役立たずの【種子生成】スキルで追放されたので、辺境でもふもふドラゴンと自由に生きることにした

はぶさん

文字の大きさ
35 / 59

第十三話 新たな家族と、小さな命の温もり 第2部『初めての卵と、ドワーフの噂』

しおりを挟む
僕が【種子生成】で生み出した栄養満点の牧草を食べ、ヒナたちはすくすくと、そして驚くほどの速さで成長していった。
あれほど小さかった二羽の体は、数週間もすると、美しい羽毛に覆われた、立派な若鶏へと姿を変えた。世話係のヒロイくんが、まるで我が子のように愛情を込めて育てているおかげで、彼らはとても人懐っこく、僕たちが小屋に近づくと、嬉しそうに駆け寄ってくる。その愛らしい姿は、すっかり郷の癒やしとなっていた。

そして、運命の朝が訪れた。

「「おおおおおおおおっ!」」

郷中に響き渡ったのは、ガラクと、そして毎日欠かさず誰よりも早く小屋を訪れていた世話係のヒロイくんの、魂からの絶叫だった。何事かと、僕もズボラも、慌てて厨房エリアへと駆けつける。
二人は、ニワトリ小屋の前で、その体をわなわなと震わせながら、抱き合って喜んでいた。

「み、見ろ……!」

彼が、震える指で指さす先。
小屋の中に敷き詰められた藁(わら)の上に、一つ。
朝日を浴びて、温かい光を放つように、つるりとした薄茶色の**「初めての卵」**が、ちょこんと、しかし確かな存在感を放って、そこにあったのだ。

「やった……!やったぞぉぉぉ!」
僕たちは、一つの卵を囲んで、まるで国を救った英雄のように、何度もハイタッチを交わして喜んだ。それは、僕たちの郷が、初めて自分たちの手で「命」を繋ぎ、新たな恵みを生み出した、記念すべき瞬間だった。

この奇跡の卵をどう調理するか。郷の一大議題となったが、結論はすぐに出た。
「この奇跡の味を、最も純粋な形で味わうべきだ。俺に任せろ。究極の『目玉焼き』を作ってやる」
料理人ガラクの、真剣な眼差しだった。

彼は、ズボラが作った平たい石の調理板を聖なる祭壇のように丁寧に清め、オークからもらった猪の脂を薄く引く。そして、郷の全員が見守る中、神聖な儀式のように、そっと卵を割り落とした。
ジュウウウッ……と、心地よい音と共に、透明だった白身が、美しい乳白色へと変わっていく。中央の黄身は、まるで夕暮れ時の太陽のように、ぷるぷると、生命力に満ちて輝いていた。
仕上げに、僕たちが持ち帰った最高の塩を、ほんの少しだけ振りかける。

完成した究極の目玉焼きは、ガラクの神業のような手つきで、きっかり五等分され、僕たちの口へと運ばれた。
……言葉が、出なかった。
濃厚で、クリームのようにとろりとした黄身の甘み。ぷりぷりとした白身の食感。そして、それら全てを、最高の塩が、完璧な旨味へと昇華させている。
ハグレは、最初は警戒するように匂いを嗅いでいたが、一口食べると、サファイアのような瞳をこれ以上ないほど見開き、無言のまま、しかし凄まじい集中力で自分の分を平らげた。そして、ガラクの方をじっと見つめ、小さく「…くるる」と喉を鳴らした(おかわり、の意)。

その日の昼過ぎ、ドガたちが、猪肉や木材との交換のために、郷を訪れた。
彼らは、僕たちが作ったニワトリ小屋に感心しきりだった。そこへ、「これに、僕たちの郷の『英雄』が彫った、新しい食器だ」とズボラがオークたちに手渡すと、彼らはその美しい木工品に「おお……」と感嘆の声を漏らしていた。
そんな雑談の中、ドガが、ふと思い出したように言った。
「そういや、最近、別の場所から来た旅商人と話したんだが、面白い噂を耳にしたぜ」
「噂?」
「ああ。なんでも、昔この辺りに住んでいたっていう、ドワーフの生き残りがいるらしい。南の山奥で、一人、ひっそりと暮らしてるんだとよ」
ドガは、ニヤリと笑って、言った。
「なんでも、そのドワーフ……最高の酒を造る、伝説の職人なんだとか」

「ドワーフの……酒造家」

その言葉に、僕と、隣にいたガラクの目が、カッと輝いた。
最高の料理がある。最高の寝床もある。最高の仲間もいる。
だが、この郷にはまだ、一日の終わりに、仲間たちと語らいながら酌み-交わす、最高の「酒」がなかった。
僕たちの胸に、次なる仲間への、そして、郷がさらに豊かになる未来への、熱い期待が膨らんでいくのを感じた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

小さな貴族は色々最強!?

