の国なんだとか。

そのバストロイド王国と今争うのはマズい。獣王が変わったばかりで国が少し混乱している状態だ。だが俺はそんな弱腰の姿勢を部下たちや国民に見せられないので正直になって戦争を回避すべきということを元老院に言えないでいる。
そんな時、バストロイド王国側から友好条約の締結案が出された。

獣王国に来た使者は不気味な仮面をつけたハルミトン・コンフィニシス伯爵という若そうな男だという報告を受けた。
俺はなんとしても友好条約を締結しようとしていたが、元老院と外務省がそれを許さなかった。元老院はこの案件を承認せず、外務省も同じく承認しなかった。俺は最後の希望を持ってバストロイドの使者を見定めるという名目でハルミトン・コンフィニシス伯爵に会ってみることにした

会った瞬間に俺は気づいた。彼は俺の番だということに
側近たちが攻撃しようとしているのを止めて俺はゆっくりとハルミトンへと歩み寄った。

「俺の番!俺の番!やっと会えた!これ程番とは引き寄せられるものだったのだな!」
「は、離してください!番とは何ですか!?」

俺の番は混乱しているようだ。俺は短く簡単に『番』につてハルミトンに説明した

「確かハルミトンだったな?俺の妃になってくれないか?あぁ、愛しい顔を見せてくれ。仮面なんて外して?」

ハルミトンはそう言っても中々仮面を外してくれない

「やめ…やめてください!」

俺は腕を振りほどかれた
一瞬、俺は何が起こったのか分からなかった

アルベルトがハルミトンに向かってなにか言っているが俺はそれすら頭に入ってこなかった。ハルミトンは番になれない理由を言っていたが俺はそれどころではなかった。混乱でハルミトンから視線を外せない

「お願いだから、国に返してくれ……」

俺はその言葉でようやく我に返りハルミトンを腕の中から解放し部屋に返した。
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