「婚約破棄させてやる……」最低王子が企むも、純粋な公爵令嬢にその手は効かない。

オコムラナオ

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どこまで卑劣か(2)(タラレッダ視点)

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 涙を流している彼女に、私は顔を近づけて尋ねたよ。

「なぁ、あんた。その後は何も問題ないのかい? 
 ペドロル様を突き飛ばしたり、内緒の話を聞いてしまったんだったら……こんなこと言うのもなんだけど、あのお方なら、ただじゃ済まされないと思うんだけどね」

 手の平で涙をぬぐいながら、彼女はこくこくと頷いた。

「私も次の日はびくびくしていました。このお屋敷をやめさせられるかもしれないって。でも会ってみたら、ペドロル様はいつもと全くお変わりなかったんです。
 たぶん、ほとんど覚えてはいないんだと思います。よほど酔っていらっしゃいましたから……
 でも、それにしたって!」

 思わず私は、彼女の頭を抱きしめたよ。そんな柄じゃあないんだけどさ。

「そうか、よく話してくれた。辛かったね、そんなこと滅多にあることじゃあないよ……」


 しばらくして、別の使用人が休憩に入ってきた。
 おっとりした性格の、ひょろりと背の高い子だった。

 皆が集まっていることで、どうしたのだろうと不思議そうな顔をしている。

 その子の近くに、仲の良い一人が寄って行って、早速何があったのかを手早く共有し始める。
 何か問題が持ち上がれば、すぐにみんながそれを知ることになる。これが私たち使用人の生態っていうもんだね。

「さ、休憩終わった子から仕事に戻ろうじゃないか」
 私が一声かけると、皆、重い腰を上げて、準備し始めた。

 ぐすぐすと泣いている子も、皆に合わせて立ち上がろうとした。

「あんたはもう少し休みな。そんな酷い顔じゃ、お客様が来られた時、びっくりしちまうよ」
 彼女は浮かした腰をまた椅子に下ろし、「すみません」と私に謝った。
 
「いいんだよ」
 私はそう言うと立ち上がって、隣にいた面倒見のいい赤毛の子に、「この子のこと、頼むよ」と目で訴えた。

 どうやら意図は伝わったらしい。赤毛の彼女は、責任感のある面持ちでこくりと小さく頷いた。
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