12 / 60
第1章 ぼっち君の日常
第12話 不甲斐ない愛のカタチ
しおりを挟む
「道中暇ですし、お話でもしましょうか」
学校を出てすぐ、お隣で歩く古瀬さんが開口一番そんな提案をしてくる。
「そうですね」
「では、私から」
と置いて、お互い自己紹介がまだだったですね、と今更気づいたように言う。
「ご存知かもしれませんが、私の名前は古瀬麻衣と言います。2年C組の出席番号31番です」
麻衣さん、というのか。うん、なんか麻衣っていう感じの雰囲気してますわ。というか隣のクラスなのに昨日が初認識とは。自分の行動範囲の小ささに惚れ惚れする。
「俺は芦田武流です。2年D組で出席番号は2番です」
古瀬さんの自己紹介に倣って言ってみる。
ちなみにうちの高校は一学年6クラス(A~F組)で、結構な人数を有してる。東総高校。この市内にある数ある進学校の一つだ。
「武流さん、ですか。良い名前ですね」
「お世辞でも嬉しいですね」
「いえ、そんなことはありませんよ?」
実際、”たける”っていう名前はイケメンが似合う名前だ。俺には不相応だろう。
「それより、千代子さんが武流さんの妹さんだとはビックリしました」
それはよく言われる。千恵は俺と違って、陽キャでトップカーストだからな。ただ、羨ましいとは思わない。顔は別だけど。
あと、千代子っていいな。古瀬さんが妹と話す時を想像すると、笑ってしまいそう。
「ええ、性格も顔面レベルも全く違いますからね」
「え、えっとその武流さんもカッコいい?と思いますよ」
この子優しい、妹よ少しは見習いたまえ。そしてサラッと下の名前を呼ぶのはトップカースト所以か。さすが陽キャ。
「古瀬さんは優しいですね」
「・・・?」
「古瀬さんは趣味とかありますか?」
今度は俺から話を広げてみる。
「そうですね・・・趣味かは分かりませんが、大好きなことは読書です。本を読んでいる最中は嫌なことを忘れて、その作中に没頭できるのがとても心地いいんです。周りを気にせず、自分の世界に入れるあの感覚が・・・」
これはちょっと闇が深いかも。彼女くらいになると人間関係でも苦労するのかもしれない。さっきのストーカーの件もしかり。美人さんだしね。
「武流さんは?」
「俺はアニメ、漫画、小説。サブカルチャーが趣味です。まぁ要するにオタクです」
「・・・そうですか。結構ハッキリと言うのですね」
「はい?」
「いえ・・・そうやって自らをオタクと明言する方は中々いませんので」
そうか。それはそうかもしれない。ただ、最近はオタクへの風当たりも弱くなってきている。数年後にはオタクは完全に世間に認められるようになるだろう。
「まぁ隠してもしょうがありませんからね」
「・・・すごいですね。ハッキリと言えるその性格は・・」
また墓穴を掘ったかもしれない。彼女の人間関係に首を突っ込もうとは思わないが、ちょっと気になる。というか、一つこれだけは言いたい。
「俺はそんな性格ではありませんよ。言いたい気持ちを抑えつけて、抑えつけて、今があります」
「・・そう、なんですか」
「えぇ、そうです」
思ったことをすぐ言えたならどれだけ楽か。誰しも、一つや二つ不満が存在する。それを皆抑えつけて生きているのだ。逆に無いように見える奴は、ただの阿呆か、演技をしているか、だ。
それから他愛の無い会話をしていると、事前に言われていた場所まで着いた。
「今日はありがとうございました」
学校から徒歩10分の場所にある公園。看板に書いてある文字には【東総公園】とある。街灯に照らされた公園は、どこか物寂しさを感じさせるものが見え隠れする。
彼女の家は公園の目の前にある、あのアパートらしい。目と鼻の先にあるから分かりやすい。
「いえ、俺もこの住宅街の土地勘が知れて良かったです」
「・・・?」
「あぁ、俺は数年前に今の家に引っ越して来たんですけど、いつも学校から自宅まで一直線に帰るので土地勘全くないんですよ」
「・・・・」
ちょっと呆れた目で見られた。
「そ、そういえばこの前、もう一度あの家を見たかった、って言ってましたけどあの家に何か思い入れでもあるんですか?」
しまった。話を変えるために慌てて言葉を紡いだが、聞くつもりのなかった事を聞いてしまった。彼女にとって、あまり聞かれて欲しくない内容だとは思っていたのだが・・・
「・・・その話は今度しますね。今日はもう夜遅いですし。今日は本当にありがとうございました。おやすみなさい」
「はい。おやすみなさい」
そう言って背を向けた古瀬さん。一応ストーカー対策としての同伴、という名目だったので彼女がアパートへ入ったのを確認してから俺もその場を去った。
彼女のアパートの方面は、学校の正門を出て左の方角。対して俺の家は右の方角だ。なので一旦来た道を往復し、学校の正門まで戻る。そこから自宅へと向かった。
◇
