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「そういえば、ウィーナッドの街が危ないというわりにはライオスさん達、冒険者が動くんですね」
父さんの背中に乗って、ウィーナッドに向かう途中に私は気になっていた事を聞いてみる。
街に危険が迫っているのなら、領主は領地内にいる領兵を動員して調査にあたりそうなのに、話を聞いている限りだとライオスさん達が動いているだけみたいだしね。
「なんかそれ、魔物が森から出てきた影響で、街の周辺や街道とかの見回りに人手がかかっちゃってるらしいよ」
「だから俺達、冒険者に仕事が回ってくるのさ」
「なるほど……。でもAランクの冒険者って数が少ないんじゃないんですか?」
「たしかに多くはないな。ウィーナッドには俺達を含めて三つのAランクパーティーがいるけど……」
「調査の依頼となると、俺らかシャオンのパーティーしか選択肢はねえわな」
「だな」
危機だからといっても、動かせる人員を全部、森の調査に向かわせれば良いという単純な話でもないらしい。
調査に関してだけで言っても、ライオスさんやディアンさんの口振りから向き不向きもあるみたいだし、依頼を出す方も大変そうだ。
「そうだ、シラハ。俺達はギルマスや領主様に今回の件を報告しなければいけないんだが……、シラハの両親…というかソードドラゴンは森の異変には関わっていないと説明する時、シラハの事は伏せておいた方が良いか?」
「あ~……そうですね。そうして貰えると助かります」
「わかった」
私の事を話されると今後さらに行動に制限がかかる可能性があるから、できるだけ目立たないようにしてもらいたい。
「一応はソードドラゴンの事も、他には洩らさないで欲しいとは伝えておくが、あまり期待しないでほしい……」
「領主様やギルマスにも色々あるでしょうしね。その配慮だけでも、ありがたいです」
「そうか……」
少しホッとしたような顔のライオスさん。
この人もあれだね。お人好しなのかもしれない。
「あ…そうそう。シラハ」
「はい?」
ふと思い出したかのようにサシャさんが私の名を呼ぶ。
どうしたんだろう。
「シラハ、戦いの時に変異種を吹き飛ばしたでしょ? アレって君の両親から教わったの?」
「違いますよ」
「そうなんだ。もしかして僕にも使える?」
「無理ですね」
「そっかぁ……。少しでも火力不足を補えたら良いなぁと思ったんだけど」
少し口を膨らませるサシャさん。
火力不足って……今回に関しては相手が悪いだけだと思いますよ。
私の攻撃も効いてなかったし。
「サシャは手数で攻めてるし狙いも正確なんだから、あのシラハの技は逆に動きが悪くなるんじゃないか? 若干の溜めも必要みたいだったし」
「ですね。それにアレを二回使っただけで動けなくなりますしお勧めできませんよ」
「そうなんだ……」
ライオスさんと私の言葉で、サシャさんは諦めてくれた感じだった。
そこへ母さんが少し付け加える。
「シーちゃんの言うアレは随分と魔力の消耗が大きいみたいだしね。たぶん他の人間が使ったら一回で倒れるわよ」
そうなんだ……
でも、その説明だと私の魔力は他の人より多いみたいな感じだ。
「あ、あの、レティーツィアさんは……個人の魔力保有量が分かるのですか?」
「分かるわよ。シーちゃんを100だとしたら、貴女は80と言ったところかしら」
治癒師であるルーアさんが私より少ないとなると、私は自信を持って良いのかな……
「使っていると魔力も増えるし、そこは努力次第だと思うわよ」
「それだと私が努力してるみたいだけど……」
私、魔力を増やす努力とかした事ないんだけどなぁ……
あ、でも何度か魔力枯渇しかけてるし、それの影響かな?
