役立たずの【種子生成】スキルで追放されたので、辺境でもふもふドラゴンと自由に生きることにした

はぶさん

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第十六話 醸造家の帰郷と、初めての乾杯 第1部『頑固者との帰り道と、見えてきた我が家』

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「……で、本当にこっちの道で合っとるんか、小僧」
「ええ、間違いありませんよ、ギムレットさん。あと数日もすれば、僕たちの森です」
「ふん、なんだこの道は!ぐにゃぐにゃしおって!ドワーフの道はな、始まりと終わりを真っ直ぐ結ぶんじゃ!山の腹だろうが、岩盤だろうが、ぶち抜いてな!基本がなっとらん!」
僕たちの新しい仲間、ドワーフのギムレットさんは、なかなかに賑やかな旅の仲間だった。
彼は、僕たちが進む森の獣道を、ことあるごとにそう言ってこき下ろす。だが、その悪態をつく口元が、見事な髭の奥で、どこか楽しげに歪んでいるのを、僕は見逃さなかった。数十年間、独りきりだった彼にとって、誰かと話しながら歩くこの旅路は、きっと新鮮で、そして心地よいのだろう。
コハクは、そんなギムレットさんにすっかり懐き、その立派な三つ編みの髭にじゃれついては「こら!わしの魂の一部じゃぞ!触るな!」と怒られ、それでも全く懲りずに彼の足元を駆け回っている。ハグレは、相変わらず少し離れた場所から、警戒するように、しかし興味深そうに、その毛むくじゃらの新しい仲間を観察していた。

その夜、僕たちは焚き火を囲んでいた。パチパチと火が爆ぜる音と、森の静寂。ガラクが作ってくれたジャーキーを炙りながら、僕は、ギムレットさんに、郷で待つ仲間たちのことを改めて語って聞かせた。
「ガラクは、リザードマンの料理人なんです。彼の作る燻製肉は、きっとギムレットさんのエールにも合いますよ」
「ほう……燻製か。悪くないな。桜の木で燻したのなら、なお良い」
「えっ、なぜそれを……」
「わしの鼻を舐めるな。お前さんの荷物袋から、ほのかに香っておるわ」
恐るべき嗅覚。僕は、もう一人の仲間について語った。
「ズボラは、オークの木工職人です。僕たちが旅に出る前に、僕たちの郷の物語を彫り込んだ、それは見事な杯を作ってくれて……」
その言葉に、ギムレットさんの目が、初めて職人のそれになった。
「……樫の木か?その杯の厚みは均一じゃったか?表面の仕上げは、どんな油を使った?」
立て続けに飛んでくる、専門的な質問。僕は、ズボラの仕事がいかに素晴らしかったかを、熱を込めて語った。ギムレットさんは、僕の話を聞き終えると、ただ「ふん」と鼻を鳴らし、夜空を見上げた。だが、その瞳の奥に、同じ職人としての強い興味と、まだ見ぬ好敵手への、確かな敬意が宿っているのが、僕には分かった。

数日後、僕たちはついに、慣れ親しんだレーテの森へと帰ってきた。
「……ここが、お前さんたちの森か。なるほど、魔力の密度がそこらの森とは段違いじゃな」
ギムレットさんが、感心したように呟く。
森に一歩足を踏み入れると、ひんやりと湿った土の匂いと、体に馴染んだ濃密な魔力の気配が、僕たちを優しく包み込んだ。ああ、帰ってきたんだ。
郷に近づくにつれて、森の奥から、懐かしい音が聞こえてきた。
トントン、トントン……と、ズボラが木材を加工する、規則正しくも心地よい槌の音。
そして、その音に負けないくらい陽気な、ガラクの鼻歌と、何かを炒める香ばしい匂い。
僕の顔に、自然と笑みが浮かぶ。コハクとハグレも、懐かしい我が家の匂いに気づいたのか、僕より先に、喜びいっぱいに駆け出していった。

やがて、視界が開け、僕たちの郷の全景が見えてきた。
「おかえりーっ!シルヴァン!」
「待ってたぜ、三人とも!」
僕たちの姿を最初に見つけたのは、ガラクとズボラだった。二人は、泥だらけの手もそのままに、満面の笑みで駆け寄ってくる。
だが、彼らは、僕の隣に立つ、見知らぬドワーフの姿に気づくと、ぴたり、と足を止めた。
厨房の王である、リザードマンの料理人、ガラク。その瞳には、未知の食材に対するような、好奇と探究の炎が揺らめいている。
郷の全てを創り出す、オークの木工職人、ズボラ。その瞳は、静かに、しかし厳しく、相手が本物の職人かどうかを、その佇まいから見極めようとしている。
そして、伝説の酒を造る、ドワーフの醸造家、ギムレット。彼は、二人を値踏みするように、その髭をしごきながら、ふん、と鼻を鳴らした。
郷の空気に、心地よい緊張と、確かな期待が満ちていく。新たな物語が始まる、最高の予感が、そこにはあった。
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