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病院
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「次にアイツに似たヤツ、見かけたら話しかけてみるか」
「そうね。まだ近くにいるといいんだけど...」
そもそも日本に帰って来てるのかすら分からないが、アイツに限っては"もう食われてる"なんてことは無いはずだ。
「それで、ここは?」
俺は起き上がり、軽く準備運動をする。
「"シブチカ中央病院"っていう渋谷駅地下の病院よ。飯塚さんの事と、みんなの事を治療するには一番ここが近かったから」
「そうだったのか、色々とありがとな。というか、ユキの身体は大丈夫なのか? 頭から血が出てただろ?」
「それが、案外何事も無かったの。でも、今ちょっと痛くなってきたかも...」
頭を抑えるユキ。
「アドレナリンが出てたとか、そういう感じかもな。今日は安静にしとかないと」
「うん。でも、みんなの様子も気になるし...あ、そうそう! 大臣の言った通り、裏部さんが隠し部屋にいたのよ! 今私たちと一緒に来てるの!」
「おぉ! どんな人だった?」
「少ししか話してないけど、凄い話しやすい人だった。なんか、要点をまとめるのが上手いというか、ルイとは気が合いそうな感じ」
「へぇ~、気になってきたな」
「なら、一緒に行ってみる?」
ユキがベッドから立ち上がろうとする。
「おいおい、無理すんなよ」
「ん...大丈夫よ、歩くくらい。"誰かさんと一緒"で、じっとしてるのは性に合わないしね」
不敵な笑みを浮かべるユキに連れらるように、俺たちは真っ暗な病室を抜け出した。
廊下に出ると、赤い光だけが点々としており、まるでホラーの一番怖いシーンみたいになっていた。
「"こういう廊下"って、なんか出そうで怖いよな」
「ちょっと! 急に変な事言わないでよ...」
「わりぃわりぃ。でもユキ、ホラー系得意だろ?」
「まぁ嫌いじゃないけど...リアルとゲームは違うの」
コイツ、男顔負けなほど、ゲームのホラー耐性が凄いんだ。
実は男なんじゃないか?と何回か思ってしまったんだぞ。
適当に会話をしながら数分歩くと、より広い場所へと出た。
近くの案内図を見ると、どうやらここが"B7Fの中央"らしい。
...ん?
渋谷駅の地下って、"B7"まであったか?
俺が知ってる範囲だと、"B5"までしか知らないぞ。
"この病院の名前"も初めて聞いたし、いつの間にこんな事になってたんだ...?
「この病院ほんと大きいわね。初めて来たけど、迷子になりそう」
「"渋谷駅の地下1階から7階まである病院"って凄いな...最近はこんな場所が出来てるのかよ」
「ね。私も全然知らなかった。AIで地下も拡大してるって事なのかな」
ユキは唐突に「あ!」と声を上げると、案内図のある場所を指さした。
そこは"産婦人科棟"と書いてある。
「この"705室"よ。ここにいるって言ってたから」
「って事は、このまま真っすぐだな。行くか」
「うん」
この際、ユエさんにはゆっくりしてもらいたいけど、正直ユエさんが抜ける不安が大きいってのもあるんだよな...
...そんな事いつまでも言ってられないか。
数分歩くと、"705室"が見えてきた。
あれ?
その前のソファに、"誰か二人"座ってる?
一人がこっちを見ると、こっちへと近付いてきた。
「おぉ! 二人とも! ルイはいつ起きたんだ!?」
「誰がいるのかと思ったらシンヤか。ついさっきな」
「裏部さんに会ってみたいって言うから連れて来たの。私もみんなの様子、見たかったしね」
シンヤの背後から、その人物は姿を現した。
「初めまして三船君、僕が裏部です。この度は助けてくれて、本当にありがとうございます!」
初めて会う裏部さん、めちゃくちゃが付くほど丁寧な人だった。
眼鏡と白衣が良く似合う、爽やかな人という感じだ。
「そんな、頭を上げてください。当たり前の事をしただけですから」
「何を言ってるんです!? "あの強さ"は人間では到底敵いませんよ!?」
「そうよ。ルイがしているのは、そういう事なんだからね。昔からそうだけど、全てを逸脱しすぎているのよ、あなたは...」
「いや、使っている武器が強かっただけで」
「確かに【大蝶イーリス】はクソ強い設定ですが、その分特殊で、扱いもクソ難しいんですよ!?」
い、勢いが凄いな。
キャラも崩壊しているような...
裏部さんは、終始唖然とした顔をしていた。
コイツは何を言ってるんだと、言っているように。
「それをありえないほど使いこなしてる君がいれば、ユエ先輩の言う通り、総理のもとまで行けるでしょうね」
「裏部さんは、さっきからお前に期待しまくりだったぜ!? これからはユエさんに代わって、俺たちをサポートしてくれるってよ!」
「え、そうなんですか!? それじゃあユエさんは?」
「これからは安定期だそうで、このままここで様子を見る事になりそうです。今はゆっくり眠っていますが、三船君の事をずっと心配していました」
「...そうでしたか」
「また明日、会ってあげて下さい。話せるのを、楽しみにしていましたから」
L.S.で時間を確認すると、〈2030/09/22 AM 2:23〉とあった。
あの赤ビルに行ってから、もう1日半以上が経っていた。
...俺は何時間寝てたんだ?
