現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん

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第196話:星屑の揺り籠と、生命の種

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遺跡の門、開かれた道

『共鳴の竪琴』が奏でた魂の呼びかけに、森の奥深くで眠っていた未知の存在は、確かに応えた。アークたちの前に立ちはだかっていた機械仕掛けの衛兵たちは、その赤い複眼の光を穏やかな蒼へと変え、敬意を示すかのように道を開けた。そして、数千年の沈黙を破り、彼らが守り続けてきた巨大な遺跡のゲートが、荘厳な音と共にゆっくりと内側へと開かれていった。

ゲートの奥に広がっていたのは、暗闇ではなかった。そこは、ひんやりとした冷たい金属質の壁と床で構成された、広大な、しかしどこか静謐で神聖な空気すら漂う空間だった。壁面に手を触れると、**生命とは異なる、規則正しい微かな振動が伝わってくる。見たこともない幾何学模様が青白く明滅し、床は滑らかな金属でできているが、不思議と足音は響かず、まるでベルベットの上を歩いているかのようだ。**天井は見上げるほど高く、そこにはめ込まれた巨大な水晶が、まるで穏やかな星空のように、揺らめきながら通路全体を柔らかく照らし出していた。空気は清浄だが、どこか金属質でオゾンのような乾いた匂いがした。
「……すごい。外観からは想像もつかないほど、内部は…生きているみたいだ」
アークは、壁面に手を触れた。ひんやりとした金属の感触。だが、その奥底から、微かに、しかし確かに、規則正しい脈動のようなものが伝わってくる。それは、彼らが知る生命の鼓動とは全く違う。もっと精緻で、もっと静かで、しかし、どこまでも力強い『機構』の響きだった。
「アーク様、気をつけて」ミカエラが、聖剣の柄に軽く手をかけながら囁く。彼女の聖なる力は、この空間に満ちる異質なエネルギーに、警戒心を解いてはいなかった。リオンとカエルもまた、音もなく周囲を警戒し、いつでも動ける体勢を維持している。ウルは、主人のローブの裾を軽く咥え、不安げに、しかし好奇心に満ちた瞳で、未知なる通路の奥を見つめていた。**彼の小さな鼻が、ひくひくと動き、金属質だがどこか懐かしいような、星の匂いを捉えようとしていた。**

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星屑の民との対面

一行は、先ほど道を開けてくれた衛兵たち――アークが心の中で『星屑の民』と名付けた存在たちに導かれるように、通路を進んでいった。彼らはアークたちを攻撃する様子はなく、ただ一定の距離を保ちながら、静かに浮遊してついてくる。その蒼い複眼は、アークの持つ『共鳴の竪琴』と、彼の足元に寄り添うウルに、特に強い関心を示しているようだった。

やがて、通路は開け、一行は息を呑むほど広大なドーム状の空間へと出た。
その中央には、巨大な水晶の柱が天に向かってそびえ立ち、そこから放たれる柔らかな光がドーム全体を満たしていた。まるで、巨大な宇宙船の心臓部か、あるいは神殿の祭壇のようだ。
そして、その水晶柱の周囲に、十数体の『星屑の民』が、静かに浮遊していた。彼らは皆、アークたちが奏でた竪琴の響きに気づき、集まってきたのだろうか。その蒼い複眼は、ただ静かに、新たなる来訪者たちを見つめていた。敵意はない。だが、警戒心は解いていない。そして、その視線の奥底には、アークが結晶体から感じ取った、あの深い『郷愁』と、何かを求める切実な『願い』の色が、確かに感じられた。

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『共鳴の竪琴』による対話の試み

「……もう一度、話しかけてみる」
アークは、仲間たちに目配せすると、再び『共鳴の竪琴』を取り出し、ドームの中央へと進み出た。ミカエラが、彼の背後に立ち、その聖なる力で精神的な負荷を軽減するための、穏やかな光のオーラでアークを包み込む。ウルもまた、主人の足元で小さく身構え、共鳴の補助と守護の意志をその小さな体で示していた。**主人の魂が竪琴と共鳴するにつれて、ウルの神々しい毛並みもまた淡い光を放ち始め、主の精神的な負荷を和らげようと、その小さな体から癒やしのオーラを送っていた。**
アークは、竪琴のフレームにそっと両手を触れた。精神を集中させると、**額にうっすらと汗が滲み、永い眠りの後の魂には確かな負荷がかかるのを感じる。一瞬、軽い眩暈を覚えるが**、目の前の存在たちの、声なき声に応えたいという想いが、彼を強く支えていた。

彼は、前回感じ取った彼らの『言語』の断片――『郷愁』『種』『探求』『危険』といったキーワードを軸に、より具体的な『問いかけ』を、竪琴の響きに乗せて送った。
(――あなたたちは、誰なのですか?)
(――何を、探しているのですか?『生命の種』とは?)
(――なぜ、その目覚めを恐れるのですか?)
(――私たちは、あなたたちの敵ではありません。もし、困っているのなら、力になりたい)

