役立たずの【種子生成】スキルで追放されたので、辺境でもふもふドラゴンと自由に生きることにした

はぶさん

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第十二話 故郷への帰路と、最高の贈り物 第2部『ただいま、我が家へ』

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村での温かい交流を終え、僕たちはついに慣れ親しんだレーテの森へと帰ってきた。

一歩足を踏み入れた瞬間、ひんやりと湿った土の匂い、木々の葉が風にそよぐ音、そして体に馴染んだ濃密な魔力の気配が、僕たちを優しく包み込む。僕は故郷の空気を吸い込むように、深く、深く息をした。旅の緊張で強張っていた肩から、すっと力が抜けていくのが分かる。

「きゅぅん……」

コハクも、懐かしい我が家の匂いに、安心しきったように喉を鳴らした。ああ、帰ってきたんだ。僕たちの、大切な我が家へ。

郷に近づくにつれて、森の奥から、以前にはなかった音が聞こえてきた。
トントン、トントン……と、ズボラが木材を加工する、規則正しくも心地よい槌の音。そして、その音に負けないくらい陽気な、ガラクの鼻歌。

僕たちが驚いて顔を見合わせていると、視界が開け、信じられない光景が目に飛び込んできた。
僕たちが出発した時には、まだ骨組みだけだったはずの我が家。それが、見違えるほど立派になっていたのだ。壁は、僕が提案した土壁で綺麗に塗り固められ、指で触れるとその滑らかさと、太陽の熱を蓄えた温かさが伝わってくる。屋根には防水のための分厚い樹皮が、ズボラの丁寧な仕事ぶりを示すように、鱗のように美しく葺かれていた。家の隣に増設された厨房エリアからは、ガラクが仕込みをしているのだろう、香ばしい燻製肉とハーブの匂いが漂ってきて、僕たちの空腹を優しく刺激した。

郷は、僕たちがいない間も、止まっていたわけじゃない。二人の手で、力強く、そして温かく、成長を続けていたのだ。

「おおっ!シルヴァン!おかえり!」
「待ってたぜ、三人とも!」

僕たちの姿に気づいたガラクとズボラが、泥だらけの手もそのままに、満面の笑みで駆け寄ってくる。ガラクは僕の体を確かめるようにバンバンと背中を叩き、ズボラは言葉少なだが、その大きな瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。僕たちは、再会の喜びを分かち合うように、強く抱き合った。

「さあ、上がってくれ!すげえもんができたんだ!」

ズボラに促され、僕たちは初めて、完成した我が家の扉をくぐった。
家の中は、まだがらんとしていたが、その中央に、三つの贈り物が置かれていた。
それは、ズボラが僕たちのために作ってくれた、三脚の「椅子」だった。

僕のための、背もたれが少し高い、シンプルな椅子。コハクが飛び乗りやすいように作られた、低い丸椅子。そして、隅っこでくつろぐのが好きなハグレのために、壁際に置かれた、小ぶりで美しい二人掛けの長椅子。

はにかみながらそう呟くズボラに、僕は胸がいっぱいになった。
(すごい……僕の椅子は、背筋を伸ばして座る僕の癖に合わせて、背もたれが少し高く作られている。コハクがいつも僕の足元で丸くなるのを思い出して、座面を少しだけ広く、そして低くしてくれたんだな……)
そして、ハグレの二人掛けの長椅子。彼女はいつも一人で隅にいるのに、なぜ二人掛けなんだろう?……ああ、そうか。ズボラは、いつかハグレが誰かと一緒に、ここに並んで座る日が来ることを願ってくれたのかもしれない。
言葉ではなく、その木工に込められた深い思いやりに、僕はただ、心を揺さぶられていた。

「さて!旅の土産話を聞かせてもらおうじゃねえか!」
ガラクが、僕の背負子から塩の革袋を取り上げ、そのずっしりとした重みに目を丸くする。
「すげえ量だな!これだけありゃ、当分は……」
だが、彼はすぐに料理人としての厳しい顔つきになった。「……いや、待てよ。毎日みんなが飲むスープに、こんな上等な塩を使ってたら、あっという間になくなっちまうなあ」

ガラクが、うーん、と腕を組んで唸った、その時だった。
それまで、部屋の隅で「自分は関係ない」とでも言いたげにそっぽを向いていたハグレが、おもむろに立ち上がった。そして、厨房の水瓶に近づくと、その中に向かって、静かに口を開いた。
彼女の口から、淡い青色の光を帯びた液体が、なみなみと水瓶に注がれていく。

「な、なんだぁ!?」
驚くガラクが、慌ててその水を指ですくって、ぺろりと舐めた。
次の瞬間、彼は絶叫した。
「こいつは……極上の塩水じゃねえか!ハグレちゃん、お前、なんてとんでもねえ技を……!」
ガラクはもう一度、興奮冷めやらぬ様子で指を舐めると、目を輝かせて続けた。「ただしょっぱいだけじゃねえ! 角が取れてて、後からほんのり甘みさえ感じる……! シルヴァン、ズボラ、聞いたか! この塩さえあれば、俺たちの畑の野菜の味は、今までの何倍、いや、何十倍にもなるぞ!」

ハグレは、ガラクの驚きぶりに満足したのか、「ふしゅん」と一つ鼻を鳴らすと、再び自分のための長椅子の上で、体を丸めてしまった。その横顔は、最高に誇らしげだった。

その夜、僕たちは、ズボラが作ってくれた椅子に座り、火を囲んでいた。
僕は、賢い魔物との音を殺した戦いの全てを語って聞かせ、そして、村で交わした交易の約束と、新しい仲間であるヒナたちのことも話した。
「なんだとぉ! ニワトリだと!? ってことは、いつか卵が食えるようになるのか!」ガラクが、目を剥いて叫ぶ。
「それに、薬草の知識もだ。これからは、誰かが病気になっても、僕たちで治せるようになるかもしれない」僕がそう言うと、ズボラが「それは……すごいな」と、心から安堵したように、深く頷いた。

ガラクとズボラは、家作りの奮闘記を、身振り手振りを交えて、誇らしげに報告してくれた。
離れていた時間が、僕たちの絆を、より一層強く、固く結びつけてくれていた。
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