「そうね。まだ近くにいるといいんだけど...」
そもそも日本に帰って来てるのかすら分からないが、アイツに限っては"もう食われてる"なんてことは無いはずだ。
「それで、ここは?」
俺は起き上がり、軽く準備運動をする。
「"シブチカ中央病院"っていう渋谷駅地下の病院よ。飯塚さんの事と、みんなの事を治療するには一番ここが近かったから」
「そうだったのか、色々とありがとな。というか、ユキの身体は大丈夫なのか? 頭から血が出てただろ?」
「それが、案外何事も無かったの。でも、今ちょっと痛くなってきたかも...」
頭を抑えるユキ。
「アドレナリンが出てたとか、そういう感じかもな。今日は安静にしとかないと」
「うん。でも、みんなの様子も気になるし...あ、そうそう! 大臣の言った通り、裏部さんが隠し部屋にいたのよ! 今私たちと一緒に来てるの!」
「おぉ! どんな人だった?」
「少ししか話してないけど、凄い話しやすい人だった。なんか、要点をまとめるのが上手いというか、ルイとは気が合いそうな感じ」
「へぇ~、気になってきたな」
「なら、一緒に行ってみる?」
ユキがベッドから立ち上がろうとする。
「おいおい、無理すんなよ」
「ん...大丈夫よ、歩くくらい。"誰かさんと一緒"で、じっとしてるのは性に合わないしね」
不敵な笑みを浮かべるユキに連れらるように、俺たちは真っ暗な病室を抜け出した。
廊下に出ると、赤い光だけが点々としており、まるでホラーの一番怖いシーンみたいになっていた。
「"こういう廊下"って、なんか出そうで怖いよな」
「ちょっと! 急に変な事言わないでよ...」
「わりぃわりぃ。でもユキ、ホラー系得意だろ?」
「まぁ嫌いじゃないけど...リアルとゲームは違うの」
コイツ、男顔負けなほど、ゲームのホラー耐性が凄いんだ。
実は男なんじゃないか?と何回か思ってしまったんだぞ。
適当に会話をしながら数分歩くと、より広い場所へと出た。
近くの案内図を見ると、どうやらここが"B7Fの中央"らしい。
...ん?
渋谷駅の地下って、"B7"まであったか?
俺が知ってる範囲だと、"B5"までしか知らないぞ。
"この病院の名前"も初めて聞いたし、いつの間にこんな事になってたんだ...?
「この病院ほんと大きいわね。初めて来たけど、迷子になりそう」
「"渋谷駅の地下1階から7階まである病院"って凄いな...最近はこんな場所が出来てるのかよ」
「ね。私も全然知らなかった。AIで地下も拡大してるって事なのかな」
ユキは唐突に「あ!」と声を上げると、案内図のある場所を指さした。
そこは"産婦人科棟"と書いてある。
「この"705室"よ。ここにいるって言ってたから」
「って事は、このまま真っすぐだな。行くか」
「うん」
この際、ユエさんにはゆっくりしてもらいたいけど、正直ユエさんが抜ける不安が大きいってのもあるんだよな...
...そんな事いつまでも言ってられないか。
数分歩くと、"705室"が見えてきた。
あれ?
その前のソファに、"誰か二人"座ってる?
一人がこっちを見ると、こっちへと近付いてきた。
「おぉ! 二人とも! ルイはいつ起きたんだ!?」
「誰がいるのかと思ったらシンヤか。ついさっきな」
「裏部さんに会ってみたいって言うから連れて来たの。私もみんなの様子、見たかったしね」
シンヤの背後から、その人物は姿を現した。
「初めまして三船君、僕が裏部です。この度は助けてくれて、本当にありがとうございます!」
初めて会う裏部さん、めちゃくちゃが付くほど丁寧な人だった。
眼鏡と白衣が良く似合う、爽やかな人という感じだ。
「そんな、頭を上げてください。当たり前の事をしただけですから」
「何を言ってるんです!? "あの強さ"は人間では到底敵いませんよ!?」
「そうよ。ルイがしているのは、そういう事なんだからね。昔からそうだけど、全てを逸脱しすぎているのよ、あなたは...」
「いや、使っている武器が強かっただけで」
「確かに【大蝶イーリス】はクソ強い設定ですが、その分特殊で、扱いもクソ難しいんですよ!?」
い、勢いが凄いな。
キャラも崩壊しているような...
裏部さんは、終始唖然とした顔をしていた。
コイツは何を言ってるんだと、言っているように。
「それをありえないほど使いこなしてる君がいれば、ユエ先輩の言う通り、総理のもとまで行けるでしょうね」
「裏部さんは、さっきからお前に期待しまくりだったぜ!? これからはユエさんに代わって、俺たちをサポートしてくれるってよ!」
「え、そうなんですか!? それじゃあユエさんは?」
「これからは安定期だそうで、このままここで様子を見る事になりそうです。今はゆっくり眠っていますが、三船君の事をずっと心配していました」
「...そうでしたか」
「また明日、会ってあげて下さい。話せるのを、楽しみにしていましたから」
L.S.で時間を確認すると、〈2030/09/22 AM 2:23〉とあった。
あの赤ビルに行ってから、もう1日半以上が経っていた。
...俺は何時間寝てたんだ?
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