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東方を目指して
南都ナリシア
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俺たちの馬車は兵士に囲まれて城門をくぐった。
門の先頭に並んでいたのは商隊だろうか?兵士にたいして
「俺たちが先なのになんでアイツらが先なんだ?ワイロでも渡せばいいのか?クソ兵士どもが!」
大声で罵声を飛ばしていた。門をくぐる時には既に殺伐とした雰囲気をかんじていた。
しかし、門をくぐるともう一つの門のようなものがあった。
大きなバラでできたアーチだった。赤やピンクや白のバラがたくさん咲いており、真ん中の石畳の両脇には色とりどりの花が植えられており、赤い夕日に照らされているのに負けない色彩を放っていた。
「うはー」
俺は御者台のゴーの隣で謎の感嘆を漏らしていた。
あんまりというか、全然花になんか興味なかったけど、美しいと思えたし圧巻だった。
隣のゴーは花を見る余裕がないようで、先導してくれる兵士たちを注意深くみているようだ。
幌を上げて覗くエミカは「美しいな」とつぶやいていた。
「花に価値があるのかね?確かに花の蜜は自然の甘味であり、果実を生成するためには必要な過程で・・・」
俺はエータを無視してエミカに向かって
「エータは無視しよう。やっぱりエミカは女の子だね」
と声を掛けると恥ずかしそうに俯いた。
馬車を先導する兵士に向かってゴーは
「宿までの案内でいい」
そう伝えて、おそらく街の大通りを進んでいる。
おそらくというのは、馬車3台並んで通れるくらい広く、道沿いにも花が植えられているのに、人通りも少なく閉まっている店も多いのか、僅かな街灯の灯りしかなく、薄暗い印象をうけた。
兵士の姿をみるとあからさまにドアを閉める店などもあり、予想以上に険悪な雰囲気で張り詰めた空気が嫌でも緊張感を高めていた。
「こちらでしたら客人の方も満足されるでしょう」
そう言って俺たちは大通りに面した大きな建物の前で馬車から降りた。
「馬車は兵舎の方で預かります。お任せを」
そう言われて荷物を降ろして宿に落ち着いた。
「あーやっぱり街に入らないほうがよかったかも」
俺はそういいながらベッドに倒れこんだ。
「すみません。うまい言い訳が考えられなくて・・・」
思いつめた表情のゴーが俺に頭を下げたので俺は慌てて
「ち、違うんだ!ゴーが悪いとかじゃないから!俺がもっと早く判断していれば・・・ごめん」
「な、ケン。謝らないでください。まだ問題も起きていませんし、明日は早朝にここを経ちましょう!」
俺とゴーがそんなやり取りをしているのに・・・
「・・・腹が減ったな」
「旦那!この辺りではなんとかって川魚料理が有名らしいですぜ!」
「・・・ほう、それは楽しみだ」
・・・とりあえず食事することになった。
宿の食堂に行くと俺たちの貸し切りだった。
受付から部屋の案内まで老夫婦しか見ていないが、食堂までも老夫婦二人で切り盛りしているようだ。
奥さんが料理をして旦那さんが運び、全てがそろうと二人そろってテーブルの前に立ち
「あまり食材が手に入らなく、粗末な物しか出せませんがお許しください」
そういって頭を下げた。
俺は咄嗟に
「食べられれば大丈夫です。ありがとうございます。いただきます」
そう言って頭を下げたら奥さんは泣き崩れてしまった。
話しを聞くと自分達も満足に食事をしていないと言うので、一緒に食べましょうといい座ってもらった。
エータの分も作ってくれており、食が細いエルとエミカも「自分達の分は少しでいい」と皆で分けて老夫婦にも十分な量を確保できた。
旦那さんは戸惑っていたが、アレックスが「ワインを」と言うと走って奥から木箱に入った高そうなワインを出して「お酒のお代は結構です。食事をいただきます」と涙ぐんでいた。
食事をしながら話しを聞いていた。