竪琴から放たれた、緑と黄金、そして白銀の光の波紋が、ドーム全体へと広がっていく。それは、ただの音や光ではない。アークの、そして仲間たちの、偽りのない『共感』と『対話への意志』そのものだった。
星屑の民たちの、蒼い複眼の光が、その響きに応えるかのように、一斉に強く明滅を始めた。

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星屑の民の応答、断片的な真実

竪琴に組み込まれた『親玉』の結晶体が、これまで以上に複雑で、鮮やかな虹色の光を放ち、激しく脈打つ。そして、アズライトが開発した視覚化装置(水晶球)が、その応答を捉え、光の紋様となって空中に描き出した。
それは、まだ完全な文章ではなかった。だが、前回よりも遥かに多くの情報を含んでいた。

**『……我ラハ…星ノ旅人…』**
**『…故郷ハ…滅ビタ…赤キ光ニ…』**(水晶球に、燃え盛る巨大な赤い太陽が超新星爆発を起こし、故郷と思われる美しい緑の惑星が、その炎に飲み込まれ崩壊していく断片的な映像が映し出される)
**『…永キ眠リ…約ソクノ地ヲ目指シ…』**(**次に、星々の間を孤独に旅する、巨大な水晶の葉巻型にも見える『舟』の影。**)
**『…コノ星ニ…最後ノ希望…『生命ノ種』ヲ…』**(**どこまでも青い空と海、見たこともない巨大な花々や光る植物が生い茂る、生命力に満ち溢れた惑星のイメージ(約束の地?)。**)
**『…我ラハ…ソノ守護者…眠リヲ守ル…』**
**『…ダガ…時ガ…満チタ…目覚メハ…近イ…』**
**『…ソレハ…希望…ダガ…同時ニ…脅威…』**(**だが、その美しい緑の惑星のイメージに、突如として黒い亀裂が走り、まるで病巣のように急速に広がり、周囲の星々すらも歪ませ、飲み込んでいくような、悍ましく不穏な映像が重なる。**)
**『…制御デキヌ…力…我ラノ手ニハ…アマ…ル…』**
**『…オ前タチハ…何者…?…敵…?…ソレトモ…?』**

断片的ながらも、そこには、彼らの悲劇的な過去、この地に眠る『生命の種』への希望、そして、その制御不能な力への深い恐れが、確かに示されていた。彼らは、自らが守るべき希望が、同時に世界を滅ぼしかねない脅威でもあるという、究極のジレンマに苦しんでいたのだ。そして、アークたちに対し、敵意ではなく、むしろ『助け』を求めているかのような響きすら感じられた。

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遺跡の中心へ

アークは、消耗しながらも、その断片的なメッセージを魂で受け止め、深く頷いた。(…やはり、そうだったのか。彼らは、敵じゃない。むしろ、僕らと同じ、この星の未来を案じているのかもしれない…)
彼が竪琴から手を離すと、星屑の民の一体が、ゆっくりと動き出した。それは、他の個体よりも一回り大きく、その装甲には、リーダーであることを示すかのような、複雑な紋様が刻まれている。
その存在は、アークたちの前に進み出ると、**その蒼い複眼の光を、アークの瞳に合わせるかのように一度だけ強く瞬かせた後**、その機械仕掛けの腕(のような部分)を、ドームの中心にある巨大な水晶柱へと、**ゆっくりと、しかし迷いなく**差し向けた。それは、明確な『案内』の意志表示であり、**同時に、彼らの運命を左右するかもしれない真実を、託す相手としてアークたちを認めたかのような、静かな覚悟すら感じられた。**
そこが、彼らが守り、そして恐れている『生命の種』が眠る場所。そして、アークたちが知るべき、全ての真実が待つ場所なのだろう。

アークは、ミカエラに肩を支えられながら、仲間たちを見回した。リオン、カエル、そしてウル。皆の瞳には、緊張と共に、この未知なる存在への理解と、共に未来を切り拓くことへの、揺るぎない決意が宿っていた。
「…行こう。彼らが、僕らを信じてくれたんだ。僕らも、彼らを信じよう」
アークは、『陽だまりの小鳥』を呼び寄せると、アルフォンスへ向けて、簡潔な報告を送った。『対話は進展。敵意なし。彼らは『生命の種』を守護。だが、その目覚めが近いことを恐れている模様。遺跡中心部へ。彼らは助けを求めている可能性あり』と。

一行は、星屑の民のリーダーに導かれ、遺跡のさらに奥深く、この星の運命を左右するかもしれない『生命の種』が眠る場所へと、緊張と、そしてかすかな希望を胸に、足を踏み入れる。ウルが主人のローブを軽く引き、未知への不安と好奇心が入り混じった表情でアークを見上げ、「きゅぅ…?」と小さく鳴いた。**彼の魂は、星屑の民から放たれる『郷愁』の響きに、自らの母への想いを重ね合わせているのかもしれない。**アークは「大丈夫だよ、ウル。きっと、友達になれるさ」と、その小さな頭を優しく撫でるのだった。

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