「シーちゃんの場合は、気がつくと増えてるから特殊なんだと思ってるわ」
母さんが何やら諦めたかのような顔をしている。
ホントに特殊な事例なのかもしれない……
「じゃあ僕の魔力量は?」
「40くらいね」
「すくなっ! ルーアの半分じゃん!」
サシャさんがショックを受けている。
普段から魔力を使っているルーアさんと比べても仕方ない気がするんだけどな……
「ちなみに、そっちのディアンくんは25よ。向こうの彼は70ね」
「俺、少ねえな……」
「ディアンとサシャは身体強化くらいしか魔力は使わないからな、仕方ないんじゃないのか?」
サシャさんと同じくショックを受けるディアンさんと、ちょっと誇らしげなライオスさん。
というか、母さんはなんでディアンさんだけ君付けなのかな……
え? 自己紹介したのはディアンさんだけだから?
あ、そうですか……
「街が見えてきたぞ」
なんてことないやり取りをしていると、父さんから声がかかり、皆の視線が進行方向へと向く。
「こんな早く帰ってこれるとはな……」
「空を飛べるのは便利だよな」
ライオスさん達が、何やら疲れた表情をしている。
まぁ、歩きだともっと時間がかかるもんね。
「あ、こんな時間ですけど、皆さん街の外で朝になるのを待つんですか?」
今はまだ陽も昇らない時間だし、このまま到着しても門の前で待ちぼうけになってしまいそうだ。
私がアルクーレの街に初めて行った時はそうだった。
「いや、門番に事情を説明すれば通して貰えるはずだ。竜が目の前に来て、冷静に対処してもらえればだがな……」
理由があれば通してもらえるんだ。
まぁ、私がアルクーレに行った時は、私自身が身元不明の怪しい人物だったし、対応に違いがあるのは仕方がないか……
それよりも竜がいきなり現れて、その場が混乱したり、恐怖から突然こちらに攻撃を加えられるのは困るよね。
となると……
「一度、少し離れた所に降りてから、ライオスさん達の誰かが事情を説明してくるのは、どうですか?」
「確かに、それなら騒ぎになっても、いきなり攻撃してくる事は無くなりそうだな」
「それは誰が行くんだ?」
「パーティーリーダーだから俺は確実に行かなきゃ駄目だろうし……。全員で揃って行くのはどうだ?」
「僕疲れた」
「俺も」
「…………」
ライオスさんがサシャさんとディアンさんに断られて悲しそうな顔になる。
そして、そのままの表情でルーアさんに視線を向ける。
「……わ、私は行きますよ。ライオスだけでは説明も大変でしょうし」
「ありがとう……」
ルーアさんがついて行く事を承諾してくれてホッとしているライオスさん。
パーティーリーダーって大変だね……私はリーダーとか絶対にやりたくないなぁ。
「父さん」
「ああ、離れた位置に降りれば良いんだな」
私が声をかけると、父さんはすぐに地上に降りてくれた。
「じゃあ行ってくるから、ディアンはサシャをきちんと見ててくれよ」
「任せろ!」
「ちょっ、なんで僕なのさ!」
「それはサシャの自業自得だと思いますよ」
「むー……」
ライオスさんとルーアさんが街に向かって歩いて行く。
サシャさんは、こういう時に大人しく待てないのか、何やらライオスさん達に言われていて、納得のいかない顔をしている。
サシャさんとディアンさんは父さんの背中の上で待っているのは落ち着かないらしくて、降りて待機している。
父さんは竜の姿のまま地面に寝そべり、母さんも私に抱きついたままなので、手に入れた変異種の魔石でも取り込んでしまおうと思う。
変異種を倒した事により、空き枠が出来ているのは確認済みだ。しかも二枠も。
「ねぇ、母さん。魔石出してもらっていい?」
「ええ、いいわよ」
ライオスさん達の目の前で、誤って魔石を取り込んでしまわないように母さんに回収してもらった変異種の魔石。
それを母さんに手渡される。
『ジャガール(異)の魔石を確認しました。
領域を確認、魔石を取り込みます。
ジャガール(異)の魔石の取り込みが完了しました。
スキル【雄叫び】【瞬脚】が
使用可能になりました』
変異種の魔石を取り込むと、戦っていた魔物がジャガールという名の魔物だと解った。
だけどその名前の後ろにある(異)って何なんだろう……
変異種って事は普通とは違うのだろうけど、だから私が取り込んだ魔石も変化しているって事なのかな?
