役立たずの【種子生成】スキルで追放されたので、辺境でもふもふドラゴンと自由に生きることにした

はぶさん

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第1話 栄光と追放 第1部『役立たずの烙印』

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ヒュンッ、と空気を切り裂く音。
僕が振るう大斧の銀閃が、初夏の太陽を反射してきらめいた。次の瞬間、轟音と共に、訓練場の中央に据えられた樫の丸太が木屑をまき散らして両断される。

「――見事だ、シルヴァン!」

ヴァルトール侯爵家当主である父上の、地響きのような声が響き渡った。訓練場の周囲を囲む家臣たちからも、惜しみない称賛の声が上がる。

「あれぞまさしくヴァルトール家に受け継がれし至高の斧術!」
「シルヴァン様がいれば、この国の安寧は百年揺るぎませんな!」

汗を拭い、息を整える僕の肩を、父上の分厚い手が力強く叩いた。誇りと期待に満ちたその眼差し。それが少しだけ気恥ずかしい。
弟のアルドは、僕と同じ木製の大斧を必死に構えながら、尊敬の眼差しでこちらを見ている。「すごいよ兄さん!僕も早く兄さんみたいになりたい!」
そして、訓練場の片隅に咲く花のように、婚約者のクラリスが佇んでいた。僕が気づくと、彼女は頬をほんのり赤らめ、春の陽だまりのような微笑みを返してくれた。その瞳には、確かな愛情が宿っている。

(この力で、大切な家族と、僕を信じてくれる領民たちを守るんだ)

武門の次期当主として、これ以上の幸せはない。僕は、確かにそう信じていた。この数時間後に訪れる、絶望の瞬間までは。

***

場所は移り、王都の大神殿。
ひんやりとした大理石の床、天井には荘厳なフレスコ画、ステンドグラスから差し込む光が床に幻想的な模様を描き出している。貴族の子弟が15歳でスキルを授かる「神託の儀」。香油の匂いが立ち込める中、それは厳かに執り行われていた。

神官に促され、祭壇に手をかざす。石の冷たさが、緊張で汗ばむ手のひらに心地よかった。やがて僕の体は淡い光に包まれ……天啓のように、あるいは呪いのように、その四文字が魂に刻み込まれた。――【種子生成】、と。

神殿内の誰もが固唾を飲んで、その言葉を待っていた。神官が恭しく口を開く。

「――汝に授けられしスキルは……【種子生成】!」

しん、と静まり返る神殿。
一瞬の静寂の後、誰かが押し殺したように、くすりと笑った。それが合図だったかのように、侮蔑と嘲笑のさざ波が、神聖であるはずの空間を汚していく。

「種……?なんだそのスキルは」
「泥いじりがお似合いだな、元・次期……いや、シルヴァン様よ」
「武門の恥め。よくも我らの期待を裏切ってくれたな」

さっきまでの称賛が嘘のように、突き刺さる視線が痛い。
だが、それ以上に僕の心を抉ったのは、隣に立つ父の姿だった。

「【種子生成】だと……?ふざけるなッ!武門ヴァルトール家の跡継ぎが、泥にまみれる百姓スキルだとッ!?」

血管を首筋に浮き上がらせ、ワナワナと拳を震わせながら、父は僕を睨みつけていた。その目には、憎悪の色さえ浮かんでいるように見えた。訓練場で見せた誇らしげな父親の面影は、どこにもない。

***

屋敷に戻るや否や、父は冷酷に言い放った。

「貴様のような役立たずは息子ではない。ヴァルトール家の恥だ。今すぐこの家から出ていけ」

「父上、お待ちください!」
たまらず声を上げたのは、弟のアルドだった。
「兄さんの斧術の才能は本物です!スキルごときで、兄さんの全てを否定しないでください!」
彼は僕の前に立ちはだかろうと、一歩踏み出す。だが、その腕を、クラリスがそっと掴んで制止した。

僕はクラリスに視線を送る。助けを求めたわけじゃない。ただ、最後にその顔を見ておきたかった。
彼女は真っ青な顔で、スカートを強く握りしめていた。その指先は白く変色している。何かを言いたげに唇を開きかけ、しかし、ぐっと飲み込んで俯いてしまう。その瞳から零れ落ちた一筋の涙を、僕は見逃さなかった。

(……どうして、君が泣くんだ?)

屋敷から追い出される僕に、父が投げ渡したのは一枚の粗末な布袋。中には、数日分の干し肉と水、そして……。

かつて栄光を掴んだその手に握らされたのは、刃こぼれし、所々が錆びついた古い手斧一本だけだった。

背後で、重い城門が軋みながら閉まる、無情な音が響く。僕は振り返ることなく、ただ、前へと足を踏み出した。
まるで僕の心を映すかのように、空からは冷たい雨が降り始めていた。行く先もわからぬ荒野で、僕の、孤独な旅が始まった。

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