現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん

文字の大きさ
231 / 241

第229話:灼熱の底と、暴走する古代機

しおりを挟む

#### 
地獄への身支度

ガンテツの案内で、一行は集落の更に奥、地底の最深部へと向かっていた。
進むにつれ、周囲の岩肌はどす黒い赤色へと変わり、気温は急激に上昇していく。空気は乾燥しきっており、呼吸をするだけで喉が焼けるようだ。遠くからは、ゴウゴウという地鳴りのような音が絶え間なく響いてくる。

「……あつぃ……。これじゃあ、茹でガエル通り越して、干物になっちまうぜ……」
カエルが舌を出し、滝のような汗を流してへばっている。岩の民であるガンテツたちは平気な顔をしているが、地上の民であるアークたちには過酷すぎる環境だ。

「きゅぅ……」
厚い毛皮を持つウルも、アークの影に隠れてぐったりとしている。舌を出してハァハァと荒い息をつく姿は痛々しい。

「みんな、ストップだ。このままじゃ戦闘どころか、たどり着く前に倒れてしまう」
アークは足を止めると、背嚢から『聖浄樹の繊維』と、フィアからもらった冷気を纏う『空色ハーブ』、そして地底の水辺で採取したたっぷりと水を含む『吸水苔』を取り出した。
「ここで少し、工作タイムといこう」

アークは、それらの素材を魔法で編み上げ、特殊なポンチョのような外套を作り出した。
「**『植物成形(小)・気化冷却服(クーリング・スーツ)』**!」

水を含ませた苔の層と、通気性の良い聖浄樹の繊維を組み合わせ、水が蒸発する時の気化熱を利用して体温を奪う仕組みだ。さらに、織り込まれた空色ハーブの魔力が冷気を逃がさない結界の役割を果たす。

「おおっ! ……涼しい!」
袖を通したアルフォンスが目を丸くする。灼熱の空気が遮断され、ひんやりとした霧に包まれたような感覚だ。
アークは、ウル用にも特製の「ひんやりベスト」を作って着せてやった。
「きゅいっ!(すずしー!)」
ウルは嬉しそうにブルブルと体を震わせ、元気を取り戻してアークの足元を駆け回った。

#### 
溶岩の海と、鉄の巨人

準備を整え、一行はついに最深部――巨大な溶岩湖が広がる広間へと到達した。
視界を埋め尽くすのは、ドロドロと波打つ紅蓮のマグマ。その熱量は凄まじく、冷却服がなければ一瞬で火傷をしていただろう。

「……あれが、『大地の心臓』を苦しめている元凶か」
ガンテツが、震える指で溶岩湖の中央を指し示す。
地脈のエネルギーが噴き出す一点に、その異様な巨体はあった。
全身が錆びついたどす黒い鉄で覆われた、巨大な多脚戦車のような機械。
大きさは小さな砦ほどもある。六本の太い脚で溶岩の中に立ち、先端がドリルになった巨大な腕を無秩序に振り回し、周囲の岩盤を破壊しながら、地脈の光を無理やり吸い上げているのだ。

『……警告。古代文明ノ、自律型採掘機。制御中枢、破損。完全ナ、暴走状態デス』
エコーが、蒼い瞳を激しく明滅させて分析する。
「採掘機……? あんなものが、なぜここに?」
「わからん。だが、あいつが暴れて地脈を乱すたびに、地盤が歪み、地震が起きているのは間違いない!」

**ギギギギギ……ガガガッ!**
機械が耳障りな不協和音を奏でながら、ゆっくりと首を回した。その頭部にある巨大な単眼(センサー)が赤く輝き、侵入者であるアークたちを敵と認識する。

#### 
熱と鉄の攻防

「来るぞ!」
機械の背中から、高圧の蒸気がシュウウウッ!と噴き出し、その巨体が信じられない速度で突進してきた。
「させんッ!」
アルフォンスが前に飛び出し、大盾を構えてその突進を受け止める。