もし普通の個体のジャガールって魔物の魔石を手に入れたら、それも取り込めちゃうのかな?
まぁ、その検証はいつかジャガールと出会ったら、という事で良いかな。
あともう一枠空いているし、私が確保している魔石を取り込んじゃおうかな……
空き枠を確保しておきたい、っていう気持ちもあるけど……新しいスキルとかも気になっちゃうんだよね。
私は荷物袋の中を確認しながら、どの魔石を取り込もうかと考える。
というか、変異種との戦いで袋が破けてなくて良かった。
苦労して手に入れた魔石もあるから、もしそれが無くなってたらショック受けそうだな……
苦労……
うん、こういう時は苦労した魔物の魔石を取り込んでみよう。
そうなると……焦っていた、慌てていたっていう記憶のある、あの魔物のやつにしてみよう。
『アーマードゴブリンの魔石を確認しました。
領域を確認、魔石を取り込みます。
アーマードゴブリンの魔石の取り込みが完了しました。
スキル【鎧皮】【不動】が
使用可能になりました』
新しいスキルを覚える時って、なんかワクワクしちゃうよね。
その後の説明文に頭を悩ませるけどさ……
という訳で、いざ新しいスキルの説明オープン!
【龍紫眼】その眼に映るは我が敵か……
【有翼(竜)】背に竜種の証を得る。
【雄叫び】相手を怯ませる。
【瞬脚】驚異的な加速を得る。
【鎧皮】その身は鎧なり。
【不動】その場に固定する。
ふむ……やっぱり分からないや。
【有翼(竜)】は【有翼(鳥)】と似たようなものだろうし、【雄叫び】と【瞬脚】は怯ませたり速くなったりって事なんだろうけど……
【龍紫眼】は、もうよく分からないし、【鎧皮】は防御系? 【不動】の方は何を固定するのかな?
この場合は自分自身って事?
その辺りも帰ったら検証しないとなぁ。
名前:シラハ
領域:《紫刃龍騎》《森林鷹狗》 サハギン
フォレストマンティス レッドプラント
ハイオーク エアーハント シャドー
迷宮核 シペトテク ウッドゴーレム
ジャガール(異) アーマードゴブリン
(0)
スキル一覧
通常:【牙撃】【爪撃】【竜咆哮】【丸呑み】
【鎌撫】【吸血】【風壁】【影針】【根吸】
【雄叫び】【不動】
強化:【竜気】【剛体】【熱源感知】【跳躍】
【水渡】【疾空】【瞬脚】【鎧皮】
身体変化:【竜鱗(剣)】【有翼(鳥)】【血液操作】
【擬態】【潜影】【有翼(竜)】
状態変化:【麻痺付与】【解毒液】
重複:【獣の嗅覚】【側線】【誘引】【誘体】
自動:【体力自動回復(中)】【毒食】【夜目】
【潜水】【散花(○)】【光合成】
迷宮:【迷宮領域拡大】【迷宮創造】【主の部屋】
特殊:【贄魂喰ライ(0)】【龍紫眼】
魔石を取り込んだ後に、ステータスを確認してみる。
結局この《紫刃龍騎》や《森林鷹狗》っていう、結合した魔石は、よく分からないんだよね。
色々とナヴィに聞きたいことがありすぎて、何を聞けばいいのか分かんないんだよね……
あれ……? 【散花(○)】ってスキルは以前は【散花(●)】だった気がするんだけどな……。
気のせいかな?
