10 / 144
ポロリしちゃいました
しおりを挟む
本日は快晴。どこまでも広がる雲一つない青空の下、私はアルクーレ周辺の草原へ魔物退治に来ている。さすがに短剣だけ買って魔物退治に行くのは目立つと思ったから、武器屋を出てそのまま行くのは自重しました。私は普通の冒険者を目指すのです!
なので注文した革防具が仕上がるまでは、ミューゼルおばあちゃんのところに入り浸っていたりした。あと体調も崩していたりしたのだ。実は初潮がきて身体が怠くて辛かったのです……出血した時は焦ったし、どうしたらいいのか分からなかったけど、調子悪そうにしていたらミューゼルおばあちゃんが察してくれて、色々と教えてくれたので助かったよ。本当にありがとう。
そんな事件もあったけど防具も仕上がったので、Fランクとしての活動を始動したわけなのだ。と言ってもFランクの魔物退治依頼は基本的に常設依頼で、街から少し離れたところにいる魔物を間引くというものになる。
私が今拠点にしているアルクーレの街は、定期的に領兵が討伐を行っているらしく、それ以外は冒険者の活動で魔物退治が行われていくので、近場にはあまり居ないのだとか。
依頼ボードを確認していて知った事なのだが、私が森で狩っていた魔物はフォレストマンティス以外はEランクに該当するらしい。デカいカマキリの魔物フォレストマンティスは、両手の鎌の殺傷能力の高さからDランクに位置づけられているみたい。
油断するつもりはないけれど、今まで戦っていた魔物より弱いのなら、今日は買ったばかりの短剣を使って討伐していこうと考えていたりする。もちろん危なくなったらスキルは使うけどね。
歩いていると岩陰に角の生えたウサギ、ホーンラビットを見つける。書庫で魔物の挿絵が入った図鑑を読んでいるので予習はバッチリだ。気をつけなきゃいけないのは、角を使った突進攻撃くらいなので、不意打ちをされなければ怖くない。
ホーンラビットがこちらに気付き私目掛けて突進してくるが、ギリギリまで引きつけたところで、突き刺そうと飛び上がったホーンラビットの首を短剣で切りつけて終わり。スキルを使わなくてもあっさり倒せて拍子抜けである。
「魔石魔石~♪ あと角もね」
討伐証明部位としてホーンラビットの角と魔石を回収する。以前、魔石を換金したが取り込んでいないフォレストゴブリンとレッドプラントの魔石は手元に残してあったりする。今は領域が不足しているが取り込めるようになった時のために、新しい魔石は一つは手元に残しておくつもりなのだ。
今日の初戦闘が終わると私は【獣の嗅覚】で次の獲物を探しはじめる。ニワトリのような……というかまさにニワトリな魔物コッコウ。私を丸呑みにした大蛇と比べると可愛いらしいサイズのヘビの魔物クネーク。サッカーボールくらいの大きさのダンゴムシの魔物ゴロンゴを見つけた端から倒していく。
倒した数が二十を超えたあたりで数えるのをやめて無心で狩っていった私だったが、ふと冷静になる。
「もしかして狩りすぎかな?」
Fランクの魔物はこの広い草原に多数生息しているが、一匹も遭遇せずに帰ってくる事も珍しくないのだとか。そのため折角Gランクを卒業したというのに、薬草摘みに勤しむことになり長い下積みをする事になるんだって。
じゃあ私はどうか。今日一日で魔石がひぃ…ふぅ…みぃ…三十四匹だね! あれ普通の冒険者目指してたのにどうしてこうなったのかな……魔石は大丈夫だとしても討伐証明部位は時間が経ったら腐るものもあるので、小分けにして提出もできないし……どうしてこうなった!
