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誠実な筆跡(マリルノ視点)
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アルダタさんの真剣な、吸い込まれるような眼差し。
私はまた、心臓が強く速く鼓動しているのを感じました。
しかしそうと悟られないよう慌ててにっこりと笑い、
「嬉しいです。では……」と手紙を開封しようとしました。
「待って……ください」アルダタさんが、私の手をおさえました。
彼に手を握られる形となり、私はかっと顔が熱くなるのを感じて、思わず俯きました。
「この手紙は持ち帰って読んでいただきたいのです。誰にも見せず、お一人で」
「そ、」私は無理をして普段通りの調子を装いました。けれど頭のなかは完全に混乱していて、何が何やら……「そうですね!手紙ですものね!わかりました!では今日はこれまでにしましょう!お元気で!」
「あっ」アルダタさんの引き留めようとする手が視界の端で見えましたが、私は構わず、彼から逃れるように部屋を出て行きました。
そのまま馬車で待つパージさんのところまで行って、私は自分の住まいまで送ってもらいました。
いつもはアルダタさんに見送られているので、パージさんは不思議そうな顔をされていました。
私が部屋を出た後、アルダタさんが廊下を追いかけてくる気配はなく、屋敷からも出てこず、私は少し失礼なことをしてしまったかしらと後から反省しました。
しかし屋敷を出た時には気が動転していて、そのことにすら意識が向いていなかったのです。
馬車からおろしてもらうと、私はパージさんにお礼を言い、入口へ向かいました。
すると愛犬のバウウェルが、全身の美しい毛を風になびかせ、私のもとに走り寄ってきました。
「ただいま、バウちゃん!」
私の腕に飛び込むと、彼は嬉しそうに、私の手や顔をなめました。私はおかえしに、首のあたりをわしゃわしゃします。彼はものすごく幸せそうに、尻尾をぶんぶん振りました。
そんなやりとりを交わしていると、私の心は少しだけ落ち着きを取り戻しました。
彼の体をぎゅっと抱きしめて、それから離すと、彼は物足りなそうな顔で、もっと遊んで欲しい!という顔をしました。
そんな彼に「ごめんね」と言って、私は屋敷の中に入りました。
私はただいま帰りましたと、キッチンにいたお手伝いのマメモさん、それから談話室でくつろいでいたお母様に言って、自分の部屋のベッドに身を投げ出しました。
ドクドク、ドクドク、ドクドク……
一人になると、心臓の音が聞こえました。アルダタさんが目の前にいたときよりは落ち着いたようですけれど、緊張感はまだ続いていました。私はふぅと息を吐いて、覚悟を決めました。
まずは手紙を読まなければなりません。読まなければ、他のことが何一つ、手につきそうにないですから。
私は頂いた手紙を取り出して、開封しました。
目に飛び込んできた文字は、決して端正な字とは言い難かったですけれど、時間をかけて真剣に書いてくださったことが伝わる、とても読みやすい誠実な筆跡でした。
私は彼の手紙を、最初から順を追って読み始めました。
私はまた、心臓が強く速く鼓動しているのを感じました。
しかしそうと悟られないよう慌ててにっこりと笑い、
「嬉しいです。では……」と手紙を開封しようとしました。
「待って……ください」アルダタさんが、私の手をおさえました。
彼に手を握られる形となり、私はかっと顔が熱くなるのを感じて、思わず俯きました。
「この手紙は持ち帰って読んでいただきたいのです。誰にも見せず、お一人で」
「そ、」私は無理をして普段通りの調子を装いました。けれど頭のなかは完全に混乱していて、何が何やら……「そうですね!手紙ですものね!わかりました!では今日はこれまでにしましょう!お元気で!」
「あっ」アルダタさんの引き留めようとする手が視界の端で見えましたが、私は構わず、彼から逃れるように部屋を出て行きました。
そのまま馬車で待つパージさんのところまで行って、私は自分の住まいまで送ってもらいました。
いつもはアルダタさんに見送られているので、パージさんは不思議そうな顔をされていました。
私が部屋を出た後、アルダタさんが廊下を追いかけてくる気配はなく、屋敷からも出てこず、私は少し失礼なことをしてしまったかしらと後から反省しました。
しかし屋敷を出た時には気が動転していて、そのことにすら意識が向いていなかったのです。
馬車からおろしてもらうと、私はパージさんにお礼を言い、入口へ向かいました。
すると愛犬のバウウェルが、全身の美しい毛を風になびかせ、私のもとに走り寄ってきました。
「ただいま、バウちゃん!」
私の腕に飛び込むと、彼は嬉しそうに、私の手や顔をなめました。私はおかえしに、首のあたりをわしゃわしゃします。彼はものすごく幸せそうに、尻尾をぶんぶん振りました。
そんなやりとりを交わしていると、私の心は少しだけ落ち着きを取り戻しました。
彼の体をぎゅっと抱きしめて、それから離すと、彼は物足りなそうな顔で、もっと遊んで欲しい!という顔をしました。
そんな彼に「ごめんね」と言って、私は屋敷の中に入りました。
私はただいま帰りましたと、キッチンにいたお手伝いのマメモさん、それから談話室でくつろいでいたお母様に言って、自分の部屋のベッドに身を投げ出しました。
ドクドク、ドクドク、ドクドク……
一人になると、心臓の音が聞こえました。アルダタさんが目の前にいたときよりは落ち着いたようですけれど、緊張感はまだ続いていました。私はふぅと息を吐いて、覚悟を決めました。
まずは手紙を読まなければなりません。読まなければ、他のことが何一つ、手につきそうにないですから。
私は頂いた手紙を取り出して、開封しました。
目に飛び込んできた文字は、決して端正な字とは言い難かったですけれど、時間をかけて真剣に書いてくださったことが伝わる、とても読みやすい誠実な筆跡でした。
私は彼の手紙を、最初から順を追って読み始めました。
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