まぁ何にせよ、またスキルも増えたし、これで戦闘での選択に幅ができたね。
火力面に関しては、父さんから貰った刀で補うとしよう。
「シーちゃん、どう?」
私がステータス画面を見ていると母さんに声をかけられた。母さんにはステータス画面が見えてはいないけど、私が魔石を取り込んだのを見ているので新しいスキルについて聞いているんだと思う。
「まだ効果がはっきりとはしてないけど、面白いスキルは手に入れたよ。たぶん母さんや父さんも喜ぶと思う」
「あら、それは楽しみね」
しまった。
自分でハードルを上げてしまった。
たぶん…きっと喜ぶとは思うんだけどな。あ、ちょっと不安になってきた……
「おっ、戻って来たな」
「おつかれー」
ステータスの確認に夢中になっていると、ライオスさんとルーアさんが戻ってきて、ディアンさんとサシャさんが二人を労う。
「門番達には説明してきたから、もう大丈夫だ」
「それでは、行くとするか」
ライオスさんが皆に聞こえるように声をかけると、父さんが漸くか……といった感じで首をあげる。
父さんは退屈だったよね。ごめんね。
帰ったら父さんをしっかり労ってあげないとね。
何をしてあげようかな……
そんなたわいのない事を考えるだけでニヨニヨしてしまう。
ああ…私って恵まれてるなぁ。
//////////////////////////////////////////////////////
後書き
シラハ「ナヴィに聞きたいことが沢山あって……みたいな発言ってアレでしょ?」
狐鈴「な、なに…?」
シラハ「単純に作者が覚えていない、という……」
狐鈴「ち、違うし! ただの伏線だし!」
シラハ「ほーう」
狐鈴「くっ……。そうだよ! どうせ私なんて一週間前の出来事だって覚えてるか怪しいですよ!」
シラハ「逆ギレした?!」
狐鈴「その時は大丈夫、大丈夫なんて思っててメモもしないのが悪いんでしょ! ケッ」
シラハ「わかってるのなら直しなよ……」
狐鈴「それが出来れば苦労はしねーんですよ!」
シラハ「面倒臭い狐だなぁ……」
父さんの背中に乗って、ウィーナッドに向かう途中に私は気になっていた事を聞いてみる。
街に危険が迫っているのなら、領主は領地内にいる領兵を動員して調査にあたりそうなのに、話を聞いている限りだとライオスさん達が動いているだけみたいだしね。
「なんかそれ、魔物が森から出てきた影響で、街の周辺や街道とかの見回りに人手がかかっちゃってるらしいよ」
「だから俺達、冒険者に仕事が回ってくるのさ」
「なるほど……。でもAランクの冒険者って数が少ないんじゃないんですか?」
「たしかに多くはないな。ウィーナッドには俺達を含めて三つのAランクパーティーがいるけど……」
「調査の依頼となると、俺らかシャオンのパーティーしか選択肢はねえわな」
「だな」
危機だからといっても、動かせる人員を全部、森の調査に向かわせれば良いという単純な話でもないらしい。
調査に関してだけで言っても、ライオスさんやディアンさんの口振りから向き不向きもあるみたいだし、依頼を出す方も大変そうだ。
「そうだ、シラハ。俺達はギルマスや領主様に今回の件を報告しなければいけないんだが……、シラハの両親…というかソードドラゴンは森の異変には関わっていないと説明する時、シラハの事は伏せておいた方が良いか?」
「あ~……そうですね。そうして貰えると助かります」
「わかった」
私の事を話されると今後さらに行動に制限がかかる可能性があるから、できるだけ目立たないようにしてもらいたい。
「一応はソードドラゴンの事も、他には洩らさないで欲しいとは伝えておくが、あまり期待しないでほしい……」
「領主様やギルマスにも色々あるでしょうしね。その配慮だけでも、ありがたいです」
「そうか……」
少しホッとしたような顔のライオスさん。
この人もあれだね。お人好しなのかもしれない。