**ガキィィィン!**
凄まじい衝撃音と共に火花が散る。英雄の足が、岩盤を削りながら数メートルも後退する。
「ぐっ……! なんて馬鹿力だ……! それに、熱い!」
盾越しに伝わる熱が、アルフォンスの体力を奪っていく。盾の表面が赤熱し始めている。

カエルとリオンが左右から攻撃を仕掛けるが、矢もクナイも硬い装甲に弾かれ、傷一つつかない。
「硬すぎる! 普通の武器じゃ歯が立たねぇ!」
ガンテツたちゴルン族も巨大な岩を投げて援護するが、巨体には豆鉄砲だ。

アークは、戦況を見つめながら必死に思考を巡らせていた。
(破壊するのは簡単かもしれない。でも、あの中には無理やり吸い上げた膨大な地脈エネルギーが溜まっている。爆発させたら、この空洞ごと崩壊してしまう……!)

『……創造主。アノ機体ハ、冷却機能ガ故障シテイル。熱暴走ヲ止メレバ、機能停止スルハズ』
エコーの助言が、突破口を開いた。
「そうか……! 溜め込んだ熱を逃がして、大地と繋ぎ直せばいいんだ!」

#### 
鉄と木の融合

「兄さん、ガンテツさん! あいつの足元を固めて、動きを止めてください! 一瞬でいい!」
「おう、任せろ!」
アルフォンスが雄叫びを上げ、機械の懐に飛び込んで斧を足関節に叩きつける。ガンテツたちも一斉に飛びかかり、その怪力で多脚にしがみつき、強引に押さえ込む。

その隙に、アークは機械の真下、最も熱い腹の下へと滑り込んだ。
灼熱の熱気が顔を焼く。だが、ウルが放つ癒やしのオーラと、冷却服が彼を守ってくれる。
アークは、懐から『鉄鋼樹の種』を取り出し、機械の装甲の隙間――エネルギー漏れを起こしている亀裂へと、直接ねじ込んだ。

「鎮まれ……! **『植物成形(理)・金属融合(メタル・フュージョン)』**!」

アークの魔力が注がれると、鉄鋼樹は爆発的に成長した。
だが、それは敵を貫く槍ではない。
樹木は液状化した金属のように変質し、機械の回路と絡み合いながら、その熱を貪欲に吸収し始めたのだ。
さらに、無数に伸びた根は地面深くへと潜り込み、機体内に暴走していた熱エネルギーを、安全に大地へと逃がしていく「アース(接地)」の役割を果たした。

**ジュウウウウウ……**
大量の蒸気が上がり、赤熱していた機械の装甲が、急速に黒く冷めていく。
赤く輝いていた単眼の光が、明滅し、ゆっくりと消え――やがて巨体はガクンと膝を折って沈黙した。

「……止まった……のか?」
ガンテツが、恐る恐る手を離す。
そこには、無機質な古代機械と、有機的な大樹が複雑に絡み合い、一つの新しいオブジェのように静まり返った巨像があった。かつての暴走の気配は消え、今はただ静かな熱だけが残っている。

アークは、煤けた顔の汗を拭いながら立ち上がる。
「ふぅ……。なんとか、鎮まってくれたみたいだね」
足元で、ウルが誇らしげに「きゅいっ!」と鳴き、アークの頬をペロリと舐めた。

***

最後までお読みいただき、ありがとうございます。面白いと思っていただけましたら、ブックマークや評価、フォローをいただけますと、執筆の励みになります。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。 下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。 キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。 家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。 隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。 一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。 ハッピーエンドです。 最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

攻略. 解析. 分離. 制作. が出来る鑑定って何ですか?

mabu
ファンタジー
平民レベルの鑑定持ちと婚約破棄されたらスキルがチート化しました。 乙ゲー攻略?製産チートの成り上がり?いくらチートでもソレは無理なんじゃないでしょうか? 前世の記憶とかまで分かるって神スキルですか?

「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?

白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。 「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」 精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。 それでも生きるしかないリリアは決心する。 誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう! それなのに―…… 「麗しき私の乙女よ」 すっごい美形…。えっ精霊王!? どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!? 森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

処理中です...