フォールン・イノベーション -2030-

花伝

　大きな声が背後から響いた。
　そこには、

　― 全身花だらけの変な人？がいた

「こんな事やれと言ってないぞ」
「(...げ、なんで代表が)」
「お前たちも何やってる」
「す、すみません！　もう止められなくて...」
「だろうな、ノノは言い出したら聞きやしない」

　花だらけの人はノノへと寄っていく。
　するとノノは、

「だってこの女が」

　一つ言うと、

「黙れッ！！！」

　急に飛ぶ怒声。
　辺りに一斉に緊張感が漂り、萎縮する。
　あのノノさえ黙ってしまった。

　なに、この人...？
　代表って聞こえたけど、ここの代表ってこと？

「それは喧嘩で勝つために与えたわけじゃない、これ以上新宿花伝に泥を塗るなら次はクビだからな」
「...はい、すみません」

　花だらけの人は一瞬ニイナを見たかと思えば、今度はこっちへと視線を移した。
　私のL.S.を見ている？

「...ん！？　そのL.S.って...七色蝶のとこの！？」

　その言葉の後、またざわつきが始まる。
　「嘘だろ？」だったり、「見た目違わない？」だったり。
　私とヒナは今日はお揃いの髪型をしていて、いつもと違うのはそうだけど。

「死んだって聞いたけど...生きてたの？」
「まぁ、ギリギリでした」
「亡霊じゃないよね？」
「生きてます」

　凄い足音で次はノノが寄って来た。

「！？　ガチ！？」
「...はぁ」

　ノノはまじまじと私の顔見てくる。
　目を凝らしたり、胸を見たり、足を見たり...
　何されてんのこれ？

「ねぇ...もしかして、ユキ姉？」
「？」
「可愛くなりすぎだって！　ほら、三船ノノ！　覚えてない！？」

　言うノノは緑のフードをゆっくり降ろす。
　私をよく見てと謎のアピール。

　ん～...

　ん...？

「......あ！　え！？　ルイの家によく来てた！？」
「そうそう！！」
「うわぁ！　懐かしい！！」
「うん！　ユキ姉いっつも私の事ルイ兄の妹だと勘違いしてたよね～！」
「あー、そうだった」
「苗字が同じだからってさ～」

　うわやっば。
　見れば見るほど思い出してきた。

　小学生の時よくルイの家にノノが来てた。
　家族同士が仕事関係で仲良かったんだったかな。
　さらには苗字が三船同士もあって、よく意気投合してた。

　私が行った時にちょうどいる時多かったんだよね。
　外で遊んだり、一緒にゲームしたり、勉強教えたり、いろいろした。
　昔は"離れて住んでるルイの妹"かと、勘違いしてたんだよね。

「早く言ってよ～、ならこんな事ならなかったのに～」
「いやいや、こんな大きくなって全然気付けないわ。私が知ってるのは"これくらいの時"なんだから」

　"会ってた時のノノの大きさ"を手で表す。

「ちっさ！？　そんな！？」
「そうよ。言葉遣いだって、全然違うじゃない」
「いや～、まぁいろいろありまして...これは昔のユキ姉の影響もあるからね！？」
「わ、私！？」

　不意に花だらけの人が近付いてきた。

「ノノとはそんな関係だったのか。それで、昨日は凄い数に襲われたんだってね」
「もう死ぬ寸前でした。武器も出せない状態だったので」
「大変...だったねぇ。支援組も帰ったそうじゃない」
「もう必死で走って逃げるしかなかったです」
「よく生きててくれた。それで七色蝶は？　帰ってきた？」
「......いえ...それに追加で2名が行方不明です」
「...」

　少しの間の後、花だらけの人は自身の頭へ手を動かした。
　すると、頭の鎧をゆっくり取り始めた。

　そこには、さっきの怒声とは思えない女性がいた。

　肩まで伸びる綺麗な髪。
　20代後半くらい？
　え、この人が本当にさっきの声出したの？

「なら、この新宿花伝に手伝える事はない？」
「え？」
「あなたたちの勇気のおかげで、私たちは咲く事が出来たのよ？　ねぇみんな！」

　その瞬間、新宿花伝全員の肩からパッと花が咲いた。
　色とりどりの。
　ノノまでも。

「わぁ！」

　ヒナが少し喜んだ表情で呟く。
　私は、

「...ありがとう、ございます」

　握手を交わした。

「頑張ってきてよかったね！　みんなちゃんと見てるんだよユキちゃん！　ね、ニイナちゃん！」
「私は散々な目にあってますが」
「あ、あはは...」

　この後、ノノとニイナは何とか仲直りをするんだけど、ニイナが警察だと知ってからは、ノノの口調が急に丁寧になった。
　...みんな同じだよね