「あ…そうそう。シラハ」
「はい?」
ふと思い出したかのようにサシャさんが私の名を呼ぶ。
どうしたんだろう。
「シラハ、戦いの時に変異種を吹き飛ばしたでしょ? アレって君の両親から教わったの?」
「違いますよ」
「そうなんだ。もしかして僕にも使える?」
「無理ですね」
「そっかぁ……。少しでも火力不足を補えたら良いなぁと思ったんだけど」
少し口を膨らませるサシャさん。
火力不足って……今回に関しては相手が悪いだけだと思いますよ。
私の攻撃も効いてなかったし。
「サシャは手数で攻めてるし狙いも正確なんだから、あのシラハの技は逆に動きが悪くなるんじゃないか? 若干の溜めも必要みたいだったし」
「ですね。それにアレを二回使っただけで動けなくなりますしお勧めできませんよ」
「そうなんだ……」
ライオスさんと私の言葉で、サシャさんは諦めてくれた感じだった。
そこへ母さんが少し付け加える。
「シーちゃんの言うアレは随分と魔力の消耗が大きいみたいだしね。たぶん他の人間が使ったら一回で倒れるわよ」
そうなんだ……
でも、その説明だと私の魔力は他の人より多いみたいな感じだ。
「あ、あの、レティーツィアさんは……個人の魔力保有量が分かるのですか?」
「分かるわよ。シーちゃんを100だとしたら、貴女は80と言ったところかしら」
治癒師であるルーアさんが私より少ないとなると、私は自信を持って良いのかな……
「使っていると魔力も増えるし、そこは努力次第だと思うわよ」
「それだと私が努力してるみたいだけど……」
私、魔力を増やす努力とかした事ないんだけどなぁ……
あ、でも何度か魔力枯渇しかけてるし、それの影響かな?
「シーちゃんの場合は、気がつくと増えてるから特殊なんだと思ってるわ」
母さんが何やら諦めたかのような顔をしている。
ホントに特殊な事例なのかもしれない……
「じゃあ僕の魔力量は?」
「40くらいね」
「すくなっ! ルーアの半分じゃん!」
サシャさんがショックを受けている。
普段から魔力を使っているルーアさんと比べても仕方ない気がするんだけどな……
「ちなみに、そっちのディアンくんは25よ。向こうの彼は70ね」
「俺、少ねえな……」
「ディアンとサシャは身体強化くらいしか魔力は使わないからな、仕方ないんじゃないのか?」
サシャさんと同じくショックを受けるディアンさんと、ちょっと誇らしげなライオスさん。
というか、母さんはなんでディアンさんだけ君付けなのかな……
え? 自己紹介したのはディアンさんだけだから?
あ、そうですか……
「街が見えてきたぞ」
なんてことないやり取りをしていると、父さんから声がかかり、皆の視線が進行方向へと向く。
「こんな早く帰ってこれるとはな……」
「空を飛べるのは便利だよな」
ライオスさん達が、何やら疲れた表情をしている。
まぁ、歩きだともっと時間がかかるもんね。
「あ、こんな時間ですけど、皆さん街の外で朝になるのを待つんですか?」
今はまだ陽も昇らない時間だし、このまま到着しても門の前で待ちぼうけになってしまいそうだ。
私がアルクーレの街に初めて行った時はそうだった。
「いや、門番に事情を説明すれば通して貰えるはずだ。竜が目の前に来て、冷静に対処してもらえればだがな……」
理由があれば通してもらえるんだ。
まぁ、私がアルクーレに行った時は、私自身が身元不明の怪しい人物だったし、対応に違いがあるのは仕方がないか……
それよりも竜がいきなり現れて、その場が混乱したり、恐怖から突然こちらに攻撃を加えられるのは困るよね。
となると……
「一度、少し離れた所に降りてから、ライオスさん達の誰かが事情を説明してくるのは、どうですか?」
「確かに、それなら騒ぎになっても、いきなり攻撃してくる事は無くなりそうだな」
「それは誰が行くんだ?」