現在夜の7時30分。ようやく自宅に着いた。彼女を送り届ける時間と家への帰路を合わせると25分掛かる。これを毎日とは・・・受けたものはしょうがない。最後までやりきろう。
はぁ、今日はゆっくり風呂に入ってアニメでも見よう、そんなことを思いながら玄関の扉を開けると、何か騒がしい。うるさいな。宝くじでも当たったのかね。
片足を上げ、靴を脱ごうと思ったその時、バァンッっ!と大きな音を立て、ダイニングへの扉が開いた。
そこに居たのは目を点にする妹、千恵だった。
なにをそんなに驚いているのかと疑問に思っていると、急に千恵が俺に飛びついてきた。
「にいちゃーーんっ!!」
「グふォっ!」
鳩尾に千恵の頭が直撃し、変な声が出た。片足を上げていた為、バランスを失ってそのまま後ろ方向へ倒れた。
「いってぇーよっ」
悶絶する俺を他所に、千恵は俺に強く抱き着き、すすり泣いていた。
そこへ俺が倒れた時の物音が聞こえたのか、両親が玄関へ駆けつけた。すると母は緊張の糸が切れたかのように、その場でへたり込み涙を流しながらこう言った。
「良かったっ・・・」
一緒に駆け付けた父は涙を流す母の背中を摩りながら、心底安堵する様な顔で俺に言った。
「無事でよかった・・・・武流・・・」
「へ?」
学校を出てすぐ、お隣で歩く古瀬さんが開口一番そんな提案をしてくる。
「そうですね」
「では、私から」
と置いて、お互い自己紹介がまだだったですね、と今更気づいたように言う。
「ご存知かもしれませんが、私の名前は古瀬麻衣と言います。2年C組の出席番号31番です」
麻衣さん、というのか。うん、なんか麻衣っていう感じの雰囲気してますわ。というか隣のクラスなのに昨日が初認識とは。自分の行動範囲の小ささに惚れ惚れする。
「俺は芦田武流です。2年D組で出席番号は2番です」
古瀬さんの自己紹介に倣って言ってみる。
ちなみにうちの高校は一学年6クラス(A~F組)で、結構な人数を有してる。東総高校。この市内にある数ある進学校の一つだ。
「武流さん、ですか。良い名前ですね」
「お世辞でも嬉しいですね」
「いえ、そんなことはありませんよ?」
実際、”たける”っていう名前はイケメンが似合う名前だ。俺には不相応だろう。
「それより、千代子さんが武流さんの妹さんだとはビックリしました」
それはよく言われる。千恵は俺と違って、陽キャでトップカーストだからな。ただ、羨ましいとは思わない。顔は別だけど。
あと、千代子っていいな。古瀬さんが妹と話す時を想像すると、笑ってしまいそう。
「ええ、性格も顔面レベルも全く違いますからね」
「え、えっとその武流さんもカッコいい?と思いますよ」
この子優しい、妹よ少しは見習いたまえ。そしてサラッと下の名前を呼ぶのはトップカースト所以か。さすが陽キャ。
「古瀬さんは優しいですね」
「・・・?」
「古瀬さんは趣味とかありますか?」
今度は俺から話を広げてみる。
「そうですね・・・趣味かは分かりませんが、大好きなことは読書です。本を読んでいる最中は嫌なことを忘れて、その作中に没頭できるのがとても心地いいんです。周りを気にせず、自分の世界に入れるあの感覚が・・・」
これはちょっと闇が深いかも。彼女くらいになると人間関係でも苦労するのかもしれない。さっきのストーカーの件もしかり。美人さんだしね。
「武流さんは?」
「俺はアニメ、漫画、小説。サブカルチャーが趣味です。まぁ要するにオタクです」
「・・・そうですか。結構ハッキリと言うのですね」
「はい?」
「いえ・・・そうやって自らをオタクと明言する方は中々いませんので」
そうか。それはそうかもしれない。ただ、最近はオタクへの風当たりも弱くなってきている。数年後にはオタクは完全に世間に認められるようになるだろう。
「まぁ隠してもしょうがありませんからね」
「・・・すごいですね。ハッキリと言えるその性格は・・」
また墓穴を掘ったかもしれない。彼女の人間関係に首を突っ込もうとは思わないが、ちょっと気になる。というか、一つこれだけは言いたい。
「俺はそんな性格ではありませんよ。言いたい気持ちを抑えつけて、抑えつけて、今があります」
「・・そう、なんですか」
「えぇ、そうです」
思ったことをすぐ言えたならどれだけ楽か。誰しも、一つや二つ不満が存在する。それを皆抑えつけて生きているのだ。逆に無いように見える奴は、ただの阿呆か、演技をしているか、だ。
それから他愛の無い会話をしていると、事前に言われていた場所まで着いた。
「今日はありがとうございました」
学校から徒歩10分の場所にある公園。看板に書いてある文字には【東総公園】とある。街灯に照らされた公園は、どこか物寂しさを感じさせるものが見え隠れする。
彼女の家は公園の目の前にある、あのアパートらしい。目と鼻の先にあるから分かりやすい。
「いえ、俺もこの住宅街の土地勘が知れて良かったです」
「・・・?」
「あぁ、俺は数年前に今の家に引っ越して来たんですけど、いつも学校から自宅まで一直線に帰るので土地勘全くないんですよ」