「とは言え誤魔化すために捨てるなんて、勿体ないし……」
森の中で生活していた時は無駄な狩りはしていなかった。なので捨てるなんて論外なので、そうなると答えは決まっている。
「よし! 普通の冒険者を目指すのを辞めよう!」
私はさっさと決意を覆す。そもそも私は小さい冒険者として既に目立っている。素行の悪い冒険者に襲われた事も知られているし、昇格の時には新人冒険者にさえ絡まれている。よく考えたら既に普通の冒険者ではなかったのかもしれないんじゃなかろうか。
「なら、ここからは薬草採取でもして行こうかな~」
私は魔物退治から薬草採取へと切り替える事にして、薬草を採取しながら帰ることにする。討伐証明部位や魔石が入った袋を背負い直して歩き出す。
そうそう、この世界にはポーションがあるんだって。私が今採取しているエイチ草は体力回復薬になるし、あっちのエムピ草は魔力回復薬になるんだって。自分が採取した薬草の使い道が気になって調べて見たら所謂、魔法薬になるって知ってそこから色々調べてたの。
そこで気になったのが魔力回復薬や魔法薬って言葉で、やはりこの世界には魔法が存在するんだ! と思わず興奮してしまったのは記憶に新しい。あの時は私も若かった……いや今も若いんだけどね。
魔力は誰にでもあるらしいんだけれど、魔法が使えるかはまた別みたいで、それは魔道士ギルドへと赴いて適性の有無を確認してもらわなきゃいけないんだ。適性の種類は火、水、土、風、無属性の五つで、適性があればその時点で魔道士ギルドに登録されるらしい。
私も魔法を知ってすぐに魔道士ギルドに行ったんだけれど、ガックリして帰ってきたよ……宿に戻って枕を濡らしながら寝たよ。その日は適性あり! って夢を見ちゃうくらいには悲しかったよ。
無属性は結界だとか治癒魔法とかが使えるんだってさ。魔法薬は適性がなくても作れるらしくて、適性がなくて魔力が多い人が魔法薬を作るんだって。
魔法薬は錬金ギルドが取り扱っていて、魔道士ギルドとはとても仲が悪いみたい。それも魔道士ギルドから爪弾きにされた人達が、自分の魔力を有効に使おうとして魔法薬を作りだしたのが起源だって言うのだから、仕方がないんだけどね。その話を聞いた私は心情的に錬金ギルドの味方をしたくなったのはここだけの話だ。私も爪弾きにされた側だからね。
まぁ、話が色々と逸れた気もするけれども、適性がなくても全く魔法が使えないわけじゃないんだとか。その一例で最も有名なのが身体強化で、魔力で身体能力を一時的に強化するというものだ。
私も試してみたんだけれども魔力を使うというのは、かなり感覚的なものらしく私はまだスタートラインにも立てていない。魔道士ギルドや錬金ギルドも魔力を使う感覚は魔道具を使って覚えさせるみたいで、危険も伴うらしく簡単には教えられないんだって。錬金ギルドにも行ったんだけれど、街出身の人間か領主様の推薦でもないと駄目なんだって。
ムリじゃん!
でもBランクの冒険者くらいになると、身体強化が使える人がチラホラと出てくるんだっていうから、私にもチャンスはあると思っている。それに私にはスキルがあるから他の人よりは恵まれているしね。
なので魔力使えないかなーと考えながら、色々と試していたりはするのだ。「はぁー!」とか「みょんみょん~」とイタイ子みたいな事をやってるくらいだけどね……
プチプチと薬草を摘んで、腰が曲がって辛くなってきたあたりで街に帰ってきた。アタタ……
戦利品を持って冒険者ギルドに入り受付へと並ぶ。順番を待っているとエレナさんがいる受付が空いたので、私はそこへ進むと背負い袋を背から下ろして袋を開けようとするが、
「シラハちゃん待って下さい」
エレナさんがストップをかけてくる。なにかしただろうか? 私はよく分からず首をコテンと傾げると、エレナさんが胸を押さえながら一歩下がり深呼吸をする。調子でも悪いのかな?