谷 優
ファンタジー
神様の手違いによって、別の世界の人間として生まれた清水 尊。 本来存在しない世界の異物を排除しようと見えざる者の手が働き、不運にも9歳という若さで息を引き取った。 神様はお詫びとして、記憶を持ったままの転生、そして加護を授けることを約束した。 その結果、異世界の貴族、侯爵家ウィリアム・ヴェスターとして生まれ変ることに。 転生先は優しい両親と、ちょっぴり愛の強い兄のいるとっても幸せな家庭であった。 魔法属性検査の日、ウィリアムは自分の属性に驚愕して__。 ウィリアムは、もふもふな友達と共に神様から貰った加護で皆を癒していく。

公爵令嬢やめて15年、噂の森でスローライフしてたら最強になりました!〜レベルカンストなので冒険に出る準備、なんて思ったけどハプニングだらけ〜

咲月ねむと
ファンタジー
息苦しい貴族社会から逃げ出して15年。 元公爵令嬢の私、リーナは「魔物の森」の奥で、相棒のもふもふフェンリルと気ままなスローライフを満喫していた。 そんなある日、ひょんなことから自分のレベルがカンストしていることに気づいてしまう。 ​「せっかくだし、冒険に出てみようかしら?」 ​軽い気持ちで始めた“冒険の準備”は、しかし、初日からハプニングの連続! 金策のために採った薬草は、国宝級の秘薬で鑑定士が気絶。 街でチンピラに絡まれれば、無自覚な威圧で撃退し、 初仕事では天災級の魔法でギルドの備品を物理的に破壊! 気づけばいきなり最高ランクの「Sランク冒険者」に認定され、 ボロボロの城壁を「日曜大工のノリ」で修理したら、神々しすぎる城塞が爆誕してしまった。 ​本人はいたって平和に、堅実に、お金を稼ぎたいだけなのに、規格外の生活魔法は今日も今日とて大暴走! ついには帝国の精鋭部隊に追われる亡国の王子様まで保護してしまい、私の「冒険の準備」は、いつの間にか世界の運命を左右する壮大な旅へと変わってしまって……!? ​これは、最強の力を持ってしまったおっとり元令嬢が、その力に全く気づかないまま、周囲に勘違いと畏怖と伝説を振りまいていく、勘違いスローライフ・コメディ! 本人はいつでも、至って真面目にお掃除とお料理をしたいだけなんです。信じてください!

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

追放された荷物持ちですが、実は滅んだ竜族の末裔でした~のんびり暮らしたいのに、なぜかそうならない~

ソラリアル
ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。 家族も、家も、居場所もない。 そんな俺を拾ってくれたのは、優しいSランク冒険者のパーティだった。 「荷物持ちでもいい、仲間になれ」 その言葉を信じて、俺は必死についていった。 だけど、自分には何もできないと思っていた。 それでも少しでも役に立ちたくて、夜な夜な一人で力を磨いた。 だけどある日、彼らは言った。 『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』 それは、俺の身を案じた「優しさ」からの判断だった。 俺も分かっていた。 だから、黙ってそれを受け入れ、静かにパーティを離れた。 「もう誰にも必要とされなくてもいい。一人で、穏やかに生きていこう」 そう思っていた。そのはずだった。 ――だけど。 ダンジョンの地下で出会った古代竜の魂と、 “様々な縁”が重なり、騒がしくなった。 「最強を目指すべくして生まれた存在」 「君と一緒に行かせてくれ。」 「……オリオンを辞めさせた、本当の理由を知っている」 穏やかなスローライフ生活を望んだはずなのに、 世界はまた、勝手に動き出してしまったらしい―― ◇小説家になろう・カクヨムでも同時連載中です◇

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

処理中です...