とりあえず異世界を生きていきます。

狐鈴

文字の大きさ
100 / 144

溢した記憶

しおりを挟む
 周りが騒がしい……
 体が重いし、アスファルトが冷たくて寒い。

 周囲を埋め尽くす人達が、私にスマホを向けている。
 そんなに事故現場が珍しいのかな。

 それで呟くのはそっちの勝手だけどさ……

 せめて、この子だけは助けてあげて……

 私は必死に、その子に手を伸ばす。

 でも、その手が届く事はなかった。










 ふっ、と景色が切り替わる。

 私の目の前には長い、長い階段があるだけで、他の一切は真っ白だ。

 さっきまでの寒さも、体の重さも感じられない。

 ここに居ると、今日の夕飯や明日の仕事、週末の友達との予定も全部がどうでもよくなってくる。

 ああ……それでも。
 あの子が無事かどうかだけは知りたかったな。


 登る。
 長い階段を上がっていく。

 階段を一段上がる度に、何かを忘れていっている気がするけど、欠けたナニかが何だったのかは、もう思い出せない。

 上を見上げると、どこまでも続く階段の終わりが見えた。
 いつから登っていたのかは分からないけど。


 ふと視線を動かせば、階段以外にも足場を見つけた。
 何処とも繋がっていないその足場の上には、沢山の人がいるように見える。
 でも、そっちには行ってはいけない気がするのは何でだろう。

 階段を上がる。
 すると、さっきまでの事は気にならなくなった。


 頂上に辿り着く。
 そこには、一人の男性が立っていた。

 男性だよね?
 なんか中性的な顔をしているから自信がないな……


「いらっしゃい。そして、お疲れ様。君の旅路はここで終わり、そして新たに始まるんだ」
「ええっと……」

 あまりに堂々と喋り出すものだから、誰だと聞こうか迷ってしまう。
 私は昔から、こういう勢いに流されちゃうんだよなぁ……って、昔って……いつ?

 自分で思った事に首を傾げながら、相手を見てみる。

 何というか神々しい、とでも言うのかな? そんな感じの人だ。
 いや、人じゃない……この人が神様なんだ。

 よくは分からないけど、そう理解できた。


「さて……それでは、次の人生を楽しんできたまえ」
「あの、ちょっとお聞きしたいんですけど」

 神様は、とくに世間話をするわけでもなく私を送ろうとしていたけど、それを止めてみる。

「……なんだ?」

 少しムスっとしているけど、まぁ大丈夫でしょ。

「あっちの離れた所にいる人達って、どうするんですか? なんか、ずっとあそこに居ますけど……」

 ちょっと前まで忘れてしまっていた事を聞いてみた。
 何故だか気になって仕方がないんだもの。

「君は余計な事は気にせずに、次に向かえばいい」

 私の質問に神様は答えない。
 なんかムカついた。

 いやいや、早まるな私。
 その場の勢いで神様に喧嘩を売るんじゃない。
 いつものように流されるんだ。

「別に次の人生とか望んでないですし? 貴方には頼らないので失礼しますね」

 無理でした。なんか我慢できなかったよ。
 でも後悔はしていない!

「ほう……」

 あ、声のトーンが下がった。
 ヤバイかも……

 とにかく、ここにいるわけにもいかないし、あっちの人が沢山いる場所に移動しよう……!
 身の危険を感じつつある私は足早に移動する。

「うっ……」

 移動しようとして、私はすぐに足を止める。
 そうだった。
 ここは、あの自称神様の所に向かう為の階段しかないんだった。

 あっちの足場に移動するにはジャンプするしかない。
 でも、届かなかったらどうしよう……
 って言うか、これ底とかあるのかな?
 足を滑らしたら永遠に落ち続けるとか発狂するよ?

「なんだ? 私に頼らないなんて啖呵を切ったわりに進めていないようだが?」

 こいつぅ……!

 熱くなるな私。
 クールにいかねば……!

「周囲の事に気が付く者はそれなりにいるが……大抵は君のように口先だけで、何も実行する事ができない。嘆かわしいことだ……」

 ムカつくー! なんだコイツ!
 喧嘩売ってるのか?!
 引っ叩くぞ!

 いやいや……私だって大人なんだ。明らかに挑発されてるんだから、わざわざそれに乗ってやる必要なんてないじゃないか。

 私は自称神様に向きなおして、ニッコリと笑う。

「なんだ、先程の発言を取り消すとか言うつもりか? 人間は自己の発言に責任を持つ、という事が本当に不得手だな」


 ぷっちん。
 ヤメタ。
 アンタがどこの誰だろうと知ったことか!
 喧嘩上等だ!

