路地裏の厄介事

氷魚彰人

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厄介事-5-

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 頭を殴られていた事から念の為、三日程入院する事になったが、精密検査の結果異常なしと判断され、男は退院し吉良の家にいた。

「お前、目を離すとやばい事に巻き込まれそうだから、ここに住め」

 麻薬の件が片付いた今、危険にさらされる事はないだろう。だが、アパートを放火され住む場所を追われた男にはありがたい言葉だった。

「あの、働いて、家賃とか払います」
「そういうのは気にしなくていい。とにかく毎日うちに帰って来い」
「でも、吉良さんにはたくさん迷惑かけたし……」
「俺が勝手にやった事だ。お前が気にする必要はねぇよ」
「でも……」
「そんなに何かしたいなら、店手伝えよ」

 仕事を任されたのが嬉しいのか、まだ腫れの引かない顔に満面の笑みを浮かべ頷く男に胸のざわめきを覚え、慌てて視線を泳がせた。
 心を落ち着かせるために煙草を咥え、一息つける。

「それはそうと、お前、何抱えてんだ?」
「咲良さんが快気祝いにくれたんだけど……」

 嫌な予感に男から袋を奪い中を確認すれば、案の定アダルトグッズの詰め合わせだった。

「あのバカ」

 すぐさま袋を閉じ、背に隠すように置く。

「中は見てないよな?」
「え…その……」

 しどろもどろな答えから見てしまったのだと分かり、吉良は額を押さえた。

「忘れろ。これは咲良の悪ふざけだ」
「え……」

 あからさまに傷付いた顔をされ、指から煙草を落としそうになった。

「お前、ヤル気だったのか?」
「いや、その…吉良さんがしたいなら、いいかなって……」

 ごにょごにょと口篭る男に吉良は溜息を吐いた。

「お前は色々な事があって、興奮状態なんだよ。そんな気になっているだけだ」

 断言され、男は俯いた。

「だから、興奮が落ち着いて、それでもその気があれば……」
「あれば?」
「誘ってくれ」

 吉良の言葉に男は顔を真っ赤にし「頑張ります」と小さな声で呟いた。
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