現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん

文字の大きさ
140 / 241

第140話:王都の陽光と、凍てついた心

しおりを挟む
##### 旅路の対話

陽だまりの街を離れ、レナトゥス王国の、広大な穀倉地帯を抜けていく旅路。
最初は、緊張からか、どこかぎこちなかったフィンとエリアスの間にも、馬車の心地よい揺れと、焚き火を囲む夜の静寂の中で、次第に、自然な対話が生まれていった。
フィンは、アルフォンスの言葉を胸に、ただ一方的に陽だまりの素晴らしさを語ることはしなかった。彼は、問いかけたのだ。
「エリアスさんの故郷は、どんな場所なんですか?冬は、やっぱり、すごく寒いんですか?」

エリアスは、最初、戸惑いながらも、その実直な言葉で、自らの故郷の物語を紡ぎ始めた。
「……冬の朝、全てが凍てついた森に、最初の朝日が差し込む瞬間がある。その時、木々の枝に積もった雪が、まるでダイヤモンドのように、七色に輝くのだ。あれほど、美しい光景を、俺は他に知らない」
「そして、春。硬い岩の、ほんの僅かな隙間から、紫色の、小さな花が咲く。誰に褒められるでもなく、ただ、そこに在ることを誇るかのように。……我ら灰嶺の民は、皆、あの花のようにありたいと、そう願っている」
フィンは、その、あまりにも詩的で、気高い物語に、ただ、息を呑んで聞き入っていた。
(……そうか。物語は、与えるだけじゃない。聞くこと、知ること。それもまた、同じくらい、大切なことなんだ)
彼は、師アークが遺した知識を伝えるだけの学長から、世界中の未知なる物語を集め、未来へと繋ぐ、真の『賢者』へと、その最初の一歩を、確かに踏み出していた。

##### 王都の影と、思わぬ味方

数週間の旅の果て、フィンとエリアスは、ついに王都レナトゥスの威容を、その目にすることとなった。
天を突く白亜の城壁、整然と区画された美しい街並み。だが、その美しさは、どこか生命の温もりを欠いた、冷たいものだった。
王宮の門前で、二人は、その冷たい洗礼を浴びることになる。
「陽だまり連合?灰嶺男爵領?聞いたこともない田舎貴族の使いが、アンネリーゼ王女殿下に何のようだ」
受付の文官は、扇子で口元を隠し、二人を汚物でも見るかのような目で見下した。

二人が、なすすべなく立ち尽くしていた、その時だった。
「――待ちたまえ」
静かだが、有無を言わさぬ声が、背後からかけられた。
王家に仕える侍医長、エラードだった。
「王女殿下の御身に関することは、全てこの私が預かっている。いかなる可能性であろうと、試す価値はある。――参られよ、若き使節殿。あなた方の『贈り物』、このエラードが、確かに見届けよう」

##### 王女の陽光

フィンとエリアスが通されたのは、壮麗だが、どこか息が詰まるほど静かな王女の私室だった。
天蓋付きのベッドの上で、一人の少女が、窓の外を、ただ、ぼんやりと見つめていた。
アンネリーゼ王女。その瞳には、世界の全てを諦めてしまったかのような、深い哀しみの色が宿っていた。

フィンは、エリアスと共に、王女の前に進み出ると、贈り物を捧げるのではなく、物語を語り始めた。
エリアスが、その物語に応えるように、白樺の木箱を、静かに開く。
カチリ、という小さな音の後、澄み切った『陽だまりの聖歌』の旋律が、静寂の部屋を満たしていった。

その、瞬間だった。
アンネリーゼ王女の、何の光も宿していなかった瞳が、初めて、微かに揺らめいた。
(……なに、この音……。宮廷楽団の、悲しい音楽とは違う。温かい……。まるで、アルフォンス様の物語で読んだ、陽だまりの光そのものが、音になったみたい……)
彼女の、雪のように白い頬を、一筋、温かい涙が伝った。
それは、数ヶ月ぶりに、彼女の心が、世界と触れ合った、証だった。
彼女は、その、か細い唇で、ほとんど音にならない声で、確かに、こう呟いた。

「……陽光の……音……」

##### 世界を越える伝言

その、同じ時刻。
遥か北、陽だまりの街。眠れる創造主の間で。
枕元に飾られた花瓶の上で、陽だまりの小鳥が、これまで聞いたこともない、喜びに満ちた、美しいさえずりを奏で始めた。
その歌声に呼応するかのように、四つの黄金の花が、一斉に、眩いばかりの光を放つ。
光は、これまでのように、ただアークの胸に注がれるだけではなかった。それは、一つの、凝縮された光の奔流となって、眠る彼の、固く閉ざされた**瞼**へと、集中した。

その、瞬間。
兄アルフォンスとウルが見守る前で、信じられない奇跡が起きた。
アークの、雪のように真っ白な睫毛に縁取られた瞼が、ほんの、ほんの僅かに、**ぴくり、と痙攣したのだ。**
それは、夢の中の無意識の動きではない。外の世界で生まれた、新しい希望の光に、その肉体が、確かに反応した、生命の兆候だった。

アルフォンスは、息をすることも忘れ、その光景に釘付けになった。
弟の魂が、帰ってきている。
この、温かい陽だまりの家へと、光を求めて、確かに。
夜明けは、もう、すぐそこまで来ていた。

***
最後までお読みいただき、ありがとうございます。面白いと思っていただけましたら、ブックマークや評価、フォローをいただけますと、執筆の励みになります。
***
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。 下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。 キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。 家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。 隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。 一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。 ハッピーエンドです。 最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?

白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。 「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」 精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。 それでも生きるしかないリリアは決心する。 誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう! それなのに―…… 「麗しき私の乙女よ」 すっごい美形…。えっ精霊王!? どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!? 森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

攻略. 解析. 分離. 制作. が出来る鑑定って何ですか?

mabu
ファンタジー
平民レベルの鑑定持ちと婚約破棄されたらスキルがチート化しました。 乙ゲー攻略?製産チートの成り上がり?いくらチートでもソレは無理なんじゃないでしょうか? 前世の記憶とかまで分かるって神スキルですか?

処理中です...