異世界に転生したのにスキルも貰えずに吸血鬼に拉致されてロボットを修理しろってどういうことなのか

ピモラス

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エータの修復

ハイテンションなローレン卿

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 俺たちはローレン領についた。
 途中で警備している地底人に二回ほどあった。
 まったく見分けがつかないが、彼らは「救世主様。久しぶりです」的な挨拶をしたので、適当に合わせておいた。
 空は晴れているが、少し雪が混じった風も吹いた。彼らは全裸で寒くないのか?
 そんなたわいもない事を考えていた。

 屋敷に着くとベイツさんとメイドさんが出迎えてくれた。
 挨拶もそこそこに切り上げ、馬車と荷物を頼むと、俺たちは奥の部屋に通された。
 暖炉の部屋でソファに座ると、メイドさんがすぐに紅茶を持ってきてくれた。
 ベイツさんもすぐにやってきた。
「アレクシウス様、ケン様、エータ様。おかえりなさいませ」
 ベイツさんは胸に右腕をあて、深々と頭を下げてくれた。
 俺も立ち上がり、胸に手をあて頭を下げた。
 顔をあげた時にみたベイツさんは嬉しそうだった。
 そうしていると、廊下から大声が聞こえてくる。
「坊ちゃん!先に執務を済ませなさい!あの村落の死活問題なのですよ!」
「戻ったらすぐにやる!今は先に顔がみたいのだ」
 ワイワイと話す声が筒抜けだ。
 部屋のドアが勢いよく開いた。
「諸君、よくぞ無事に戻った」
 大きく両手を広げたローレン卿は、満面の笑みだった。ロルド老はよこで溜息をついていた。
 しかし、ロルド老は俺たちの顔を見て、言葉を発せず何度も頷いていた。
 アレックスの肩に手を乗せて何かを話して、「エータに腕が戻ったのか」と声をかけて俺の元へ来た。なんか落ち着きがないな。
 そして俺の右手を掴み
「ケン、よくぞ無事で・・・君のお陰で私も無事だ。地底人を受け入れるつもりだったのだが、逆に彼らには大きな借りができてしまった」
 そうしてまた大きく手を広げて
「アレクシウスの帰宅だ。今宵は宴だ」
 謎のテンションでそう言った。
 そうしてロルド老に引っ張られて出ていった。
 ベイツさんが少し顔を曇らせて
「旦那様は非常に多忙なのです。領地内で豚人だけでなく、賊に見せかけた政敵なども出ているようで。警備だけでなく、財政面なども工面したり、人や物資の移動も取り仕切る人物を見定める必要もあるようで・・・」
 旦那様の非礼をお許しください。そう言われて、俺にはわからない苦労が多いのだろうと理解できた。無理にテンションを上げているのがわかったような気がした。


 ベイツさんに部屋に案内された。
 ゴーとエミカはローレン領内にいるが、警備や討伐で今日明日はおそらく戻ってこないだろうとの事だった。
 柔らかなベッドに体を預けると、部屋の静寂と心地よい布の感触が、まるで幼少期に戻ったかのような「帰ってきた」感覚を与えてくれた。
 俺はずっと頭の中に押し込んでいたものを引っ張り出した。
「エミカに・・・エルの事を伝えないと・・・」
 忘れていた訳ではなく、考えると悲しくて、エミカに言うのが怖かった。
 それを聞いたエミカが悲しむのも見たくなかった。
 そう思うと、それ自体を考える事から逃げていた。
 だけど、ちゃんと伝えないと・・・
 そんな事を考えていると、ベッドの横にエータが立っていた。
 いつの間に?音もなく部屋に進入したのか?
「・・・だから、なんで当たり前に俺の部屋に来るんだよ!」
「落ちつきたまえ。君と相談をする必要のある事柄がいくつかある」
 俺は嫌な予感がした。多分それは当たる・・・嫌な事は重なる・・・
「何度も言うが、前提として吾輩は君の判断に従う」
 そしてエータは話し始めた。
 まずはアレックスのお母さんの事。
「先ほど、アレクシウスの意見も聞いてきたのだが、『早く楽にしてやってくれ』と言っていた。
 君の判断を聞きたい」
 これは・・・俺が決める事ではない。
「あ、アレックスがそういうなら、その方がいいのかもしれない。けど、ローレン卿とかにも、わ、別れの挨拶とかあると思うから、みんなで話し合ってからの方がいいと思う・・・思います」
「その件に関しては、君の言う通りにするのが正論だな。では皆集まった席で議題にあげよう。そしたら次だ」

