ブラッディ・チェイサー

猫山はる

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第1章 吸血鬼編

第21話 銃口の先

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玖狼の持つ拳銃の銃口は、まっすぐ環に向いていた。

「……え」
環はそれを呆然と眺めていた。

引き金が引かれ、乾いた銃声が響く。
弾丸は環の肩を撃ち抜いた。

「――っ!」
焼けるような痛みに息が詰まる。

「……な、んで……?」
肩を押さえる。目を見開き、玖狼を見た。
仲間だと、思っていたわけじゃない。けれど――こんな形で銃を向けられるとは思わなかった。

「裏切られた、みたいな顔はやめろよ」
玖狼が口の端を吊り上げる。
「だだ利害が一致してただけだろ?」

理解が追いつかなかった。
しかし、確実なことは―――

応戦しなければ一方的にやられる。

環は歯を食いしばり、腕を振るった。
肩口から溢れる血が宙に散り、鎖へと変貌する。
「……っ!」
手が震えた。
だが鎖は正確に玖狼の拳銃を絡め取る。


「甘い…!」
玖狼はあっさりと拳銃を手放し、環に向かって何かを投げつけてきた。
飛び道具…!
環はとっさに腕で顔を庇う。
腕に焼けつくような痛み。

「それも銀製だぜ」

血が止まらない。
傷口を見るとクナイのようなものが刺さっていた。
環は刺さっていたものを引き抜いた。
怪我の再生が極端に遅れ、血が滲む。


「遊びじゃねえんだ。殺す気でこいよ」
玖狼はコートの下からナイフを取り出した。
そして距離を詰め、それを振るう。
(速い…!)
――目が追いつかない。
右肩、脇腹、左腕
必死にかわし続けても、かすり傷が増えていく。
このままでは後が無い。

――ずぶっ

環は意を決し、手のひらで刃を受け止めた。
肉を貫かれる激痛に歯を食いしばり、そのまま玖狼に体当たりする。

二人は地面に倒れ込み、環が馬乗りになった。
手に刺さったナイフを引き抜く。
「…っく!」
痛みが脳天まで突き抜けた。
環の血がポタポタと玖狼にかかった。

そのままナイフを振りかざす。


「これで、終わり…!」


だが、刃は玖狼の喉元寸前で止まった。

――できない。

環は顔を歪めた。
玖狼はそんな彼女の顔を、感情の読めない目で見上げていた。

出会った瞬間から襲われたり、セクハラされたり、殴られたり、脅されたりと印象最悪だったけど―――。

それだけじゃなかった。
不器用な優しさがあることを知ってしまった。

そんな記憶が、彼女を押し留めていた。

「……やっぱりな」
玖狼の目が細められる。
次の瞬間、世界が反転した。
背中を地面に打ち付け、息が詰まる。
環は押し倒され、今度は玖狼が馬乗りになる。

「一瞬の躊躇いが命取りになる」
胸元から二丁目の拳銃が抜かれる。黒い銃口が環の眼前に突きつけられる。
「俺を恨むなよ」


環はぎゅっと目をつぶる。
死を覚悟した。

しかし―――



ガキィィイイン――!


金属同士がぶつかる衝撃音。
頭上から玖狼の気配が消えた。

銃で撃たれた感覚はない。

薄く目を開けると、玖狼は数メートル先に弾き飛ばされている。
すぐそばに、背を向けて立つ人影があった。

「…ああ」
淡い栗色の髪と白いコートをなびかせ、環に背を向けるその人は。

「ノエル」
    
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