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最低な王子(ペドロル視点)
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ベッドの上で激しく抱き合う二人。第二王子のペドロルと、彼の浮気相手だ。
やがて彼らは欲望を満たすと、ベッドに横になり、お互いの体をくすぐりあったり、口づけを交わしたりと、軽いスキンシップをしながら、談笑した。
「ねぇ。私たち、そろそろ一緒になれませんか?」
女は上目遣いで、ペドロルのことを見た。
ペドロルは彼女の色気にやられ、鼻の下を伸ばした。
「そうだな、パトン。あいつとはなるべく早いうちに、別れるようにするよ」
「本当?」
「ああ」
「嬉しいです」
女が抱きつくと、ペドロルはますます気をよくした。そしてそろそろ本当に、今の婚約者との関係を解消するために行動しようと考えた。
何、簡単だ。人間なんて、男も女も単純な生き物なんだから。
女の柔らかい体をいやらしく弄り、彼女の嬌声を聞きながら、ペドロルは自分が神にでもなったような気分で、考えを巡らせていた。
「お呼びでしょうか、ペドロル様」
「うむ」
後日呼びつけたのは、使用人の一人、アルダタだ。改めて目の前にすると、女の使用人たちがキャーキャー騒ぐのも頷ける。すらりとした体つき、艶やかな黒髪、憂を帯びた瞳、そしてスッと伸びた鼻筋。私ほどではないにせよ、確かに使用人にしておくにはもったいないほどの美男子だ。
「こっちに来い」
「? はい」
私が呼ぶと、アルダタは不思議そうな顔をしながら私との距離を詰めた。
「内密に、お前に頼みたいことがある」
私が声を抑えてそう言うと、アルダタは緊張した面持ちになった。
「何でしょう?」
「これは絶対に他の者に漏らしてはならない話だ。だから内容を聞いた後になって、『それは引き受けられません』と言われても困る。やる気があるなら話す。しかし最初からやらないつもりなら、何一つ話すことはできない」
「はい……」
アルダタは迷っているようだった。
それはそうだ。こんな無茶な要求、たとえ自分の主人からであっても、躊躇わない方がおかしい。想定内だ。
だが私は、少し前にある情報を仕入れた。こいつの叔父である男、屋敷にも出入りしている荷運び屋から。それを聞いたときに、これは使える、と思ったのだ。今がその話の使い時だろう。
「それはそうと、小耳に挟んだのだが……」
私はわざわざ悲しい顔をつくって言った。
「お前のお母様は、難しい病気を抱えてらっしゃるのだな」
アルダタははっとした表情を浮かべた。
「もしお前が私の望むことを叶えてくれたならば、私も、お前の望むことを叶えてやろう。医者の知り合いならば腐るほどいる。お前のお母様の病気も、きっと良い方向に向かうだろうなぁ」
アルダタは黙った。
考えろ、考えろ。しかしお前の性格は分かっている。これまでずっと、使用人での稼ぎはほぼ全て、叔父を介し、その病の母に渡していたらしいな。
そんな心優しいお前なら、答えは一つしかないだろう?