「パーティーリーダーだから俺は確実に行かなきゃ駄目だろうし……。全員で揃って行くのはどうだ?」
「僕疲れた」
「俺も」
「…………」
ライオスさんがサシャさんとディアンさんに断られて悲しそうな顔になる。
そして、そのままの表情でルーアさんに視線を向ける。
「……わ、私は行きますよ。ライオスだけでは説明も大変でしょうし」
「ありがとう……」
ルーアさんがついて行く事を承諾してくれてホッとしているライオスさん。
パーティーリーダーって大変だね……私はリーダーとか絶対にやりたくないなぁ。
「父さん」
「ああ、離れた位置に降りれば良いんだな」
私が声をかけると、父さんはすぐに地上に降りてくれた。
「じゃあ行ってくるから、ディアンはサシャをきちんと見ててくれよ」
「任せろ!」
「ちょっ、なんで僕なのさ!」
「それはサシャの自業自得だと思いますよ」
「むー……」
ライオスさんとルーアさんが街に向かって歩いて行く。
サシャさんは、こういう時に大人しく待てないのか、何やらライオスさん達に言われていて、納得のいかない顔をしている。
サシャさんとディアンさんは父さんの背中の上で待っているのは落ち着かないらしくて、降りて待機している。
父さんは竜の姿のまま地面に寝そべり、母さんも私に抱きついたままなので、手に入れた変異種の魔石でも取り込んでしまおうと思う。
変異種を倒した事により、空き枠が出来ているのは確認済みだ。しかも二枠も。
「ねぇ、母さん。魔石出してもらっていい?」
「ええ、いいわよ」
ライオスさん達の目の前で、誤って魔石を取り込んでしまわないように母さんに回収してもらった変異種の魔石。
それを母さんに手渡される。
『ジャガール(異)の魔石を確認しました。
領域を確認、魔石を取り込みます。
ジャガール(異)の魔石の取り込みが完了しました。
スキル【雄叫び】【瞬脚】が
使用可能になりました』
変異種の魔石を取り込むと、戦っていた魔物がジャガールという名の魔物だと解った。
だけどその名前の後ろにある(異)って何なんだろう……
変異種って事は普通とは違うのだろうけど、だから私が取り込んだ魔石も変化しているって事なのかな?
もし普通の個体のジャガールって魔物の魔石を手に入れたら、それも取り込めちゃうのかな?
まぁ、その検証はいつかジャガールと出会ったら、という事で良いかな。
あともう一枠空いているし、私が確保している魔石を取り込んじゃおうかな……
空き枠を確保しておきたい、っていう気持ちもあるけど……新しいスキルとかも気になっちゃうんだよね。
私は荷物袋の中を確認しながら、どの魔石を取り込もうかと考える。
というか、変異種との戦いで袋が破けてなくて良かった。
苦労して手に入れた魔石もあるから、もしそれが無くなってたらショック受けそうだな……
苦労……
うん、こういう時は苦労した魔物の魔石を取り込んでみよう。
そうなると……焦っていた、慌てていたっていう記憶のある、あの魔物のやつにしてみよう。
『アーマードゴブリンの魔石を確認しました。
領域を確認、魔石を取り込みます。
アーマードゴブリンの魔石の取り込みが完了しました。
スキル【鎧皮】【不動】が
使用可能になりました』
新しいスキルを覚える時って、なんかワクワクしちゃうよね。
その後の説明文に頭を悩ませるけどさ……
という訳で、いざ新しいスキルの説明オープン!
【龍紫眼】その眼に映るは我が敵か……
【有翼(竜)】背に竜種の証を得る。
【雄叫び】相手を怯ませる。
【瞬脚】驚異的な加速を得る。
【鎧皮】その身は鎧なり。
【不動】その場に固定する。
ふむ……やっぱり分からないや。
【有翼(竜)】は【有翼(鳥)】と似たようなものだろうし、【雄叫び】と【瞬脚】は怯ませたり速くなったりって事なんだろうけど……
【龍紫眼】は、もうよく分からないし、【鎧皮】は防御系? 【不動】の方は何を固定するのかな?
この場合は自分自身って事?
その辺りも帰ったら検証しないとなぁ。
名前:シラハ
領域:《紫刃龍騎》《森林鷹狗》 サハギン
フォレストマンティス レッドプラント
ハイオーク エアーハント シャドー
迷宮核 シペトテク ウッドゴーレム
ジャガール(異) アーマードゴブリン
(0)
スキル一覧
通常:【牙撃】【爪撃】【竜咆哮】【丸呑み】
【鎌撫】【吸血】【風壁】【影針】【根吸】
【雄叫び】【不動】
強化:【竜気】【剛体】【熱源感知】【跳躍】
【水渡】【疾空】【瞬脚】【鎧皮】
身体変化:【竜鱗(剣)】【有翼(鳥)】【血液操作】
【擬態】【潜影】【有翼(竜)】
状態変化:【麻痺付与】【解毒液】
重複:【獣の嗅覚】【側線】【誘引】【誘体】
自動:【体力自動回復(中)】【毒食】【夜目】
【潜水】【散花(○)】【光合成】
迷宮:【迷宮領域拡大】【迷宮創造】【主の部屋】
特殊:【贄魂喰ライ(0)】【龍紫眼】
魔石を取り込んだ後に、ステータスを確認してみる。
結局この《紫刃龍騎》や《森林鷹狗》っていう、結合した魔石は、よく分からないんだよね。
色々とナヴィに聞きたいことがありすぎて、何を聞けばいいのか分かんないんだよね……
あれ……? 【散花(○)】ってスキルは以前は【散花(●)】だった気がするんだけどな……。
気のせいかな?
まぁ何にせよ、またスキルも増えたし、これで戦闘での選択に幅ができたね。
火力面に関しては、父さんから貰った刀で補うとしよう。
「シーちゃん、どう?」
私がステータス画面を見ていると母さんに声をかけられた。母さんにはステータス画面が見えてはいないけど、私が魔石を取り込んだのを見ているので新しいスキルについて聞いているんだと思う。
「まだ効果がはっきりとはしてないけど、面白いスキルは手に入れたよ。たぶん母さんや父さんも喜ぶと思う」
「あら、それは楽しみね」
しまった。
自分でハードルを上げてしまった。
たぶん…きっと喜ぶとは思うんだけどな。あ、ちょっと不安になってきた……
「おっ、戻って来たな」
「おつかれー」
ステータスの確認に夢中になっていると、ライオスさんとルーアさんが戻ってきて、ディアンさんとサシャさんが二人を労う。
「門番達には説明してきたから、もう大丈夫だ」
「それでは、行くとするか」
ライオスさんが皆に聞こえるように声をかけると、父さんが漸くか……といった感じで首をあげる。
父さんは退屈だったよね。ごめんね。
帰ったら父さんをしっかり労ってあげないとね。
何をしてあげようかな……
そんなたわいのない事を考えるだけでニヨニヨしてしまう。
ああ…私って恵まれてるなぁ。
//////////////////////////////////////////////////////
後書き
シラハ「ナヴィに聞きたいことが沢山あって……みたいな発言ってアレでしょ?」
狐鈴「な、なに…?」
シラハ「単純に作者が覚えていない、という……」
狐鈴「ち、違うし! ただの伏線だし!」
シラハ「ほーう」
狐鈴「くっ……。そうだよ! どうせ私なんて一週間前の出来事だって覚えてるか怪しいですよ!」
シラハ「逆ギレした?!」
狐鈴「その時は大丈夫、大丈夫なんて思っててメモもしないのが悪いんでしょ! ケッ」
シラハ「わかってるのなら直しなよ……」
狐鈴「それが出来れば苦労はしねーんですよ!」
シラハ「面倒臭い狐だなぁ……」
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その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。
かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。
この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。
しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。
この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。
一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。
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