 豚人の発生源とキメラの発生源の事。
「次の件と重複する部分もあるのだが、豚人の襲撃は大陸全土に広がっている。これを収束させるには発生源を叩くしかない。キメラに関してもそうだ。次の個体の発生まで、また猶予はあるが、時間が立てば複数体誕生してもおかしくない。設備を破壊し、再生を完全に停止するには主砲の使用が不可欠だ」
 た、たしかエータは主砲を打つには俺の許可がないと打てないとか言っていたな。
 それが本当だとしたら、俺が同行しないといけないのか?
 い、いや、エータは嘘をつかないはずだ。じゃ、じゃあ・・・
 豚人やキメラの殺戮現場に俺は絶対に付き添わないといけないじゃないか・・・
「え、エータさん・・・あ、あの、そ、その・・・主砲の制限ってのは・・・あ、あ、あの、変更は・・・可能だったり・・・」
「不可能だ。これは君や他の生命体を保護するための安全装置だ」
 豚人やキメラも生きている・・・人を襲っているけど、だからって俺がそんな事を決めていいのか?
 ジンナの村で殺した人の事を思い出す。
 俺が手にした槍が、スッと刺さった感触が手に蘇る。そのまま振り向いたおじさんの顔。
 これから、たくさんの命を奪う事になるのかもしれない。
 豚人やキメラも生きてる・・・でも、逃げてばかりでは守れない。 
「よ、よし、やろう」
 俺は少し震える声でそう言うと、エータは満足そうに頷いた。
 俺はそう言ったが、心が冷たく深い海に沈んでいくようだった。
 エータには元々表情なんてない。
 無表情のまま淡々と、事務的に話しを進める。
 薄く光るエータの三つの目には感情なんてない。
 ただ、冷たく白く光っているだけだ。
「出撃時期はまた追って決めよう。では次だ」
 エータさん、もうそろそろ退室してもらえませんか・・・ダメですか・・・

 ローレン領や王都を含む世界情勢について。
「人間社会についてだが、豚人の襲撃やキメラ騒動の影で暗躍している者たちがいる。吾輩自体は人間同士の殺し合いや権力争いに興味はない。しかし、君に危害が及ぶ可能性が高い。よって看過できない。君が望むなら現王やセバスチャンを含む有力な権力者を殺し、君が頂点に君臨するような世界構築も視野にいれている。」
「え、エータお前、セバスチャンさんまでとか、そんなヤンデレの極みみたいなこというなよ!」
 何年か前に見たマンガのヤンデレの少女は、彼氏の周り全てに嫉妬して暴走しているのを思い出していた。しかし、エータは本当に全てを排除してしまう力がある・・・恐怖でしかない。
「セバスチャンは例えで出したのだが、君の反応は計算通りだ。吾輩が言いたいのは、君に危害を加える可能性があると吾輩が判断した者を排除する許可を得たい。例え君の身近なものでもだ」
 俺は「お前は危険だ」と言って、俺の目の前でエータが殺戮する場面を思い浮かべた。
「で、でも身近な者って!」
「君の保身が最優先だ。もちろん、その時は無力化に抑える」
「え、エータ。本当に危険な時だけにしてくれ。それ以外は相談してくれ」
 俺は少し震える声でそう言った。エータは無言で頷いた。

「現状の問題点は以上だ。君から何か意見はあるかね?」
 俺は今すぐにでもエータに出て行って欲しかったが、ジンナの事を思い出した。
「そ、その、ジンナの事で相談が・・・」
 俺はジンナに子供が出来て、出産時にジンナが死んでしまう事を告げた。
 真実は知らないが、ジンナの母もその母もそうだったようだ。
「だ、だから、出産時に死なないように調べてもらえないか?」
「吾輩の知識と技術で可能かはデータが少なすぎる。ジンナの体を調べる事は約束するが、結果の保障は出来ない」
 俺は可能性があるのなら、やってほしいとエータに頼んだ。それにもエータは無言で頷いた。
 その無機質なしぐさが、妙に不安を搔き立てた。
「吾輩はこの後、セバスチャンの政務の手伝いを約束している。また何か問題が発生したら随時報告したまえ」
 そういって出ていった。
 俺は出ていった瞬間、ベッドに倒れこんだ。
 柔らかな感触に背中を包まれる。
 だけど、俺の心は冷たい氷に閉じ込められたように、暖かさを感じられなかった。
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