「婚約破棄させてやる……」最低王子が企むも、純粋な公爵令嬢にその手は効かない。

オコムラナオ

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ナテナでの調査(アルダタ視点)

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「おい、起きろ、アルダタ。時間だよ」

揺さぶられて、私は目を覚ました。目の前には私の字があった。下手なりに整って見えるよう、時間をかけて書いた文字が……

「なんだ? 手紙を書いたままここで寝ていたのか?」

私は机に伏せていた顔を上げ、慌てて腕で手紙を隠した。

「こ、これは……」

「なんだよ、ぼくが勝手に人の手紙を盗み見るような人間に見えるっていうのか?」
 
 私と同じくらいの年頃の青年。

 三人しかいない使節団員のうちの一人、ジョルジュだ。

 彼も起きたばかりなのだろう、普段から癖が強い印象的な巻き毛が、さらに膨らんでいる。

 外はまだ日がのぼっておらず、仄かな明るさしかあらわれていなかった。

「さぁ行こう。もう出かける時間だ」

「出かけるって、どこにでしょう……」

するとジョルジュは目を丸くした。

「おいおい、まだ寝ぼけてるのかい?
 
どこにって、一つしかないだろう。

僕たちが調査をする学園にだよ。

そうじゃなきゃ、一体、何のためにナテナまで来たっていうんだ」

「あっ、ああ。そうですね……」

あまりにぼんやりし過ぎている。こんなことでは、使節団に入れてくれた国王様にも、こうして気楽に接してくれている使節団の仲間にも申し訳が立たない。

それに、もちろんマリルノ様にも。

「分かりました。すぐに支度をします」

「ああ急いでくれよ。じゃなきゃレピシ使節団長にぼくが怒られちゃうよ」

まだ着いたばかりなのに、さっそく使節団の足並みを乱すようなことは、してはならない。

まだ慣れていない、ナテナでの一般的な麻の服に着替え、必要最低限の筆記具を支給された皮袋に入れて、私はジョルジュの後に続いた。



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