なんでも10日程まえから食材が流通しなくなり、食料品店が仕入れたものを店頭に並べても兵士が根こそぎ持っていき、僅かな金銭の支払いしかしないので、商人たちは販売を止めてしまっているとの事だった。
「私たちも食べる物がなくて困っていたのですが、お客様に出さない訳にもいかずに困っているのです」
申し訳なさそうにいう老夫婦は、それでも気品を感じさせた。俺はいたたまれない気分になった。
「私たちの若い頃から何度もこんな事を繰り返されて・・・昔の侯爵様の時代なら民をまとめて立ち上がったのでしょうけど・・・何故我々はこんな仕打ちを・・・」
俺はかける言葉を探したが、見つけられなかった。
食事を終えて部屋に戻った。
「な、なあエータ。これってなんとかならないのか?」
俺は多分無駄だろうと思いエータに聞いてみたが、神妙な顔をしたゴーが答えた。
「私が明日兵舎で適正な代金を支払うように上層部に掛け合ってみます」
「我々の目的はなんだ?ケン」
「え・・・ローレン領に行くこと・・・」
「この街の人間を助ける事での我々のメリットは何だ?宿泊には適正な代価をすでに済ませている。君がクーデターを起こし王位を奪取し国を支配すると言うのなら協力するのだが。悪い案ではないと思うがどうかね?」
俺はエータなら合理的に「無駄な行動はするな」的な回答をすると思っていたのだが、王位とか支配とか予想外の言葉を口を開けたまま聞いて固まっていた。
「君が国ではなくとも一定の地域を支配することによって我々も無駄な争いを起こさずに済む。地域の住民も安寧に暮らせる。吾輩の打ち立てる施策に従えば、領土内での差別や貧困をなくし、不当な権力争いなども排除できる。当然選民して排除するものも出るが」
俺は初めから理解する気も無く「コイツなにいってるんだ?」って思ったのに
「ケンが統治する領土・・・想像するだけで素晴らしい!我が一族は全面的に協力する!我らが王よ!」
ああ、なんかエミカさんまでもおかしくなってしまったので、俺はスルースキルを発動し
「ゴー、問題を起こさずに街を早めに出よう」
「はい」と力なく返事をするゴーの後ろで、既にベッドで寝息を立てているエルがうらやましかった。
門の先頭に並んでいたのは商隊だろうか?兵士にたいして
「俺たちが先なのになんでアイツらが先なんだ?ワイロでも渡せばいいのか?クソ兵士どもが!」
大声で罵声を飛ばしていた。門をくぐる時には既に殺伐とした雰囲気をかんじていた。
しかし、門をくぐるともう一つの門のようなものがあった。
大きなバラでできたアーチだった。赤やピンクや白のバラがたくさん咲いており、真ん中の石畳の両脇には色とりどりの花が植えられており、赤い夕日に照らされているのに負けない色彩を放っていた。
「うはー」
俺は御者台のゴーの隣で謎の感嘆を漏らしていた。
あんまりというか、全然花になんか興味なかったけど、美しいと思えたし圧巻だった。
隣のゴーは花を見る余裕がないようで、先導してくれる兵士たちを注意深くみているようだ。
幌を上げて覗くエミカは「美しいな」とつぶやいていた。
「花に価値があるのかね?確かに花の蜜は自然の甘味であり、果実を生成するためには必要な過程で・・・」
俺はエータを無視してエミカに向かって
「エータは無視しよう。やっぱりエミカは女の子だね」
と声を掛けると恥ずかしそうに俯いた。
馬車を先導する兵士に向かってゴーは
「宿までの案内でいい」
そう伝えて、おそらく街の大通りを進んでいる。
おそらくというのは、馬車3台並んで通れるくらい広く、道沿いにも花が植えられているのに、人通りも少なく閉まっている店も多いのか、僅かな街灯の灯りしかなく、薄暗い印象をうけた。
兵士の姿をみるとあからさまにドアを閉める店などもあり、予想以上に険悪な雰囲気で張り詰めた空気が嫌でも緊張感を高めていた。
「こちらでしたら客人の方も満足されるでしょう」
そう言って俺たちは大通りに面した大きな建物の前で馬車から降りた。
「馬車は兵舎の方で預かります。お任せを」
そう言われて荷物を降ろして宿に落ち着いた。
「あーやっぱり街に入らないほうがよかったかも」
俺はそういいながらベッドに倒れこんだ。
「すみません。うまい言い訳が考えられなくて・・・」
思いつめた表情のゴーが俺に頭を下げたので俺は慌てて
「ち、違うんだ!ゴーが悪いとかじゃないから!俺がもっと早く判断していれば・・・ごめん」
「な、ケン。謝らないでください。まだ問題も起きていませんし、明日は早朝にここを経ちましょう!」
俺とゴーがそんなやり取りをしているのに・・・
「・・・腹が減ったな」
「旦那!この辺りではなんとかって川魚料理が有名らしいですぜ!」
「・・・ほう、それは楽しみだ」
・・・とりあえず食事することになった。
宿の食堂に行くと俺たちの貸し切りだった。
受付から部屋の案内まで老夫婦しか見ていないが、食堂までも老夫婦二人で切り盛りしているようだ。
奥さんが料理をして旦那さんが運び、全てがそろうと二人そろってテーブルの前に立ち
「あまり食材が手に入らなく、粗末な物しか出せませんがお許しください」
そういって頭を下げた。
俺は咄嗟に
「食べられれば大丈夫です。ありがとうございます。いただきます」
そう言って頭を下げたら奥さんは泣き崩れてしまった。
話しを聞くと自分達も満足に食事をしていないと言うので、一緒に食べましょうといい座ってもらった。
エータの分も作ってくれており、食が細いエルとエミカも「自分達の分は少しでいい」と皆で分けて老夫婦にも十分な量を確保できた。
旦那さんは戸惑っていたが、アレックスが「ワインを」と言うと走って奥から木箱に入った高そうなワインを出して「お酒のお代は結構です。食事をいただきます」と涙ぐんでいた。
食事をしながら話しを聞いていた。
なんでも10日程まえから食材が流通しなくなり、食料品店が仕入れたものを店頭に並べても兵士が根こそぎ持っていき、僅かな金銭の支払いしかしないので、商人たちは販売を止めてしまっているとの事だった。
「私たちも食べる物がなくて困っていたのですが、お客様に出さない訳にもいかずに困っているのです」
申し訳なさそうにいう老夫婦は、それでも気品を感じさせた。俺はいたたまれない気分になった。
「私たちの若い頃から何度もこんな事を繰り返されて・・・昔の侯爵様の時代なら民をまとめて立ち上がったのでしょうけど・・・何故我々はこんな仕打ちを・・・」
俺はかける言葉を探したが、見つけられなかった。
食事を終えて部屋に戻った。
「な、なあエータ。これってなんとかならないのか?」
俺は多分無駄だろうと思いエータに聞いてみたが、神妙な顔をしたゴーが答えた。
「私が明日兵舎で適正な代金を支払うように上層部に掛け合ってみます」
「我々の目的はなんだ?ケン」
「え・・・ローレン領に行くこと・・・」
「この街の人間を助ける事での我々のメリットは何だ?宿泊には適正な代価をすでに済ませている。君がクーデターを起こし王位を奪取し国を支配すると言うのなら協力するのだが。悪い案ではないと思うがどうかね?」
俺はエータなら合理的に「無駄な行動はするな」的な回答をすると思っていたのだが、王位とか支配とか予想外の言葉を口を開けたまま聞いて固まっていた。
「君が国ではなくとも一定の地域を支配することによって我々も無駄な争いを起こさずに済む。地域の住民も安寧に暮らせる。吾輩の打ち立てる施策に従えば、領土内での差別や貧困をなくし、不当な権力争いなども排除できる。当然選民して排除するものも出るが」
俺は初めから理解する気も無く「コイツなにいってるんだ?」って思ったのに
「ケンが統治する領土・・・想像するだけで素晴らしい!我が一族は全面的に協力する!我らが王よ!」
ああ、なんかエミカさんまでもおかしくなってしまったので、俺はスルースキルを発動し
「ゴー、問題を起こさずに街を早めに出よう」
「はい」と力なく返事をするゴーの後ろで、既にベッドで寝息を立てているエルがうらやましかった。
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