「シラハちゃん、今日は別室で提出を行なってもらいます」
「別室……ですか?」
「はい」
有無を言わせないエレナさんの態度に私は冷や汗が出てくる。私がなにかしてしまったのだろう、きっとお説教だ。だから別室へと通されるに違いない。私は気落ちしながらエレナさんについて行くことにした。
通された部屋にはテーブルとソファーが置いてあり、テーブルには皮だろうか? シートのような物が敷かれていた。エレナさんは私をソファーに座るように勧めエレナさんも私の対面へと座る。嫌な汗が背中を伝い、俯くと視界がぼやけてくる。
「さて、シラハちゃん」
「ご、ごめんなさい……」
「え? ……ちょ、ちょっとシラハちゃんなんで泣いてるんですか?!」
「だって……なにか悪い事をしちゃったから呼ばれたんですよね?」
「ち、違いますよ!」
「ふぇ?」
エレナさんに嫌われるのでは? と思ったら涙が溢れそうになったが、すぐにエレナさんに否定された。どうにも肉体年齢に引っ張られているのか、ポロリと涙が出てきてしまった。
「シラハちゃんのその背負い袋の中身って全部提出品なんじゃないですか?」
「そうですけど……」
鼻をスンと鳴らしながら私が答えると、エレナさんがこめかみを押さえる。私は別室に呼ばれた理由が分かった気がした。
「どれだけ魔物を倒してきたんですか……」
「よ、よくなかったですか?」
「いいえ。大変素晴らしいですよ」
エレナさんが腰を少し浮かせて私の頭を撫でてくれる。心がホッコリとしちゃうな。とりあえず嫌われている訳ではなくて安心したよ。
「これだけの魔物を薬草採取と並行してどうやって退治したのか、という疑問はありますけど……シラハちゃんの実力はこの目で見ましたからね。ただ他の冒険者の方に比べると採取速度、退治速度が桁違いに速いので今後も別室での提出をお願いする事になるかと思います」
「分かりました」
私が頷くとエレナさんは軽く微笑み、一言断ってから他の職員さんを呼びに出ていった。分かっていた事だったが、やはり私の戦利品は量が多いらしい。実際にエレナさんに言われては惚ける訳にもいかない。普通でなくても構わないが面倒ごとは避けたいので悩みものである。
その後、応援に駆けつけた職員さんとエレナさんで査定を行なってから報酬を貰いギルドを後にした。
程よい疲労感があり、宿に帰ったら気持ちよく眠れそうだ。お湯を貰い身体を拭いたら食事をしてベッドに潜り込む。
あぁ……お風呂に入りたいなぁ……
//////////////////////////////////////////////////////
シラハ(コテンと首を傾げてみました)
エレナ(なんて愛らしい仕草!)
シラハ(ぐすん……)
エレナ(泣いてるシラハちゃんも可愛い!)
シラハ(また胸押さえてる、調子悪いのかな……心配だなぁ)
なので注文した革防具が仕上がるまでは、ミューゼルおばあちゃんのところに入り浸っていたりした。あと体調も崩していたりしたのだ。実は初潮がきて身体が怠くて辛かったのです……出血した時は焦ったし、どうしたらいいのか分からなかったけど、調子悪そうにしていたらミューゼルおばあちゃんが察してくれて、色々と教えてくれたので助かったよ。本当にありがとう。
そんな事件もあったけど防具も仕上がったので、Fランクとしての活動を始動したわけなのだ。と言ってもFランクの魔物退治依頼は基本的に常設依頼で、街から少し離れたところにいる魔物を間引くというものになる。
私が今拠点にしているアルクーレの街は、定期的に領兵が討伐を行っているらしく、それ以外は冒険者の活動で魔物退治が行われていくので、近場にはあまり居ないのだとか。
依頼ボードを確認していて知った事なのだが、私が森で狩っていた魔物はフォレストマンティス以外はEランクに該当するらしい。デカいカマキリの魔物フォレストマンティスは、両手の鎌の殺傷能力の高さからDランクに位置づけられているみたい。
油断するつもりはないけれど、今まで戦っていた魔物より弱いのなら、今日は買ったばかりの短剣を使って討伐していこうと考えていたりする。もちろん危なくなったらスキルは使うけどね。
歩いていると岩陰に角の生えたウサギ、ホーンラビットを見つける。書庫で魔物の挿絵が入った図鑑を読んでいるので予習はバッチリだ。気をつけなきゃいけないのは、角を使った突進攻撃くらいなので、不意打ちをされなければ怖くない。
