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第3章 これから、変わる
第57話 後悔は無駄だと分かっていても
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「武流のクラスの劇よかったわねー。思わず泣いちゃった」
「あぁ父さんも感動したぞ。それに、今時の子が本当の『ヘンゼルとグレーテル』を知っていたことにも驚いた」
夕食の最中、今日は文化祭だったので話の肴には困らない。
父さんと母さんは文化祭2日目だけ会社に休みを貰い、俺と千恵の活躍を見に来たらしい。文化祭に来ることは知っていたがどこに居たのかは分からなった。
まぁ、俺は特になにもしていないので誇ることも何もない。せいぜい舞台裏で黒子となり、小道具と大道具の移動をしていたくらいだ。だが一方で、千恵は見事1年生女子のグランドアイドルに輝いた。兄弟でここまで差があると呆れを通り越して笑っちゃうよ。ほんと。
「にしても驚いた。まさか高校であんな催し物をしてるなんて」
母さんが感心した声を出す。
「ああ、千恵も1位だったしな。流石は俺の娘だ」
「はいはい、ありがとー」
褒めてくれた父さんに向かって適当にあしらう千恵。
「どう?千恵。今嬉しい?」
母さんがおちょくるような声色で千恵に問う。その顔は千恵をからかっているのか、息子の俺からしてもウザイ。
これは母さんの癖だ。人を揶揄うのが好きなのか、いつも父さんに冗談を言っている。そしてその冗談を毎回信じる父さん。あたふたした姿を見るのが好きなのだろう、弄る時は大抵悪い顔をしている。
「うーん。皆の前ではああ言ったけど、実際そんなに?かな」
「でもあれって凄いものなんでしょ?」
「らしいね。でも私モデルになんてなりたくないもん」
「そうだったわねぇ、千恵は今でも夢は変わってないの?」
「うん、当たり前」
さも当然と言った様子で口をもぐもぐしながら答える千恵。
確か千恵の将来の夢って・・・
「・・・ウェディングドレスデザイナーか」
「うん・・・」
おお、当たってた。
結婚式で着用するウェディングドレスのデザインや制作を行う仕事だった気がするが、千恵みたいな少々がさつな女の子に出来るのか不安だ。
「千恵の小学生の頃からの夢だもんなぁ、父さんもお前達の晴れ姿を早く見てみたいもんだ」
「気が早すぎるわよ、あなた」
「確かにそうだな。だが、父さんと母さんが天国に逝く前に孫の顔が見たいなぁ」
父さんあなたそんなに早く逝く気なのかい?
「あ、そう言えば大丈夫だったの?あの倒れた子」
「救急車も来ていたしな・・・無事だと良いのだが」
母さんが今更ハッと気づいたように言う。
はぁ、出来ればその話をこの食卓の場に持ってほしくなかったんだけどな・・・。一旦考えると。俺を苛む滝の様な後悔の雨が降り注ぐからだ。古瀬さんは、放課後のホームルームで無事だという事が分かっていた。その時は若山さんと同時に、ほっとため息を出したのを覚えている。
だがそれでも、あの時の自分に俺は喝を投げかけたい。結果が同じだとしても、俺が彼女に対して起こせた行動はいくらでもあったはずだ。もちろんそれは、俺と同じく傍観するだけだった周りの生徒もそうだ。だが俺は少なからず古瀬さんと関係を持っている人間だ。そんな奴が、彼女の命の危機かもしれない状態にただ傍観するだけなどという、ふざけた行動を取った自分自身に俺は・・・反吐がでる程の激情の念に駆られてしまう。
「・・・ああ、あの後病院に搬送されて、無事だったらしいよ」
「そうなの、それは良かった」
古瀬さんの詳しい容体は聞かされていないが、彼女が無事だったという事実があるだけ俺は安堵した。
「にい・・・ちかづく・・・の・・・だよ」
「・・・?何か言ったか?」
「ううん。なにも?」
小さな声で何かボソボソと聞こえた気がしたんだが気のせいか。だが・・・・
「・・・なんで、笑ってるんだ?」
「え?」
「俺なんか変なこと言ったっけ・・・?」
俺は古瀬さんが倒れた話をしただけなのに、なんで千恵は口元がニヤついているのだろう。
「いいや?言ってないよ。ただちょっと思い出し笑いをしただけ」
