異世界に転生したのにスキルも貰えずに吸血鬼に拉致されてロボットを修理しろってどういうことなのか

ピモラス

文字の大きさ
24 / 167
ケンと治療師

祈り

しおりを挟む
河原についてエータは地面をならして
「休む時はここで休むとよい」
と平坦なスペースを足で作ってくれた。
俺は普段車酔いとかほとんどしないけど、昔俺が小さい頃に、オヤジに連れていかれた船釣りで酔ったのをかすかに思い出していた。
あの時はオヤジが背中をさすってくれたな。アレックスも無言で背中をさすってくれていたな。今日はもう水しか飲みたくないし、脱力感がひどいから、まだ明るいけど寝よう。
そんな事を考えながらエータに
「もう水を飲んで寝ます」
と告げたらエータは
「そうかね。では朝に食べられる物を採取しておく。嘔吐により胃腸が弱っているようだが、なにかアレルギーはあるかね?」
はじめてアレックスに会った時もこんな事を言っていたっけな。
アレックス・・・待っていてくれ!必ずクラゲを見つけて戻る!
俺はそんな事を考えて一瞬元気になったような気がしたが、頭がクラクラしてきた。
「アレルギーはないよ。あ、お酒はあんまり飲めないかな・・・」
「そうか。適度なアルコールは消化を助けるのだがね。あいにくだが持ち合わせていないし、制作には時間がかかるからここでは適切ではないな。では警戒と見回りをしながら採取をしておこう。今回は安全を保障するので安心して就寝したまえ」
「ああ、ありがとうエータ。もう休ませもらうよ」
俺はずっと頭がクラクラしていたが、寝転んだら余計にクルクルしている感じになり完全なグロッキー状態になりすぐに意識がなくなった。

無性に喉が渇き起きたらエータが焚火にちいさな鍋をかけていた。
まだ辺りは薄暗い。
「おはようケン。よく眠っていたようだが体調はどうかね?」
俺は伸びとあくびをしてから
「おはようエータ。だいぶよくなったよ。と、とりあえず今日は担ぐのはや、やめておかないか?」
「ふむ」
エータにしては珍しく即答せずに考えているようなしぐさをしている。
俺はエータが沸かしてくれたお湯を飲んだ。
「緊急時は君の安全を優先して運搬する。それ以外は君の指示に従おう」
「ああ、ありがとうエータ」
なにかエータが少しだけ変わったような気がした。
「それと、昨夜採取したこれを摂取するがよい。弱った胃腸にも優しく、滋養強壮にもなるはずだ」
エータは鍋を火から外し、フタを取り中身を器に入れている。
フタを外した時から、なんだかものすごく青臭さがした。
「え、エータ先生。こ、こ、これはなんですか?」
エータは茶色い木の器にこんもりと緑のドロっとしたものを入れてケンに手渡し
「野草と河原でとれたシジミとケラの幼体を煮詰めたものだ」
「け、ケラの幼体・・・ってなんですか?」
「カワゲラやヘビトンボと言われる昆虫だ。タンパク質も豊富でミネラルも取れる。昨晩は食事を抜いているので栄養価と消化性の良さを重視して・・・」
エータは変わったような気がしたが、エータはやはりエータだった・・・

食事を無理やり流し込み、朝日が完全に登りきるのを待って出発した。
今日は昨日と違い、空には雲が多かった。川を下っていく途中で海が見えてきた。
「エータ!海だ!海についたんだ!」
俺はテンションが上がってエータに叫んでしまった。
エータは何故か反応が薄く周りをクルクルと回る首で観察していた。
俺は一気に不安になった。
「ど、どうしたんだエータ。な、な、な、なにかいるのか?」
さっきは叫んだのに小声で話しかける相変わらずの小心者っぷりをみせる俺。
「・・・この地形、あの島、半島、崖・・・ケン。少し寄り道をしたい」
「え?いったい何が・・・?」
合理的なエータが寄り道?俺は少し不穏な感じがして、許可するのも拒否することも怖かったが
「え、エータ。アレックスを助ける為に急がないといけないんじゃないのか?」
エータはすぐに答えずに俺の顔をじっと見つめた。人間みたいだ。そんな風に初めて感じたかもしれない。
「それほど時間はとらせない。君の安全を確保できる場所についたら私単独で行動したほうが早いが、吾輩と共にいる以上のものはないであろう」
有無を言わせないエータの雰囲気に俺はエータを信じて任せる事にした。
「エータ。何かわからないけど一緒にいくよ。どうせ俺一人じゃ何にもできないし」
「そんなことはない。君は実に多様な知識を持ち、こと機械に関してはこの世界一であろう。では行くとしよう。あの崖の上なのだが、歩いてのぼるよりも吾輩が担いだほうが楽だと思うがどうかね?」
やっぱりだ。以前エータは「君にもワガハイにも価値などない」とはっきり言っていた。違う。エータは変わってきている。何故かはわからないけど・・・
そしてエータが手を差し伸べた先は断崖絶壁だった。
ここから結構距離があるが、ミステリーのラストで犯人と刑事と主人公が崖の上でひと悶着起こすような切り立った崖だったが、担いでのぼれるのか?俺一人じゃのぼれない・・・
「え、エータ。一応確認なんだけど、あの崖を俺を担いで登れるのか?」
「問題ない。走るような速度は出せないが確実に登れる。転落する可能性は0.02%だ」
「て、転落の可能性があるのか!?で、でもどうしてもエータはそこに行きたいんだよな?よし、担いでくれ。行こう」

案外エータの崖のぼりは快適で全然酔わなかった。
腕が一本損傷しているとは思えない堅実な動きで高さ15メートルほどの崖を登り切った。
崖の上は回り道などなく、完全に切り立った崖に囲まれた孤立した場所だった。そこそこの広さがあった。30メートル四方くらいだろうか?
崖の周りは砂浜と砂利だったが、崖の上には草と背の低い木が生えていた。
崖の上でエータからおろされて海側へ少し歩くと朽ちた石碑のような物があった。
エータは石碑の前で・・・跪いた。
「同胞よ・・・もう名前も思い出せぬが・・・今しばらく待っていてくれ・・・安らかな眠りを・・・」
そういってしばらく左手を握り額を押し当てていた。
祈っている・・・俺はそうとしか思えなかった。
機械のロボットが・・・名前も記憶から消えているのに・・・
俺はその姿を見て涙が流れている事にすら自分で気付けなかった。
「待たせたなケン。ありがとう」
!?ありがとう??エータがありがとうと言ったのか?
俺の混乱をよそにエータは
「君はなんで泣いているのかね?」
「え?」
俺はそういわれて涙を拭った。
俺は言葉には出さなかった、出せなかったが
「エータが泣いているのを見て涙が出た」
そう思っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処理中です...