「婚約破棄させてやる……」最低王子が企むも、純粋な公爵令嬢にその手は効かない。

オコムラナオ

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嘘をついた(ジョルジュ、レピシ)

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透明な液体の入ったグラスを、まじまじと見つめるジョルジュ。

レピシはその隣で、考えていた。

たしか、こういう儀礼を持つ民族がいるということをどこかで聞いた気がする。何の民族だっただろうか。

そんなことを考えながら、しかしそれほど間をあけず、レピシは頷いた。

「わかりました」

迷いなくグラスに口をつけ、そのまま傾けて、一息に飲み干す。

カッと顔が熱くなる。思わず目を瞑る。こういう儀式用の酒なのだろうか、かなりきつい。

普段からほとんど酒を飲まないレピシは、強い酔いが、波のように自分をのもうとしているのを感じた。

それを振り払うように、彼は二度三度、頭を振る。

『重要な話があるとダイナさんに言われたのだ。

酔っている場合ではない』とレピシは胸の内で思う。

それから隣のジョルジュを見た。

ジョルジュはグラスに鼻を近づけようとしていた。

しかしレピシの『こら』という視線を感じて、慌てて離す。

そして腹を決めたのか、グイッと液体を喉に流し込んだ。

ジョルジュはプルプルと震えている。しかしなんとか堪えていた。

「ありがとう二人共」

そう言うとダイナは、自分の手元に置いたグラスを持ち上げた。

「二人の信頼に」と呟いて、グラスを自らの口に傾ける。

二人の目には同じ物を飲んでいるとは思えないほど、ダイナは平気な顔でその酒を飲み干した。

『このような場に備えて、普段からもう少し酒を嗜んだ方が良いのかもしれない』とレピシは思った。

ダイナは飲み干したグラスを脇に置き、口を開いた。

「では、話をさせてもらおう。

アルダタのことについてだ」

アルダタの名前が出てきたのを聞いて、酔いに負けそうになっている二人の表情に、ハッとした色が浮かんだ。

「さっきは嘘をついてすまなかった。

私は彼の居場所を知っている。配達屋での前で偶然会い、この家まで来てもらった」

「……!」

レピシとジョルジュの緊張は、否が応にも高まった。

そしてダイナはこう続けた。
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