花笑みな君に恋をする

Y.

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「花笑みな君」への告白

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 翌日、俺は誰もいない部室で、春香先輩を待った。先輩が静かに部室に入ってくると、俺は用意したボードを先輩の前に差し出した。

「これ……」

 春香先輩は、そこに並べられた自分の様々な表情を見て、息を飲んだ。彼女が普段見せない、あるいは見せないように努めていた表情ばかりだったからだ。

 そして、ボードの中央に、俺が書いた言葉を静かに目で追った。

『佐倉先輩の笑顔は、いつも周りに春を連れてきてくれました。でも、俺は、その笑顔の裏側にある、無理をしてしまう不器用な先輩の姿も、全部、知っています。』

 俺は、震える膝を抑え、深呼吸した。

「先輩。俺が、最初に恋をしたのは、あの完璧な『花笑み』でした。あの、眩しすぎる君に、一目惚れしました」

 先輩は、静かに涙を浮かべながら、俺を見つめた。

「でも、今は、違います。完璧な君だけじゃない。無理して笑うのをやめて、戸惑っている君も、泣いてる君も、全部ひっくるめて……」

 俺は、一世一代の勇気を振り絞り、先輩の手を取った。

「俺は、先輩のすべてに恋をしました。だから、もう、俺の前では無理して笑わないでください。俺が、先輩の隣で、ずっと支えます」

 それは、飾りのない、俺の不器用で、一途な、真実の告白だった。

 春香先輩の目から、溢れた涙が頬を伝った。それは、悲しみの涙ではなかった。先輩は、俺の手を握り返し、震える声で言った。

「一太くん……ありがとう。私、ずっと誰かに、この『花笑み』じゃない私を見つけてほしかったのかもしれない」

 先輩は、ゆっくりと、そして深く頷いた。

「私……一太くんの気持ちを、受け入れたい。完璧じゃない、私を好きでいてくれて、ありがとう」

 その瞬間、先輩の顔に浮かんだのは、満開の桜のように華やかな『花笑み』ではなかった。それは、涙の痕が残る、少し照れたような、けれど心から安心しきった、ありのままの笑顔だった。

 一太の心の中で、その笑顔は、これまでのどの『花笑み』よりも、美しく輝いていた。
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