「・・・・」
ちょっと呆れた目で見られた。
「そ、そういえばこの前、もう一度あの家を見たかった、って言ってましたけどあの家に何か思い入れでもあるんですか?」
しまった。話を変えるために慌てて言葉を紡いだが、聞くつもりのなかった事を聞いてしまった。彼女にとって、あまり聞かれて欲しくない内容だとは思っていたのだが・・・
「・・・その話は今度しますね。今日はもう夜遅いですし。今日は本当にありがとうございました。おやすみなさい」
「はい。おやすみなさい」
そう言って背を向けた古瀬さん。一応ストーカー対策としての同伴、という名目だったので彼女がアパートへ入ったのを確認してから俺もその場を去った。
彼女のアパートの方面は、学校の正門を出て左の方角。対して俺の家は右の方角だ。なので一旦来た道を往復し、学校の正門まで戻る。そこから自宅へと向かった。
◇
現在夜の7時30分。ようやく自宅に着いた。彼女を送り届ける時間と家への帰路を合わせると25分掛かる。これを毎日とは・・・受けたものはしょうがない。最後までやりきろう。
はぁ、今日はゆっくり風呂に入ってアニメでも見よう、そんなことを思いながら玄関の扉を開けると、何か騒がしい。うるさいな。宝くじでも当たったのかね。
片足を上げ、靴を脱ごうと思ったその時、バァンッっ!と大きな音を立て、ダイニングへの扉が開いた。
そこに居たのは目を点にする妹、千恵だった。
なにをそんなに驚いているのかと疑問に思っていると、急に千恵が俺に飛びついてきた。
「にいちゃーーんっ!!」
「グふォっ!」
鳩尾に千恵の頭が直撃し、変な声が出た。片足を上げていた為、バランスを失ってそのまま後ろ方向へ倒れた。
「いってぇーよっ」
悶絶する俺を他所に、千恵は俺に強く抱き着き、すすり泣いていた。
そこへ俺が倒れた時の物音が聞こえたのか、両親が玄関へ駆けつけた。すると母は緊張の糸が切れたかのように、その場でへたり込み涙を流しながらこう言った。
「良かったっ・・・」
一緒に駆け付けた父は涙を流す母の背中を摩りながら、心底安堵する様な顔で俺に言った。
「無事でよかった・・・・武流・・・」
「へ?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
幼馴染に告白したら、交際契約書にサインを求められた件。クーリングオフは可能らしいけど、そんなつもりはない。
久野真一
青春
羽多野幸久(はたのゆきひさ)は成績そこそこだけど、運動などそれ以外全般が優秀な高校二年生。
そんな彼が最近考えるのは想い人の、湯川雅(ゆかわみやび)。異常な頭の良さで「博士」のあだ名で呼ばれる才媛。
彼はある日、勇気を出して雅に告白したのだが―
「交際してくれるなら、この契約書にサインして欲しいの」とずれた返事がかえってきたのだった。
幸久は呆れつつも契約書を読むのだが、そこに書かれていたのは予想と少し違った、想いの籠もった、
ある意味ラブレターのような代物で―
彼女を想い続けた男の子と頭がいいけどどこかずれた思考を持つ彼女の、ちょっと変な、でもほっとする恋模様をお届けします。
全三話構成です。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』
まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。
朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。
「ご主人様の笑顔が見たいんです」
その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。
全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!?
甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。
失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?
さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。
しかしあっさりと玉砕。
クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。
しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。
そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが……
病み上がりなんで、こんなのです。
プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる