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エルフ姫がエッチな呪いで悶々とする、ありがちなファンタジーエロっぽいやつ
しおりを挟む「……本当に、よろしいのですか。メルシーナ姫?」
苦渋に満ちた若い男の声が、ところどころ朽ちた家具や埃のたまった廃屋に響いた。
物言わぬ月の光だけが、崩れ落ちた屋根の隙間から、薄汚れた床とその上に積まれた品々を昏く照らし出していた。
並びたち、囲むようにそこを見つめる三つの影。
邪悪王の魔の手から逃げ延びたばかりの、悲劇のエルフ姫、忠実なる聖騎士の若者、そして辺境の大賢者。
彼らはつい数刻前まで、己の存在意義そのものだった貴重かつ高級な装飾品と衣類の山をそれぞれの感慨を込めて見下ろしている。
すでに用意していた平民の服への着替えを終えていた彼らにとって、ここにきての逡巡など無駄な時間でしかないはずだった。
だが、そうとわかっていても断ち切れない栄誉と光輝の残滓を前に、言わずにいられなかったのかもしれない。
重厚な銀装飾の鎧を脱ぎ捨て、泥と油に汚れた粗末な革のベストと麻のズボンを纏っているエルフ族の勇者。
それ自体が特殊な防護効果を持つ、貴重なマジックアイテムだった深紫のローブから、なんの力ももたない布切れを装う老商人然とした恰好の大賢者。
そして、エルフ族を統べる筆頭王家の一員として恥ずかしくない華麗かつ瀟洒な純白のドレスを脱いだ美しき姫。
彼女が今身に纏っているのは、行商人の娘として旅をするのに相応しい、実用的ながらも素朴で小綺麗な装束だった。
丈夫な亜麻布のブラウスに、動きやすい濃紺のスカート。
その上には防寒を兼ねた厚手のベストを重ね、腰には旅の細々としたものを収めるための革ポーチ。
もちろん、ただの町娘としてなら決して見劣りするものではない、むしろ清潔感のある洗練されたものだったに違いない。
ただ、それまでの彼女が身にまとい、周囲に輝きを放っていた、完成された美的装飾品の数々と比べると、あまりにも質素に過ぎると言わざるをえなかった。
だが、宿命の姫君は未練を断ち切るかのように言う。
「ルース、何度も言わせないでください。私たちは死にゆく過去を運ぶのではなく、まだ見ぬ未来を掴みに行くのです。この装束も、過去の地位も、今の私たちには命を脅かす重荷でしかありません」
大きな、魅惑的な瞳に湛えた、気丈な意思の光。
毅然と言い放ち、傍らで魔導書をめくる老賢者に頷きを見せた。
視線で了承の意を返したあと、振るわれる杖。
積み上げられたかけがえのない過去たちが、青白い炎に包まれたように見えた次の瞬間、砂が崩れるように音もなく砕け、静かに塵へと還っていった。
「これでもう、引き返すことはできなくなりましたな」
老賢者は灰の山を一瞥し、真剣な眼差しで二人を見据えた。
「さて、本番はこれからにございます。お二人とも、着ているものは平民ですが、その顔、その体格、その耳……あまりにも『正体』を語りすぎておる。
これより施すのは、光を屈折させて目を欺く『幻術』ではございませぬ」
彼は杖を構え、床に魔法陣を描き始めた。
「骨を削り、肌を焼き、文字通り肉体そのものを別人に作り替える禁呪――『肉体変造』にございます。幻術ならば高位の魔導師の目にかかれば容易く剥がれ落ちますが、この術は物理的に変容させるため、たとえ邪悪王の真実を映す鏡であっても見破ることはできませぬ。元の肉体という素材がある以上、骨格の高さや大まかな造形など、元の外観にある程度は引きずられますが、それゆえにこそ、術の継ぎ目がなく自然なのです。それなりの苦痛も伴いますが、よろしいな?」
「望むところです、ウィドー老」
メルシーナの決意を皮切りに、変容の儀式が始まった。
老賢者はまず、自らに杖を向ける。
「ムンドゥス・ムタツィオ……コーポリス・ファブリカツィオ……」
彼の周囲の空気が歪み、密度を増していく。
やや猫背気味だった背筋が、ミシミシという骨の鳴る音と共に、さらに目に見えて折れ曲がっていった。
豊かな白い髭は魔法の干渉を受けて湿り気を帯び、手入れの行き届かない不潔な褐色へと変色していく。
ルースが驚愕の表情でそれを見守る中、ウィドーの顔の皺が深く歪に刻まれ、眼球の周囲にはどす黒い隈が浮かぶ。
「……ふう。身体が重い。世界を満たす『魔素』を感じなくてはならん肌が、こうも脂ぎった皮に覆われるとは」
声はウィドーのままだが、その喉は狭まり、不快な濁りを持って響いた。
そして、その手の杖は唖然と視線を向け続ける、エルフの若者の胸元へと向けられた。
「お主のその鍛え上げられた筋肉を、不格好な肉厚に変えよう。顔の造作も、整い過ぎた場所は極力平坦に書き換える。骨格までは変えられんゆえ、お主の背格好は隠せぬが、これならば人並の凡庸な御者に見えるはず」
いうなり、再びの集中と呪文の詠唱。
「んおぅっ!?」
歪な重力に肉体が犯され、無理矢理全身を再構築されていくような悍ましい感覚に、彼は奥歯を噛み締めて耐えた。
数多の修行、剣の鍛錬で培われた動きを封じるように、重心が不自然に歪められる。
輝く金髪は浅黒いボサボサの乱髪へと変わり、引き締まった体躯はどことなく脱力めいた凡庸なものになり、若さに輝く肌艶もまた垢じみて倦みつかれたものへとなっていく。
もはやそこにはかつての「妖精界最強の勇者」の面影はなかった。
「……くっ、この姿。剣を振るうのに支障はありませんか」
「人格はそのままだ。技術も衰えてはおらん。だが、ルース。その礼儀正しい物言いは直せ。これからはわしを『親父』と呼び、違和感を与えぬよう口調も心掛けよ」
ルースは不器用に顔を歪め、
「……分かったよ、親父殿」
「『殿』もいらん」
「親父。これでいいか?」
と、無理やり粗野な言葉を吐き出した。
「では最後はわたくしですね」
そして最後に、二人の視線が注がれる先。
流れる艶やかな白銀の髪を持つ至高のエルフ姫――その美を物理的に書き換えなければならない。
わかってはいても、そのあまりの冒涜的な暴挙を想い、ルースは歯ぎしりをしてしまう。
しかし純粋な若者の葛藤をよそに、老成した賢者の淡々とした手腕で作業は開始されていく。
「姫様……。まずはエルフの誇りであるその長い耳を、変えさせていただきます」
「かまいません、御始めください」
ウィドーが魔力を一点に集中させると、エルフ特有の長い耳が、肉を焼くような音を立てて縮み、人間の丸い耳へと形を変えていった。
神秘的な銀髪は、魔法の干渉によって落ち着いた栗色の髪へと色を変え、なめらかな白い肌には、わずかに日焼けの跡のような赤みが差していく。
「……あ、っ……」
メルシーナの口から小さな悲鳴が漏れた。
直接、物理的に肉体が変造される、名状しがたき苦痛に我知らず慄き喘ぐようなそぶりを見せる。
(っく……、この程度……っ)
しかしすでに過酷に過ぎるいくつかの試練を乗り越えた、誇り高き思いはその程度では揺らがない。
それ以上はほとんど身じろぎらしきものをせぬままに、耐えきった。
そして変化が終わったとき、そこには一見すればどこにでもいる町娘が誕生していた。
しかし、ウィドーが予見した通り、生来の美しさを完全に消し去ることはできなかった。
王女としての神々しさこそ影を潜めたものの、栗色の髪から覗く瞳は潤みを帯び、やや丸みを帯びた輪郭、高さを落としつつも小さく整った鼻梁、ぷっくりと厚みをました薄桃色の唇は、かえって「放っておけない可憐さ」を際立たせていた。
近寄りがたい高貴な美しさと引き換えに齎された、親しみやすい愛くるしさとでもいうべきものか。
素朴な清潔感と純真さを感じさせる新しい衣装も相まって、「ただの行商人の娘」というよりは、恵まれた容姿を持つ商家の令嬢といった風情だったかもしれない。
彼女は震える手で自分の色素の変わった髪に触れ、それから見蕩れるように息を呑むルースが差し出した手鏡を覗き込んだ。
「元の私にどこか似ているけれど……。王女ではなく、ただの娘に見えるでしょうか?」
「……ええ。姫様、今の貴女は、大切に育てられた可憐な娘にしか見えません。……正直に言えば、別の意味で男共の目を惹きそうで心配になるほどですが」
嘘の付けない、率直な若者の言葉に、微かに頬へ血がのぼるのを意識する。
(ああ、ルース……)
これまで忘れよう、思い出すまいとしていた『あの記憶』が、鮮烈に蘇りそうだった。
引き裂かれるような心の激しい痛みと葛藤の末に至ってしまった、あの強烈な肉体の感覚。
もはや逆らうこともできずに、最後には受け入れて、我を忘れて耽溺してしまった魔的な誘惑。
憎からず思っている、凛々しい若者と無理矢理結ばれて、覚えてしまった淫らな悦び。
何もかもを解き放ち、恍惚にすべてを塗り替えられる壮絶な瞬間。
刻み込まれた性的快感の記憶。
ましてやその当人たる彼はそうと知らないのだ。
誰とも知らぬ名もなき奴隷女を凌辱したのだと、そう理解しているらしい。
(わたくしたちはもう……)
絶対に知られるわけにはいかない。
すでに最悪な形で一線を越えてしまったなどと。
彼に齎すであろうあらゆる反応が恐ろしかった。
諦念だろうと拒絶だろうと、怒りだろうと、軽蔑だろうと。
これまでと変わらぬままの関係を壊すことだけはさけたい。
……だからこそ。
背徳的かつ淫靡な衝動に襲われそうになる。
「では、これでよろしいですな。それでは今日はここで野営としましょう。明日からは馬車を手に入れてひたすら旅路が続きます。ゆっくりとお休みくださいますよう」
老賢者の言葉にハッと我に返る。
そして肉体の深奥に、微かに、しかしはっきりと灯ってしまったものを意識しながらも、一切表出させずに明日への準備へと移っていった。
………
冷たい夜気が廃屋の隙間から忍び込み、草の混じった土臭い匂いが鼻を突く。
逞しい若者の背中の温もりは、僅かに距離を取っていてもなお、驚くほど鮮明に伝わってくるようだった。
かつての重厚な白銀の鎧越しには決して感じ得なかった、若く、力強い拍動。
今は「御者の男」として書き換えられた不恰好な肉体のはずなのに、メルシーナの意識はその熱に、そして自身の内に渦巻く忌まわしい記憶に釘付けになっていた。
(だめ……っ)
いつどんな危険があるかわからない以上、仕方がないとはいえ、すぐ横で休むことになるとは。
エルフの潔癖な誇りは、確かに「あれは屈辱であった」と叫んでいる。
しかし。
(……いけないのに……、こんな……っ)
ルースの荒い寝息が聞こえ空気を震わせるたびに、あの日知ってしまった『禁断の熱』を求めて疼き、内側からじわりと湿り気を帯びていく。
己自身のあまりの無様な卑しさに、彼女は唇を強く噛み締めた。
だが、それも貪欲な本能的渇望に流されていき。
(ああ……っ)
スカートの中、秘められた場所へと指先が熱い衝動のままに導かれていこうとしたその時。
「姫」
低い、濁った声が闇を割った。
見張りとして外にいたはずの老人が、いつの間にか入り口の朽ちた扉にもたれかかり、こちらを窺うように視線を向けている。
「……うっ、ウィドー老!」
途端、冷や水を浴びたように居住まいを正して仰ぎ見る。
後ろめたいことをどこまで把握されてしまったのか、危機感で身体が硬直してしまう。
「ご安心くだされ、わかっております」
「っ!」
やはり知られてしまった。
自分の浅ましさを。
恥ずかしさと悔しさ、もはや面目などなくなってしまう恐怖に包まれる。
もう己はエルフ族を率いる、王族としての尊敬など得られまい。
少なくとも目の前の老人からは。
そう世界が壊れるような喪失感に囚われた次の瞬間。
「お辛いのでしょう。……かの邪悪王が貴女様に掛けられた『淫蕩の呪い』。よもや耐えられるわけがございませぬ」
静かな、そして落ち着いた声音で齎された言葉を理解した途端、一気に安堵が広がった。
わかってくれていたのだと。
軽蔑でも、見下しでもなく、ただ淡々と事実を述べるかのようなその響き。
今の自分にとってなによりの救いそのものだった。
「ああっ……、ご、ご存じなのですねっ」
「ええ、彼奴の目論見はおおむね当たりはつけておりましたのでね。貴女様がかけられたのはエルフ族の聖なる封印を解くための布石に他なりませぬ。現在の継承者たる姫を肉欲の悦びに堕落させ、ついにはその決壊を齎すことを目的としたもの」
「そ、それでは……?」
「貴女様は今後、ことあるごとに抑えきれぬ発作と衝動に悩まされるはず。そして一度発現した欲求はその都度、無理矢理にでも発散させねば、延々と続くことになるという、まさに淫蕩の呪い」
「そんな……!」
「術者本人である邪悪王そのものを打ち倒す日まで、残念ながら開放されることはないでしょう。……お辛いこととは存じますが、なにとぞお心を強くお持ちくださいますよう」
「……わ、わかりました。わたくしも、もはやある程度のことは覚悟しております。ならば耐えて見せましょうともっ」
「御立派ですじゃ。今後、旅をつづけるにあたり、いろいろご不便をありますでしょうが、極力負担を軽減できるよう取り計らわせていただくつもりですわい」
「ありがとうございます、貴方のお心遣いに感謝を」
そう自らの状態をはっきりと理解したことで、ようやく落ち着きを取り戻した。
そして運命を受け入れて、なお前に進む気概も。
「では、彼には『熟睡の魔法』をかけておりますので」
「? そ、それは一体?」
「彼のことは気にすることなく、存分にお慰めくだされ」
慈愛と理解に満ちた貌で老人は告げた後、さっさと姿を消していった。
そして独り、目覚めることなく寝入る若者と取り残された姫は。
(き、気にしないでいられるわけが……っ)
我知らず真っ赤に火照らせた貌のまま、そう逡巡したのはどれだけだったのか。
だがついに理解者を得られた安堵と、悶々と続く肉体の疼きは如何ともしがたく、彼女の禁欲的な抵抗力をみるみる奪っていき。
「ああっ……」
くちゅりと。
すっかり溢れていた場所を触れた瞬間、迸った歓喜に喉を逸らした。
(か、彼がすぐ後ろにいるというのに……っ)
指の動きは止まらなかった。
「……っ、……っ、……っ、……っ!」
ぬちゅぬちゅくちゅくちゅと、気持ちいい場所を万遍なく、時に焦らしたり、時に直接的に内部をほじってみたり。
「はっ! はっ! はっ! うっ、くぅっ!」
(だめ……っ、き、気持ちよくなって……っ!)
覚えたばかりの淫らな悦びにすっかり身も心も蕩けつつあった。
やがて必然的に至る終わりが迫ってくる。
下腹の奥に刻刻と満たされていく甘美な切なさ、限界を超えて決壊するすさまじい爆発の予感がゾクゾクと背筋を迸る。
「んっ! んっ! んっ! んんっ!」
(も……う……っ!)
絶頂へ向けて、肉体が無意識の強張りを見せ始めた中。
突如、寝入っていたはずの若者の声が背中の向こうから聞こえてきたのだった。
「……姫ぇ。俺は貴女がぁ……。ん~、むにゃむにゃ」
「っ!?」
寝言だったのは明らかだった。
にも関わらず、限界まで切羽詰まっていた若く瑞々しい肉体に最後の駄目押しをするには十分だった。
「~~~~~~~~~~~~っ!!」
びくんっと。
大きく腰をバウンドさせて、高貴なるエルフの姫君は真っ白な絶対的開放へと至った。
音も、色も、何もない瞬間。
純粋な、快感だけの世界。
淫らな悦びですべてが塗り替えられ、満ち足りる、恍惚の時。
「……っ! ……っ! ……っ! ……っ!」
しばらく硬直したまま、痙攣が止まらなかった。
息をするのもままならぬまま、ひたすらあふれ出したものを持て余す。
「は……っ、は……っ、は……っ。はぁ……っ、はぁ……っ、……んんっ」
やがてようやく強制的な反応から解放されると。
ぐったりと、力尽きたように脱力して吐息を流しはじめた。
(また……、わたくし……)
じんとしつこく残る余韻に痺れたまま、空虚な満足感と、後ろめたさのないまじったものに包まれていく。
それも間も無く訪れた強烈な睡魔によって、どこかに消え失せていった。
完全に暗黒へと沈むまえ、心地いい倦怠感が今は何よりありがたいような気がした。
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