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公爵令嬢はどこへ(アルダタ視点)
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手紙を書き終わった。
生まれてから一度も書いたことがなかったし、二通書いたのでとても時間がかかった。それでも、自分の伝えたい思いを形にすることができるのは、最初の文字を覚えたとき以上の喜びがあった。
もし使用人たちがこの喜びを知ったら、皆、夢中になって手紙を書くだろうな、と思った。しかしそうなったら、誰がこの屋敷の掃除をするだろう。やはり使用人が文字を覚えることは、よくないことなのかもしれない。
しばらく待っても帰ってくる様子がなかったので、私は部屋を出てマリルノ様を探しに行くことにした。てっきり手紙を書き終わるまでに帰ってくると思ったので、どこで待っているのかなどは聞いておかなかった。
もしかするとペドロル様がお帰りになって、彼の部屋に二人でいるのだろうか。
久しぶりに会うことができて、とても幸せそうに話されるマリルノ様。
そんな彼女の姿を想像すると、胸が締め付けられるように痛んだ。そんな思いを抱く資格なんて、これっぽちもないのに。
「マリルノ様? ああそうだ。先ほどタラレッダさんが、三階のバルコニーに行かれるっておっしゃられていましたよ」
使用人室にいた一人に聞くと、そんな答えが返ってきた。
バルコニー? 一体何をしているんだろう。
「タラレッダさんったら、おかしいんですよ。何でも、マリルノ様に一緒にお茶会をしましょう、って誘われたっていうんです。使用人の私たちがそんなこと言われるなんて、冗談に決まっていますよね」
ふふっ、とその子は嫌味なく笑った。
いや、あのマリルノ様ならあり得るだろう。
使用人の私に、自ら文字を教えてくださっているほどの方なのだから。
しかし相手がタラレッダであるという点が心配だった。
噂好きのあの使用人がマリルノ様からあれやこれや聞き出したら、すぐに屋敷中の人間がその話を知ることになるだろう。
居場所を教えてくれた使用人に礼を言って、私は使用人室横の階段を駆け上がった。
生まれてから一度も書いたことがなかったし、二通書いたのでとても時間がかかった。それでも、自分の伝えたい思いを形にすることができるのは、最初の文字を覚えたとき以上の喜びがあった。
もし使用人たちがこの喜びを知ったら、皆、夢中になって手紙を書くだろうな、と思った。しかしそうなったら、誰がこの屋敷の掃除をするだろう。やはり使用人が文字を覚えることは、よくないことなのかもしれない。
しばらく待っても帰ってくる様子がなかったので、私は部屋を出てマリルノ様を探しに行くことにした。てっきり手紙を書き終わるまでに帰ってくると思ったので、どこで待っているのかなどは聞いておかなかった。
もしかするとペドロル様がお帰りになって、彼の部屋に二人でいるのだろうか。
久しぶりに会うことができて、とても幸せそうに話されるマリルノ様。
そんな彼女の姿を想像すると、胸が締め付けられるように痛んだ。そんな思いを抱く資格なんて、これっぽちもないのに。
「マリルノ様? ああそうだ。先ほどタラレッダさんが、三階のバルコニーに行かれるっておっしゃられていましたよ」
使用人室にいた一人に聞くと、そんな答えが返ってきた。
バルコニー? 一体何をしているんだろう。
「タラレッダさんったら、おかしいんですよ。何でも、マリルノ様に一緒にお茶会をしましょう、って誘われたっていうんです。使用人の私たちがそんなこと言われるなんて、冗談に決まっていますよね」
ふふっ、とその子は嫌味なく笑った。
いや、あのマリルノ様ならあり得るだろう。
使用人の私に、自ら文字を教えてくださっているほどの方なのだから。
しかし相手がタラレッダであるという点が心配だった。
噂好きのあの使用人がマリルノ様からあれやこれや聞き出したら、すぐに屋敷中の人間がその話を知ることになるだろう。
居場所を教えてくれた使用人に礼を言って、私は使用人室横の階段を駆け上がった。
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