「アンタが此処でどれだけ偉いのかは知らないけど、私に聞かれて面倒だと思うなら最初から隠しておきなさい!」
「何故、君の為だけにそのような事をする必要があるのだ? それなら君と対話をしなければ良いだけの事だ」
「仮にも神様であるアンタに不敬な態度をとったから、相手にしないって事? 都合の悪い事を聞かれたくらいで随分と大人気ない対応ね。まるで子供みたい」

 私の発言に自称神様が明らかに不機嫌な表情になった。

「あら? そんな表情もできるのね。私にあっちの足場の事を聞かれただけで不機嫌になってたし、我慢の限界かしら?」
「口の利き方には気を付けた方がいい。私の機嫌を損ねれば、君を二度と転生させない、という事も可能なのだぞ」
「それが子供みたいだって言ってるのよ。相手を言いなりにさせられないからって、脅せばいいと思ってるあたりが特にね」

 ヤバイ。
 なんかドンドンあとには引けなくなってきている。

 とにかく、ここから移動したい。切実にっ!
 なので、私も腹を括るとしよう。
 下を見ないように……下を見ないように……

「そこから落ちれば魂が燃え尽きるぞ。それも、百年程かけてゆっくりとな……」

 今それを言うんじゃないよ!
 決心が鈍るでしょうがっ

 この自称神様はアレだ。
 ドSに違いない。

 このドS神めっ

 だけど私は屈しない!
 こんなヤツに負けてやるもんかっ
 あとMでもないしね!


 私はビシっとドS神を指差した。

「アンタなんか神じゃない! アンタの思い通りになんかなってやるもんか!」


 言いたい事だけを言って、私はその場から飛び出した。
 これで落ちたらカッコ悪い! とか余計な事が頭を過ぎる。そんな事はどうでもいいんだよ!

 そんな馬鹿な事を考えてる間に着地する。
 おおぅ……思ったよりジャンプできたな……
 私的に新記録な気がする……アレ? 私って何メートル跳べたっけ……まぁ、いいか。


 私は若干震えたままの足に力を入れて、私を見ている人達の下に歩いていく。

 そして、一番手前にいた女の子に……女の子だよね? なんか顔とかがはっきりと見えないんだけど……
 まぁ、なんでも良いや。

 私は、その子に手を差し出した。

「一緒に行こう」
「え……どこに?」

 ……ごもっともだね。

 まだジャンプした時の興奮というか、恐怖というか、そういった諸々が抜け切っていないのかもしれない。

 これじゃ私、不審者みたいだよ。
 手を出した時もビクっとされたし。


「えっとー……アナタのお名前は?」

 こういう時は、まず自己紹介からだよね。

「名前は覚えてないです……。ここにいる人達は皆そう」
「そ…そうなの……」

 失敗したよ……
 名前、たしかに私も自分の名前分からないや。

 なにか、会話の取っ掛かりになる事ってなかったかな……

「皆、ここで何してるのかな?」

 これは私も知りたかった事だし、ここから会話を広げていけば……

「私達は皆、廃棄待ちなんです。魂が摩耗し過ぎていて転生ができないって……」
「おおぅ……」

 アウトー!
 どうしよう……会話を広げるどころか地雷だよ!
 なんて声をかけたら良いんだ……元気だせよ? いやいや廃棄待ちなのに、どうやって元気出せって言うんだよっ!

「ゴゴ、ゴメンね! なんて言ったら良いか分からないけど、そんな事になってるとは思わなくて!」
「ふふ……」

 私が一人であたふたしていると、女の子が笑い出した。

「どうしたの?」
「あ、ごめんなさいです。ただ、さっきからお姉さんが一人で慌ているから、ちょっと…可笑しくって……」

 女の子がお腹を抱え出した。
 盛大に笑わないように必死に我慢しているのは伝わってくるんだけど……つまりアレか。
 私の行動がとっても滑稽だったと言いたいのかい?

 どうしよう……泣きたい。

 くっ…子供に泣かされてたまるもんかっ!
 私は大人だ。毅然とした態度で接するんだ。

「あー、苦しかった。お腹痛いや……」

 女の子が息を整えながら呟いた。
 こんのガ……落ち着こう。
 私は大人……


 そんな事をしていると、いつの間にかドS神がこちらに来ていた。
 こっち側には興味ないのかと思ってたのに……

「何の用?」
 
 私は敵対心剥き出しで声をかける。

「その魂達を守るのか?」
「悪い? 聞いたわよ。アンタ、この子達を廃棄するんですって? 全部を拾い上げる事もできないなんて、ドS様も大した事ないのね」
「なんだ、そのドS様とは……」
「言ったでしょ? アンタを神とは認めないって……」
「だから、その呼び方だと?」
「ええ、悪い?」

 ドS様の冷たい視線が突き刺さる。
 いやー、完全にドSな目だよ。ゾクゾクしちゃう。
 あ、私…Mじゃないよ?


