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【47】
マティが、デューラー先生と会場を後にしてから少しすると、俄かにまた入口に方が騒がしくなってきた。
「何かしら……あら」
他の人の視線の先を見て、わたくしは思わずと言った様に声が出る。
喧騒は何のことはない、殿下と男爵令嬢が二人そろって入場しただけだ。……だけなのは間違いないのだけれど。
ざわつきの理由は、それ以外にもあるようで、何が原因かは、わたくしも見てすぐに納得をした。
ドレスやスーツがお揃いのデザインで、殿下と二人で互いの瞳や髪の色を、それぞれドレスやスーツのピアスやカフスなどの箇所に散りばめているのも、予想通りではあるんだけれども。
男爵令嬢……ヒロインのドレスが問題だった。
王家の人にしか使ってはいけないドレスのデザインや、腰のリボンのレースの装飾デザインはもちろんの事、頭上を飾るティアラは、結婚式の時に、王太子妃殿下が飾るはずの物。イヤリングと胸元のブローチは殿下の目の色である橙色、ドレスは結婚式でも上げるのかと言わんばかりの純白で、ブーケまで持ってるしそのブーケも殿下の髪と同じ金に花が染められている。
その姿だけでも、皆ドン引きだけれど、さらに殿下にしなだれ掛かる様にくっついて腕を絡めて胸を押し当てている……。うん、なんかもう凄くて言葉が無いわ。
ある意味、大変に、それはもう、皆様方の記憶に残る卒業パーティになりそうね……。
そんな周囲の状態に気が付かず、ご満悦な表情で入ってきて。
キョロキョロと辺りを見回して、わたくしの姿に気が付くと、意気揚々とこちらへと向かってきた。
え、もう断罪イベント開始するの?
確か婚約破棄云々を叫びだすのって、卒業パーティか盛り上がった途中だったはずなんだけれど……。
だからマティが少しなら離れても大丈夫だと思ったんだけと、このまま強行されるのかしら……。
内心焦りつつ、殿下の動向を見ているとは当然思ってない殿下達は、ニヤニヤしながらわたくしの前にまで来ると「はっ」と鼻で笑った。あぁ、わざわざ有り難うわたくしが一人なのを見に来ただけなのね……。
男爵令嬢は男爵令嬢で、「まぁ、トルデリーゼ様、エスコートを付けずにお一人でいらっしゃったのですか?」とか心配()そうな声かけなどされてくるが、ここはニコリと笑顔を返すだけに留める。
どうせ、何かいっても、「ひどい」「あんまりだわ」「どうして」とかの言いがかりを付けられるのがオチだもの。
わたくしが何も言い返さず笑みを浮かべてカーテシーをするだけなのが気に入らないのか、あからさまに殿下がチッと舌打ちするのが聞こえてきた。
わたくしがパーティに一人でいるだけではご不満なのかしらね。顔にありありと出ているわ。王族として、表情に露骨に出してくるのはどうかとも思うけれども。
忌々しげな表情の殿下だけれども、そのままチラリとわたくしの胸元へと目線を移動させてきた。
何を人の胸を見てるんだこの男。と思ったけれど、どうもわたくしが付けてるバラを見ている……?
わたくしの胸のバラと言えば……青いバラを飾ってるのよね。
⇒【24】へ進む
ꕤ.。✼••⋅⋅⊱∘┈┈┈┈•>✾<•┈┈┈┈∘⊰⋅⋅••✼。.ꕤ
【48】
「エスコートの相手は、殿下は今日いらっしゃらないわ」
「え……!? そんなお嬢様……!」
訪ねてきた侍女が、真っ青な顔になる。そうよね、まさか来ないだなんて普通は思わないものね。
「いいのよ。わたくしは、今夜は一人で会場に行くつもりだったのだから」
そのために、先週の内に家にお抱えの商人を呼んで、ドレスも購入しているのだし。
ラベンダーカラーを基調としたドレスは、レースも最低限だけで、刺繡もロイヤルパープルの糸で縁どられた、ゴタゴタと盛られてないそのドレスのデザインは、わたくしのお気に入りだ。