「そう・・・」
それなら別にいいんだが・・・
そう思いながらも、俺は胸中に蠢く一抹の不安を拭い切ることが出来なかった。
「あぁ父さんも感動したぞ。それに、今時の子が本当の『ヘンゼルとグレーテル』を知っていたことにも驚いた」
夕食の最中、今日は文化祭だったので話の肴には困らない。
父さんと母さんは文化祭2日目だけ会社に休みを貰い、俺と千恵の活躍を見に来たらしい。文化祭に来ることは知っていたがどこに居たのかは分からなった。
まぁ、俺は特になにもしていないので誇ることも何もない。せいぜい舞台裏で黒子となり、小道具と大道具の移動をしていたくらいだ。だが一方で、千恵は見事1年生女子のグランドアイドルに輝いた。兄弟でここまで差があると呆れを通り越して笑っちゃうよ。ほんと。
「にしても驚いた。まさか高校であんな催し物をしてるなんて」
母さんが感心した声を出す。
「ああ、千恵も1位だったしな。流石は俺の娘だ」
「はいはい、ありがとー」
褒めてくれた父さんに向かって適当にあしらう千恵。
「どう?千恵。今嬉しい?」
母さんがおちょくるような声色で千恵に問う。その顔は千恵をからかっているのか、息子の俺からしてもウザイ。
これは母さんの癖だ。人を揶揄うのが好きなのか、いつも父さんに冗談を言っている。そしてその冗談を毎回信じる父さん。あたふたした姿を見るのが好きなのだろう、弄る時は大抵悪い顔をしている。
「うーん。皆の前ではああ言ったけど、実際そんなに?かな」
「でもあれって凄いものなんでしょ?」
「らしいね。でも私モデルになんてなりたくないもん」
「そうだったわねぇ、千恵は今でも夢は変わってないの?」
「うん、当たり前」
さも当然と言った様子で口をもぐもぐしながら答える千恵。
確か千恵の将来の夢って・・・
「・・・ウェディングドレスデザイナーか」
「うん・・・」
おお、当たってた。
結婚式で着用するウェディングドレスのデザインや制作を行う仕事だった気がするが、千恵みたいな少々がさつな女の子に出来るのか不安だ。
「千恵の小学生の頃からの夢だもんなぁ、父さんもお前達の晴れ姿を早く見てみたいもんだ」
「気が早すぎるわよ、あなた」
「確かにそうだな。だが、父さんと母さんが天国に逝く前に孫の顔が見たいなぁ」
父さんあなたそんなに早く逝く気なのかい?
「あ、そう言えば大丈夫だったの?あの倒れた子」
「救急車も来ていたしな・・・無事だと良いのだが」
母さんが今更ハッと気づいたように言う。
はぁ、出来ればその話をこの食卓の場に持ってほしくなかったんだけどな・・・。一旦考えると。俺を苛む滝の様な後悔の雨が降り注ぐからだ。古瀬さんは、放課後のホームルームで無事だという事が分かっていた。その時は若山さんと同時に、ほっとため息を出したのを覚えている。
だがそれでも、あの時の自分に俺は喝を投げかけたい。結果が同じだとしても、俺が彼女に対して起こせた行動はいくらでもあったはずだ。もちろんそれは、俺と同じく傍観するだけだった周りの生徒もそうだ。だが俺は少なからず古瀬さんと関係を持っている人間だ。そんな奴が、彼女の命の危機かもしれない状態にただ傍観するだけなどという、ふざけた行動を取った自分自身に俺は・・・反吐がでる程の激情の念に駆られてしまう。
「・・・ああ、あの後病院に搬送されて、無事だったらしいよ」
「そうなの、それは良かった」
古瀬さんの詳しい容体は聞かされていないが、彼女が無事だったという事実があるだけ俺は安堵した。
「にい・・・ちかづく・・・の・・・だよ」
「・・・?何か言ったか?」
「ううん。なにも?」
小さな声で何かボソボソと聞こえた気がしたんだが気のせいか。だが・・・・
「・・・なんで、笑ってるんだ?」
「え?」
「俺なんか変なこと言ったっけ・・・?」
俺は古瀬さんが倒れた話をしただけなのに、なんで千恵は口元がニヤついているのだろう。
「いいや?言ってないよ。ただちょっと思い出し笑いをしただけ」
「そう・・・」
それなら別にいいんだが・・・
そう思いながらも、俺は胸中に蠢く一抹の不安を拭い切ることが出来なかった。
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