ホーンラビットがこちらに気付き私目掛けて突進してくるが、ギリギリまで引きつけたところで、突き刺そうと飛び上がったホーンラビットの首を短剣で切りつけて終わり。スキルを使わなくてもあっさり倒せて拍子抜けである。
「魔石魔石~♪ あと角もね」
討伐証明部位としてホーンラビットの角と魔石を回収する。以前、魔石を換金したが取り込んでいないフォレストゴブリンとレッドプラントの魔石は手元に残してあったりする。今は領域が不足しているが取り込めるようになった時のために、新しい魔石は一つは手元に残しておくつもりなのだ。
今日の初戦闘が終わると私は【獣の嗅覚】で次の獲物を探しはじめる。ニワトリのような……というかまさにニワトリな魔物コッコウ。私を丸呑みにした大蛇と比べると可愛いらしいサイズのヘビの魔物クネーク。サッカーボールくらいの大きさのダンゴムシの魔物ゴロンゴを見つけた端から倒していく。
倒した数が二十を超えたあたりで数えるのをやめて無心で狩っていった私だったが、ふと冷静になる。
「もしかして狩りすぎかな?」
Fランクの魔物はこの広い草原に多数生息しているが、一匹も遭遇せずに帰ってくる事も珍しくないのだとか。そのため折角Gランクを卒業したというのに、薬草摘みに勤しむことになり長い下積みをする事になるんだって。
じゃあ私はどうか。今日一日で魔石がひぃ…ふぅ…みぃ…三十四匹だね! あれ普通の冒険者目指してたのにどうしてこうなったのかな……魔石は大丈夫だとしても討伐証明部位は時間が経ったら腐るものもあるので、小分けにして提出もできないし……どうしてこうなった!
「とは言え誤魔化すために捨てるなんて、勿体ないし……」
森の中で生活していた時は無駄な狩りはしていなかった。なので捨てるなんて論外なので、そうなると答えは決まっている。
「よし! 普通の冒険者を目指すのを辞めよう!」
私はさっさと決意を覆す。そもそも私は小さい冒険者として既に目立っている。素行の悪い冒険者に襲われた事も知られているし、昇格の時には新人冒険者にさえ絡まれている。よく考えたら既に普通の冒険者ではなかったのかもしれないんじゃなかろうか。
「なら、ここからは薬草採取でもして行こうかな~」
私は魔物退治から薬草採取へと切り替える事にして、薬草を採取しながら帰ることにする。討伐証明部位や魔石が入った袋を背負い直して歩き出す。
そうそう、この世界にはポーションがあるんだって。私が今採取しているエイチ草は体力回復薬になるし、あっちのエムピ草は魔力回復薬になるんだって。自分が採取した薬草の使い道が気になって調べて見たら所謂、魔法薬になるって知ってそこから色々調べてたの。
そこで気になったのが魔力回復薬や魔法薬って言葉で、やはりこの世界には魔法が存在するんだ! と思わず興奮してしまったのは記憶に新しい。あの時は私も若かった……いや今も若いんだけどね。
魔力は誰にでもあるらしいんだけれど、魔法が使えるかはまた別みたいで、それは魔道士ギルドへと赴いて適性の有無を確認してもらわなきゃいけないんだ。適性の種類は火、水、土、風、無属性の五つで、適性があればその時点で魔道士ギルドに登録されるらしい。
私も魔法を知ってすぐに魔道士ギルドに行ったんだけれど、ガックリして帰ってきたよ……宿に戻って枕を濡らしながら寝たよ。その日は適性あり! って夢を見ちゃうくらいには悲しかったよ。
無属性は結界だとか治癒魔法とかが使えるんだってさ。魔法薬は適性がなくても作れるらしくて、適性がなくて魔力が多い人が魔法薬を作るんだって。
魔法薬は錬金ギルドが取り扱っていて、魔道士ギルドとはとても仲が悪いみたい。それも魔道士ギルドから爪弾きにされた人達が、自分の魔力を有効に使おうとして魔法薬を作りだしたのが起源だって言うのだから、仕方がないんだけどね。その話を聞いた私は心情的に錬金ギルドの味方をしたくなったのはここだけの話だ。私も爪弾きにされた側だからね。
まぁ、話が色々と逸れた気もするけれども、適性がなくても全く魔法が使えないわけじゃないんだとか。その一例で最も有名なのが身体強化で、魔力で身体能力を一時的に強化するというものだ。
私も試してみたんだけれども魔力を使うというのは、かなり感覚的なものらしく私はまだスタートラインにも立てていない。魔道士ギルドや錬金ギルドも魔力を使う感覚は魔道具を使って覚えさせるみたいで、危険も伴うらしく簡単には教えられないんだって。錬金ギルドにも行ったんだけれど、街出身の人間か領主様の推薦でもないと駄目なんだって。
ムリじゃん!