……殿下が用意していたら、間違いなくわたくしに似合わないサーモンピンクのドレスで、リボンやフリルがヒラッヒラのドレスが届いてたでしょうし、そういう意味では、エスコートされないで良かったと思うわ。
侍女達がドレスへと着替えさせてくれて、準備は完了。
「さて、それじゃ戦いにいくとしましょうか」
断罪イベントとの対決に向けて気合を入れ直し、わたくしは馬車に乗ると会場へと向かった。
⇒【21】へ進む
ꕤ.。✼••⋅⋅⊱∘┈┈┈┈•>✾<•┈┈┈┈∘⊰⋅⋅••✼。.ꕤ
【49】
「わたくし、その様な事は致しておりません。そもそもわたくしは」
「えぇい、黙れ! そうやってまだ言い逃れするつもりか!! リーリアがこうも泣きながら言ってるであろう! やっていないと証明出来る様な証拠はあるのか!」
「っ……それは……ですが、わたくしは本当に致しておりません」
「ハッ!! 語るに落ちたな!! 証拠も無いくせに口先だけで言い逃れしようとは浅ましいにも程がある!! 衛兵! この女を拘束せよ!!」
殿下の近くに控えていた護衛騎士がわたくしの両腕を拘束する。
「や、やめてください!! 殿下! わたくしは本当に何も」
「言い訳は見苦しいぞ! そのまま連れて行け!!」
「殿下……!」
──それからは、あっという間だった。
お父様やマティが、ろくな証拠も無しに断罪するのはおかしい、もっと調査すべきだと抗議もしてくれたけれども。
それらは聞き入れて貰うことなく、わたくしの国外追放が決まってしまった。
「ごめんなさい、ごめんなさいお父様。わたくしの、わたくしのせいで、ルントシュテッド家の名に傷が……!」
わたくしが国外追放になるよりも、それによって我が家の名に傷を付けてしまった事が申し訳無かった。
貴族牢なので、薄暗い地下牢ではなく、質素ではあるもののきちんとした一室に入れられたわたくしに、話を聞きつけたお父様がすぐにこちらへと来てくれた。
心構えはしていたけれど、それでも起きてしまった断罪と国外追放に、お父様の顔を見た瞬間、わたくしの緊張の糸は切れてしまったのか、涙が止まらずひたすらお父様に謝罪を繰り返すばかりとなってしまった。
そんなわたくしに、お父様は怒る事も詰る事もしなく、そっとわたくしを抱きしめてくれる。
「リーゼ。お前は何も悪くないよ、お前が何もしていないことは、私達家族は誰よりも分かっている」
お父様の胸の中で、ボロボロ泣いているわたくしに、お父様は優しげな声でそう口にしてくれた。
「それよりも。いいか、お前がこれから行く国は、私が学生時代留学していた国なんだ」
「……え……?」
確か追放されるのは、ここの国からずっと遠い北の地ではなかったかしら……?
お父様が若い頃に留学されていたのは、同盟を結んでる、東国の魔術の国よね……。
「追放を変えれなくても、行き先の修正だけはなんとかね。これでも侯爵だし、私は顔も広いんだ。お金もね、可愛い娘を守る為なら、使う事は惜しまないよ」
お父様、それは買収をしたとか言うのでは?
……と思ったけど、話を聞くと今回の強引な断罪は、会場内にいた人達から、かなり反感を買ってしまったらしく。
騎士たちや学園の先生方、来賓されていた貴族の方々などなど、寧ろ進んで裏から手を回してくれたらしい。
ここの貴族牢にも、殿下の目を盗んで通してくれたそうだ。
「だからね、最初は護送馬車ではあるけど、王都を出たら、すぐにしっかりした馬車に乗り換えられるし、そのまま皇国に向かってくれるよ」
お父様……。
「皇国の魔術学園に、私から編入手続きをお願いしておいたから。そこなら三年間、学園の寮に居られる。
リーゼ、そこで三年頑張っておいで。その間にこっちでもリーゼの冤罪は晴らすよ。もうマティアスが、凄い勢いで動き出してくれてるからね。きっと三年も掛からずに冤罪疑惑は晴れるさ。
でもね、その後戻ってくるも、向こうで職に就くも自由だよ。私はリーゼが元気で生きてくれれば、それだけでいいんだ」
お父様の優しい言葉に、涙はますます止まる所を見せず、そんなわたくしの涙をお父様は優しく拭ってくれる。
「お父様、ありがとうございます。マティにもお礼を伝えておいてください」
お父様に強く抱きついて、お礼を伝える。
お父様の助けを無駄にしないためにも、わたくしは三年間を魔術学園で過ごし、頑張って行こうと決めた。
そうして翌日、まだ日も登らない闇夜の中、護送馬車に乗ってわたくしは王都を後にした──。
その後、わたくしは皇国の魔術学園で三年間勉強を頑張り、メキメキと実力を身に着け、首席で卒業をする迄になった。
その頃には、婚約破棄騒動の冤罪もしっかり晴れていたので、自国に戻ろうかなとも思っていたのだけれど、そのまま皇国に留まって欲しいと請われてしまい。
悩んだ末に、わたくしはそのまま皇国にて、宮廷魔術師となる未来が待つのだけれども。
今はそんな未来は想像すらしておらず、闇世の中をわたくしは静かに馬車に揺られるのであった……──。
ルート⑥クリア
ꕤ.。✼••⋅⋅⊱∘┈┈┈┈•>✾<•┈┈┈┈∘⊰⋅⋅••✼。.ꕤ
マティが、デューラー先生と会場を後にしてから少しすると、俄かにまた入口に方が騒がしくなってきた。
「何かしら……あら」
他の人の視線の先を見て、わたくしは思わずと言った様に声が出る。
喧騒は何のことはない、殿下と男爵令嬢が二人そろって入場しただけだ。……だけなのは間違いないのだけれど。
ざわつきの理由は、それ以外にもあるようで、何が原因かは、わたくしも見てすぐに納得をした。
ドレスやスーツがお揃いのデザインで、殿下と二人で互いの瞳や髪の色を、それぞれドレスやスーツのピアスやカフスなどの箇所に散りばめているのも、予想通りではあるんだけれども。
男爵令嬢……ヒロインのドレスが問題だった。
王家の人にしか使ってはいけないドレスのデザインや、腰のリボンのレースの装飾デザインはもちろんの事、頭上を飾るティアラは、結婚式の時に、王太子妃殿下が飾るはずの物。イヤリングと胸元のブローチは殿下の目の色である橙色、ドレスは結婚式でも上げるのかと言わんばかりの純白で、ブーケまで持ってるしそのブーケも殿下の髪と同じ金に花が染められている。
その姿だけでも、皆ドン引きだけれど、さらに殿下にしなだれ掛かる様にくっついて腕を絡めて胸を押し当てている……。うん、なんかもう凄くて言葉が無いわ。
ある意味、大変に、それはもう、皆様方の記憶に残る卒業パーティになりそうね……。
そんな周囲の状態に気が付かず、ご満悦な表情で入ってきて。
キョロキョロと辺りを見回して、わたくしの姿に気が付くと、意気揚々とこちらへと向かってきた。
え、もう断罪イベント開始するの?
確か婚約破棄云々を叫びだすのって、卒業パーティか盛り上がった途中だったはずなんだけれど……。
だからマティが少しなら離れても大丈夫だと思ったんだけと、このまま強行されるのかしら……。
内心焦りつつ、殿下の動向を見ているとは当然思ってない殿下達は、ニヤニヤしながらわたくしの前にまで来ると「はっ」と鼻で笑った。あぁ、わざわざ有り難うわたくしが一人なのを見に来ただけなのね……。
男爵令嬢は男爵令嬢で、「まぁ、トルデリーゼ様、エスコートを付けずにお一人でいらっしゃったのですか?」とか心配()そうな声かけなどされてくるが、ここはニコリと笑顔を返すだけに留める。
どうせ、何かいっても、「ひどい」「あんまりだわ」「どうして」とかの言いがかりを付けられるのがオチだもの。
わたくしが何も言い返さず笑みを浮かべてカーテシーをするだけなのが気に入らないのか、あからさまに殿下がチッと舌打ちするのが聞こえてきた。
わたくしがパーティに一人でいるだけではご不満なのかしらね。顔にありありと出ているわ。王族として、表情に露骨に出してくるのはどうかとも思うけれども。
忌々しげな表情の殿下だけれども、そのままチラリとわたくしの胸元へと目線を移動させてきた。
何を人の胸を見てるんだこの男。と思ったけれど、どうもわたくしが付けてるバラを見ている……?
わたくしの胸のバラと言えば……青いバラを飾ってるのよね。
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「エスコートの相手は、殿下は今日いらっしゃらないわ」
「え……!? そんなお嬢様……!」
訪ねてきた侍女が、真っ青な顔になる。そうよね、まさか来ないだなんて普通は思わないものね。
「いいのよ。わたくしは、今夜は一人で会場に行くつもりだったのだから」
そのために、先週の内に家にお抱えの商人を呼んで、ドレスも購入しているのだし。
ラベンダーカラーを基調としたドレスは、レースも最低限だけで、刺繡もロイヤルパープルの糸で縁どられた、ゴタゴタと盛られてないそのドレスのデザインは、わたくしのお気に入りだ。
……殿下が用意していたら、間違いなくわたくしに似合わないサーモンピンクのドレスで、リボンやフリルがヒラッヒラのドレスが届いてたでしょうし、そういう意味では、エスコートされないで良かったと思うわ。
侍女達がドレスへと着替えさせてくれて、準備は完了。
「さて、それじゃ戦いにいくとしましょうか」
断罪イベントとの対決に向けて気合を入れ直し、わたくしは馬車に乗ると会場へと向かった。
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「わたくし、その様な事は致しておりません。そもそもわたくしは」
「えぇい、黙れ! そうやってまだ言い逃れするつもりか!! リーリアがこうも泣きながら言ってるであろう! やっていないと証明出来る様な証拠はあるのか!」
「っ……それは……ですが、わたくしは本当に致しておりません」
「ハッ!! 語るに落ちたな!! 証拠も無いくせに口先だけで言い逃れしようとは浅ましいにも程がある!! 衛兵! この女を拘束せよ!!」
殿下の近くに控えていた護衛騎士がわたくしの両腕を拘束する。
「や、やめてください!! 殿下! わたくしは本当に何も」
「言い訳は見苦しいぞ! そのまま連れて行け!!」
「殿下……!」
──それからは、あっという間だった。
お父様やマティが、ろくな証拠も無しに断罪するのはおかしい、もっと調査すべきだと抗議もしてくれたけれども。
それらは聞き入れて貰うことなく、わたくしの国外追放が決まってしまった。
「ごめんなさい、ごめんなさいお父様。わたくしの、わたくしのせいで、ルントシュテッド家の名に傷が……!」
わたくしが国外追放になるよりも、それによって我が家の名に傷を付けてしまった事が申し訳無かった。
貴族牢なので、薄暗い地下牢ではなく、質素ではあるもののきちんとした一室に入れられたわたくしに、話を聞きつけたお父様がすぐにこちらへと来てくれた。
心構えはしていたけれど、それでも起きてしまった断罪と国外追放に、お父様の顔を見た瞬間、わたくしの緊張の糸は切れてしまったのか、涙が止まらずひたすらお父様に謝罪を繰り返すばかりとなってしまった。
そんなわたくしに、お父様は怒る事も詰る事もしなく、そっとわたくしを抱きしめてくれる。
「リーゼ。お前は何も悪くないよ、お前が何もしていないことは、私達家族は誰よりも分かっている」
お父様の胸の中で、ボロボロ泣いているわたくしに、お父様は優しげな声でそう口にしてくれた。
「それよりも。いいか、お前がこれから行く国は、私が学生時代留学していた国なんだ」
「……え……?」
確か追放されるのは、ここの国からずっと遠い北の地ではなかったかしら……?
お父様が若い頃に留学されていたのは、同盟を結んでる、東国の魔術の国よね……。
「追放を変えれなくても、行き先の修正だけはなんとかね。これでも侯爵だし、私は顔も広いんだ。お金もね、可愛い娘を守る為なら、使う事は惜しまないよ」
お父様、それは買収をしたとか言うのでは?
……と思ったけど、話を聞くと今回の強引な断罪は、会場内にいた人達から、かなり反感を買ってしまったらしく。
騎士たちや学園の先生方、来賓されていた貴族の方々などなど、寧ろ進んで裏から手を回してくれたらしい。
ここの貴族牢にも、殿下の目を盗んで通してくれたそうだ。
「だからね、最初は護送馬車ではあるけど、王都を出たら、すぐにしっかりした馬車に乗り換えられるし、そのまま皇国に向かってくれるよ」
お父様……。
「皇国の魔術学園に、私から編入手続きをお願いしておいたから。そこなら三年間、学園の寮に居られる。
リーゼ、そこで三年頑張っておいで。その間にこっちでもリーゼの冤罪は晴らすよ。もうマティアスが、凄い勢いで動き出してくれてるからね。きっと三年も掛からずに冤罪疑惑は晴れるさ。
でもね、その後戻ってくるも、向こうで職に就くも自由だよ。私はリーゼが元気で生きてくれれば、それだけでいいんだ」
お父様の優しい言葉に、涙はますます止まる所を見せず、そんなわたくしの涙をお父様は優しく拭ってくれる。
「お父様、ありがとうございます。マティにもお礼を伝えておいてください」
お父様に強く抱きついて、お礼を伝える。
お父様の助けを無駄にしないためにも、わたくしは三年間を魔術学園で過ごし、頑張って行こうと決めた。
そうして翌日、まだ日も登らない闇夜の中、護送馬車に乗ってわたくしは王都を後にした──。
その後、わたくしは皇国の魔術学園で三年間勉強を頑張り、メキメキと実力を身に着け、首席で卒業をする迄になった。
その頃には、婚約破棄騒動の冤罪もしっかり晴れていたので、自国に戻ろうかなとも思っていたのだけれど、そのまま皇国に留まって欲しいと請われてしまい。
悩んだ末に、わたくしはそのまま皇国にて、宮廷魔術師となる未来が待つのだけれども。
今はそんな未来は想像すらしておらず、闇世の中をわたくしは静かに馬車に揺られるのであった……──。
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