 ドS様は一度目を瞑ると溜息を吐いた。

「それが君の意思ならば、それを尊重しよう」
「ようやく私の前から消えてくれる気になったのかしら?」
「勘違いしているようだが、ここは私の世界であって君のモノではない。君が私を拒絶するというのなら、ここに君の居場所はない」

 ドS様の言葉にゾワリとした。
 SだMの話じゃなくて、本能的に身の危険を感じたのだ。

「そこの魂達も私の世界には必要のないモノだ。汚れ、削れた魂に用はない」
「それでも、最後まで手を差し伸べてあげようとか思わないの?!」

 言っても無駄だと知りながらも私は叫ぶ。
 思い止まって欲しいなんて考えてはいない、これが私の意思だと示しただけだ。

「そんな薄汚れた魂はいらない。それを庇うと言うのなら、一つの魂にして別世界に飛ばしてやろう」

 ドS様の言葉はよくは分からなかったけど、もう私が生きてきた世界には居られないんだとは理解できた。


「な、なに……?」

 不意に後ろから声が聞こえ振り返ると、さっきまで話をしていた女の子や他の子達が淡く光る玉となって宙を浮いていた。

「何をしたの?!」
「今しがた伝えただろう……。アレらと君はこれから一つになるのだ」

 ドS様の言葉と共に、光の玉が一斉に私に向かって飛んできた。
 光の玉は私にぶつかることもなく、吸い込まれるようにして私の中に入っていく。
 
 それを見て私は、あの子達が廃棄されずに済んだ事に安堵していた。
 そう思った時だった。

 ピシリと私の体に亀裂が生じた。

「え…?」

 理解できなかった。
 人の体に罅が入るなんて……
 訳もわからないまま、体にはどんどん亀裂が増えていく。

 そして、それと同時に襲ってくる痛み、熱さ、寒さ、息苦しさ、目眩、動悸、吐き気と、恐怖、悲しみ、寂しさ、怒り、嫉妬、ありもしない感覚が押し寄せてくる。

「ぃやぁ……ぁああああああ!!」

 自分の声が遠く聞こえる。
 その場に倒れ伏す。
 光の奔流は、まだ止まらない。

 壊れる。
 砕ける。
 身体が心がおかしくなる。

 無意識に伸ばした手の先にはドS様がいた。

 こんなにも苦しんでいる私を、先程と変わらない冷めた目で見下している。
 それを見て少し力が戻った気がした。

 伸ばした手を握りしめて引っ込めた。

 絶対に負けてやるもんか!




 どれくらい経ったのか。
 気付けば光は止んでいた。

 私の体はボロボロだ。
 四肢は砕けて、もう一歩も動けない。

 それでも、ドS野郎を睨む事だけは止めない。

「砕け散るかと思ったが……思いのほか意思が強いらしい」

 意思というよりは、負けまいとする意地だったりするんだけど、もう喋れそうにもないな……

「減らず口を叩くかとも思ったが、もう口を動かす気力もないと見える」

 その通りなんだけども、だからと言って、そのままでは負けた気がする。
 なので私は精一杯力を振り絞って、舌をベッと出してみる。
 どうだ、まだ口は動いたぞ。
 これが私の最大の抵抗である。


 それを見たドSが口元を緩めた。

「ふっ……私に最後まで反抗的な態度を取るとはな。おかげで退屈せずに済んだ」

 退屈凌ぎだってか。
 本当にコイツは……

「もう会う事もないだろうが、せいぜい新しい人生を楽しむがいい」

 ドSが私に手を翳すと、私の体がフワリと浮き上がる。

 もう抵抗なんて出来そうもないね。
 あとはなるようになれだ。


 そして、急激にその場から遠ざかるように、どこかに飛ばされていく。
 速すぎて周囲の景色さえも分からないよ。

 しばらくして、バリンというガラスでも突き破ったような音と共に景色が変わった。

 空の上だ。

 眼下には森や小さな村が見える。

 その村に近付いていく私。

 一つの家に降りていく。

 赤ん坊だ。
 家に入って最初に目についたのは、取り上げられたばかりの赤ん坊だった。

 そして、その赤ん坊は動いていなかった。

 私の体は、その赤ん坊に近寄っていく。


 私は理解した。
 ああ……私はこの子になるんだと。

 本来なら一歩も歩む事が出来なかった、この子の人生。
 それを私が代わりに歩むのなら、うんと幸せになってやろう。

 そう思いながら私の体は、ポロポロといくつもの記憶を溢しながら……赤ん坊の中に吸い込まれていった。













//////////////////////////////////////////////////////

後書き
シラハ「私が転生する時に、こんな事があったとはー」
狐鈴「うわー、興味薄そう……」
シラハ「だって知ったとしても、どうにもならないし」
狐鈴「だよねー」
シラハ「それにしても、せっかくの100話なのに、こんな過去話を入れるなんてね」
狐鈴「たまたま、そうなっただけだよん」
シラハ「読者サービスとかないの?」
狐鈴「私は媚びない! とか言ってみたりー」
しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

コンバット

サクラ近衛将監
ファンタジー
 藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。  ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。  忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。  担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。  その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。  その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。  かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。  この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。  しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。  この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。  一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。

処理中です...