でもBランクの冒険者くらいになると、身体強化が使える人がチラホラと出てくるんだっていうから、私にもチャンスはあると思っている。それに私にはスキルがあるから他の人よりは恵まれているしね。
なので魔力使えないかなーと考えながら、色々と試していたりはするのだ。「はぁー!」とか「みょんみょん~」とイタイ子みたいな事をやってるくらいだけどね……
プチプチと薬草を摘んで、腰が曲がって辛くなってきたあたりで街に帰ってきた。アタタ……
戦利品を持って冒険者ギルドに入り受付へと並ぶ。順番を待っているとエレナさんがいる受付が空いたので、私はそこへ進むと背負い袋を背から下ろして袋を開けようとするが、
「シラハちゃん待って下さい」
エレナさんがストップをかけてくる。なにかしただろうか? 私はよく分からず首をコテンと傾げると、エレナさんが胸を押さえながら一歩下がり深呼吸をする。調子でも悪いのかな?
「シラハちゃん、今日は別室で提出を行なってもらいます」
「別室……ですか?」
「はい」
有無を言わせないエレナさんの態度に私は冷や汗が出てくる。私がなにかしてしまったのだろう、きっとお説教だ。だから別室へと通されるに違いない。私は気落ちしながらエレナさんについて行くことにした。
通された部屋にはテーブルとソファーが置いてあり、テーブルには皮だろうか? シートのような物が敷かれていた。エレナさんは私をソファーに座るように勧めエレナさんも私の対面へと座る。嫌な汗が背中を伝い、俯くと視界がぼやけてくる。
「さて、シラハちゃん」
「ご、ごめんなさい……」
「え? ……ちょ、ちょっとシラハちゃんなんで泣いてるんですか?!」
「だって……なにか悪い事をしちゃったから呼ばれたんですよね?」
「ち、違いますよ!」
「ふぇ?」
エレナさんに嫌われるのでは? と思ったら涙が溢れそうになったが、すぐにエレナさんに否定された。どうにも肉体年齢に引っ張られているのか、ポロリと涙が出てきてしまった。
「シラハちゃんのその背負い袋の中身って全部提出品なんじゃないですか?」
「そうですけど……」
鼻をスンと鳴らしながら私が答えると、エレナさんがこめかみを押さえる。私は別室に呼ばれた理由が分かった気がした。
「どれだけ魔物を倒してきたんですか……」
「よ、よくなかったですか?」
「いいえ。大変素晴らしいですよ」
エレナさんが腰を少し浮かせて私の頭を撫でてくれる。心がホッコリとしちゃうな。とりあえず嫌われている訳ではなくて安心したよ。
「これだけの魔物を薬草採取と並行してどうやって退治したのか、という疑問はありますけど……シラハちゃんの実力はこの目で見ましたからね。ただ他の冒険者の方に比べると採取速度、退治速度が桁違いに速いので今後も別室での提出をお願いする事になるかと思います」
「分かりました」
私が頷くとエレナさんは軽く微笑み、一言断ってから他の職員さんを呼びに出ていった。分かっていた事だったが、やはり私の戦利品は量が多いらしい。実際にエレナさんに言われては惚ける訳にもいかない。普通でなくても構わないが面倒ごとは避けたいので悩みものである。
その後、応援に駆けつけた職員さんとエレナさんで査定を行なってから報酬を貰いギルドを後にした。
程よい疲労感があり、宿に帰ったら気持ちよく眠れそうだ。お湯を貰い身体を拭いたら食事をしてベッドに潜り込む。
あぁ……お風呂に入りたいなぁ……
//////////////////////////////////////////////////////
シラハ(コテンと首を傾げてみました)
エレナ(なんて愛らしい仕草!)
シラハ(ぐすん……)
エレナ(泣いてるシラハちゃんも可愛い!)
シラハ(また胸押さえてる、調子悪いのかな……心配だなぁ)
186
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。
コンバット
サクラ近衛将監
ファンタジー
藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。
ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。
忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。
担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。
その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。
その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。
かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。
この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。
しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。
この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。
一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる