149 / 165
エストニア 『ザ・ヒドゥンビューティ』
149話
しおりを挟む
ベートーヴェンやバッハなどの音楽の流れを汲むが、リズムが複雑であったり、あえて不協和音を取り入れたりと、第二次世界大戦以降に発達してきた音楽がそれにあたる。
それらの違いを言葉にする際、専門家などは頻繁に『水平と垂直の違い』という表現の仕方をする。古典音楽は水平、つまりゆったりと感情を伝えて進んでいくのに対し、現代音楽は垂直。突然の不協和音と共に感情が爆発する。それゆえに現代音楽は耳馴染みが悪い、と書かれることも。
「え、まじ?」
引き攣った笑いを浮かべるプリシラは、目はキョロキョロと男二人を行ったり来たり。マジ? マジでやんの? と確認の意味も込めて。
もちろん唖然としたのはルノーも同じだが、同時に「なるほど」と筋が通っていることにも気づく。
「……そうきたか。たしかに、一番効率のいい方法かもな。サロメにとっては」
強い感情を引き出す現代音楽。尚且つこの曲は非常に珍しい特徴を持った曲でもある。
続いてランベールも一応は納得。あくまで一応なのは、ショパンの系譜を引くネイガウス派が、あまり弾くことはないであろう選曲のため。
「ええ、八八鍵盤全て使う曲、あいつならやりかねませんね」
しかし問題は、その曲を弾けるかということ。この曲はこの特性ゆえに、知っているピアニストは多い。が、難曲ゆえに練習している人はあまり聞いたことがない。少なくとも自分はひとりも知らない。が。
「ま、やりますかー」
観念して、と言うわりには朗らかなムードでプリシラは鍵盤に指を置く。調律したてはいつも少しの緊張。指への吸い付きも変わる。自分の音を出せるか。
「え……弾けるん、ですか……?」
目を丸くしてランベールは確認。生で聴いたことのないあの曲。ゴク、っと喉が鳴った。
えへへー、と糖度の高そうな笑顔でプリシラは肯定する。
「弾けるよー。現代音楽も専攻してるから、そこそこね。でもよくわかったねぇ、サロメちゃん」
当人に鼻先までくっつけて問い返す。距離感が近い癖がある模様。
視線を逸らさず、サロメはその眠そうな目を何度も瞬き。
「あたしくらいになると、その人を見るだけでなんの曲が弾けるかわかるのよ」
一瞬の迷いもなく嘘を並べる彼女に対し、どうせそっちの部屋に楽譜でもあったのだろうとランベールは予測。真面目に取り合う気もない。
「アホらし……」
もちろん聞こえているが、サロメは無視して話を進めていく。
「じゃ、よろしくー。あ、あんた達はもう帰っていいわよ。荷物は持って帰るから。こっからはひとりで」
帰った帰った、と唐突に部屋の外へ追い出そうとする。何もかも自由。気分で未来が変わるし決まる。
それらの違いを言葉にする際、専門家などは頻繁に『水平と垂直の違い』という表現の仕方をする。古典音楽は水平、つまりゆったりと感情を伝えて進んでいくのに対し、現代音楽は垂直。突然の不協和音と共に感情が爆発する。それゆえに現代音楽は耳馴染みが悪い、と書かれることも。
「え、まじ?」
引き攣った笑いを浮かべるプリシラは、目はキョロキョロと男二人を行ったり来たり。マジ? マジでやんの? と確認の意味も込めて。
もちろん唖然としたのはルノーも同じだが、同時に「なるほど」と筋が通っていることにも気づく。
「……そうきたか。たしかに、一番効率のいい方法かもな。サロメにとっては」
強い感情を引き出す現代音楽。尚且つこの曲は非常に珍しい特徴を持った曲でもある。
続いてランベールも一応は納得。あくまで一応なのは、ショパンの系譜を引くネイガウス派が、あまり弾くことはないであろう選曲のため。
「ええ、八八鍵盤全て使う曲、あいつならやりかねませんね」
しかし問題は、その曲を弾けるかということ。この曲はこの特性ゆえに、知っているピアニストは多い。が、難曲ゆえに練習している人はあまり聞いたことがない。少なくとも自分はひとりも知らない。が。
「ま、やりますかー」
観念して、と言うわりには朗らかなムードでプリシラは鍵盤に指を置く。調律したてはいつも少しの緊張。指への吸い付きも変わる。自分の音を出せるか。
「え……弾けるん、ですか……?」
目を丸くしてランベールは確認。生で聴いたことのないあの曲。ゴク、っと喉が鳴った。
えへへー、と糖度の高そうな笑顔でプリシラは肯定する。
「弾けるよー。現代音楽も専攻してるから、そこそこね。でもよくわかったねぇ、サロメちゃん」
当人に鼻先までくっつけて問い返す。距離感が近い癖がある模様。
視線を逸らさず、サロメはその眠そうな目を何度も瞬き。
「あたしくらいになると、その人を見るだけでなんの曲が弾けるかわかるのよ」
一瞬の迷いもなく嘘を並べる彼女に対し、どうせそっちの部屋に楽譜でもあったのだろうとランベールは予測。真面目に取り合う気もない。
「アホらし……」
もちろん聞こえているが、サロメは無視して話を進めていく。
「じゃ、よろしくー。あ、あんた達はもう帰っていいわよ。荷物は持って帰るから。こっからはひとりで」
帰った帰った、と唐突に部屋の外へ追い出そうとする。何もかも自由。気分で未来が変わるし決まる。
0
あなたにおすすめの小説
Husband's secret (夫の秘密)
設楽理沙
ライト文芸
果たして・・
秘密などあったのだろうか!
むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ
10秒~30秒?
何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。
❦ イラストはAI生成画像 自作
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
廃城の泣き虫アデリー
今野綾
ファンタジー
領主の娘だったアデリーはある日家族を殺され育った領地から命からがら逃げ出した。辿り着いた先は廃城。ひとり、ふたりと住人が増える中、問題が次々とおこって…
表紙はフリー素材です
自発的に失踪していた夫が、三年振りに戻ってきました。「もう一度やり直したい?」そんな都合のいいことがよく言えますね。
木山楽斗
恋愛
セレント公爵家の夫人であるエファーナは、夫であるフライグが失踪してから、彼の前妻の子供であるバルートと暮らしていた。
色々と大変なことはあったが、それでも二人は仲良く暮らしていた。実の親子ではないが、エファーナとバルートの間には確かな絆があったのだ。
そんな二人の前に、三年前に失踪したフライグが帰って来た。
彼は、失踪したことを反省して、「もう一度やり直したい」と二人に言ってきたのである。
しかし、二人にとってそれは許せないことだった。
身勝手な理由で捨てられた後、二人で手を取り合って頑張って来た二人は、彼を切り捨てるのだった。
翡翠の歌姫は声を隠す【中華後宮サスペンス】-二人の皇子と陰謀に揺れる宮廷-
雪城 冴 @キャラ文芸大賞参加中
キャラ文芸
「返して!」
宮廷に少女の悲痛な叫びが響く。亡き母のような歌姫を目指してきた翠蓮は、貧しい身なりを嘲笑われ、泥だらけで歌う事態に。
助けてくれたのは二人の皇子。一人は守り、一人は“声”を利用する。
やがて王家が隠し続けてきた真実が、彼女の前に立ちはだかる。
声を隠すか、歌うのか――
翠蓮は選択を迫られる。
・ハッピーエンド予定
・異世界ではないですが架空の中華風ファンタジーです
※アルファポリス様で先行公開しており、書き溜まったらなろう、カクヨム様に移しています
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様を書いたストーリーです。
【完結】エレクトラの婚約者
buchi
恋愛
しっかり者だが自己評価低めのエレクトラ。婚約相手は年下の美少年。迷うわー
エレクトラは、平凡な伯爵令嬢。
父の再婚で家に乗り込んできた義母と義姉たちにいいようにあしらわれ、困り果てていた。
そこへ父がエレクトラに縁談を持ち込むが、二歳年下の少年で爵位もなければ金持ちでもない。
エレクトラは悩むが、義母は借金のカタにエレクトラに別な縁談を押し付けてきた。
もう自立するわ!とエレクトラは親友の王弟殿下の娘の侍女になろうと決意を固めるが……
11万字とちょっと長め。
謙虚過ぎる性格のエレクトラと、優しいけど訳アリの高貴な三人の女友達、実は執着強めの天才肌の婚約予定者、扱いに困る義母と義姉が出てきます。暇つぶしにどうぞ。
タグにざまぁが付いていますが、義母や義姉たちが命に別状があったり、とことんひどいことになるザマァではないです。
まあ、そうなるよね〜みたいな因果応報的なざまぁです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる