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(ΦωΦ)かねやん

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タニマキ、お化け屋敷でバイトする

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タニマキたちは、湖のほとりを歩いていた。

光の粒が湖面に反射してきらめき、周りの風景を包み込む。澄んだ空気が心地よく、肺の奥まで染みわたる。

「あっ! 魚がいるニャ!」

タニマキの目が輝いた。さっきから彼のお腹はずっと鳴り続けていて、今にも湖に飛び込まんばかりの勢いである。

「釣りがしたいニャ。久しぶりに魚が食べたいニャ」

タニマキの頭の中に、鮎の塩焼きの匂いがふんわり鼻腔をくすぐる情景が浮かび、彼は思わずよだれを垂らしそうになった。

「お昼ご飯まではまだ時間があるよ。我慢できないの?」

先頭を歩くまゆたんが、子供に語り掛けるように優しく言った。

「我慢できニャい」

タニマキは、あくまでもマイペースを貫く。

「タニマキが最近、好きなだけ食べたり飲んだりしてるから、財布の中身も減ってきてるよ」

呆れた表情で、タニマキの前を歩くデビルが言う。

「ワテは成長期やど!」

見た目は変わらないが、確かにタニマキの身体能力はぐんぐん伸びている。

「そうだよ。タニマキに好きなだけ食べさせてあげようよ」

タニマキの後ろからついてくるデビルが言った。

「ニャ?」

タニマキは異変に気付いた。

彼の前にも後ろにもデビルがいる!

「ニャアアア? デビルが二人いるニャ!」

「何言ってるんだ?」

振り向いたデビルの目に飛び込んできたのは、自分そっくりの姿をしたもう一人の“デビル”だった。

「き、君は誰?」

前方にいるデビルは、大きく目を見開いてたまげた。

「グフフフフ」

後方にいるデビルが怪しげな笑みを浮かべる。

「どうやらバレたようだな……私の本当の姿を見よ!」

偽デビルはそう言うと、あっという間に身長10メートルはありそうなトロルに姿を変えた。

「ギャー! 化け物ニャー!」

タニマキは仰天して湖に落ちてしまった。

「ああっ!」

まゆたんが慌てて湖に飛び込み、パニックになって水の中で暴れているタニマキを、後ろから優しく救助した。

「ごめんね……僕、人を驚かす練習をしてたんだ」

トロルはそう言うと、かわいらしいキタキツネに姿を変えた。毛並みはつややかに整い、光を受けて黄金色に輝いている。丸く大きな瞳はくりくりと愛らしく、見つめられると思わず頬が緩んでしまいそうだ。

「お……驚かすニャよ! ワテの自慢のトラ柄が水に濡れて波打ってしまったニャ!」

トロルにびびった恥ずかしさを隠そうと、タニマキは切れた。

「本当にごめん。どうやってお詫びすればいいかな?」

申し訳なさそうにキタキツネが言う。

「別にいいんですよ……あっ! いや!」

話の途中で、まゆたんは何かを閃いた。

「仕事の口を紹介してもらえませんか? 最近、所持金が減ってきているので」

まゆたんは、すかさず取引を提案した。

「タニマキのせいだ」

デビルは即座にそう言い放ち、タニマキの暴飲暴食のせいでお金が足りなくなったことを強調した。

「それなら、うちでバイトすればいいよ。給料はあまり高くないけど、賄い付きなんだ」

嬉しそうにまゆたんの提案を受け入れるキタキツネ。

「賄い付き! 早くそれを言えニャ!」

急に元気を取り戻すタニマキ。

「ぜひお願いします」とまゆたん。

「よかった。僕の名前はキタロー。友達のモンと一緒に、お化け屋敷を経営してるんだ。ちなみに、モンは本物のお化けだよ」

タニマキたちは、キタローに案内されてお化け屋敷に到着し、そのまま働くことになった。

建物の看板を見ると、帽子をかぶったかわいらしいお化けが、「いらっしゃいませ」と笑顔で挨拶していた。全体は子どもが好みそうな原色で統一されており、親しみやすさが前面に出ている。タニマキたちも、思わずほっとするような雰囲気だった。

「うちのお化け屋敷は異世界トンネルを通じて人間界に繋がっていて、メインのお客さんは人間なんだ。カフェも兼ねていて、飲み物と甘いものも提供しているよ。従業員は僕以外、みんな本物のお化けさ」

キタローは笑顔を浮かべながら、丁寧に説明してくれた。

事務所に入ると、机に向かって書類をめくっているお化けがいた。キタローの共同経営者、モンである。

モンの容貌は、看板に描かれたお化けにそっくりだ。いや、もしかすると、看板のお化けはモンがモデルなのかもしれない。

キタローがタニマキたちを紹介する。

「彼らは仕事を探しているそうなんだ。ここで雇ってあげられないかな?」

「いいよ! 大歓迎さ! 初めまして、僕は『モン・タカサゴドー』。モンと呼んで。よろしくね」

さっそくタニマキたちは、お化け屋敷でのバイトを始めることになった。

デビルは顔が怖いのでメイクも小道具もいらない。

まゆたんは眉毛を強調して不気味さを醸し出す。

タニマキは尻尾を二本に分けて、しなやかに揺らしながら猫又になりきった。尻尾で時々「ニャッ」とポーズを決めるあたり、ノリノリである。

三人はどきどきしながらそれぞれの配置についた。人間の足音が近づいてくる。

まず、デビルが動いた。

「ガオー!」

鳴き声は陳腐だが、人々は驚いて逃げ惑う。デビルの顔はやはり破壊力がある。

次はまゆたんの出番だ。

「僕の眉毛はどうですか~」

不自然なほどにぶっとい眉毛は、子供を中心として、意外と怖がる人が多かった。眉毛を上下に動かすと、さらに効果的であった。
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