「……分かりました。協力させてください」
ほら、この通りだ。
「言ったな。話を聞いて『できない』などと言ったら、どうなるか分かっているだろうな?」
「誓ってそのようなことはありません。やらせてください」
「よく言った」
ここまではっきりと宣言させておけば間違いはない。こいつは義理堅く、まっすぐな男だ。自分の誓ったことを翻すようなことがあれば、自死することも厭わないだろう。
「耳を貸せ」
私が言うと、アルダタは耳を傾けた。
その耳に向かって、私は言った。
「私の婚約者マリルノが、私との婚約を破棄したいと言い出すように仕向けなさい。お前の顔はそう悪くない。どんな手を使えばよいかは、分かるだろ?」
「……かしこまりました」
「行け」
アルダタは深く礼をして、部屋を去った。
余計なことを詮索しようとしない察しの良さも、あの男が備えている美点のうちの一つだな。
私は満足して、椅子に深く体を預けた。
やがて彼らは欲望を満たすと、ベッドに横になり、お互いの体をくすぐりあったり、口づけを交わしたりと、軽いスキンシップをしながら、談笑した。
「ねぇ。私たち、そろそろ一緒になれませんか?」
女は上目遣いで、ペドロルのことを見た。
ペドロルは彼女の色気にやられ、鼻の下を伸ばした。
「そうだな、パトン。あいつとはなるべく早いうちに、別れるようにするよ」
「本当?」
「ああ」
「嬉しいです」
女が抱きつくと、ペドロルはますます気をよくした。そしてそろそろ本当に、今の婚約者との関係を解消するために行動しようと考えた。
何、簡単だ。人間なんて、男も女も単純な生き物なんだから。
女の柔らかい体をいやらしく弄り、彼女の嬌声を聞きながら、ペドロルは自分が神にでもなったような気分で、考えを巡らせていた。
「お呼びでしょうか、ペドロル様」
「うむ」
後日呼びつけたのは、使用人の一人、アルダタだ。改めて目の前にすると、女の使用人たちがキャーキャー騒ぐのも頷ける。すらりとした体つき、艶やかな黒髪、憂を帯びた瞳、そしてスッと伸びた鼻筋。私ほどではないにせよ、確かに使用人にしておくにはもったいないほどの美男子だ。
「こっちに来い」
「? はい」
私が呼ぶと、アルダタは不思議そうな顔をしながら私との距離を詰めた。
「内密に、お前に頼みたいことがある」
私が声を抑えてそう言うと、アルダタは緊張した面持ちになった。
「何でしょう?」
「これは絶対に他の者に漏らしてはならない話だ。だから内容を聞いた後になって、『それは引き受けられません』と言われても困る。やる気があるなら話す。しかし最初からやらないつもりなら、何一つ話すことはできない」
「はい……」
アルダタは迷っているようだった。
それはそうだ。こんな無茶な要求、たとえ自分の主人からであっても、躊躇わない方がおかしい。想定内だ。
だが私は、少し前にある情報を仕入れた。こいつの叔父である男、屋敷にも出入りしている荷運び屋から。それを聞いたときに、これは使える、と思ったのだ。今がその話の使い時だろう。
「それはそうと、小耳に挟んだのだが……」
私はわざわざ悲しい顔をつくって言った。
「お前のお母様は、難しい病気を抱えてらっしゃるのだな」
アルダタははっとした表情を浮かべた。
「もしお前が私の望むことを叶えてくれたならば、私も、お前の望むことを叶えてやろう。医者の知り合いならば腐るほどいる。お前のお母様の病気も、きっと良い方向に向かうだろうなぁ」
アルダタは黙った。
考えろ、考えろ。しかしお前の性格は分かっている。これまでずっと、使用人での稼ぎはほぼ全て、叔父を介し、その病の母に渡していたらしいな。
そんな心優しいお前なら、答えは一つしかないだろう?
「……分かりました。協力させてください」
ほら、この通りだ。
「言ったな。話を聞いて『できない』などと言ったら、どうなるか分かっているだろうな?」
「誓ってそのようなことはありません。やらせてください」
「よく言った」
ここまではっきりと宣言させておけば間違いはない。こいつは義理堅く、まっすぐな男だ。自分の誓ったことを翻すようなことがあれば、自死することも厭わないだろう。
「耳を貸せ」
私が言うと、アルダタは耳を傾けた。
その耳に向かって、私は言った。
「私の婚約者マリルノが、私との婚約を破棄したいと言い出すように仕向けなさい。お前の顔はそう悪くない。どんな手を使えばよいかは、分かるだろ?」
「……かしこまりました」
「行け」
アルダタは深く礼をして、部屋を去った。
余計なことを詮索しようとしない察しの良さも、あの男が備えている美点のうちの一つだな。
私は満足して、椅子に深く体を預けた。
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